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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

勇者、来訪

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勇者と勝負(ギャンブル)

(前話で、ケーマの『ニク』への認識を多少追加してます。
 算数間違えてたので修正。金貨2800→2300枚)
 まぁそれはさておき、いきりたった勇者をどうにかしなければならない。

「でも勇者様こそニクを部屋に連れ込もうとしたって聞いたけど?」
「へっ?! いやいや、やましい意味じゃないですよ?! その、黒髪だったから話を聞こうと思ってですね」
「本当かな……怪しい所だ……幼女にプロポーズするって噂の勇者だし」
「そ、それも理由が……ッ いや、なんでもないです」

 ん? なにか理由があるのか?

 …………
 もしかして、ハクさんから俺とロクコの仲を探ってこいとか言われてるとかか?
 だとすれば若干不自然な言動も納得がいく。告白までしておいて平然としているあたりとか、いちゃもんつけてロクコを任せておけないとかいう所とか、テーブル破壊した所とか。

 そうか、この勇者はハクさんの手駒だったな。となれば様子を見るだけじゃない。なんだかんだ理由を付けて、ロクコを帝都に連れて行こうとしているんだろう。歓迎……いや、大歓迎するハクさんが目に浮かぶようだ。お菓子の家よろしく、メロンパンを再現して部屋中に敷き詰めたメロンパン部屋とか作りそうだ。
 そしてハクさんとの約束で勇者を無事に帰さなければならない以上、俺はうかつに手を出せない。まさかこのための仕込みだったのか。

 よし、撃退しよう。ただし、怪我をさせたりするわけではなく、だ。

「わかった。じゃあ勝負するか」
「はい? 勝負ですか? ……勝負ですか!」

 勇者ワタルがぐいっと食いついた。

「望むところです、受けて立ちましょう! まぁ、死傷するような攻撃とかは無しっていうのは当然ですよね、場所は洞窟前広場でもいいでしょう、時間は何時にします? 今すぐこれからでもいいですが」
「まてまてまて。さすがに勇者様相手に戦闘能力で勝負を挑もうなんてするわけがないだろ、これだよ、コレ」

 俺は、ダイスを見せる。一般的な立方体の6面ダイスだ。

「6面ダイスですね。……TRPGですか?! まさかルールブックもあるんですか?!」
「わけのわからないことを言うな、発想が飛躍しすぎだ」

 テーブルトークロールプレイングゲーム、略してTRPGとかこの世界にあるわけないだろう。
 ……いや、そういう娯楽、流行らせるんなら別だけどな?

「普通にギャンブルだよ。同じ枚数のチップを用意して、奪い合いで勝負ってのが良い。タワー&ダイス、チンチロ、丁半とかでもいい。ルール知ってるか?」
「……昔、漫画で読んだような。タワー&ダイスっていうのは知らないですが」
「それは、ダイスを振って、出目の数だけチップを積む。順番にそれを3回やって、最終的に一番チップを多く出した奴が勝ち。ってやつだな。要するに3回振って、出目の合計が多い奴が総取りだ」
「分かりやすいですね。それがいいです」
「じゃあこれで勝負、ってことでいいな?」
「はい」

 ワタルは頷いた。妙に自信ありげだった。

「ダイスはどうする? 宿で用意したものを使うか?」
「いえ、自分で手に入れたダイスがあります。せっかくなのでこれで」

 と、ワタルは自分の手荷物からダイスを取り出した。ウチのダンジョンで拾った戦利品だろう。

「じゃあ、勝敗が決まった時の取り決めをしようか。俺が勝ったら嘘検知の魔道具……は、いいや。追加で金貨500枚な」
「では、僕が勝ったらロクコさんは帝都へ連れて行きます。あと、その子も」

 その子、と指名されたニクは勇者を睨む。絶対ついていきたくないと目で語っていた。
 安心しろ、ニクは渡さない。そしてロクコに至っては

「おいおい、雇い主のことを俺が勝手に賭けられるわけないだろ。自分の奴隷(所有物)ならともかく」
「うぇ?! ぱ、パートナーって話ですよね?」
「うん? 誰かと勘違いしてるんじゃないか」

 俺があくまでもナリキンとは別人と言い張る限り、そもそも賭けの対象にできないのだ!

