僕ドラ2!僕の平和(かな?)なスクールライフ。(19/31)縦書き表示RDF


僕ドラ2!僕の平和(かな?)なスクールライフ。
作:文月



逆探知とコウモリ。


 「ドラミちゃん!!返事をしてよ!…駄目だ、ぜんぜん返事が返ってこない。」

僕はノイズ音しかしなくなった通信機をドラクロ君に返した。ドラクロ君は申し訳なさそうにその通信機を受け取り、そっとポケットにしまう。ドラえもんはその通信機にドラミちゃんが閉じ込められているかのように名残惜しそうにその通信機を見ていた。
先生は少し考えてからタバコを灰皿に押し付け、ベットから降りて立ち上がった。


 「…うん、もう大丈夫。と言う訳で、僕は帰るよ。」

唐突に、突拍子も無く先生がそう言ったので僕は慌てて止めようとした。

 「え、ちょっと!」

 「ばいばーい。」

僕達に背を向けて手を振りながら先生は本当に部屋から出て行ってしまった。特にフラフラとしたり苦しんでいる様子は無かったが、僕は心配する気持ちより何で?という疑問の感情の方が増していた。それは誰も同じだったようで、訳が分からないと言った顔で先生が消えて行ったドアを少しの間だけ見つめていた。



                     ***
透は誰もいない廊下を靴の音を響かせながら歩いていた。タバコに火をつけて口に咥え、息をふぅと付く。透が急に部屋を出たのには、当然ながらきちんとした理由があった。

―――さて…上手く行くと良いけどな。


紅野家を後にしてから少し歩いた所に透の住居はある。オンボロで家賃は格安と言うアパートの2階。ドアを開けるとギシィッと金属だが木材だかの擦れる音がする。鍵を閉めてから、改めて部屋の中を見渡すとその辺に散らばるのは沢山の資料や工具。クロネコにいた頃とは随分の格差だと、透は苦笑交じりに思った。
かさ張る本を掻き分けて行くと、小型ゲーム機のようなものを見付けることが出来た。白衣のポケットに突っ込んでいた四次元ポケットからタイムテレビを取り出し、右の側面に更に3色のコードを繋げる。3本とも機械に接続したのを確認してからタイムテレビ、そして機械の両方の電源を付けた。
左手につけていた腕時計を除きこみながら、さっきドラクロが通信機からの音に気付いた所まで時間を巻き戻す。

そこから再生させていると、ザ、ザザ…ッという音が流れ、小さな画面の方にずらずらと文字――日本語でも英語でもない、落書きの羅列のような――が流れ出してきた。
透はゆっくりとその並べられた文字を声に出して読んでいく。


 「…特殊電波の発信源…時代は2007年の…今日か。場所は…っと」


十字キーを押して画面をスクロールするとまた沢山の落書きもどきが姿を現す。しばらくそれを見つめていた透の顔に、ニィと怪しい笑みが浮かんだ。




 「灯台下暗し…とはよくいったものだね。」








                     ***
 「…出来杉。」

 「あぁ、八反田君。どうしたの。」

場所は変わり、中学校。
休憩時間、八反田はノートを持ったままに出来杉の所を訪れていた。数人の生徒達に囲まれた出来杉が八反田の存在に気付いて駆け寄ってくる。
だが八反田は知っていた。
その笑顔が仮面であると言う事を。

その笑顔に隠された闇を。


 「お前一体、何がしたいんや。」

出来杉が心外だと言う顔を浮かべ、何でそんな事を、と聞こうとした。だが八反田は、構わず話し続ける。

 
 「ほんまの出来杉どこ行かせたんや。はよ答えんとマジで時空警察呼ぶで。」


そのとたんだった。出来杉がニヤリと不適な笑みを浮かべて、普段の出来杉ではない、別の人物の口調で話し始める。


 「ハハッ。もうバレたか。さすがは時空警察って所かな。」


その大きく、高らかな声に教室の全員が振り返る。しん、とした教室に響くのは、無気味な音。表現しづらいその音はまるで骨を折るかのような音。
そして次第に、出来杉だったその人物は全く陰を落とし、代わりに現れたのは黒い長髪の青年。


 「チェッ。完璧だと思ったんだけどなあ。」

くつくつと笑うギガを見て、女生徒は大きな、ヒステリックな悲鳴を上げる。クラスにいる全員が、自分の目の前の光景を信じる事が出来ず、今まで感じた事の無いくらい冷たい殺気を感じ取っていた。ギガと八反田のいるドアからではなく、前のドアから生徒達は我先にと逃げて行く。
混乱を予想した八反田は念の為にと持って来ていたタンマウオッチのスイッチを急いで止めた。

