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短編ギャグ いきなり世界がRPGになった

 最近、変なことばかり起こる。これも、魔王の影響なのかもしれない。

「おーい、勇者。どんどんいくぞ!!」

 前でごちゃごちゃしゃべりながら剣を振るっているのは、驚く無かれ、「宝玉の守護神」である。

「おかしいなあ・・・・」

 そうやって、俺は呟いた。
 どうして俺はこんな所で守護神と戦っているのだろうか? しかも、相手は動かないし、なぜか俺も動く事が出来ない。できることと言えば、「剣を振るう」もしくは「魔法を使う」ことだけだ。道具も使えるが、とにかく、動けないので敵の後ろに回り込む事も出来ない。

「こりゃー、なにをぶつぶついっとる!! お前の番じゃ!!」

 そう、こいつの言う通り、敵が律儀に俺が行動するまで待っててくれる。
 なぜだ。

「これい、勇者、はよせい!」

 いらいらするように守護神は足を踏み鳴らせている。

「なあ、聞きたいんだが・・・」

 相手が突然に飛び掛ってくることがない確証があるので、余裕でいられる。
 ま、これはこれでいいんだけど・・・

「あ、なんだ。はやくしろ!!」

「お前、どうみてもそろそろ死に掛かってるぞ」

 いろんなところから血を出していて、見ていて非常に痛々しい。

「わかってるわい!! だが、逃げるわけにはいかんのじゃ!!」

「なんで」

「そういうルールだ。シナリオは忠実にこなす主義じゃ!!」

「はぁ?」

 万事がこの調子、どのモンスターに会ってもこうだ。
 やはり、魔王の影響だろうか。
 理解しがたい。

「とにかく、俺としても守護神を殺すと言うのは気が引けるわけでだな。お前が逃げたいと言うのなら、逃がしてやろうという広い心を持っている最中なのだが」

「む・・・・」

 一瞬、守護神の顔がゆがんだ。

「そ、そのような誘惑には負けん!! いざ!!」

「いざ・・・ねえ」

 これで恐らくこいつは最期だ。

「ファイヤー!!」

 ドゴオォォォォ

 守護神の体が炎に包まれる。

「ぐおおおおおおおぉぉぉぉ・・・・」

 ボテ
 地面に焼肉となって崩れ落ちた。

「ふう・・・無駄な殺生を」

 焼肉の上に「宝玉」が載っている。

「あとは、これを城に届ければいいのか」

 俺は城の方向に視線を向けた。







「くっそお!! なんで城が無いんだよ!! こっちから来たはずだろ!! なんで道が違ってるんだ!?」

 毒づきながら歩いていると、草の擦れる音がした。

「ん? モンスターか? ま、どうせ律儀に待っててくれるから危険はないだろうけど・・・」

 と、しばらく観察してると、

「あれ?」

 でてきたのは若い女だった。魔導師の服装をしている。

「あんた、いまどこから出てきた?」

「え?」

 女は今更気がついたように振り向いた。

「あなた、誰?」

「そんなことより、お前、いまどこからでてきた?」

「あなた、誰?」

「だから、まず質問に・・」

「あなた、誰?」

「・・・・・・」

 女は三回とも同じ声、同じ抑揚でしゃべった。

「はは・・・こりゃまた、街中の『装備せんと効果が無いぞじいさん』の親戚か?」

「あなた、誰?」

 だめだこりゃ。名前を言わないとすすまないようだ。

「はあ・・・・『あああ』だよ」

 くそ! 言いたくなかったこの名前だけは。
 なんでこんな名前付けたんだよ、うちの親は・・・もう死んでるけど。

「『あああ』ですか・・・とっても素敵なお名前ですね」

 女はにっこり笑って、そう言った。
 素敵!?
 しかも、話し方がさっきと明らかにちがうぞ。
 なぜか、恍惚とした感動の表情をしてるし・・・
 こりゃ、かかわらないほうがよさそうだ。

「じゃ、じゃあこれで・・・」

 俺は通り過ぎることにした。
 ギュッ

「ん? あんた、なに人の服掴んでんだ!?」

「なにかお困りのようですね」

「だから、服を離せ!!」

「道に迷ったのですか? 無理もありません、ここは『迷いの森』ですから」

 あまりに強い力で握られている。どういう力だ?

