僕ドラ2!僕の平和(かな?)なスクールライフ。(6/31)縦書き表示RDF


僕ドラ2!僕の平和(かな?)なスクールライフ。
作:文月



パパと四柳先生。


 「ただいま〜。」

パパが疲れた顔をして帰って来た。そのパパが一番に見たものは、黒いスーツで長身の女の子。もちろん、ドラパンの事である。
廊下の壁にもたれかかって考え事をしている姿はどうしても絵になってしまう。ドラパンはパパの存在に気付くと、何も言わずにキッチンの方へ行き、僕にパパの帰宅を知らせた。


 「おかえりなさい、パパ。」

 「あ、あぁ…。」

パパは驚きを隠せずにいた。
―――そうか、パパにも説明はきちんとしておかないといけなかった。

僕はすっかりその事を忘れていて、とりあえず説明しようとした。するとキッチンから聞こえてきたキッドの声。
 「ドラリーニョ!それ俺のだぞ!返せ!」

 「え〜?良いじゃない。沢山出そうと思えばあるんだし。」

どうやらドラリーニョがキッドの分をカレーを食べているらしい。そして今度は王ドラが、キッチンからひょいと顔を覗きこませた。パパがいることに気付くと、パパに向かってにっこりと微笑んだ。
パパの顔は真っ赤になり、まるで酔っ払いのようだ。
そんなパパを気にする事も無く、王ドラは僕の隣にやって来た。

僕はここぞと思い、パパに説明をする。


 「パパ、ドラえもんの友達の王ドラだよ。
他にも沢山来てるんだけど…。後で紹介してあげるよ。」


 「王ドラです。いつもドラえもんがお世話になってます。」

礼儀正しく、ペコリとお礼をする王ドラ。パパも鞄を片手に抱えてお辞儀をした。

 「い、いえいえこちらこそ…。
のび太達がいつもお世話になってます。」



 「兄貴の親御さんッスか?」

今度はスーツの上だけを脱いだ小龍が現れた。その後ろからは、頬にカレーをつけたドラえもんもいる。
 「あ、パパ!お帰りなさい。」

 「ただいま、ドラえもん。それに…君は?」

 「申し遅れたッス。
俺は、小龍という者ッス。俺もロボットなんス。」


 「そうか、よろしくな。」


女の子の時とは違い、今度はパパから手を差し出した。小龍も自分の手を重ね、笑顔で握手をした。
パパが着替えて食事をしようかという時には、もうすっかり皆満腹になっていた。
ママも、自分の料理をたくさんの人に食べてもらえたので、上機嫌だ。

 「おかえりなさい、あなた。」

 「ただいま。
いや〜。随分賑やかになったもんだね。」

 「そうなのよ。こんな大人数なんて、久し振りだわ。」



 「じゃぁママ。僕達上に上がるから。」

 「はい、分かりました。あまり遅くまで夜更かししないのよ。」

僕はそう言うと、ドラえもんとシエスタをしてしまったマタドーラを起こしてから2階に上がった。
もうすでにドラパンは2階に上がっていて、この前とはまた違う本を窓際で読んでいた。
さっき聞いたら、『あの本はもう読んだから売って別の物を買った。』らしい。


マタドーラは2階へ上がるとすぐにまた布団をしいて寝ようとしたので、ドラえもんのスモールライトで小さくしてからにしてもらった。
 「のび太さん、数学の宿題はやりましたか?」

 「あ…まだ。」

すっかり忘れていた。



久保先生はちょっと頼りなさげだけど、付ける物はしっかりと付ける。僕のたった一回の宿題忘れをしっかり覚えていて、懇談の時にママに話していた。
僕は鞄の中から数学のノートと教科書を取り出して机に向かう。
授業をきちんと受けていれば分かる問題なので、すぐに解けてしまった。王ドラも同じだったようで、どうにもつまらなさそうな顔をしている。


 「そんなに勉強がしたいの?」

と聞いてみると、王ドラは少しだけ微笑んで


 「余計な事を考えないで済みますから…。


それに、数学ってパズルみたいで楽しくないですか?」



全然。全く。


…余計な事が何かは大体想像つく。
僕は、最初に言った理由を隠すために次の理由を付け足したように聞こえた。
幸い、僕以外の誰にも聞こえていなかったようで反感を買う事は無かった。


ふと、本に集中していたドラパンの目線が窓の外へと向けられた。
よくよく耳を澄ませて聞いてみると、窓にこつん、かつんと何かが当たっているような音が聞こえている。

 「のび太、客人のようだ。」

ドラパンが窓から離れる。僕は誰だろうと思いつつ窓を開けて外を覗いてみた。
丁度目線を下に下ろした所にいた人物は僕の驚いている目とぶつかり、ひらひらと僕に手を振って見せる。
ちょいちょいと指で合図されたので、僕は1つ溜息をついて降りる事にした。
ドラえもんが王ドラと小龍との会話を止めて、僕に話しかけた。

