僕ドラ2!僕の平和(かな?)なスクールライフ。(30/31)縦書き表示RDF


僕ドラ2!僕の平和(かな?)なスクールライフ。
作:文月



さようなら、また今度。


 「痛っ……ここ………は?」


 「ドラパン!良かった、目が覚めた…」


体を起こそうとした途端、全身が鈍い痛みに襲われる。体全体が筋肉痛でなかなか動かせない、といった感じだ。ジェドーラがこちらを向いて、かすかに微笑んでいるのは分かる。だがここがどこで、自分が一体どういう状況に置かれているのかが全く見当がつかない。

立ち上がろうとした途端、急なめまいに襲われ、足下がふらつく。
慌ててジェドーラがドラパンの体を支えた。




 「駄目だよ。多分、制限解除のし過ぎで回路がオーバーヒートしてる。
とりあえず横になってたほうが…」


 「いや、…平気だ。それより、ここは…?」





 「あ、起きたの?」


答えようとするジェドーラと、ろくにたてやしないドラパンの間に声が飛び込んできた。振り向くと、そこには薫…いや、透がいた。
空気の張り詰めたこの空間に似つかわしくない、へらへらとした笑みを浮かべ、透は一歩ずつ近づいてくる。




 「いやいや、なかなか目が覚めないからびっくりしたよ。
死んだんじゃないかと思っちゃった。」



お前が殺しかけたくせに、と悪態をつくほどの気力も無い。ドラパンが何も言い返してこないのを見て、透はにやりと笑った。抵抗をしないのなら、と右手をドラパンの額に当てる。



 「あらら、やっぱオーバーヒートみたい…。
さ、じゃぁそこ上がって、寝てていいから。」



そこ、と指定された先を見ると、そこは手術台だった。だが、明らかにおかしい。
よくよく周りを見渡してみて気が付いたが、周りは血まみれになっていた。すっかり乾いてしまって黒くはなっているが、まだ鉄くさい血の匂いは残っている。
見慣れていたと思っていた血液だが、思わず吐き気を催しそうになった。
壁にも、床にも、手術台にも。
手術台の近くから何かを引きずるようにして、出口に向かって血痕が伸びている。



「…ここは……何処なんだ。」



搾り出すようにして、ドラパンは尋ねる。透はばらばらに床に散らばるメスや手術道具を拾い上げながら返事を返す。



 「手術室だよ。」


 「…それくらい分かる。」


透は楽しそうに、クスリと笑った。




 「さっきまで使ってたんだけどね…まぁ、そんなことは後で良い。
他の人にこられたら困るから…ね?」

















                     ***
 「僕の所為だ…っ!僕が、僕、がぁっ!!」


自虐さえ、もはや何の意味も成さない。
そう指摘するものもいなければ、もう、助けに飛び込もうと思うものすらいなかった。

戦いは確かに終わったのだ。

両の頭を失ったのだから、もはや戦う気力さえ、起こらない。





身近で、遠く感じていたその言葉が、ありありと今、全員の頭をよぎる。



死。


























 「…えもん…ドラえもん!」














 「え…?」



顔をかすかに上げたさき。





 「何て顔してるんだよ、ドラえもん。僕を勝手に、死なせないでよね。」




思わず、笑った。













 「のび太君!セワシ君っ!!!」



 「…セワシ、さん……」



 「のび太ぁっ!心配させやがってこのやろぉっ!!」





その背には、神々しく輝く羽があった。
六枚の、天使のような羽。
それをまとったのび太の腕の中で抱きかかえられるように眠っているセワシ。







マタドーラとキッドが我ながら上手く床に降り立った僕の背中をバンバンと叩く。心なしか、二人の目には涙が浮かんでいるような気がした。
僕は不意に眼が合った薫さんの下に歩み寄り、話しかけようとした。どこか気まずそうに、薫さんは僕と目をそらす。



 「…薫さん、セワシを頼みます。」


 「……セワシさんは、生きてるのかぃ…?」


僕は、心からにっこりと微笑む。


 


 「当たり前ですよ。こんな所で死ぬのは、セワシらしくない。」



薫さんが、セワシを僕の代わりに抱きかかえた。
その直後、光を放っていた翼が急に輝きを失い、辺りはまたもとの明るさに戻る。
僕はふぅ、と一息ついてみる。なんだか、余計な心配させちゃったな…。後で謝っておかないと…。
………あれ?


