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十二英雄伝 作者:ぷるっと企画

零章 『世界が分かれた日』

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五十四話 「RD事変 其の五十三 『加速と収束の戦場⑤』」

   †††

 突如、背後に現れたガヴァルⅡ二機にロイゼン第三騎士団は混乱に陥る。

 ガヴァルはバイパーネット同様に支援機の側面が強いMGで、単体の攻撃力は高くはない。しかし、その機動力はバイパーネッドなどとは比べものにならない。まるで闘犬のように迅速で獰猛。瞬く間に第三騎士団の隊列を掻き乱す。

 当然、隙あれば攻撃も行う。ロキN5が操るガヴァルが低い体勢からカミューの足を斬撃。切断までは至らないが、その衝撃で揺らいだところにロキN9のガヴァルのバズーカが発射。頭部が吹き飛ぶ。

 そのカミューを盾にしつつ、さらに隊列の分断を図ろうと小刻みに攻撃を加えていく。このように致命傷は与えないが、素早い動きでそれなりの深手を負わせ、次々と場を攪乱していくのである。

 そして、忘れてはいけないのが、ここがヘビ・ラテの結界内であること。周囲には見えない糸が張り巡らされ、それに触れたカミューは身動きが封じられるか、絡みついた糸に腕や足を切断される。

 これによってさらに混乱は拍車をかけていく。

(これはまずい)
 サンタナキアは、敵に先手を打たれたことを悔やむ。

 相手は用意周到に待ちかまえていたのだ。

 最初から少数で多数を喰らう戦術を用意していた。よって、行動に何ら迷いがない。実に見事な連携の前に、数で勝るはずのロイゼン騎士団が苦境に立たされる。

 しかも地形はビル群であり、散在する建造物が微妙に邪魔になる。広い場所もあるが、そうした場所には必ず糸が張り巡らされているため、騎士団は次第に狭い場所に誘導されていく。

(相手の動きに対応できていない。このままでは全滅する)
 戦闘経験が乏しいのはダマスカスに限ったことではない。ロイゼン騎士団もまた、こうした意表をついた相手は苦手とするところである。

 正面からの打ち合いならば負けるつもりはないが、明らかに通常とは違う戦術にまったく対応できない。慣れればそのうちできるだろうが、それは自分たちという犠牲を出したあとのことになるだろう。

 オロクカカが言った言葉は、けっして脅しではない。相手にはそれだけの準備があるのだ。間違いなく対騎士団用のそなえができていた。

 そこでサンタナキアは即座に決断。

「第二騎士団は私の指揮下に入れ! 無理をして動かず、隊列を組んでシールドで対応しろ!」
 サンタナキアは状況を確認した瞬間に指示を出し、部隊の再編成を図る。

「サンタナキア様…!」
「落ち着け! アレクは死んだわけではないぞ! 冷静に対処すれば防げない攻撃ではない!」
 その言葉に、アレクシートを見失ってパニックに陥っていた第二騎士団の騎士、いまだ健在のカミュー隊五機が正気に戻る。

「我々の強みは何だ! 耐える力であろう! アレクシートが戻るまで、耐えて耐えて耐え抜け!」
「はっ!」
 サンタナキアの激励が部隊全体に染み渡っていく。彼直属の第三騎士団を軸に、徐々に防御の隊列が組み上がっていく。

 それは単純にシールドを持ったカミューが数機集まり、壁として立ちふさがるといった簡単なもの。しかしながら、ロイゼン騎士団の持ち味は耐久力である。単純な壁となったカミューをガヴァルは攻めあぐねていた。

 サンタナキアから見ても、ガヴァルの操者であるロキの実力はロイゼン騎士を上回っている。倍の数をもってしても勝てないだろう。ならば、さらにその倍の数で対応すればよいだけだ。

 さらに無理には攻撃させない。相手の狙いは明らかに混乱と分断である。裏を返せば、彼らにとっては正面突破で押し切るだけの余力がないのだ。

 サンタナキアが糸が見えることも奏功する。糸のある場所を見抜いては、自ら糸を切り裂いて突破口を開いていく。徐々にではあるが、ロイゼン騎士団は本来の実力を発揮しつつあった。

(なかなかの指揮力ですね)
 オロクカカは、即座に混乱を収拾したサンタナキアの指揮力を賞賛する。

 声をかけることは簡単だが、ここまで荒れた場を鎮めるのは難しいものである。普段からの行動で騎士たちの信頼を勝ち得ていなくては無理だろう。しかもその声には、不思議と人を安心させる波動が宿っている。

