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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

勇者、来訪

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ニクの名前と指輪作り。


 結局、勇者ワタルの報告により『欲望の洞窟』は『火焔窟』の派生ダンジョンみたいなポジションとして見られるようになったらしい。

 ワコークへ行く前に、一度帝都に帰って借金返済のためにいくつか仕事するそうな。
 その際にまたここに寄って、その時はゴゾーとロップと一緒にワコークへ行く約束をしたとか。

『借金返すまでは、禁酒します!』

 とは言っていたが、果たしてそれが守れるのかどうか……実に不安なところだ。
 もっとも返済が滞ったらハクさんに肩代わりしてもらうだけだからこちらとしては問題ないんだけど。

「いやぁ、勇者も帰ったし、これでまたのんびりできるな」
「ケーマ、勇者がいてもわりとのんびりしてたじゃないの……」

 ロクコの発言に目をそらし、そういえばニクの新しい名前を付けなきゃな、と思い出す。
 ちょうどいい、抱き枕にしようと部屋に連れ込んでいたところだ。

「ニク。名前だけど」
「こ、このままがいいです。り、りっぱなニクになりますから……」

 俺が「名前」と声をかけると、大事にしている毛布を取り上げられようとしている子犬のようにぷるぷると震えるニク。

「……そうだな、あと5年くらいしたら考えてやるから。というわけで新しい名前をだな」
「ねぇ、そういえばニクってどういう意味なの? 私、聞きそびれてたんだけど」

 ああ、と俺はロクコに説明しようとして、言葉に詰まった。
 ……性的なオモチャとか言えねぇよ。確かにこれは何も知らない相手に言うのはキツいわ。
 というわけで、聞こえなかったことにした。

「新しい名前は、ニク・クロイヌ。外での呼び名はクロだ。いいな?」

 俺がそういうと、ニクは俺が名前として「ニク」を残したのが意外だったのか、目をぱちくりさせていた。

 結局、黒い犬ということでクロイヌということにした。クロイツとかそれっぽい感じになったと自負している。けっして手抜きではない。手抜きではない。

 ……名前を決めるにあたってイチカから聞いたのだが、獣人は自分の名前を非常に、それはもう命より大事にしているらしく、一度自分の名前として覚えたからには何を言っても心の中ではその名前を通すという話だった。実例を何個も聞かされて――それこそ小学生の「命賭ける?」って言うくらいの頻度で本気で命がかかっていた――これはアカン、としか感想が出てこなかった。
 要するに『変えても無駄、むしろ抑圧したらどうなるか分からない。というか時既に手遅れ。とっくの昔に時限爆弾』ってことで、あえて残すことで爆破までの時間を延ばす方向になった。

 で、自分の名前が既に自分の状態を的確に表しているとなれば本能的にも多少は満足してくれるだろうということで「クロイヌ」なのだ。……そう。断じて手抜きじゃない。切実なのだ。切実なのだ!

 ……せめてニクが成人するまで爆発しないこと祈ろう。首輪での首絞めはなるべくしたくないしな。

「というわけで、明日にでもギルドの名前も登録し直しておこう。……多少金はかかるみたいだけど、問題ないだろ。金貨もあるし。分かったか?」
「は、はいっ」

 ニクはパタパタと嬉しそうに尻尾を振りながら答えた。

「ねぇ、それでニクってどういう意味だったのよ?」
「……イチカに聞いてくれ」

 とりあえずロクコへの説明はイチカへ丸投げすることにした。

 ニクのギルド登録名を変えるのには銀貨30枚かかったが、出張所のほうで無事変更手続きをすることができた。
 思ってたよりは安かったな。

  *


 俺が寝ている間にロクコがレドラと交流を深めていたりで、一つ思った。
 あんまり寝すぎてると俺、役立たずになって肩身が狭くなってしまう。

 いや、それでも気にせず寝てればいいだけなんだけど、それってつまりマスコットじゃないか。俺がマスコット枠になってしまうのはなんか嫌だ。ドラ焼きみたいにお布団に挟まった目つきの悪いマスコットとか嫌だ。
 というわけで、気は進まないのだが仕方なく多少仕事をすることにした。
 具体的にいうと魔剣ゴーレムブレードの補充だ。こればっかりは俺じゃないと作れないしな。