 「どうしたの、のび太君。」

 「ちょっとね、すぐに戻ってくるよ。」

 「行ってらっしゃいッス!」





                   ***
ママ達に気付かれないようにそっと廊下を歩いて、靴のかかとを踏みながら玄関を開けて道路に出た。
彼は僕に向けて軽く手を上げてこんばんは、と言った。
僕は半ばあきれ口調で彼に話しかけた。

 「なんでここにいるんですか…。
四柳しりゅう先生…。」

 「野暮用を思い出してね。すぐ終わるから。」



タバコを咥えながら僕にそう言ったのは彼は僕ら野球部の顧問でもあり、理科の担当教師でもある四柳透しりゅうとおる先生。
教師とは思えない型に外れた先生で、学校の敷地内で煙草は吸うわ、長髪厳禁の学校で長髪ロンゲで平気でいるわ、しかも野球部顧問というのに野球をやっている所を見た事がないというハッチャケた先生である。
しかもなかなかの整った顔立ちをしているというのに独身らしい。
そんな四柳先生は白衣のポケットから1枚のプリントを取り出し、僕に渡した。

 「今度の試合の参加申込書。期限明日までなのに皆に配り忘れててさ。
君で一応終わりだ。」

 「そうなんですか…車で来なかったんですか?」

先生が親指で差した先にあるのはどこにでもありそうな自転車。どうやらアレで回っていたらしい。
 「ところでさ、ここに王さんとドラリーニョちゃん、いるってホント?」

 「本当ですけど。まさか上がるなんて言いませんよね?」

 

 「君ってエスパー?」

タバコを指に持ちなおし、ふぅと白い息を吐く。
この人の超マイペースな性格に毎度毎度引っ張りまわされるのだ。
僕はまた溜息をついてから

 「だめです。では、おやすみなさい。」

そう言ってプリントを持って玄関を開けようとした。
でも、その時だった。





後ろから、今までのものとはトーンの違う声が、僕の耳に飛びこんできたのだ。
 「そうか…仕方ない、な。」




―――…え?
僕が後ろを振り返った時には、先生の自転車しか残ってなかった。月の浮かぶ空を仰ぎ見てみると、1階の屋根の上に先生は立っていた。僕に向かってニコリと笑うと手に持っていたタバコを道路に投げ捨て、窓をからりと開けた。
自分の家のドアを難なく開けるように先生は部屋の中へ入って行った。


僕の頭の中に蘇るある単語。





BLACK CAT…?




僕は急いでドアを開け、階段を駆け上がった。部屋の襖の前で一回息をつく。勢い良く開けてみるとへ窓の縁に平然と座る先生とドラえもんズ達。
 「四柳先生!?何故ここに?」

 「あ〜!せんせーせんせー!」


 「こんばんわ〜。
王さん、ドラリーニョちゃん。」

にこにことご機嫌そうに微笑みながら二人に手を振る先生。だが他のメンバー、特にドラパンと小龍は警戒心を目で見れば分かるほどに発している。
そんなドラパン達に気がつくと、先生は頭をガリガリとかいてから、目線を彼等に向けた。





 「ねえさぁ、さっきから気になったんだけどさ、僕が誰か分かんないの?」


突拍子もない突然の質問に、ドラパンは驚く他無かった。小龍も警戒心は抱きつつも、質問を頭の中で繰り返しているように思える。
それでも先生は続けて言った。

 「僕の姿見てさぁ、あ、もしかしてあの人じゃない?とかさ、無い訳?本当に。」

ドラパンは半ばあきれ口調でこう短く言い放つ。

 「無いな。」

先生は首を傾げてから、何かを思いついたようにポンと手を打ちさっきプリントを出したほうと同じポケットから学校の備品のはずのハサミを取り出した。
 「これなら分かるでしょ。
…いしょっと。」



何をするのかと思ったら大胆にも先生は折角の長い髪を肩の位置で切り落としてしまった。黒い髪が、窓の縁と、畳の上に広がる。
そして僕等に息を付かせる間も無く、反対のポケットから眼鏡を取り出して自分にかけた。





その姿は過去何回も見たことある容姿と同じものだったので、
ただ僕等は驚いてしまうばかりだった。










 「薫さん…?」





かつては、僕等の良き協力者だった大会社の後継ぎ。
だが今では、決して手の届く事のない遠く深い闇に染まり、クロネコの幹部として大犯罪を起こした人物、



滝沢薫さんに、うりふたつだった。
いや、本人といっても過言でも無いだろう。


先生はさっきまでと同じ、優しく柔らかい笑みを浮かべて先生はいった。




 「ほら、知ってるじゃない。
君も、後ろのロボットさん達も。」















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