 アレクシートが鼓舞し、激しい炎を燃え上がらせる発火剤ならば、サンタナキアのそれは引き締める冷水の強さ。熱で火照った顔を冷やし、安堵させるものである。

 そして、ついに両者が対峙。

「アレクを返してもらおう」
 サンタナキアのシルバーフォーシル〈銀の星守〉が、オロクカカのヘビ・ラテ〈禍津蜘蛛〉の前に立ち塞がる。

 糸を切り裂いてもヘビ・ラテがいる限り、戦いは終わらない。相手の戦気の量が多いことはサンタナキアにも見えていたので、消耗戦では危険と判断したサンタナキアは単身突破。勝負をかけたのである。

「ここまで抵抗するとは見事です。…が、言ったはずですよ。あなたがたには全滅してもらうと」
 オロクカカのヘビ・ラテは、糸に掴まって宙に浮いた状態でシルバーフォーシルを見下す。

「私がいる限り、そのような真似はさせない。アレクも取り戻す」
 いつもは穏やかなサンタナキアの声が、無意識のうちに低いものへと変化していく。

 同時に気質も変化。圧力が増していく。

(この騎士団長も侮れないですね。さきほどの彼より危険かもしれません)
 オロクカカは、サンタナキアの静かな威圧感に危機感を抱く。バーンである彼を気圧すのだから、相当な迫力である。

 最初に動いたのはヘビ・ラテ。胴体から糸を放射。シルバーフォーシルの足を絡め取ろうとする。

「視える!」
 サンタナキアは糸が見えている。剣気を宿した剣で一閃。戦糸を切り裂いて防御。ヘビ・ラテは続けて何度も糸を放射するも、そのすべてがシルバーフォーシルによって迎撃される。

 しかし、ヘビ・ラテはすでに跳躍し、一気にシルバーフォーシルとの距離を詰めていた。

「私を糸だけの武人と思わぬことですね!」
 ヘビ・ラテの左右の前足二本が高速で突き出される。

 今まで糸だけに気を取られていたが、オロクカカは戦士タイプの武人。その拳も立派な武器となる。特にヘビ・ラテの前足の部分は鋭利な作りとなっており、獲物を突き刺す立派な武器である。

「はっ!!」
 シルバーフォーシルは咄嗟に剣の腹を使ってガード。その威力に後退しつつも見事に受けきる。

「まだまだいきますよ!」
 そこから続けてヘビ・ラテの高速の突きが襲う。

 ヘビ・ラテは、通常のMGとはかなり規格が異なる、いわゆる【色物ゲテモノMG】に属する機体である。高さは普通のMGと同じ程度だが、まさに蜘蛛のごとく全長が一七メートルと長く、同時に手足も長いのでかなり大型のMGに分類される。

 そこから繰り出される攻撃は、通常のMG戦闘では味わえない独特さがある。それをサンタナキアはガード。見事な体捌きと大剣を使っていなしていく。その光景にはオロクカカも感嘆するしかない。

(大型の剣を、あの速度で振り抜きますか)
 ヘビ・ラテの攻撃はけっして遅くない。弾丸以上の速度で飛んでくる恐るべきものである。それをいなすサンタナキアの実力は、大国の列席騎士団長の名に相応しい。

 シルバーフォーシルは、シルバーグランよりも軽装でありながらも、その体躯に似合わない巨大な剣を装備している。この剣こそがフォーシルの最大の武器であり、最大の防御方法でもある。

 剣は肉厚の両刃で、攻撃と同時に防御もできる【剣盾】としての使い方も想定されている。それゆえにピンチとなれば剣の腹を使って、ゼッカー戦でも見せたように砲弾を受け止めることも可能だ。

 機体自体は軽装であり、防御力はシルバーグランには及ばないが、これは機体全体を躍動させて剣を振るうためである。可動域を増やし、より生身と同じように軽快に戦うことを前提としている。

 相手の攻撃を予測する能力。迷いのない動きを可能とする判断力。大きな幅広の剣を扱う剣技と腕力。そのすべてを支える強い意思。

 シルバーフォーシルを操るには、これだけの資質が必要なのである。そして、サンタナキアはそれを持っていた。

(特筆すべきは、やはり目が良いことでしょう)
 オロクカカは、サンタナキアの最大の特徴を【目の良さ】と判断する。

 サンタナキアは、リヒトラッシュのように視力が飛び抜けて良いわけではない。遠くを見る、という能力においては常人とさして変わりはないだろう。

 だが、視野が広い。

 ヘビ・ラテの足による攻撃に加え、死角から放たれる糸をすべて見切っている。二つの目で焦点を合わせなくても正確に位置を把握できるのだ。当人はそれが当たり前だと思っているが、これは立派に特殊な力である。