自分とギガ以外の時間が全て止まり、生徒達が教室から出て行こうとする所がそのままぴったりと止められている。
ギガは退屈そうに八反田に話しかける。


 「で?オイラをどうしたいわけ?つーかアンタさ、この前のび太達に言ってたじゃん。
お前等の仕事と自分のは違うって。」


 「あん時はな。せやけど今日になって気付いた。

…俺の仕事の内容はこれだけや。『出来杉英才の監視』。
理由が分からんかったんや。ただの一少年の観察だけが仕事とくれば、これほど楽な仕事はない。
せやけど本当は違う。

『出来杉英才』っちゅう皮を被った『クロネコ』を監視しとけっちゅうのが、俺のホンマの仕事やった。

…本物と変わってたんは二学期からやな。



そして…これから話すんはあくまで俺の予想や。」


今まで平然としていたギガの表情が、一変して険しい物に変わる。闇色の瞳が、より一層の深さになりざわっとギガの周りの空気が重いものになった。

 「…良いよ。言ってみれば。」



 「ギガ…つまりお前は変身能力を持っとる。まぁここまでは確かやったな。
せやけど分からんのは、昨日お前独特の…他の人間から作られたお前独特の波長が、同時刻に2つもあったことや。


…つまり、お前のもう1つの能力、それは」



―――お前っちゅう人間を、もう1つ作り出す事が出来る…。






                   ***
 「がう…?」
ドラニコフの視線が、窓の外へと向けられた。ドラニコフはふと首を傾げてから近くにいた3世の服の裾を掴み、くいくいと引っ張る。3世がドラニコフの方を向くと、ドラニコフは窓の所までドラニコフを引っ張って行った。
ドラニコフが指差す先を3世が見渡しても、特になにも見つからない。


 「何もないであるぞ、ドラニコフ。」

 「がう、がう!」

 「…む…?あれは…?」

3世がよくよく目を凝らしてみると若葉色の芝生の中に不自然な物が1つあった。他の色と紛れて良くは分からないが、取っ手のような物がほんの少し覗いていた。3世がドラクロに声をかけ、その事を聞いても首を振り、


 「僕には分かりかねます…ただ、僕の知っている限りあんな物は最近まで無かったはずです。」

と答えた。ノンちゃんに3世とドラクロが聞いても知らない、と返された。


結局、その不思議な取っ手の事については、誰も知る事は無かった。大した物ではないであると3世が押し切り、ドラニコフも不思議そうな顔をして首を傾げたままもう1度それを見つめた。
ドラニコフにはそれでも、どうしてもそれを気にかけてしまっていた。

何故なら、その黄緑色の向こうから匂うのは


微かに漂う薬品の匂いとそれに乗ってやって来る鉄臭い
血の香り。


ドラニコフのドラズ一の嗅覚は早くもそれを感じ取っていた。





                     ***
アパートに閉じこもっていた透の笑みが、さっと消える。代わりに頬を流れるのはひんやりとした冷や汗。透は強張った口を開き、声を絞り出す。


 「…やっぱり優秀だよ…薫。

君が作ったこのロボットは…。」


透以外、誰もいなかったはずの小さな部屋。だが今となっては、その光景は全くの別物になっている。部屋中に飛び交うのは数十匹の機械仕掛けのコウモリ。今まで気付かなかったのはきっと、このロボットの一番の特徴、気配を消して透明になり、誰にも気付かれることのない、と言う物を最大限に生かしたからだろう。それにしても、と透は思う。

―――やっぱり無理がありすぎたか…。

いつだったか、薫と一緒に読んだ本に書かれていた短い文章を思い返す。


――――タイムテレビを使っての逆探知はほぼ確実に成功する。だが問題はそれによっての副産物。逆探知の時に使う「逆探知機」からは、ほかのどの電波とも違う特徴的な電波を放ち、それを使って逆探知をする。
すなわち、逆探知をすれば逆に向こうからこちらの場所を簡単に探知することが出来るのだ。



だから透は、わざわざ自らの家に帰ったのだ。
もし紅野家で自分の居場所がわかれば、訳の分からぬまま他の皆を巻き添えにさせてしまう。だから少し離れた自分のボロアパートに帰ってから、実験をしたのだ。
コウモリ達は透の周りを取り囲み、ぐるぐると旋回を始める。透は逃げる事も出来ぬままにその様子を睨み付けていた。
そして、次の瞬間。
カッと開かれたコウモリの口から、バリバリという電撃の走る音が聞こえた。透が逃げる前に、数十の閃光が透に向かって放たれる。