「はあ・・・」

 だめだこりゃ。あきらめよう。

「『迷いの森』は古来、大魔導師がモンスターから街を守ろうと創ったものです」

「なあ、おい、俺は昔からこの森に出入りしてるがそんな話聞いたことないぞ」

「その大魔導師は・・・」

「人の話を聞け!!」

「・・・人々を助け、王国を守りました」

「おい・・・・」

「そして、最後に『ラストエルサレム』という聖域をつくり、そこに天国のような平和な街を造ったのです。私の街に古くから伝わる伝説です」

「・・・・・・・・・・・なんだよ、こいつ」

「不思議でしょ?」

 初めて女がコンタクトを求めてきた。

「手を離してくれ」

「『はい』か『いいえ』で答えてください」

「・・・いいえ」

 もうこりゃ仕方ない。適当にすませてさっさと逃げるぞ。

「え、そうですか? やっぱり私、夢見がちなんですかね? あはは」

 俺、初対面の奴に、なんでこんなに馴れ馴れしくされるんだ??

「じゃ、私が森の外まで案内しましょう」

「ん? あ、ああ、頼む」

「私の後についてきてください」

 とにかく、ついていって見るか







「ここが出口です」

「はあはあはあ・・・はあ・・・」

 魔導師の女は平然と、森の出口に立っている。
 さっきまで俺の最高速度と同じ速さで走ってたはずなのに。
 しかも、最高速度で走りながら直角に曲がってたぞ。

「なあ」

「はい?」

 女がこっちを向いた。

「いや、そんなに体ごと向けてくれなくていいんだけどさ。ま、とにかく、『迷いの森』なんていう話は一度も聞いたことが無いし、だいたい、お前どこから出てきた? あそこはすぐ横が断崖絶壁で、あの草むらだって幅がそんなにないんだ。どこからどうやって来れば、あそこから俺の通ってきた道に出るんだよ!!」

 不信に思ってる事を全部言い、女を睨んだ。
 ところが、女は表情一つ変えない。

「東が街、北がお城です」

「は??」

 何をいっているんだ、やっぱり頭おかしいのか?

「だから、人の質問に答えろ」

「東が街、北がお城です」

「・・・あ」

「東が街、北がお城です」

「ばか」

「東が街、北がお城です」

「牛もうもう」

「東が街、北がお城です」

「・・・同じ事しか言えないのか?」

「東が街、北がお城です」

 だめだな。試しに、ちょっとくすぐってみるか。
 こちょこちょこちょ
 微動だにしていない。

「これ、本当に人間?」

「東が街、北がお城です」

「・・・・・・」

 無視するしかないのか、これは。
 仕方が無いので、俺は城に向かっていった。





「うおう!?」

 城に来て、俺は異様な光景を見てしまった。

「門兵が仕事してる・・・いつも、サボってて誰もいないのに」

 恐る恐る、門兵に近づく。

「・・・どうしたんだ?」

 門兵は無表情な顔を俺に向けた。

 怖っ!

「シルデリラ城にようこそ!!」

 無表情な顔のままそう叫んだ。

「・・・は?」

「シルデリラ城にようこそ!!」

 な、なに? ここでも『同じことしか言えない病』が広がっているのか!?
 これは、由々しきことかもしれないな・・・魔王の新手の攻撃かも。
 王に報告しておいたほうがいいかもしれない。

「と、とにかく入れさせて貰うぞ」

「シルデリラ城にようこそ!!」

 門兵がまた叫んだ。




「は!?」

 城に入って、またしても、あり得ない光景を見た。

「す、少なっ!!」

 広い城内に兵隊が数人しかいない。しかも、城内だと言うのに、なぜか全員フル装備。
 使用人も2、3人いるが。

「おかしい・・・前は軽く100人はいたぞ。あ、もしかして休憩室か?」

 ・・・ま、いい。それより、早く王に謁見して宝玉と病気の報告だな。
 俺は王の謁見の広間に入った。
 おい、兵隊がいないぞ。いいのか、王をほったらかしにして。

「おお、『あああ』か。『宝玉』を持ってきたのだな」

「はい。しかし、なんですか? 兵隊のリストラでもしたんですか?」

「早速、宝玉を渡してくれ」

「いえ、ちょっと待ってください。どうやら『同じ事しか言えない病』が広がっているようで、ここの兵隊にも感染しているようです。魔王の新手の攻撃かもしれません。魔学者達を総動員して、事の究明に当たられた方がよろしいと思いますが」

「早速、宝玉を渡してくれ」

「は? いま、なんと言いました?」

「早速、宝玉を渡してくれ」

「ですから、私の話を・・・」

「早速、宝玉を渡してくれ」

 間違いなく、王は同じ言葉を、同じ抑揚で、4回繰り返した。

「王様、あなたまでご病気に・・・」

「早速、宝玉を渡してくれ」

「・・・・この国、もう駄目だ」

 その後、勇者は街中の人が『同じ事しか言えない病』にかかっている事に気づき、発狂し、勇者がいなくなった王国は・・・魔王に滅ぼされた。



凄く昔の作品ですが、引っ張り出してきてみたら今でも好みのネタだったのでそのまま掲載してみました。

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