(さすがはロイゼンの騎士団長の一人。見事です)
 バーンであるオロクカカの攻撃は並の迫力ではない。それを正面から受け止める技量は群を抜いている。

 されどバーンである。

 ヘビ・ラテは攻撃を繰り出しながら、突如急上昇。背後に隠した糸を操って自身を吊り上げたのだ。そこからさらに二本の足、計四本の足が襲いかかる。

 ヘビ・ラテは大きく重いため、自重を支えるには六本の足が必要である。それを糸を使うことでカバーし、攻撃の手数を増やしたのだ。

 奇襲である。

 この戦い方は、普通のMG戦闘にはない特殊な事例。色物MGだからこそ放てる奇をてらった一撃。

(初見でこれはかわせない)
 オロクカカも最高のタイミングで繰り出した一撃に直撃を確信する。

 カノンシステムで融合しているオロクカカにしてみれば、ストレートの軌道を変化させてエルボーを繰り出した感覚である。いくら目が良くても身体はついてはこないはずである。

「っ!」
 その証拠に、サンタナキアも不意をつかれて対応に迷いが出ていた。目は驚きに見開いたまま。足も動けない。

 しかし、咄嗟に動いたものがある。
 それは武人の本能だったのかもしれない。

 シルバーフォーシルは、大剣を地面に突き刺して剣気を爆発させる。その衝撃で機体が後方に弾かれ、ヘビ・ラテの足撃はシルバーフォーシルの胸部を引っ掻くにとどまる。

(危なかった!)
 正直サンタナキアでさえも、敗北の二文字が頭をよぎった。

 ヘビ・ラテの足は実際の剣と変わらぬ威力。その証拠に胸には深く抉られた傷痕が残っており、一撃の強さがうかがい知れる。まさに必殺の一撃であった。サンタナキア自身でさえ、どうやってかわしたのか覚えていないほどだ。

(素晴らしい!)
 それにはオロクカカも思わず見惚れる。

 彼には見えた。
 サンタナキアが流してきた血と汗が。

 あの一瞬の動きは、けっしてラッキーでも偶然でもない。日々努力し続けてきたことが実戦で出たにすぎない。

 サンタナキアが毎日朝早くから夜遅くまで鍛錬している姿。アレクシートを助けようと、家の迷惑にならないようにと、決死の覚悟で剣を振るってきた姿が、オロクカカには見えたのだ。

 物腰柔らかい青年に見えた男は、なんと気骨溢れる美男子であったことか。その中身は、まさに武人の塊である。糸を操るために自身の肉すら削ぎ落とすオロクカカには、そうした努力が痛いほどよくわかるのである。

「ですが、私はバーンなのですよ! 主の御使いである以上、勝つ宿命にあるのです!」
「これは…糸!!」
 サンタナキアは、シルバーフォーシルの胸に糸がついているのが視えた。今攻撃された瞬間に付けられたのだ。

 ヘビ・ラテは糸を引っ張り、シルバーフォーシルをたぐり寄せる。間合いを詰めたところに再び足の攻撃。シルバーフォーシルは剣盾で防ぐも、次第に押されていく。

(っ…逆に!?)
 シルバーフォーシルが引かれまいと、自身が力いっぱいに引っ張り返した瞬間、ヘビ・ラテは糸を引く力を緩める。それによってシルバーフォーシルのバランスが崩れた。

 そこにヘビ・ラテの強烈な足撃が襲う。

 足はシルバーフォーシルの左肩に直撃。恐ろしいまでの重い一撃に肩の装甲がひしゃげるも、後ろにバランスを崩したおかげで貫通は免れる。

 それからもヘビ・ラテは糸と足撃を絡めた攻撃で、シルバーフォーシルを追い詰めていく。次第にサンタナキアは防戦一方になっていた。

(強い。こんなに強い相手は初めてだ!)
 サンタナキアは、左肩に感じる熱い痛みに顔を歪めながら驚愕する。

 オロクカカは強い。

 当然、剣聖であるラナーのほうがオロクカカよりも強いだろう。その彼と訓練で剣を合わせているサンタナキアも、日々一流の相手と戦っていることになる。

 しかしながら、殺し合いという実戦の中で戦う相手としては、オロクカカは今までで間違いなく最強の相手である。

 単純な戦士としての能力。拳(足)の速度、体捌きはもちろん、こうした駆け引きにおいてはサンタナキアを一枚も二枚も上回っている。

(これほどの武人がいるなんて。野はなんと広い)
 他国の筆頭騎士団長であると紹介されても納得してしまうレベルである。そんな相手と戦えることは、ある意味においては武人冥利に尽きるのかもしれない。