「鉄よ、魔剣になぁれ【クリエイトゴーレム】っと」

 だいぶ適当な詠唱でゴーレムブレードを作る。こんなんでも無詠唱より格段に魔力消費量が抑えられるんだよな……別に無詠唱でも魔力切れ起こさないけど。最初は生活魔法の『浄化』ですら疲労感を覚えてたはずなんだが、成長したってことかな。
 とりあえず勇者に持っていかれた魔剣と同じものを作って『宝箱』に補填する。

 この『宝箱』っていうのは、一定時間でアイテムを補充する箱だ。お値段100DP。
 リストを用意しておけばDPを消費するけどリスト内から勝手に補充してくれる他、あらかじめ用意したアイテムを補充することもできる。
 補充作業が面倒なダンジョンマスターには好評らしいとハクさんが言ってた。

 魔剣も、いやそもそもゴーレム自体もパワーアップさせたいところだけど、何かいい手はないもんかなぁ。ウチでいまのところ最高のアイアンゴーレムも勇者にはスパスパ切られて使い物にならなかったしな。
 今回来た勇者は比較的友好的だったからよかったものの、もし本格的にダンジョンコアを潰そうと考えてる勇者が来た日には手も足も出ないってことだ。
 やっぱり単純に考えるなら使用している素材のグレードアップだろう、とDP交換できる素材を見つつ考える。

 ……あ、そういえばロクコに指輪やる約束もあったっけ。忘れないうちに作っておこう。
 指輪を作るだけならコイン程度の量でもお釣りがくる。安く済ませられるだろう。

 で、まず出したのは『オリハルコン(直径1mm針金10cm:1万DP)』だ。
 いきなりお安くない! でも仕方ない、実物見たかったんだもん!
 オリハルコンは金色と銀色の中間みたいな色合いで、うっすらと虹色の光沢がある、まさにファンタジー金属といった感じだった。
 たった10cmの針金にも関わらず非常に高く、しかも全力で曲げようとしても曲がらなかった。ペンチつかっても全然で、折れたり割れたりする気配すらない。なんだこれ、本当に金属なのか?
 とりあえず【クリエイトゴーレム】で加工したけど……10cmの針金を指輪型に加工するだけなのにかなり時間と魔力を消費した。久々に魔法で疲れたぞコレ、ちゃんと詠唱した上でもごっそり魔力が持ってかれた。一度魔力で満たしてしまえばあとはむしろ鉄より思い通りに加工できたけど、普通はどうやって剣とかにするんだろうな。
 改めてオリハルコンの輪っかを見る。……これ作るのに金貨10枚を潰さないといけないDPが掛かっているとか、なんて贅沢な。この時点で1千万円の指輪ってことだぞ? 大人しく金で作ればよかったかもしれない。

 次に、『合成ルビー(ブール未加工:30DP)』を交換。こっちはオリハルコンにくらべたらカスみたいに安かった。しかも出てきたのは指くらいデカい結晶。……ブールってなんだったんだろう。

 天然モノの屑石をくっつけて使うのも考えたが、それならいっそ合成ルビーの方が安くて色もいい。しかも合成モノなだけに内包物(ゴミ)が少なく、ある意味天然モノより純粋なルビーともいえる代物だ。
 宝石商とかからしたら邪道なんだろうけど、どうせ【クリエイトゴーレム】でこねこねしちゃうから天然だろうが合成だろうが関係なくなるしな。……お、すごいやりやすい。魔力がぴたっと吸い付く感じだ。

 で、このルビーを使ってオリハルコンの輪っかを包み込む。……ルビー、だいぶ余ったな、髪飾りでも作るか?
 ともあれ、オリハルコンが埋め込まれたルビーの指輪が完成した。透明感のある綺麗な赤の中に、オリハルコンの輝き。デザインこそシンプルだけど、ロクコには似合うだろ。

 あとは適当に箱を作って入れておく。……渡すのちょっと照れくさいな、コレ。

 指輪もできたことだし、改めてダンジョンのパワーアップについて考える。
 実際にオリハルコンを触ってみて思ったけど、全身オリハルコンのオリハルコンゴーレムとかできたらそれはもう最強だろうな。
 かかるDPに目をつぶったらだけど。針金ちょびっとで1万とかだと、ゴーレム一体分でとんでもないことになりそうだ。しかも魔力がどんだけいるのかって話になる。
 ……普通に加工する方法ってどうやるんだろうな?
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