 「ね、ちょっとドラえもん!
…変な音が聞こえない?」



僕の服に鼻水とその他いろいろを引っ付けていたドラえもんが、え?と小首をかしげた。なんだか、変な音が聞こえてくる…っていうのは、あの嫌な感じのする亀裂音じゃなくて…。




 「うなり声みたいな…さっきまで下から聞こえてきてた奴に、何処となくにてる気がするんだけど…」



 「!まさか…」


このアジトを良く知る薫さんには、心当たりがあるようだった。その僅かな間にも、うなり声はドンドンこちらへ近づいている…気がする。
鼓膜が破れるような強烈な衝撃音が、辺りに響いた。沢山の水が漏れてきた辺りの壁が木っ端微塵に砕け、欠片がばらばらと床に落ちる。
ゴリラとライオンと…とにかくそういうのを全部足したような獣が四つ足で歩きながらこちらに獰猛な牙を見せる。



 「グゥルルルルル…グォォォォォォ!!!!!」



そして、吼えた。





 「な、なんであーるか!?」


 「うわ〜。大きいねドラニコフー!」

 
 「ガゥ…!」




 「…やっぱりそうか…」



慌てるメンバーとは対称的に、薫さんは随分冷静だった。だがその額にも、冷や汗は一筋走る。
さっきのギガを見た時と同じ様な、興味の欠片も無い冷たい眼でそこにいたバケモノを見やる。




 「さっきの水用通路の影響が別の水路にも繋がったんだね…厄介だ。」


―――対ドラえもんズ用に使えるかと思って地下には入れなかったのが間違いだったみたいだね…




…全く、僕も甘くなったものだね、
透…。








 「…流、頼みがある。」



セワシさんを壁にもたれかけさせながら、薫さんは雷山さんの名前を呼んだ。雷山さんは小さく、だけど何とか聞こえる声であぁ、と答えた。




 「この子達を全員、外に逃がしてくれ。ここから出口なら…そこを曲がったところのレバーを下ろせば紅野邸の庭へ繋がるから。」


 「…!?だが、薫…」








 「良いから、早く!」









薫さんがショックガンをその獣に向けた。雷山さんは何かを察した様子でこくんと頷き、ざっとそこにいるメンバーを見渡してから走り出す。最後尾を追う僕は一度、後ろを振り返って。薫さんに届くように、大きな声で。





 「ありがとうございますっ!」





微かに見えた薫さんの口元が、笑った気がした。







                    ***



 「薫さん、僕もやるよ。
こんな所で死ぬのなんか嫌だからね。」


隣にいたのび太のクローンも、空気砲を構えた。ドラメッドの掴んでいた首元がまだ微かに赤みを帯びている。



 「へへっ、後輩ばっかりに言い思いさせられないねぇ。」


 
 「…ギガ、平気なのかい?」



今までぐったりとしていたギガさえも、ふらつく足をどうにか従わせ、立った。一つに束ねられていた髪がどんなに汚れようとも、ギガは目の前の猛獣に獰猛なハンターの目を向けているだけだ。


 「平気だよ、随分休んだし。それに、オイラこいつに負けるのも癪だしね。」


 「…先輩は眠ってて構いませんよ。立ってるのも辛いくせに。」


 「うわーウザッ。見てろー、オイラがボッコボコにしてやるかんな。」


 「……なに、二人とも何時の間に仲良くなったの?」


その会話に薫は思わず苦笑を浮かべた。全く、本当にこのやんちゃ坊主達は今の状況を分かっているのだろうか。それとも、分かっててやっているのだろうか。
目の前の猛獣がもう一度咆哮すると、びりびりとした感じの振動が肌に直に伝わってきた。



 「さぁ、準備は良い?
ルールは何があっても誰かがセワシさんを守ること。それ以外はオールオッケーってことで。
逃げるも殺すも自由だ。」

 「簡単だね。分かりやすくて嬉しいんじゃないの、先輩?」

 「薫さん、オイラ最初にコイツ殺りたい。」





 「私も参加するわ。」



薫が顔を上げ、声の主を確認する。



 「そうか。じゃぁ、頼む。」



 「グアァァァァァォォォォォ!!!」







                    ***
 「なぁ、…のび太。」

 「あ、はい…。」


 「あの羽は、なんだったんだ?あの一瞬の間に、何が…」

雷山は走りながら尋ねた。のび太はあ、と左手の銃を取り出し、眺める。
そう言えば、まだ説明してなかったな…。



―――実際、あの時自分でも焦った。

頭の中に飛び込んで来た言葉に、何の信憑性も無かったけど、とりあえず叫んでみた。
その途端、今まで留まっていた引き金が普通に引けて、
放たれたたまが、僕とセワシの目の前で光り輝いた。
気付いたら僕の背中には羽根があって、銃には新しい刻印が掘り込まれていた。


Your wish is My wish.
My Name is salvatore.