(アレク、君は無事なのか? 彼らは強いぞ!)
 サンタナキアは、改めて気を引き締める。

 この戦いは、命をかけた真剣勝負なのだと。


   †††


「ええい、放せ!」

 サンタナキアがオロクカカと激戦を繰り広げていたその頃、シルバーグランは自身を拘束していたドラグニア・バーンを振りほどく。持ち前の腕力で強引に脱出したのだ。

 シルバーグランは不恰好ながらも見事着地。それだけを見ても彼のMG操縦技術が優れていることがわかる。

(そろそろ糸も限界。このあたりでいいか)
 すでにオロクカカたちとは、だいぶ距離が離れている。ユニサンも頃合だと判断して、最後の糸を使いきって地上に降り立つ。

 このあたりは都市の郊外に位置する場所であり、さきほどまでいたビル群とは違い、周囲には高いビルなどは存在しない。比較的広々とした場所であり、好きなだけ暴れられる場所だといえる。

「ずいぶんと運んでくれたな。これは屈辱だ!!」
 不意をつかれたとはいえ簡単に拘束されたあげく、まんまと騎士団と引き離されてしまった。

 プライドの高いアレクシートにとっては、これほどの屈辱はない。しかし、それだけアレクシートの実力を危惧した証拠でもある。そのためにオロクカカたちは罠を用意したのだ。

 アレクシートを隔離するのは予定通り。

 最初から彼を狙っていたのではない。流転する戦場の中で、誰がどう動くかを完璧に予想するのは不可能である。決まっていたのは、実力者が出てきた場合は分断すること。合流させないことである。

 正直にいえば、ラナーでないことが幸いであった。彼の実力は上位バーンに匹敵する。もしラナーあるいはシャーロン級の武人が出てきていれば、オロクカカであっても対抗はできなかっただろう。

 そのラナーと比べればアレクシートは弱い。されど、彼の持つ力は現状を打破する可能性を秘めたものであった。

(オロクカカが警戒する相手。本来ならば俺は足元にも及ばないだろう)
 ユニサンからすれば、アレクシートは高嶺の花である。生まれも扱いも、物的な豊かさもまったく別次元の存在。武人としての素養の差も歴然としている。

 それを知りながら、この男は言う。

「お前にはここで死んでもらう」
 すでにユニサンは限界を悟っていた。この戦いが文字通りの最後の戦い。この肉体がもつ残りわずかな時間を燃焼させて戦う、本当の意味で最後の相手なのだ。

 それがロイゼンのナンバー2。
 第二騎士団長のアレクシートである不思議。

「妙な敵意だな。お前は私を見ていない。だが、激しい炎だ」
 アレクシートはユニサンの敵意を敏感に感じ取る。

 ユニサンの視線はアレクシートを見ていない。それも当然。ユニサン自身はアレクシートに恨みはない。彼が属するシステム、その背後にある利己主義を憎んでいるのだ。

 彼の視線はあくまで【富】に向けられている。

「富の塔に加担する者。それが敵だ」
「テロリストにありがちなタイプだな。一方的に決めつける」
 アレクシートは、テロリストという人種が嫌いである。彼らは盲目的で、一度そうと決めたら意見を変えることはない。最後まで愚かな抵抗を続ける。

 対峙するユニサンからは、会議場で見た悪魔と同じ匂いがする。その根幹にあるものは同じなのだ。アレクシートが悪魔に感じた嫌悪感と同じものである。

 だがしかし、その言葉はそっくりそのまま返ることにもなる。

「お前も俺と同じだ。既成観念に囚われし者よ」
 悪魔側からすれば、カーリスという既成宗教こそ偏見と凝り固まった精神構造の塊である。彼らは現在には住んでいない。過去にすべてを置いてきた者たちなのである。

 が、銀の聖闘士はぶれない。

「言葉は不要。敵を倒すだけだ」
 アレクシートは周囲を警戒。少なくとも見える範囲において他の敵はいないようである。

(索敵は苦手だ。伏兵がいてもわからんな)
 アレクシートは波動円も使えるが、その範囲が非常に狭い。伸ばせてせいぜい数十メートルといったところである。生身ならば有効だが、MG戦闘においては到底使えるレベルではなかった。

