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 軍人というのはパン屋や農家、学校の教師といった普通の職業とはかなり異なるものだということは、私も認めざるを得ない。

 海軍となるとさらに陸を離れ、海上が職場となるわけだし、竜騎兵となると船の甲板ではなく、クジラの背中の上で多くの時間を過ごすことになる。

 このことだけでも、いかに普通とは違う職場かという見当がつこうが、その中でも私のような経験をした者は少ないのではないかと思う。そのときの話をしよう。

 私は中尉に昇進したばかりで、少しも鼻を高くしていなかったといえばうそになる。祖父が海軍提督だったから、その七光りで早く昇進できたのだという陰口はもちろん聞こえていたが、私だって毎日仕事をサボっていたわけではない。

 事件のきっかけは、一本の無線通信だった。大洋を横断中の貨物船からのもので、その影響の及ぶ範囲にたまたま私がいたということだ。

 ちょうど従姉妹が結婚し、その結婚式が行われていた。それが驚くような金持ち同士の縁談だったから、式は普通の屋敷などではなく、なんとクルーザーの上で行われた。

 一隻を丸々借り切り、そこを会場にしたのだ。最初聞かされたときから私もあきれてしまったのだが、新郎新婦が最初に出会ったの海上だったので、それを記念してということらしかった。

 私を含め参列者たちを乗せ、クルーザーは港を離れた。

 新婦が従姉妹で、そろそろ適齢期に差しかかっていた私にも相手を見つけてやろうという作戦だったらしいが、私はそんなことにはまるで興味がなく、パーティーの間も抜け出して甲板から波を眺め、相棒のマッコウクジラのことを思い出していたほどだった。

 クルーザーは陸を離れ、静かな海域だということで、航路から遠い場所を選んで進んでいた。船員に頼んで海図を見せてもらったわけではないが、太陽を見上げ、腕時計の針の動きとつき合わせるだけで、大体の見当はついたのだ。

 不意に足音が聞こえたので振り返り、顔には出さなかったが、私は少しうんざりした。ロバートが追いかけてきたのだ。

 新郎の友人だとかで、今日始めて顔を合わせた若い男だが、どうやら私に興味を持ったらしい。航海が始まった直後から追いかけ回され、しつこく話しかけられたのだ。

 名家の出であることを鼻にかけた嫌なやつで、本当に迷惑だったが、結婚式会場であってみれば騒ぎを起こすわけにもいかず、私も困っていた。こういう航海でなければ、とっくに海に放り込んでやっていたところで、あの顔が波間でアップアップするのを目にできたら、さぞかし胸がすっとすることだろう。

 だがそんなことはできず、ロバートの姿が近づいてくるのを私は見ているしかなかった。しかしそこに救いの手が差し伸べられたのだ。

 ここはブリッジからも近く、私の姿が目についていたのだろう。白い紙切れを手に、船長がこちらへ近づいてきたのだ。船長は私に話しかけた。

「スミス中尉、せっかくの乗客にこんな伝言をするのは不本意だが、海軍からたった今、無線を受け取ったのだよ」

「何です?」

 ロバートは立ち止まった。船長から渡された紙を私は読み始めた。

 無線通信文で、まずはじめに海上のある地点の座標が述べられていた。私たちが今いるここからそう遠くはない。私たち以外にも変わり者の船がいて、航路から遠いこの海を横切っているところだったらしい。そして奇妙な物体を発見したのだ。

 水面にぷかぷか浮いていたが、平べったい形なので、接近するまで存在に気がつかなかったそうだ。好奇心の強いカモメがその上空で旋回していることにある船員が気づき、他の乗組員たちに知らせた。

 船足を落とし、その貨物船はゆっくりと近寄っていった。それが死んだクジラだということはすぐにわかった。だが問題はそれだけではない。

 死んだクジラの胸には丈夫なベルトが渡され、鉄製の潜水服がそれに結び付けられていたのだ。クジラだけでなく、潜水服のほうもピクリともしなかったが、海軍に属する竜騎兵とその相棒クジラなのは明らかだった。そこで海軍に緊急通報がされた。