ちょっと長くなっていたけど、意味は簡単な英文。

「君の願いは 私の願い
私の名前は サルヴァトーレ」



サルヴァトーレ…後で意味を調べておこうなんて考えることが出来たのは、セワシがぎりぎり落ちる一歩前に助けることが出来てからだ。
僕がそう説明すると、雷山さんは苦い顔をした。…何か拙い事を言ってしまったのだろうか。
…あれ?



僕は、先を走る雷山さんに尋ねてみた。


 「ノンちゃん達は、何処にいるんでしたっけ…」





                    ***


 「…って事なんですけど…。」



のび太はそれがさも当然のように話すが、雷山はそれど頃の騒ぎではなく正直パニック状態だった。
頭の中に飛び込んできた?



制限解除用の言葉キーワードが?






――――元々、道具の制限解除にはパスワードが必要である。
だが、解除する時に必ず必要という訳ではない。
何故なら、解除の方法には二種類あり、片方はセワシが見つけた方法であり一般的な方法。
制限解除を強制させるチップに使用者の指紋を読み込ませ、それを道具に埋め込む方法だ。



そして、もう一つの方法は科学の域を超えている方法。
意思も感情も記憶も無い道具達と心を通じ合わせるという方法だ。この方法について解明できたものはおらず、当然天才と言われる滝沢兄弟にも、セワシにも解明は出来なかった。
長年使って愛着のわいた道具から、突然声が聞こえることがあるという。
その声は、最初の秘密道具が作られたヨーロッパに由来してイタリア語が多いそうだ。

だが、声が聞こえるものは過去ほとんどおらず、時空警察内でも空気クレヨンの使い手雷山と、上層部の数名の人間しかいない。




その制限解除は、そこまでの希少価値がある極秘の制限解除法。
そんな解除法を、未来の人間でもない…ただの中学生が発動させたとなれば国家的事件だ。





コイツは一体、どれだけの資質を持っているんだ…!!?





その素質を持った者といえば、今も俺の方をむいて何か尋ねてきている。





 「あの、雷山さん…ノンちゃん達は、何処にいるんでしたっけ…?」






                   ***

 「あぁ!?俺達知らねーぞドラクロ達なんて!」


 「ですが…早くしないと、随分彼等も暴れているようですし…このアジトじたいが崩れる可能性も…!」


 「チッ…、俺が行って来る!皆はさき上がってろ!」


マタドーラが引き返そうとするが、雷山さんが止める。背負ったマントを引っつかみ、小さく舌を打った。もうすでに上への通路は見えている。レバーを押して現れた階段を上った先に、上向きの取っ手のついたドアがあるのだ。あれを押し上げれば庭に着くのだろうけど、ノンちゃん達がいないから…先に逃げるわけにも行かない。




 「のびちゃん、皆さん!無事ですか!!?」


 「のび太さん!ドラちゃん!」


ノンちゃんと静香ちゃんの声が、耳に飛び込んできた。階段で隠れた廊下の向こう側からだ。顔を出してきたのは、ノンちゃんたちだけではない。全員の名前を挙げるならば、ノンちゃん、静香ちゃん、ドラクロ君、小龍、猫型のロン、ジャイアン、スネ夫、そして…ジャイアンに背負われているのは、ギガと入れ替わっていた出来杉だった。
ぐったりとした様子で、息も荒い。

再会を喜ぶ前に、僕は叫んだ。







 「薫さん達が引きとめてくれてる間に、早く!階段を上って!!」








皆が階段を駆け上る。最後には、僕とドラえもんだけが残った。
どうしても気になって、引き返そうかとも思ったけど、止めた。

三回目の咆哮が、悲鳴なのか、歓喜の雄たけびなのかは分からない。
それでも、僕達が押し上げる前に確かに聞こえてきた。




ありがとうございました。


と、僕は最後にもう一度だけ、心の中で呟いた。












            




                    ***
それから、一時間がたった。
ノンちゃんの家がどんなにボロボロでも、彼女は誰を責めることも無かった。
軽く家が陥没している状態だったけど、ノンちゃんは笑っていた。まるで、ちょっと怖いお化け屋敷に入った後のように、笑っていた。
薫さん達がどうなったのかは、全く分からない。しばらくしてからもう一度入ろうとしたけどもうそこは開かなくなっていた。もしかしたら、外からは入れないようになっていたのかもしれない。