 周囲にビルのような大きな建造物はないが、かなり日も落ちてきて薄暗い中である。全方位探知が不可能な現状では、隠れようと思えば難しいことではない。

(ならば、むしろ話は簡単だ。見つけた敵を全部倒せばいいだけのこと。迷うこともない)
 アレクシートは索敵を諦め、目の前の敵に集中することにする。そうした割り切りも彼の魅力であり、オロクカカが警戒したのもその性格である。

 実際、サンタナキアは防御を最優先に考えた。それは正しいが、あの場合においての相性としてはアレクシートのほうが良いのである。多大な犠牲が出るが、サンタナキアと二人ならばオロクカカを討ち取れる可能性もあったのだから。

 彼らはまだ知らない。バーンを討ち取るという功績が、この世のいかなる名誉にも勝ることを。

「第二騎士団長の首、安くはないぞ!! 身の程を思い知らせてくれる!」
 シルバーグランから真っ赤な戦気が燃え上がる。戦気は装甲の表面を走り、銀色の機体が赤くなったように厚い。

 彼も内心、怒り狂っていたのだ。

 もちろん自分自身にである。

 独断で騎士団を動かし、あまつさえ多くの部下を失った。彼らは優秀な騎士である。そのすべてはロイゼンの宝であり、カーリスを守る勇者たちなのだ。

 彼らを無駄死にさせてしまった。
 その想いがアレクシートを奮い立たせる。

「言い訳はしない。私が招いたことは、自ら責任を負う!!」
 アレクシートの心が炎気となってグレイブを覆う。即座に戦闘準備完了である。

 その様子にユニサンは舌を巻いた。

(まったく動揺していない。恐るべき意思の強さだ)
 普通の人間が失敗をすれば、少しは動揺したり後悔したりするものである。どんなに気丈な人間でも、わすかな気の乱れはある。

 しかし、アレクシートにはそれがない。

 失敗したことを正当化して誤魔化す気もなければ、逃げるつもりもまったくない。それどころか、自己に活を入れてますます強い力を発揮していく。

 完全に【英雄気質】。

 小事にこだわらず、目の前のことに集中できる。これはまさに大将の器である。まだ若く、ラナーの陰に隠れてはいるが、正真正銘の将なのだ。

 だからこそユニサンにはありがたい。

(最後に闘う相手だ。それでこそ価値がある)
 ユニサンには、いまだに場違いに感じていた。

 ここはどう考えても自分がいてよい場所ではない。アレクシートにしてもルシアの雪騎将にしても、どれもが一級品の武人たちである。名声も実力も、本来の自分ならば絶対に届かない相手。対峙することすら不可能な相手。

 それが目の前にいるのだ。

 悪魔に魂を売ったおかげで、自分もまた主役になれている。けっして目立ちたいわけではなかったが、辛酸を舐め続けた過去を思えば奇跡である。

「ならば、おのがすべてを出し尽くすのみ!!」
 最初に沈黙を破ったのはドラグニア・バーン。シルバーグランの前に身を晒すように突進すると、拳を繰り出す。

 ドラグニア・バーンは大型の機体で、シルバーグランの一回り以上大きい。それもドラゴンを模した半獣人のような様相。やや上部から繰り出される威圧感溢れる攻撃は、常人ならば恐怖の対象である。

「障害は叩き潰す!!」
 その様子にもシルバーグランは怖気づかない。

 真正面に立ち塞がりドラグニア・バーンを見据えると、グレイブを一閃。巨大で重い青龍刀のようなグレイブが、恐るべき速度で振り回される。

 激突。

 両者の武器が正面から衝突し、原因に対する当然の結果が訪れる。

 まず最初の結果。

 ドラグニア・バーンの繰り出した拳が、グレイブの威力に圧されて弾かれる。ユニサンの右腕を激しい衝撃が襲った。

(なんという一撃だ。このドラグニア・バーンの拳を弾くか!)
 現在のユニサンは強化された身体に加え、ドラグ・オブ・ザ・バーンの試作機でもあるドラグニア・バーンを使っている。ドラグニア・バーンのパワーは、そこらのオーバーギアを遥かに超える力を持っている。