 この日の当直仕官はかのアップル大尉であり、海図を眺め、発見地点に赤ペンで印をつけ、いつものように唇をねじ曲げながら考え込んだのだろう。

 そしてこのとき、アップル大尉が運悪く思い浮かべてしまったのが、従姉妹の結婚式のために休暇をとっている私のことだったのだ。貸切船に乗って海に出る結婚式だということを、私は話してしまっていた。

 うれしそうにアップル大尉は、ぽんとひざをたたいたに違いない。船名を探り出し、通信室に命じて私に連絡を取らせたのだ。

 第一発見者の貨物船はすでに海域を離れていた。期日までに届けるべき貨物があり、いつまでも現場にとどまっているわけにはいかなかったのだろう。だが目立つ色をした旗をクジラの死体に突き刺しておいてくれるということだったので、海上で見つけ出すのも難しくはないと思われた。

 船長と相談し、新郎新婦やその家族たちとも話し、私は同意を得ることができた。不快な顔をされるかと思っていたのだが、一般市民が海軍の作戦にかかわるなど一生に一度あるかないかのことだから、かえって興奮し、いい余興になると思ってくれたのかもしれない。

 船長はブリッジに戻り、全速前進を命じた。

 三十分もたつころにはパーティーなどほったらかしにして、みな甲板に立ち、背伸びをして水平線を眺めるようになった。

 特に子供らははしゃぎまわり、大人たちも気もそぞろで注意などしないものだから、追いかけっこのさなか、私も前や後ろから何度もどんどん体をぶつけられた。

 動きやすい服装に着替え、船員たちに手伝ってもらって、私は用意を進めた。

 作業のために、小さなボートを一隻貸してもらえることになった。突然心配になったのか、従姉妹が近寄ってきて「本当に大丈夫なの?」と言ったが、私は笑って返事をした。

 鮮やかなピンク色の旗が波の向こうに見えてきたときには、まず大人たちが歓声を上げた。

 背の低い子供らにはまだ見ることができず、抱き上げてくれとせがむ声が響いた。船長は汽笛を鳴らし、船速を落とし始めた。

 それは明らかに竜騎兵部隊のクジラだった。だが甲板の上から一目見るだけで、私はほっと息をつくことができた。潜水服の形が違うのだ。あれはわが国の竜騎兵ではない。私の同僚の一人ではないということだ。

 クジラの種類はマッコウクジラで、これはどこの国でもほぼ共通していた。マッコウクジラは頭がよく、人間になつき、与えられた指示に忠実で、とても飼いならしやすい。マッコウクジラの頭がよいのも道理で、あなたは信じないかもしれないが、脳の大きさはなんと人間の六倍もある。

 しかし一般市民にとっては、クジラなどなじみのない存在なのだろう。甲板の上の歓声もいつの間にかやみ、静かになってしまった。

「なんだか怖いわ」と小さな女の子が言うのが耳に入った。

 私を乗せたボートを下ろす作業が始まった。

 水面に降りると一人でこぎまわり、私はクジラと潜水服を調べた。何の道具もなく、水から引き上げることもできない中では大したことができるはずはないが、それでもやれるだけのことをしたのだ。

