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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

勇者、来訪

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勇者とダンジョン

 勇者ワタルがダンジョンに潜る。第1層をさくっと抜けて、迷宮エリアに入った。
 ここで探索するのがいつものパターンだったのだが、今日は迷宮エリアを抜けてさらに奥、謎解きエリアまでやってきていた。

「さて、この先は未踏エリアか。……気を引き締めてかからなきゃな」

 誰に聞かせるわけでもないのだが、そう言って目の前の扉を睨む。
 謎解きの扉だ。一般的には『知恵の門』と呼ばれるそれを、ワタルは悠々と解いていく。

「……うん、これ算数だな。普通に四則演算で解けと」

「こっちは日本のクイズ番組を思い出すな、マッチ棒のやつ。三角形を逆にすればいいんだな」

「あー、これは有名ななぞなぞだな。こっちの世界で、だけど。『北の海』っと」

「……『簡単』、かな?」

 まあそこそこ難しいかもな、と、ハクが聞いたら頭突きを食らわされそうな感想を述べつつ、螺旋階段エリアへ抜けた。

 この先はギルドにもどういうエリアか一切の報告が無い。

 もしかしたら一番奥まで潜っているケーマなら情報を持っているかも、とも思っていたが、借りがある手前聞きづらいというのもあった。
 この世界において、自分が有利になるための情報とは隠しておくべきもの。それを聞くという事は、さらに借りを重ねることになるのだ。
 もちろんダンジョンの攻略情報もそれに含まれる。例外として、知らないと被害が大きすぎるような罠――台座に魔剣を戻さないと閉じ込められてしまう『強欲の罠』とか――については、ギルドの方で情報を買い上げて周知する、というのもある。冒険者がただ死ぬのは、ギルドから見ても損だからだ。

「……真ん中が吹き抜けになってるのか」

 いっそここ飛び降りたら早いかな? と吹き抜けの底を見る。……うまく着地すれば骨折で済みそうだな、といった感想がワタルの頭によぎり、飛び降り案は破棄された。

 1段1段をしっかり確認しつつ、螺旋階段を降りていく。
 ……その途中、壁が突き出てくるも、

「おっと、危ない」

 ワタルにとってはそれほど危険ではなく、むしろ突き出た壁の上にひょいと飛び乗り落ちないように回避したくらいだ。
 足が遅ければ落とされていただろうな、と、そこでようやく吹き抜けの意図に気付いた。もっとも、気付いたところであまり意味も無いのだが。

 螺旋階段を降りきると、そこは区画分けされたような、人工の遺跡を彷彿とさせるエリアだった。
 罠が無いかを確認しながら近くの部屋に入る。

「お、宝箱! ふふふ、ここまで来たら何が入ってるんだろうな? マンガ雑誌とか入ってないかなー」

 と、ワタルは異世界の、日本の品が入っていることを期待していたのだが、その中に入っていたのは剣だった。少しがっかりしたが、よく見ると魔石が埋め込まれている。魔剣だった。

「ああ、そういえば魔剣も手に入るって話だったっけ。んー、魔力流した感じだと切れ味増大って感じかな? まぁ、借金返済の足しにはなるか。 ……日本の品の方がよかったなぁ」

 切れ味増大の魔剣は、魔剣の中では下位に位置する魔剣だ。上位は魔法の効果があるというもの。今手に入れた魔剣であれば、金貨数枚で取引できるレベルで、Sランク冒険者の勇者からしてみれば三級品装備といったところだった。
 Cランクだった頃は、このくらいの装備を求めて血眼になっていたが。

 途中出没したアイアンゴーレムを倒しつつ、更に他の部屋でも魔剣を見つけていく。どれも切れ味増大の魔剣だ。魔剣と一緒にアイアンゴーレムの死骸も時空魔法の【収納】に入れているのだが、そろそろ容量いっぱいになってきた。

「もうちょっと荷物減らしてから来ればよかったか……いやいや、一人旅なんだから準備は万全にしないといけないよな、仕方ない仕方ない」

 なんだかんだで20本の魔剣を回収し、さらに下へ行く階段を見つける。
 引き返そうかとも思ったが『まだ大丈夫』ですらなく『まだ余裕』なのだ。いざとなればアイアンゴーレムの死骸は捨てて行ってもいいだろうし。

 そう考えて、ワタルはとりあえず次の階を覗いてみることにした。


  *

 それなりに手加減はしているものの、難なくダンジョンを踏破されていくのはあまりいい気分ではない。
 が、ハクさんから頼まれている以上初見殺しの致死トラップに掛けるわけにもいかないし、モンスターで撃退するにも普通に強いのでこちらが損耗するだけだ。アイアンゴーレムを軽く剣振っただけで真っ二つってどういうことだ、オイ。

