僕ドラ2!僕の平和(かな?)なスクールライフ。(27/31)縦書き表示RDF


僕ドラ2!僕の平和(かな?)なスクールライフ。
作:文月



思いと想い。


もしも、この世界の見方が180度変わるようなことがあれば。

それは、どれだけ楽しいことなのだろうか。

好きなことをして、沢山勉強して、友達と遊びに出かけて。





なのに、なのに、なのに!


たった一人の僕の祖先の所為で、僕の運命は大きく捻じ曲げられた。


好きなことも出来ない、勉強も満足に出来ない、友達と遊ぶ暇なんてない。




僕の一生が、こんなモノで良い筈が無い。






制限解除のチップの設計図なら、既に数年前に作っていた。
こんなものを書く事くらいできる脳を僕が持っていたということを知ると、余計に怒りを覚えてしまう。





絶対に、絶対に…!


―――――おじいちゃんを、殺してやる…!!





                     ***









 「なるほど。君はそういう結論にたどり着いたわけだ…のび太君。」


にぃと口元をゆがめた薫さんが、僕にそう呼びかけた。僕は薫さんとセワシの方を見据えながら、小さく頷く。薫さんは微かにセワシさんの方を見下ろし、良いですか?と小さく尋ねた。セワシは言葉こそ何も発しなかったが、それでも薫さんは満足なようだった。





 「その通りだ。
今回のこの事態は、僕たちにとっても…予想外のことだった。
世界中、全ての時代の人間から、たった一部の記憶を消すと言う無茶苦茶な行為が招いた副産物だと思うけどね。


だけど、その効果は少しずつ薄れて行っている…。そうだろう、…ドラえもん君?」




ドラえもんは一瞬驚いた顔をしたようだった。
微かな動揺をどうにか押さえ込みながら、ドラえもんは返事を返す。




 「…うん。
僕には、耳が無いからほとんど分かんないけど…皆の外見は少しずつ元に戻ってきてる。
完全な女性人間タイプから、男性型獣人タイプに変わってきているんだ。」






僕はその言葉に思わず振り向いた。
今まで、全く気付いていなかった。





確かに、皆は元に戻ってき始めていた。









元の姿の時と同じ猫型の耳が、頭に戻ってきている。





 「放っておいても、発生から一年くらいあれば元に戻るだろう。
…研究者としてはこういう言葉は使いたくないけど…


多分、ね。」




自分の中で、さっと血の気が引いたのが感じられた。
“多分”。

曖昧で、不確かな表現。
その言葉の中には、ドラえもん達が元に戻らない可能性だって秘められているのだ。





 「まぁ、どの道君達はもう元の姿には戻らないよ。
何故なら――――」




薫さんが、パチンと指を鳴らした。それまで黙っていたもう一人の僕がその音に反応し、動く。無防備にしていた3世の肩を突然掴み、床に押し倒した。
3世の上に馬乗りになり、もがこうとする3世の顔に空気砲を押し付ける。





 「っ!! 駄目ぇっ!!!」



ドラリーニョが声を張り上げ、もう一人の僕のその左手にしがみ付いた。だが、風で空に舞う木の葉のように、いともたやすく小さい体は壁へと打ち付けられた。ドラリーニョがぶつかったコンクリの壁が、べこりとへこむ。
どうにかして3世が取り出したタロットカードも、一瞬にして場にぶちまけられた。



 「カードが!」


 「クソッ…喰らえ!ドカァン!!」



声の主が、もう一人の僕でなくキッドだったのが幸いだった。もう一人の僕だったら、既に3世は…死んでいた。






不意に、僕の後ろにいた雷山さんが、僕の肩に手を置く。




 「よくやった、のび太。…お前は向こうを手伝え。
―――俺が、こいつらの相手をする。」




雷山さんがそういうと、薫さんは小さくクッと笑った。セワシの顔に、喜色の笑みが浮かぶ。
たった一人で、二人を?とでも言いたげだ。
だが雷山さんは、そんなことはお構い無しだった。




 「行くぜ、クロネコ…!