 船に戻り、私は無線室へと向かった。無線技師を部屋から追い出さなくてはならないのは心苦しかったが、仕方がなかった。軍の機密に関する会話になるはずだったのだ。

 竜騎兵指揮所を呼び出し、私はアップル大尉と話すことができた。私はまずクギをさしておかねばならなかった。

「アップル大尉、これは暗号通信ではないので、あまり詳しくは話せません。いいですね」

「ああ」

「クジラと潜水服を調べました。クジラも、潜水服の中の竜騎兵もともに死んでいました」

「潜水服の中に人間がいたのか? 死因は何だ?」

「海中でシャチに襲われたようです。クジラは体中が傷だらけでした。応戦したのでしょうが、多勢に無勢だったのでしょう」

「竜騎兵も応戦したのだろう?」

「そう思います。しかしクジラの腹部に大きな傷があり、多量の出血を起こしたのでしょう。それが直接の死因と思われます」

「それでなぜシャチに食われていない?」

「クジラの口の中には、シャチのヒレや皮膚のカケラをいくつも見つけることができました。シャチにもそれなりの被害を与えたわけです。シャチは戦意を失い、クジラと竜騎兵は逃げ出すことができたのでしょう」

「それなのにどちらも死んでいるのだろう?」

「シャチのキバからは逃れたものの、ついにマッコウクジラは意識を失い、深海へ沈んでいったのでしょう。竜騎兵は脱出する機会を逃したものと思われます。一緒に沈み、クジラの肺の酸素が尽きると、運命をともにしたのです。それが何かのきっかけで再び浮上したのでしょう」

「どこの国の竜騎兵だった?」

「もうおわかりでしょう? 領海を侵犯してこのあたりまでやってくる国といえば、一つしかありません」

「やれやれ、また隣国さんかい?」

「潜水服の形から、それは間違いありません。ただ問題なのは…」

「なんだね?」

「こんなところで話してもいいんでしょうか。物入れの中を探って、私は通信筒を見つけました。ステンレス製で、フタはねじ式で頑丈な防水になっています」

「中身は何だ?」

「まだ開けていません。開けてもいいんですか? 軽いから、入っているのは書類だと思いますが」

「開けなきゃ、何だかわかるまい? オレが許可する。今すぐ開けてみろ」

「はい…。ああ、やっぱり書類です。濡れてもいいように防水紙になっていますね。インクも油性のものでしょう。でも暗号で書いてあるようですよ。アルファベットと数字がでたらめに並んでいるだけで、さっぱり読めないし、意味もわかりません」

「長いのか?」

「三枚あります」

「それでは、ここで読み上げろといっても無理か」

「はい」

「他に報告することはないのか?」

「特にありません。でも乗客たちが気味悪がっているので、クルーザーをクジラから離したいのですが」

「クジラにはピンクの旗がつけてあるのだろう? もう忘れていいぞ。結婚式の続きに戻ってもらえ。海軍当局が感謝していたと伝えてくれ。クジラは、こちらから作業船を出して回収する予定だ。竜騎兵と潜水服も調べたいのでな。通信筒はおまえが責任を持って保管しろ。港へ上陸次第、ただちに持ってこい」