そんなノンちゃんの家に、突然電話がかかった。ドラクロ君が、恐る恐る受話器をとり、電話に出る。そして、彼は震える手で僕に、受話器を差し出した。


 「透様からです…」










                     ***
 「先生!?今何処にいるんですか!!?ていうか、ドラパンとジェドーラいないんですけど、先生もしかして…」


 『うん、僕のところいるんだけどね…。いまちょっと手術オペ中なんだ。』


 「オペ!?…なんの…ですか?」



先生は一拍おき、息をついてから答えた。



 『ドラパン君とジェドーラ君の消えない烙印と反抗不可チップの解除をやってるんだけどね…やっぱり、流石に強敵だ。
そっちが一段落ついたら、来てくれるかな?場所は、二十一世紀の総合病院、第二手術室。
出来れば早いほうが良い。

この二つの解除をいっぺんにやってるから…ボディに無理が降りかかりすぎる。



最悪の場合』






ここまで聞いたときには、僕は電話を切り、雷山さんに詰め寄っていた。







                   ***




 
つんざくような悲鳴が響き渡る。






防音加工の壁の向こうから、微かに、でも確かに聞こえてくる悲鳴。








止まない悲鳴に、思わず僕は耳をふさぎたくなるような衝動に駆られてしまった。
戦いそのものは終わった。
だが、彼らの戦いは終わっていないのだ。










彼ら自身との戦いとも言える、永久とわの戦いは、
終わらない。





 「のび太、君…」


ドラえもんが僕を覗き込む。青ざめた顔、で。
大丈夫なのかな、と訴えかけている青い瞳。
僕に答えることは、出来ない。
突然、声が大きくなり、また聞こえなくなった。
先生が、部屋の向こうから現れたのだ。


ため息を一つ付き、言う。



 「あとは…本人達次第、かな……」





いよいよもって、僕の鼓動は高まった。











 「僕に出来ることはやりつくしたよ。外すことまでは出来なかったんだけど、効果を抑える所までは何とかね。
だけど、あとは気持ちの問題だ。

本当に…君達の元へ帰りたいと願うなら、もしかしたら…」



 「失礼するよ」





汚れた白衣が歩くたびに揺れる。
応急措置で巻かれた腕の包帯。
ヒビの入った眼鏡。








 「…少し彼等をお借りする。」




滝沢薫が、手術室に入っていった。後ろからついてきたギガを残して、一人。
手術室に、入っていった。









                    ***



 「ぐ、あぁぁぁぁぁ!!!」




 「…っ、あぁぁっ…!!!」



バチィ、バチィと火花が飛び散る。
オイルと腐臭と絶叫だけが支配する空間に、薫は入る。床に付着した、オイルではない真っ赤な液体に指を掬わせた。自分の手で殺した命の、残照。
立ち上がり、血を払う。
拘束具で拘束された二人は、動こうにも動くことが出来ない。ただ苦しみを味わい、叫ぶだけだ。



 「…聞こえないかもしれないけど、一応言っておく。
セワシさんの命令だ、君たちはクロネコを解雇された。


…彼だって、鬼なわけでもなければ、悪魔でもない。
何か、“嬉しい”ことでもあったんだろうね…。」





第一、君達をこちらに引き入れた理由は元々戦力にすることではない。
この試験段階だった消えない烙印と、チップのテストとして、君達を選んだだけ。
予想以上の効果と、その忠実製にはこちらの方が驚かされたくらいだ。



 「deregolamentare」






火花がやんだ。
悲鳴も、ピタリと止む。
荒い息遣いと、未だ残る鼻を突くような腐臭。




 「最後に一言、セワシさんから伝言を伝えておくよ。
…結局最後まで、使えない駒だった…だってさ。」









                    ***
 「オイラ達はちゃんと脱出できたよ。セワシさんの体調も普通だし。
だけどアジトは、もう使い物にはならないみたい。」


へへ、と笑うギガ。その顔に、殺人者としての素質は欠片も見えない。むしろ、僕達と同じ、普通の人間にさえ見える。


 「…セワシさんからね、伝言を授かってるんだ。
『僕はまだまだ追いかける』…って。





セワシさんがオイラを生み出してくれたのも、クロネコを作ったのも、最初は自分のためだったんだろうね。だけど、そのうち、セワシさんはそんなに君を恨んでなかった気がする。
自分が君と追いかけっこをするのが楽しくてたまらない、そんな感じだよ。
だから、あの時あんなこと言ったんだろうね…。」



―――もう良いよ!お爺ちゃんに助けられて、それで生きるくらいだったら僕が落ちる!
僕はもう手を放す、だから、だから…っ!!