limitare deregolamentare!!!」













最後の戦いが、今やっと始まったように見えた。



















                     ***
友希は、自分の部屋にいた。
父も母も、仕事で家にはいない。家に居るのは、自分と…もう既に息絶えた、自分だけ。
ベッドの上に永久とわに眠る未来の自分。




初めて会ったとき。

―――未来の警察…時空警察の一人がな。俺ン所来たんや。
俺みたいな稀な脳を持ってる人間は少ないから、スカウトに来た…ってな。



部下や上司のことを聞いたとき。

―――小龍、っていう新人が来たんや。ものごっついイケメンやな、あいつは。
雷山っちゅー、イカツイやつと組んでるんやけどな…




自分が、まるで自分じゃないみたいに。
この十年間で、沢山のことが変わって行くらしかった。
それを教えてくれたのも、だけど、自分だった。




 「敵わんなぁ…。」



友希は、苦笑混じりにため息をついた。
窓の外を見る。青い空に、白い雲が浮かぶ晴天だ。
学校に途中から参加する気など、無かった。

あのギガという青年が出来杉ならば、出来杉も今学校に居ないだろう。

世界の中では、こんなちっぽけなたったの二人など何のことでもない。




だけど、そんなちっぽけな人間のために戦う人間も居る。


それが…のび太。








 「頼むで、…のび太。」









                     ***
 「エルルゥ!お前の上司は一体何処へ行ったんだ、会議もサボって!!」




思ったとおり。雷山さんの上司は唾を散らし、怒鳴る。頭の働かない頑固親父だと、いつだったか愚痴をこぼしていた気がする。
テーブルの端から端まで、随分と距離がある。一番向こう側に居るはずの上司の罵声は、ここまでしっかりと届く。
…雷山さんが会議のたびに疲れた、と洩らす気分がどことなく分かる。




 「ですから、クロネコを捕獲に向かったと申し上げたはずですが。
…今彼らを逃がせば、再びアジトを発見することは、困難です。」



 「言い訳は良い!大体あの様な小さな組織に、何故雷山君が向かう必要がある!!?」




その一言に、一人の痩せた男は反応する。クック、と笑い、わざとエリカにも聞こえる声で皮肉る。




 「大方、弟さんの敵討ちだろう…?
可愛そうにねぇ、こんな無残な姿になっちゃって。」




一枚の写真をその男はエリカに向けて振ってみせる。
思わず、息を呑んだ。



エリカがきちんと雷山の部屋に運んでおいたはずの茲の死体が、鮮明に写っていた。真っ赤な血もそのままに、寄生虫もそのままに。
打ち抜いた後も、そのままに。
周りに居た人間達が、どよめいた。



 「怒りで我を忘れて…と言った所でしょうな。エルルゥ君?」


 「ほほぅ、これはこれは。久しぶりに血を見た気がするな…」


 「雷山君も哀れですな。弟のためにわざわざこんな所で働いていたと言うのに…。」




その無責任な発言の嫌らしさに、唇を噛む。耐えなければならない。
雷山さんは確かに、茲君のためにも戦っている。
でも、怒りで我を忘れてはいなかったはずだ。



帰ってきたときには、ちゃんとクロネコを生け捕りにして帰ってくるはずだ。



耐えるのよ、エルルゥ=カナリア。
雷山さんに、これ以上迷惑をかけないためにも…


でも――――



 「お言葉ですが」



エリカははっきりと言った。声は微かに震えているが、それでもその場にいた全員を黙らせることは出来た。





 「子供の死体を見て喜ぶ貴方方よりも、雷山さんは狂って無いと思われます。」



 「…何?」



 「失礼しました。」



エリカは、無言の鎮圧から脱した。
会議室のドアを閉じた途端、一気に肩が重くなった気がした。さっきまでの威厳は何処へやら、へなへなとしおれる様にエリカはその場にへたり込んだ。
はは、と小さく哂う。



 「何やってんだろ…」



これで、上層部はかんかんだ。
これ以上不穏な動きをみせれば、クビになる可能性だって大きい。



…今まで雷山さんに言ってきた言葉を、自分が破ってしまったな。





でも、何故だろう。





多分、あそこで黙ってるよりもずっと良かったんだと思う。






――――お願いします、雷山さん…


必ず、クロネコを生け捕りにして…無事に帰ってきてください――――








                     ***



 「ヘッ、口ばっかり動かすヤツだったな。
おい、皆歩けるか?」


ロンが床にノビているトラえもんの頭を足で小突いてから、ざっと見渡す。小龍の状態は相変わらず良くない。だが、そんな状態でも連れて行かないと…本人が何するか分かったモンじゃない。
見る限り、他のメンバーはとりあえずココから逃げることくらいは出来そうだ。



 「んじゃ、行くか。
…お前は、どうする?」




ロンが不意に、後ろを振り返った。





黄色い影。真っ赤なリボン。
ほんのり赤くなった頬。




慌てるトラえもんにショックガンを放ち、小龍達を解放したのは、ロンではない。



うつむき加減に、ドラミは答える。



 「私は…ここにいる。
…勘違いしないで、私は貴方達の味方につくわけじゃない。



セワシさんが元に戻るのなら、何だってする…その為に、のび太さんが勝たないといけないのなら…遠くから、のび太さんの手伝いをする。その為に、クロネコが存続しないといけないのなら…私は何だって、セワシさんの言うとおりにする。


それだけよ。」






淡々と言うその姿。
ちっぽけな体で、それほどのものを抱えているということに今初めて気付く、静香。








その場から皆が立ち去る中、静香も最後に付いて行った。
一度だけ、数歩歩いた所で振り返った。





黄色く小さいドラミの姿は、何処にも見当たらなくなっていた。








                    ***












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