P.S.
という訳でこれが、盗賊団に浚われてからユミル学院に向かうまでに起きた事の顛末だ。
俺もまさかユミルに着く前にこんな大事件に巻き込まれるとは思っていなかったし、出来るだけ詳細に、思ったことも全てと意気込んだ結果、最初の手紙がこんなに分厚くなってしまった。
俺がいなかった場面や別のヒトが見ている視点は、当人達に手紙で聞いたことを俺が纏めたものだ。こっちの方は少し脚色が入り込んでいる可能性がある。だが、基本的には全て事実なので勘弁してくれ。
それと、いつかお前以外の誰かが読むこともあるかもしれないと、お前と俺のことも少し書いておいた。そこだけ抜かすと訳がわからなくなるからな。これまた勘弁して欲しい。
その上でさらに不躾なお願いになってしまうのだが、ルークセントの内情やリリィ達のイタズラの事まで、隠さずに書いてしまった。今のところルークセントは落ち着いているものの、この情報がどういう風に使われるかわからない。
ルースについても同様だ。ルーシィ・アーク・ガンダルシアを追っている者がいるかもしれないし、せっかくの彼女の男装を無駄にさせてしまうのは避けたいところだ。
出来れば、数年は誰にも読ませないで、お前が選んだ情報を語るだけにして欲しい。親方には全部話してもらいたいぐらいだが、俺の父上はほんの少しでもダメだ。ヘタにリリィとの面識を利用されたら堪らない。
まぁその辺は、お前を信用しているからこそ、ということで一つ。
そうそう、そのうち親方の鍛冶場に、ヘンな物が送られてくることになると思う。
巨獣の掌に生えていた鱗だ。手首で斬り落としていた分、吸い込まれずに残ったらしい。肉の方は腐ってなくなったそうだが。
で、これをルークセントでも持て余している、とのこと。加工も出来ず、使い道もないのでどうしようとリリィに言われてしまった。俺の所に送り付けられても困るので、そっちの住所を教えた訳だ。
親方なら最もイイ使い方を考えてくれるだろう。
別に、厄介な荷物を押し付けた訳じゃないですよ?
最後に心からの礼を。
お前の後押しのおかげで、俺はこんな体験が出来た。
正直、未だに申し訳ないという気持ちはある。
それでも、苦労したことやキツかったこと、漏らすかと覚悟するほど怖かったことも全部ひっくるめて、家を飛び出して良かったと思っているんだ。
俺の体験を読んで、お前が一緒に同じ気持ちを感じてくれたら、こんなに嬉しいことはない。
いつか、感想を聞かせてくれ。
次の話も、そう遠くないうちに届けることが出来るんじゃないだろうか。
じゃあ、明日も早いのでこの辺で。
またな。
親愛なるモント・トレズゥロへ、ありったけの感謝と友情を込めて ユミル学院の寮でルースとイクシスに覗き込まれながら
カインド・アスベル・ソーベルズ
11月15日初稿
これにてドラグーンズ・メイル完結です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
ご挨拶やお礼、執筆の経緯などを含めた後書きを2013年11月22日の活動報告「ドラグーンズ・メイル真あとがき」としてあげました。よろしければご覧下さい。