「さっき勝負するっていったし、降りるのは無しだぞ」
「ええーっ?! じゃ、じゃあその、えーっと……その子と、テーブル弁償の減額を……」
「……まぁいいだろ。ニクは金貨500枚で足りるかわからないけどな」

 そしてもちろん俺が使うのはクリスタル製のゴーレムダイスこと、イカサマダイスである。

  *

「というわけで俺の勝ちね。金貨500枚追加でよろしく」

 100枚のチップを取り合いして、なんだかんだで俺が勝った。
 ……しかし勇者、3回のダイスロールの中で5と6を常に2回は交えてくるという強運だった。どんなイカサマをしたんだろうかってレベルだ。途中ダイス調べたけど別に4・5・6しか出目が無いということもなかった。
 だけれども俺は時に勝ち、時に負け、を意図的に繰り返し、小さく負け大きく勝つを積み重ねてチップをすべて奪いつくしたのだ。

「いや、惜しかったな」
「……も、もう1回!」
「えー、仕方ないなー。じゃあ次は倍の1000枚にしよう。掛け金が倍々なら1回勝てばチャラにできるよ?」
「ぐっ……いえ、それはちょっとまってください……なんか嫌な予感がします、ここは一度お互いに金貨100枚だけを賭けましょう」
「分かった、金貨100枚な」

  *

「あー。負けちゃった。かなり大きく負けちゃったなー。残念、金貨100枚分負けちゃったから金貨は900枚でいいよ。おめでとう!」
「は、はい」

 再び100枚のチップを取り合いして、なんだかんだもなく俺が圧倒的に負けた。
 ……やっぱり勇者、3回のダイスロールの中で5と6を常に2回は交えてくるという強運。本当にどんなイカサマをしてるんだろう。今回は素でやったけど、こっちは1、2回しか勝てずに大負けした。

「じゃあ満足しただろうし勝負はこのくらいでやめようか」
「いや! まってください。今度こそそこの女の子を救ってみせます!」
「え? じゃあそっちが賭ける金貨は1400枚だけどいいの? 俺、貸しの金貨が残ってるうちはニクを手放す気ないから」
「いいでしょう、やってやりますとも!」

  *

 いい加減可哀想になってきたのでこのくらいで許してやることにした。

「じゃ、支払いは合計金貨2300枚で」
「…………あの、イカサマですよね?! どうやったか分からないですけど明らかにイカサマでしょ?!」

 勇者ワタルがいちゃもんを付けてきた。

「どういうイカサマをしたというのかな。サイコロ渡してグラ賽でもないってことはしっかり調べられただろ」
「1と6が3回ずつ交互に出てくる確率って何%だと思ってるんですか?!」
「勇者様こそ、3回振ったうち常に2回は5以上の目が出るって何%だよ。それを考えたら、こっちの手も分かるんじゃないか?」
「……この【超幸運:Lv1】スキルは神様からいただいたユニークスキル……それを上回るとは……はっ、やはり日本人の召喚者?!」

 勇者ワタルめ、そんなスキルを持っていたのか……まともにやってたら勝てないところだったな。
 というか、翻訳さん以外にそんなチートスキルもってるとはさすが勇者といったところか。聞いてもいないのに勝手に手の内を教えてくれる残念さんだけど。

「俺は仲間を守る場合にのみに限定しているからな。その分お前さんより強いのさ」
「そ、そういうカラクリがあったのですね」

 と、意味深なことを言ってみる。なぁに、さっきの場合に限ってはニクが賭かってない場合はちゃんと素で勝負してあげたんだから間違っちゃいないさ。

「とまぁ、ネタばらししたし、もうやらないぞ。分かったな?」
「…………あの、さすがに金貨2300枚は」
「それはちゃんと払えよ。自分で決めて賭けたんだろ」

 召喚当時17歳ってことは、3年たった今は20歳ってことだ。日本基準でも成人してるんだ、そこはきっちり払ってもらおう。……日本円にして23億円相当という、人生何回分? って額だけど、こっちじゃSランク冒険者様なんだからしばらく頑張れば普通に稼げる額だろう。

「分割でいいから。1ヶ月に金貨100枚払ってくれれば1年11カ月だ。2年経たずに完済できる。な、簡単だろ?」
「うぇぇ……僕がSランクじゃなかったら到底無理無茶無謀な返済プランじゃないですかそれ……」
「じゃあハクさんに免じて利子は勘弁してやろう。借金のカタで奴隷になれとかも言わないから、ありがたく思ってくれ」
「……はい、ありがとうございます……」

 Sランク冒険者ってひと月にどれくらい稼げるのか知らないけど、Sランクじゃなきゃ無理ってことはSランクだからいけるってことだよな? 信じてるぞ勇者様。
 念のため証文も書いてもらい、これで1年11カ月の間、毎月金貨100枚が入ってくるという話になった。どうか頑張ってSランクにふさわしい高額依頼をこなしまくってくれたまえ。なんならきっとハクさんがたんまり稼げる仕事紹介してくれるさ!

「あ、ちなみに迷惑料は入ってないから」

 勇者は涙目になった。

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