「了解しました。では交信を終わります」

 アップル大尉の言葉を伝えると、従姉妹たちはほっとした顔をした。船員たちはすぐにエンジンを始動させ、クルーザーは走り始めた。

 とんだ中断だったが、パーティーは再びなごやかさを取り戻した。しかしそれも、長い間のことではなかったのだ。

 クルーザーは航路を離れ、交通量の少ない海域にいた。だから突然の爆発も、目撃者はいなかったに違いない。

 船体がズンとかすかに揺れたことに私たちは気がついた。女と子供らが悲鳴を上げた。

「スミス中尉、船長が呼んでいる」

 船員の声に、私は駆け出した。

 船長は船尾で私を待っていた。

「ああ中尉、これを見てくれ」

 だがわざわざのぞき込まなくても、もう私には意味がわかっていた。たとえ水中の爆発であっても、この匂いは隠しようがない。

「船長、被害はどのくらいです? 浸水はしていますか?」

「浸水はないが、スクリューとかじを完全にやられた」

「もう船は動けないのですか?」

「すでにSOSは発信した。何者の仕業だと思う?」

「くそ」

「どうしたね?」

 船長に答えるための言葉を、私はなかなかつむぎ出すことができなかった。自分の愚かさが我慢できなかったのだ。

「船長、救援船はいつやってきますか?」

「時間がかかるよ。ここはどの港からも遠い。九十分ほどかな。今も言ったが、さいわい浸水はないのだよ」

「いいえ、これが最後の攻撃ではありません。必ずもう一度あるでしょう」

「なぜわかるのだね」

「船にいる全員を広間に集めてください。私の口から話しましょう」

 船長はすぐに手配してくれた。五分後には、私は心配そうな表情の五十の顔を眺め渡すことになった。

 当然ながら私が話す内容は重苦しく、悲観的にならないはずがなかった。

「みなさん、あと九十分間、私たちはなんとかこの船上でがんばらなくてはなりません…」

 私は状況を説明した。少なくとも一騎、クジラを連れた隣国の竜騎兵が付近にいるらしいこと。それがこの船のスクリューとかじを爆破したこと。

 従姉妹が声を上げた。

「どうしてそれが竜騎兵の仕業だとわかるの?」

「爆発が小規模だったからよ。竜騎兵はあまり多くの水雷を持ち歩かないの。敵の正体がもし潜水艦であったなら、私たちはとっくに魚雷を受けて、海の底にいるわ」

「敵は、本当に私たちを殺そうとしているの?」

「この通信筒が目当てだわ。私が竜騎兵の死体から回収したことを知っているのでしょう」

「そんなもの、海へ捨ててしまったらいいじゃないの。それほど軍事的に重要なものなの?」

「どのくらい重要かは、中身を解読しないとわからないわ。でも問題はそれではないのよ。通信筒を海へ捨てたとしても、敵の竜騎兵にそれを納得させることができない。何か似た形の物を捨てたふりをしただけだと考えるかもしれないわ」

「ではどうするの?」

「敵は、まだ一つぐらい水雷を持っているかもしれないの。それで船底に穴を開け、この船を沈没させようとするかもしれない」

 部屋の中の全員が黙りこんでしまった。私は急いで言葉を付け足した。

「ねえ写真屋さん、さっき全員の集合写真を撮ったときに気がついたんですが、マグネシウムをお持ちですね。まだ残っていますか?」

 写真屋は黒い立派なひげを生やした男だったが、すぐにうなずいた。

「マグネシウムを使って写真を撮るなんて、いまどき珍しいだろう? 私ぐらいのものかな。ああ、あと二、三回分なら残っているよ。時代錯誤かもしれないが、電気式のフラッシュでは物足りなくてね」

「でもそのおかげで、私たちは助かるかもしれません。マグネシウムを持ってきてくれますか?」

 マグネシウムとは金属の一種だが、銀色というよりも、むしろ白っぽい。粉末にすると空気中の酸素と反応し、とても燃えやすい。通信筒のフタを開け、私が細工を始めると、写真屋は目を丸くした。

「しかし中尉、ナトリウムなどと違い、マグネシウムは水とは反応しないのだよ。武器にはならないと思うが」

「ええ、マグネシウムは真水とは反応しないわ。でも塩水の場合は違う。マグネシウムは激しく反応するわ。忘れないでね。海の水は塩辛いのよ」

 用意を済ませ、小さなボートに乗って私が一人で波の上に漕ぎ出すのを、水面下の竜騎兵は息をのんで見つめていたに違いない。実は数分前、やつは不敵にも私たちの船に近寄り、ハンマーで船底をたたいて、モールス信号でメッセージを送ってきたのだ。

『水雷はまだ一つある。沈没したくなければ、通信筒をよこせ』

 私もハンマーを手にし、そこから交渉が始まったのだ。

 話がまとまり、私は一人でボートを漕ぎ出すことになった。もちろん服のポケットには通信筒が入っている。

 交渉時の約束で、私はクルーザーから三百メートルの地点まで離れることが取り決めてあった。それだけ距離があれば、私に何があってもクルーザに被害が及ぶことはないだろう。

 やがて、ボートのそばにクジラがゆっくりと近寄ってくることに気がついた。もちろん生きているクジラで、あの死んだクジラや竜騎兵とコンビを組んでいたのだろう。シャチの群れに襲われ、離れ離れになったが、こちらは運良く生き残ることができたのだろう。