 「ぐっ…うあああっ!!!」


 「オイ、何が…ひっ!!」

悲鳴を聞きつけて透の部屋に隣の部屋の中年の男性がかけこんできた。だが目の前の惨状を見て、思わず恐ろしさに慄いた顔を見せた。
コウモリの口が一瞬中年の方を向くが、とっさに透は判断をした。


 「ハァ…ゲホッお前等の狙いは僕なんだろう?だったら…はやく追いかけて来い!」


透はそう言ってから窓から飛び降りた。透の部屋は2階。まだ病み上がりの透は、2階からの衝撃に堪えられず口から少し血を吐いた。だが透の狙い通り、コウモリ達の目標は男性から透に変わり数十のコウモリ達は一斉に透の後を追いかける。
なるべく人気の少ない道を走っていく。それでもコウモリ達は透を追いかけてきた。四次元ポケットからショックガンを取り出し、一匹ずつ打ち抜いて行くがそれでも今だコウモリの数は一向に減らない。


そうこうしているうちに紅野家の前まで来てしまった。
誰もいないはずだと思っていたのに、紅野家からはのび太達がノンちゃんとドラクロに別れを告げて出ているところが目に入った。
別の道を探したがもう紅野家の前しか道は無い。


止まるしか、無い。


でも止まったら…



―――ええい、仕方ない!

急ブレーキをかけて止まり、コウモリ達の方へと向き直る。



―――一匹ずつ地道に落として行くか…。




                     ***
八反田がそう言うと、ギガは大きな声を出して笑い始めた。気でも狂ったかのように大きく高らかに笑い続け、それには八反田も驚きを隠せなかったほどだ。
しばらく笑い続けた後、まだ笑いの余韻が残ったままギガは八反田に言った。

 「へえ、時空警察も薫さんが言うほど馬鹿じゃないみたいだね。
それとも君が頭良いだけなのかな?


ご名答だよ。オイラは今、もう1人いる。そしてそっちの方は今はアジトで働いている。


…うん。頭の良い君の栄光を称えてご褒美、プレゼント♪」


自分の右手に左手を回しギガはその左手にグッと力を入れた。バキバキッという音がして、思わずその不快な光景に八反田は目を閉じる。音がしなくなり、八反田が目を開けると

ギガはさっきまできちんと付いていた右手を自らの手でもぎ取った。
ドロドロと流れる血を止める事もせず、平然とした様子のギガはひょいと床にその右手を投げ捨てた。ゴロン、と床に転がる右手を不快そうに見つめていると、その右手からも音が聞こえ出した。


ごきん、ごきんと言うさっき出来杉だったモノがギガに会った時と、同じ音だ。


その光景を、ただ八反田は息を殺して見ている事しか出来なかった。







                     ***
 「ゴメンね、ノンちゃん。随分長居しちゃって…。」

 「いえ、大丈夫です。…また何か会ったら、今度はちゃんと教えてくださいね。」

心配そうな瞳で、こちらを見つめてくる。僕はうん、と頷いてドラクロ君の方をチラリと見た。ドラクロ君は始めてあった時よりも何か憑きものが落ちたような顔をしていて、僕は少しだけ安心する事が出来た。
ドラえもんズや静香ちゃん達と一緒にノンちゃんの家を後にすると、ふと何か虫の羽音のような音が聞こえた。それと同時に、細い道の影から誰かの影が見えてきた気がした。
だけどその影は、細い道を出る前に急にスピードを落として180度逆の方向を向いた。


 「ドラえもん、あれ…。」


 「え?あれって…。」


僕には微かにしかその人の顔は見えなかったけど、その人の服装なら完璧に認識できた。
所々黒い染みが付いた長い白衣。

そんな格好をしている人間は、この辺りではあの人しか思い当たらない。




 「透さん!」

 「先生!」

僕とドラえもんはその人物の元へと走った。

後ろから、ドラえもんズ達も追いかけて来るのが見えないけど分かる。




だけど僕は、まだこの時は知らなかった。



すでに僕達は、クロネコ達の手の上で弄ばれていたのだと


言う事を。


更新スピード遅れてしまってスイマセンでした!
さすがに1日更新がきつくなってきた…
(あ、ネタ切れではないです。)











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