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ブラザーCOMPLEX
作:はにはな



元彼女と俺とアニキ


「勇雄くん、あたしと付き合ってくれないかな?」
「…………真橋さん?」

昼休み、真橋さんに連れられて屋上にきた俺は信じられない告白に驚いていた。アニキと付き合っていた時、真橋さんはアニキにべた惚れだった。別れたからといってすぐ元彼氏の弟に惚れるものだろうか。
そもそもアニキを選んだ時点で俺に惚れないだろう。……って、やめよう。考えたらむなしくなってきた。

「どうかな?」
黙っている俺に焦れたのか真橋さんが問い掛ける。
俺は真っすぐに真橋さんを見て言った。
「真橋さん、俺のこと好きじゃないですよね。俺、好かれてもいない人と付き合えません」
「……っ」
図星だったのだろう。真橋さんは顔を真っ赤にして言葉に詰まった。それでも気を取り直して俺につめ寄った。
「だって勇雄くんと付き合えば郡山くんのおうちに行けるでしょ?それに勇雄くんいつも翔良くんと一緒にいるじゃない。
いつもいつも!!あたし、勇雄くんのせいで翔良くんとあまり会えなかったんだよ?そのせいでふられたんだ。だから勇雄くんといれば翔良くんのそばにいられるよね。そしたら翔良くん、きっとあたしのこと好きになってくれる。あたし達が別れたの勇雄くんのせいなんだよ。勇雄くんさえいなかったら翔良くん、きっとあたしのことみてくれた。だからそれくらい協力してくれるよね?」
「―――……」
なにを言ってるんだろう。よく分からない。
たしかに真橋さんと付き合っているときもアニキは俺を優先していた。どこに出掛けるにもまず俺を誘った。
……でも。俺と付き合ったとしても、アニキが真橋さんを好きなるわけじゃない。結局傷つくのは真橋さんじゃないだろうか。


「……できません」
「どうして!?」
真橋さんは涙目で俺の両腕を掴んだ。
「あたしがあんたみたいなのと付き合ってあげるっていってるのよ!?ありがたく思いなさいよ!!あんたなんか翔良くんのおまけでしかないんだからね!!自分のこと分かってるの!?あんたに断る権利なんかないんだから!!」
「―――…っ」
―――……つかまれた腕がいたい。
いや………。
心が…いたい……―――。



「勇雄」



真橋さんは弾かれたように声のした方へと振り返った。

「……………翔良くん!!」


アニキは真橋さんを見ない。
「勇雄、捜したぞ早く来い」
「アニキ……」
今の話を聞かれただろうか。だとしたら少しいたたまれない。いや、それよりも真橋さんが……。

「翔良くん、あのね、あたしね……」
真橋さんは駆け寄ってアニキの腕を掴もうとした。
その手をアニキが振り払う。
……うわ、怒ってる。たぶん話を聞いていたんだろう。
「勇雄、行くぞ」
アニキは俺の肩を押して歩きだした。
 
「待ってよ翔良くん!!」

真橋さんはなおも言い募る。
呼び止められてもアニキは一切振り向こうとしない。

「あたしのこと少しは好きで付き合ってくれたんでしょ!?だったら勇雄くんじゃなくてあたしともっと会ってくれたら、きっとあたしのこと好きになってくれる!!だから…!!」
「……逆だ。勇雄がいるからお前と付き合った。」
「……え?」
「付き合うのは誰でも良かった。お前じゃなくてもかまわなかった」
真橋さんは目を見開いた。
両目からは涙が流れている。
なにを言ってるんだ?アニキ。
「アニキ、もういい。真橋さん泣いて……」
「二度と話しかけるな。オレにも、勇雄にも」
「――――――!!」
「アニキ!!」
「いくぞ」
真橋さんを残して、アニキに押し出されるように俺は屋上を後にした。


アニキは最後まで真橋さんを見ようとはしなかった。




キーンコーンカーンコーン……―――――


5時限目のチャイムが鳴る。
バタバタと教室へ急ぐ生徒達の足音がする。
でも俺は教室へと続く渡り廊下で足を止めた。
アニキも立ち止まる。

「勇雄?」

「……アニキ、ああいう言い方やめてくれ。真橋さん絶対傷ついてる」
「お前が傷つけられていたのに?」
「俺はいいんだ。……でも人が傷つくのは嫌だ。見たくない」
身内が人を傷つけて平気でいられるような人間だとは思いたくない。
さっきのは明らかに俺を傷つけた報復だろう。あんなに容赦のないアニキは初めてだった。

「…………俺は、お前が傷つくのは嫌だ。傷つけるのが誰であろうと………俺であろうと」
何を言ってるんだろう。アニキが俺を傷つける訳ないじゃないか。

「……アニキ?」

アニキの手が俺の髪に、頬に触れる。

「なに………」
何をしてるんだと言おうとした瞬間、俺はアニキな抱きすくめられた。

………ホントに何してるんだろうアニキ。俺なんか抱きしめて楽しいのか?
俺は抱きしめられたまま固まってしまった。

んーと、ああそうか。俺が傷つけられて落ち込んでると思って慰めてるんだ。なんだ、びっくりした。

俺はアニキの背中を軽く二度たたいた。

「アニキ、慰めてくれなくても大丈夫だよ。早く教室に戻ろう。授業始まってる」

「…いいから黙って抱きしめさせてろ」

「アニキ?」

「少しでいい……―――」












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