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秋の出来事〜秋雨〜
作:凪沚


雨。
なんだよ雨って、今日の天気は晴れじゃなかったのかよ。
どうしよう傘持ってないし、親は仕事が遅いって言ってたしなー、学校で傘借りるにしても前借りた傘返してないからなぁ…。
仕方ない雨が止むまで時間を潰すか。ちょうど読み掛けの小説も残ってることだし、図書室でも行こうかな?
俺はごった返す玄関から生温い校内に戻った。
歩いていると湿気のせいかやけに廊下が滑る。中学のときは小さな木製の校舎で廊下も木で出来ていたため、湿気で廊下が滑ることは無かった。
危ないと声に出しつつも、初めての経験に靴をキュッキュッと鳴らして歩いた。三階の階段を上がってすぐにある図書室は人が居なくて怖かった。
居てもおかしくない眼鏡の生徒や、
「委員長」と声をかけたくなる真面目腐った生徒も居なかった。
逆に居なければいけない図書委員、それを受け持つ先生すら居なかった。
本棚が奥へ奥へと続く部屋。この学校の名所だと俺は思っている。
大量の本、天井スレスレまである本棚、そして奥行きがすごい教室、この三つがこの不思議な空間を作り出していた。
俺は奥へ奥へと進み、一番奥の右側で本を読むのが好きだった。玄関のちょうど真上にあり、窓を覗くと赤や黒の傘がいくつも歩いていた。
「ったく、なんで傘持ってんだよ」
しばらくの間、椅子に腰掛けて帰る連中を見送った。ぼーっと外を眺めていると、不意に悲しくなり、窓に映る自分の姿が雨の雫で泣いているみたいだった。
「なんだよ」
誰に向けるわけでもない言葉、ふわふわと漂ったあげく雨に消えていった。
ため息を飲み込み、少しの苛立ちと、どうすることも出来ない悔しさに本棚を軽く蹴り飛ばした。
埃が舞った。
イライラしても仕方ないこと。
大人しく本を読むことにした。



「ふー」
読み終えると、影が濃くなっていることに気付く。
しおりを挟み本を閉じると、外は夕方が染み込んでいた。
窓を開けると冷たい風と雨の匂いが鼻をくすぐった。雨は止み、まだ黄色の幼い葉が水に濡れていた。
グラウンドも水浸し、明日の体育はあるのかな?
ふと一本のイチョウの木が目に付いた。
あまりにも大きくグラウンドと不似合いなそれは、不思議な感じがした。
黒か紺の小さな傘。
子供がいる。少年だと思うけど、何してるんだ?
黒っぽい傘に黒っぽい長靴が印象的、他がぼやけて見える。
少年は木の下でしゃがみ込むといそいそと何かしている。
何か温かくなる光景に、ぼーっとしてしまう。
少年は立ち上がり振り返ると俺に気付いた。
二人時が止まる。手を振ってやると、向こうも嬉しそうに振り返えしてくれた。
「雨止んでるぞー」
少年は傘から頭を覗かせ、確認すると傘を畳んだ。
そして、
「ありがとう」
と一言。大声じゃなく頭に直接言葉を届けてくれた。現に少年は口を開いていない。
「ありがとう、お礼にこれあげるね」
また直接頭に届けられた言葉。気付くと少年は消えていた。
手には濡れたイチョウの葉があった。
少し考えたが帰ることにした。わからないから、しょうがない。
そんな秋の出来事。
小さな小さな出来事。














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