プロローグ
僕達があの戦いを終えてから、早くも数ヶ月が立った。
静香ちゃん達の記憶が戻ったのはあの戦いが終わってちょうど1週間くらい。
パパとママには、ドラえもんズ達の事は言っていない。
静香ちゃん達と僕達だけの秘密だ。
ただ、ジェドーラが時々お菓子作りの為に小麦粉などを勝手に拝借する事があり、ちょっとママは疑問を感じている。
まぁ、バレていないのだから良いとしようか。
ちなみに僕の初中間テストはまぁまぁの成績だった。
あの未来へ行った時と同じ位の時刻に僕等は帰ったので、勉強の時間はきちんと取れていた。
王ドラが数学を、キッドが英語を教えてくれたのでその両教科は特に成績が良かった。
だが彼等がうるさすぎて集中する事が出来ず、暗記が基本の漢字問題は全然だった。
まあ僕の成績話はこのくらいに、ちょっと近況を報告しておこう。
今はいつかと言うと、夏休み最終日の午後。明日始業式があり、そして僕等にとって始めてのこと、夏休み開けテストがあるそうだ。
宿題は完璧である。
テストの時と同じように数学を王ドラ、英語をキッドに教えてもらった。
家庭科の調理の宿題はママのいないときにジェドーラとお菓子(ほぼドラ焼きだった)を何個か作った。
他の宿題は、何とか自力でやり切った。
それ故に今年の夏休みは部活と遊びに集中して出来ていた。
そういえば、雷山さんの元で働く小龍から、この前手紙を貰った。宛名はドラ宛だったが。
彼は結構親しみやすい人物だが、事件が起こるとなると人が変わったように素早く冷静、しかも的確な判断で犯人を追い詰めるのだそうだ。
基本的に小龍の仕事は事務業だがその運動神経の良さを生かしてもらい、事件が起こると必ずと言って良いほど雷山さんに付いて行くらしい。
そしてイヴさんとマリアは二人であの家で暮らしているらしい。
はたから見れば1人暮らしのように見えるがマリアもまだこちらの世界に留まっていて、時々小龍も遊びに行くと書かれていた。
その手紙の最後には、BLACK CATについても書かれていた。
彼等は依然見つける事が出来ていないそうだ。
しかも、見つかったネコ型ロボット達の数も少し減っていて、彼等は忠実かつ強力なネコ型ロボットはまだ手持ちに取っているらしい。
人間の仲間も洗脳されていない人達が何人も彼等に付いているらしく、何かあったらすぐに連絡を、と言う内容でその話題は締めくくられていた。
机に座りながらぼんやりとそんな事を考えているうちに、時刻は6時となっていた。
ついにこの夏休みも終わってしまうのかと思うと、ちょっと名残惜しくもある。
そんな時に、ドラえもんが部屋に入ってきた。
今日は夏祭りがある日で、今年の夏休みのラストを締めるのにふさわしく中々に大きい祭りである。
ママはドラが女の子になったのをチャンスと見て、昔自分の着ていた着物をドラに貸した。
最初は着るのを渋っていたが、せっかく最初で最後の女の子姿なんだからとママに後押しされ、その浴衣を羽織り、今にいたる。
僕はドラに話しかけた。
「どう?始めての女の子の浴衣って。」
彼は金魚ばちをイメージしたらしいその浴衣を一通り見てから
「結構良いのは良いんだけど…」
「だけど?」
僕が尋ね返したその瞬間、タケコプターで空中散歩をしていた王ドラが帰って来た。王ドラは顔を真っ赤にして畳にへたり込む。
「な…ドラえもん…いけませんいけません!何ですかその格好は…
あ〜…。
いけませんいけませ〜ん…もう1度出直して来ます…。」
「ちょっと王ドラ!女の子っていっても僕は元は男なんだから!って聞いちゃいないし…。」