 なので、ここは大量にお宝を持たせてさっさとお帰り頂く作戦になった。

「今日は魔剣の大放出ね」
「ああ。せっかく倉庫エリアまで来てくれたことだし、この機会に盛大に持って行って宣伝してもらおう」

 今回渡すレベルの魔剣なら、それほど高いランクの冒険者は寄って来ないだろう。

「アイアンゴーレムの残骸もあるしそろそろ【収納】もいっぱいだろ……って、あれ? あんなところに通路なんて作ってたっけ?」

 ワタルの様子を見ていると、作った覚えのない階段を降りようとしているところだった。……牢屋エリアじゃない、よな? なんだっけこの階段。

「え? 作ってたわよ……って、そーよ! 勇者が来てすっかり忘れてたけど、ダンジョン作ったのよ!」

 あ、すっかり忘れてた。そういえばロクコにダンジョン作らせてたんだった。

「……で、どういうダンジョン作ったんだ?」
「ふふん、まぁ見てなさい、超画期的だから! 私だってケーマに負けない発想ができるってこと見せてあげるわ!」

 ちょうどいいので、勇者の攻略にあわせてみていくことにした。

  *

「……こりゃ、一気に様相が変わったなぁ」

 階段を降りるとそこは一面のマグマだった。ごぅ、とたちこめる熱気が、肌を焼いているようだった。
 マグマの海には、飛び石のように足場が点在していて道になっている。足を踏み外したら魔道具の靴でも焼けてしまいそうだ。

「温泉あったわけだし、火山なんだろうな。……天然のサウナ、ってところかな」

 実際はサウナどころではなく、骨をも溶かす勢いのマグマなのだが、勇者であるワタルにはそれほど脅威ではなかった。魔力を操作し、膜のように張り巡らせてバリアをつくる。これでもし足場が崩れてマグマに浸かることになっても、三十秒くらいは無傷で耐えられるはずだ。

 それでもそれなりに魔力を消費するので、足場を確認しつつ、恐る恐る先へ進む。

「ぴぃーーー!」
「ん?」

 鳥の鳴き声が聞こえた。見ると、小さな白い鳥がダーツのようにこちらに向かって飛んできていた。 ひょい、と剣を出して受け止めると、ガンッ!と硬い物がぶつかる音がして、鳥がマグマの中にポチャンと落ちて行った。

 なんの鳥だったんだ? と気になったが、マグマの中に落ちた小鳥は既に火に包まれていた。

 あまり気にしないことにしつつ、このフロアにはゴーレムは居ないのだろうか? と改めてまわりを見回し、モンスターの気配を探る。
 どうにも、絶賛焼き鳥中の小鳥以外に気配を感じない。もっともゴーレムについては完全に動きを止めていた場合流石に気付けないだろうけども。

 ……先に進んでみるか。
 と、ワタルが足を踏み出すと、背中にガンッ! と軽い衝撃を受けた。

「うぉっと?! ……ッ、あぶなっ!」

 危うく足を踏み外すところだったが、持ちこたえる。振り向くと、そこには燃えたままの小鳥が羽ばたいていた。

「火の鳥……不死鳥か! そうか、マグマで燃えたんじゃなくて、最初から燃えてるのか!」
「ピィ!」

 再び体当たりしてくる小鳥……不死鳥だったが、奇襲は、タネが割れればあとは打ち破るだけである。
 珍しいものを見たなぁ、と思いつつ、ワタルは不死鳥を切り捨てる。

 ピキャッ! という潰れた鳴き声と共に不死鳥が火に包まれた。……だが、数秒後にはまた復活した不死鳥が再び襲い掛かってくる。思っていたよりはるかに早く復活したそれを、ワタルは再び切り捨てた。
 だが、それでも尚、不死鳥は何度も復活しては襲い掛かってきた。
 非常に弱いのだが、復活までのクールタイムが恐ろしく早く、幾ら倒しても効果が無いかのようであったが――

「あ! でもこれ素材稼ぎになる!? そういえばカンタラさんが火系のレア素材欲しがってたっけ! ひゃっほう!」
「ピキィッ?!」

 ――何やら不穏な気配を察知したのか、不死鳥はワタルから離れて行った。
 ワタルは「やれやれ、賢くて助かった」と小さく呟いた。本当のところ、死ぬと同時に燃え尽きてしまう不死鳥の素材なんてどうやって回収すればいいのか分からなくて、どうしようもなかったところだ。
 今度来るまでに調べておこう、と心の片隅に記憶しつつ、再び奥へ向かって進むことにした。

 途中、足場が唐突に崩れたりもしたが、なんとか奥までたどり着いた。そこには扉があった。

 ぐっ、と力を込めて開けると、その先も似たような熱にまみれた洞窟だった。
 マグマは溢れていないが、視界に入るだけでもレッドリザードやマグマスライムがいることが見て取れた。

 どうやら、ここからが本番のようだ。

(前回のあとがきの意味が解らなかった人は、「ゴゾー」「ロップ」「西見渉」をつなげて読んでみてください)
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