ギガは汚れた髪を軽くかき上げ、それから再び、口を開く。
…どうしてだろう、僕よりもギガの方が、沢山セワシについて知ってる気がしたのは。





 「セワシさんはね、多分ずっと、心から幸せになりたかったんだと思うよ。
だけど、その方法はそのうち変わってきた。
根っこから幸せを作り上げるか、それとも、今の状況から幸せを作り出すか…。


まぁ、殺されないように頑張ってよ。オイラ達はずっと、そんなセワシさんの後ろを追いかけるだけだ。」




 「ギガ、話終わった?」



手術室から、薫さんが出てきた。がりがりと頭を核ながら、タバコを口にくわえている。ギガはとても嬉しそうな顔をして、終わったよ、とだけ言った。それに、薫さんも一言だけ返してさっさと歩いていく。その後ろを、ギガが追いかけていく。


 「あの、薫さん!」


僕は、薫さんに呼びかけた。顔を横顔だけ見せる薫さんの顔が、よく知っていたはずの彼の面影と被って、どこか遠く感じる。
薫さんは僕の言おうとしたことを察したのか、僕よりも先に口を開いた。






 「気持ちで科学が動くなんてコトは、僕は信じないよ。
だから僕は二人を治した。
だから僕は、制限解除の方法は一つだと考えている。」




 「え…?」






 「それじゃぁ、気まぐれなクロネコは帰るとするよ。
またどこかの路地裏で、会おうね。」






                    ***
 「…そうか。」

友希は、事実を突きつけられても平然としていた。雷山、エリカ、小龍とロンが家にやってきても、乱闘騒ぎの結果、クロネコがどうなったのかも全て聞いた。だが、特に動じる様子もなければパニックを起こす様子もなく、見かけ冷静で、冷徹さすら感じるほどだった。


 「…とりあえず、死体についてはこちらで預からせてもらうことになります…。
何か、今回の件について質問等ございましたら…どうぞ。」


エリカはついと顔を上げて尋ねた。友希はいや、と言いかけた口を一度閉じ、それからもう一度口を開いた。



 「一つだけ、聞かせてくれ。

…未来の俺は、仕事に一つでも不平を言ったことがあるか?
メリットなんて無い、やってるだけ無駄って…言った事あるんか?」



エリカも雷山も、答えなかった。どちらかが答えようとした時、だが代わりに、壁にもたれかかって目を瞑っていたロンが答えた。


 「俺は付き合い短いけど、一回もそんなことは言わなかった。
アイツはアイツなりに、仕事を楽しんでた。」



一言ロンは言うと、それっきりだった。またさっきまでと同じ様に壁にもたれかかり、
小龍も、それをフォローするかのように彼の答えに続けた。


 
 「そうッスね。俺もあのヒトと付き合って日は浅かったスけど…多分、不平なんて言ってなかった気がします。
彼の口癖…知るわけないですよね。なんだと思います?」


友希は軽く、首をかしげた。小龍は口元だけ微笑み、言う。






 『餓鬼の頃から、こういう仕事がしたかった。』




                    ***




 「つっかれたー!俺もうこのまま寝ようかな…」


 「キッド!何回言ったら、もう…。どうせですから、もう少し広い所に行きませんか?
そうですね…学校の屋上なんて、どうでしょう。」


 「じゃぁはい、どこでもドアー!」



キッドが畳に倒れこみ、王ドラが提案する。それを聞いて、ドラえもんがどこでもドアを取り出した。ドラえもんズと僕は、そのおなじみのピンクのドアをくぐった。開いた先に広がる、夕暮れの屋上。
だが、既に先客はいた。




 「やはり来たな、ドラえもんズ。」



 「ドラ焼きでも食べながら、どうかな?」








特別な放課後は、もうしばらく続いた。


長くて申し訳ないですねー。とりあえず話の一区切りはつきましたがまだ最終回じゃないです。最後にエピローグみたいなのがあって終わりです。最初はプロローグだったので。
最終回だと思われた方、KYでスイマセン。


えっと、http://utakatanoyouni.blog.shinobi.jp/Entry/128/
にて僕ドラの編集後記書いておきました。
色々暴露してます←

次話、いよいよやっとエピローグです。あえて言おうエピローグ!
でも残りの二話はもうほとんど番外編のような本編、つまりオマケです。


それでも、よければ最後の最後までお付き合いくださいませ。


今回は失礼させていただきます。
では。













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