ふらふらと王ドラはさっき来たばかりの窓をまた出て行った。だが今入ってこようとしたばかりのキッドとぶつかる。キッドは王ドラを引っ張るような具合で入ってきた。
ドラは二人がこっちに来る僅かな間にいそいそと押入れの中にもぐりこみ、唇に人差し指を当てて黙っていてと口を動かした。
キッドと王ドラが入ってきて、ドラえもんはと尋ねるが僕は何も知らないフリをする。
その内皆の帰ってきて、はやく祭りに行こうと言う話になった。
それでもドラは出てこようとはしなかったし、僕も協力して少し黙っていた。
「あれあれぇ〜?ドラえもんはぁ〜?」
ドラリーニョが尋ねても、僕は知らないと言い張る。だがその内、ドラパンは僕の嘘に気付いたようで部屋に向かってわざと大声で言った。
「そうか、ドラえもんはいないのか。残念だな。
せっかくどらやも祭りに出店を出していたというのに。
しかも商品が超高級餡子を使ったドラ焼きだったというのになぁ。
いやはや、残念だ。」
「嘘ッ!!?それホン…あ。」
ドラえもんがそれを聞いて押入れのふすまを勢いよく開ける。それと同時に皆の目線が彼に集まる。
最初は堪えていた笑い声もその内我慢しきれなくなって皆が大声で笑い出す。
「もー良いじゃんかぁ!ママが用意してくれたのを着ないわけにはいかないだろぉ!」
「でも…でもその格好…ホントに女じゃないかそれ!」
キッドが笑いを堪えながらドラえもんに向かって言った。ドラはムッとしてから、押入れの中に締まった四次元ポケットの中から着せ替えカメラを取り出した。
中にさっきママに見せてもらったファッション雑誌を突っ込み、皆をどんどん写して行く。
そして見る見るうちに、僕の部屋は浴衣美人だらけになった。
「動きにくいであーる…。」
3世はターバンも取れ、黒に少し紫がかったかみが肩の所まで落ちていた。
ドラパンが黒い浴衣を着ながら着せ替えカメラを奪おうとするが、ドラえもんは意地でも渡さないつもりらしかった。
「ま、良いじゃんか別に。
それよりも始まったみたいだから、早く行かない?」
あまり騒ぎすぎてママにバレてしまう前にと僕は皆を気付かれないように外に連れて行った。
道にはたくさんの人が祭りを目的に歩いている。大人、子供。女の人に男の人。皆それぞれ楽しそうだ。
「おいのび太ー!一緒に行こうぜ〜!」
向こうの方から、ジャイアンとスネ夫がこちらに向かって走ってくる。となりには、浴衣を着た静香ちゃんも一緒だ。僕は顔が少し赤くなる。僕の周りの人達も良いかもだけど、やっぱり静香ちゃんも可愛い。
「あら、皆浴衣を見てるのね。可愛いわ。」
にっこりと笑うが、ドラパンとキッドは明らかに不機嫌な様子。逆にドラリーニョは今までないものを着れて、とてもうれしそうだ。
僕はどもりながら、笑う静香ちゃんにこう言った。
「し、し、し、静香ちゃんも可愛いよ…。うん、可愛い。」
すると静香ちゃんは、僕の目の前まで来て僕の手をぎゅっと握った。そして、満面の笑みを浮かべて
「ありがとう、のび太さん。」
僕は思わずくらっと来た。絶対僕の顔は今、まっかっかだ。他のドラリーニョを除くメンバーはそんな僕は見てクスリと笑う。そしてドラが一番に祭りの方へと向かおうとした。
「皆、早く行こう!はやくしないとドラ焼き売りきれちゃう!」
「ドラえもん、言っておくがさっきのは全くのウソだぞ。」
「え!!?そんなぁ!!!」
僕は笑い合いながら、出店のあるほうへと歩いて行った。
この時まだ僕は知らなかったんだ。
僕達の知らないところで着々とある計画が進んでいると言うことを。
僕の二学期もそう甘くはないものにはならないと言うことを。 |