 マッコウクジラの体は大きく、水面から見ると迫力がある。死んだクジラと同じように、胸には太いベルトが巻かれている。頭部にある呼吸口からは長いパイプが伸び、竜騎兵の潜水服につながっているのだろうが、波の下にいるのでその姿は見えない。

 手を伸ばし、私はクジラのベルトの下に通信筒を押し込んだ。竜騎兵からもよく見える場所をきちんと選んだ。

 一度水中に消え、敵の竜騎兵は、通信筒の中身が本当であることを確かめる手はずになっていた。中身に満足できれば、私たちなどほっておいて、さっさと母国へ帰ってゆくことだろう。

 水中にまばゆい光が走ったのは、クジラの背中が視界から消えて、三十秒ほどたったときのことだった。波の下の一ヶ所が、まるで突然太陽でも生まれたかのごとく輝き始めたのだ。強い光なんてものではない。ボートの上にいた私でさえ、思わず目をおおったほどだ。

 指示や命令を伝えるために、竜騎兵はクジラのすぐ左側にいる。そこはクジラの左目のすぐ前でもある。

 ある量のマグネシウムが、突然海水と接触したのだ。しかもこの日は暑く、水温は十分に高かった。

 まさか水中の竜騎兵がケガをしたとは思わない。だがクジラの感じた驚きやおびえは相当なものだったろう。無我夢中でヒレを動かし、水をける動きは、ボートの上にいる私にもはっきり見ることができたのだ。それどころか、ボートを左右に揺らしさえした。

 いくら知能が高く、飼いならされているといっても、クジラも本来は野生の動物でしかない。パニックのあまり、水中をロケットのように走り始めたのだ。竜騎兵はまるで、暴れ馬の背に乗せられたような気がしたに違いない。

 そのままクジラと竜騎兵は、どこかへ行ってしまった。

 もちろんクジラもいずれ落ち着きを取り戻し、竜騎兵の指示を聞くようになるだろう。しかしそれは何十分も先のことだ。そのころには私たちは、救援船と合流しているに違いなかった。

 オールを手にし、私はクルーザーへと戻っていった。

 甲板に上がると、よいニュースが待っていた。もちろん船長は、敵の竜騎兵から攻撃を受けたことを海軍に通報していた。その返事があり、救援船だけでなく、急遽高速艇も派遣してもらえることになったのだ。それが今にも到着するであろうということで、私たちの不安は完全に拭い去られた。

 高速艇にけん引され、クルーザーは入港することができた。上陸するとすぐ、アップル大尉の指示通り、私は通信筒を提出したが、おそらくすぐに情報部へまわされ、解読の努力がされたことだろう。

 解読が成功したのかどうか、成功したのなら内容が何であったかまでは、私も知らされていない。私はただの中尉にすぎず、そこまで関わる権限はなかった。

 色々ハプニングはあったが、こうして従姉妹の結婚式は済んだ。ハネムーンも終え、新居を構えて幸せにしていることは私も聞いている。

 そう、それとロバートのことだ。小さなボートにただ一人乗り、敵のいる海へと漕ぎ出した私の姿に、ぞっこんハートを奪われてしまったらしい。航海の後ロバートは、私目当てに竜騎兵指揮所を足しげく現れるようになってしまった。

 どういうコネでどうやって知るのか、私が非番の朝には、いつも正門前で待ち伏せている。受付に大きな花束を残したりもするものだから、私が同僚たちからどれだけからかわれたか。

 私とロバートでは、性格も住む世界もかけ離れすぎている。結婚どころか、よい友人になることだってできないだろう。しかしロバートはのぼせ上がり、私のことを戦の女神アテナと思い込んでいるのだ。

 断じて私は女神ではない。

 やつにその真実をガツンと思い知らせるためにどうしてくれようと、最近私は計画を練り始めている。
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