 それを弾いたのだ。

 しかも最初に攻撃したのはユニサンのほう。あとから繰り出したにもかかわらず、シルバーグランのグレイブは悠々と間に合った。その振りの速さも桁違いである。

 そしてもう一つの結果。

(ダメージを与えられなかった。全部吸収したのだ)
 アレクシートも結果に驚く。

 弾いたとはいえ、本来ならば拳を粉々に砕くほどの強撃である。それを受けてもドラグニア・バーンは無傷。彼の周囲をまとっている闘気のせいである。

「一撃で倒せないのならば、何度でも叩く!!」
 シルバーグランは突撃。いくら強固な装甲と闘気とはいえ、強撃を続ければ破壊は可能である。怖れなく間合いを詰める。

「はっ!」
 それに対して、ユニサンは闘気波動で迎撃。

 ドラグニア・バーンのツインジュエルモーターが闘気の威力を二倍に引き上げる。ナイト・オブ・ザ・バーンのものよりも出力は数段以上劣るが、天才タオが開発した化け物モーターである。

 その威力は桁違い。

 左手から発せられた闘気波動は、シルバーグランを暴虐な力の渦の中に陥れる。まるで人間が暴風に立ち向かうように、なかなか前に進めない。

 しかし、それでも。
 それでも一歩。二歩。三歩!

「うおおおおおおおお!!」
 アレクシートの炎気が闘気波動に割り込んでいく。暴風に対して暴風で挑むかのごとき姿勢。

「このようなもので止まれるか!!」
 シルバーグランはグレイブの先端に戦気を溜めると、炎気によって割り込んだ隙間に一気に振り下ろす。ゼッカーのバイパーネッドを一撃で破壊した炎王強撃波である。

 その威力も同じく絶大。

 闘気に激突したグレイブは、まさに大爆発を起こす。その爆炎で両者が吹き飛ぶほどの衝撃である。

(まさか、強引に突破するとは!)
 ユニサンの闘気波動の威力は申し分なかった。そのまま圧力の中に閉じ込めれば、いくらシルバーナイトでも損傷を負っていたはずだ。

 それを強引に切り開く。力づくで破壊する。

 それにはユニサンも驚きである。同時に英断でもある。そのまま受けに回るよりも攻撃をしたほうが相手は嫌なものである。待ち伏せを得意とするオロクカカが、なぜ彼を嫌ったのかがよくわかる。

 だが、ロイゼンの若大将の無謀さは、それにとどまることはなかった。

「まだまだまだ!!」
 体勢を立て直したシルバーグランは、即座に突進。様子を見るとか間合いを広げるという発想は皆無。まったくない。最初から持たない。

 アレクシートの本領は攻撃。
 切り込みこそ彼の持ち味。

「斬り伏せる!」
 シルバーグランは、グレイブを回転させながら振り回す。その戦い方は、まるで戦場で敵に囲まれている時のようである。周囲一帯を強引にねじ伏せる剛の剣である。

 ドラグニア・バーンも対応。強引にくる相手の動きをしっかり予測し、一つ一つを的確に防御していく。振り下ろしは力を受け流し、横薙ぎはしっかりとナックルを当てて防ぐ。一撃一撃は重いが、けっして対応できないものではなかった。

 その攻防がしばらく続く。

(この男、防御が上手い。サキアのようだ)
 アレクシートも思わず唸るほどの捌き。同じく防御の上手いサンタナキアを思い出す。

 アレクシートとサンタナキアの模擬戦は、いつも膠着状態に陥る。アレクシートの剛撃に対して、サンタナキアは常に防御を優先させて対応していく。お互いの技量は似たり寄ったりなので、次第に体力が尽きて引き分けになる。

 サンタナキアも攻撃力は高い。その気になれば相討ちくらいにはなるだろうに、模擬戦ということなのか、常に防御の姿勢なのがアレクシートには気に入らない。

 が、そもそもそれが普通なのである。近代戦闘で重視されるのは防御である。いかに損害を出さないか、深刻なダメージを負わないか、生存第一なのは当たり前なのだ。

 一方、アレクシートはもともと身体が丈夫なので、防御を疎かにしても致命傷を負うことは少ない。当然ながらサンタナキアも殺し合いなどはやらないので、相討ち狙いもしない。アレクシートが攻撃特化したのは必然の流れである。

 しかしながら、今この場においては話が違う。
 命などいらないという男がいるのだ。目の前に。

 打ち合いが二十回ほど続いた時である。シルバーグランの攻撃に対してドラグニア・バーンが飛び出した。誰が見ても危険な行為である。アレクシートも反射的に、いつもの調子で攻撃にいく。

 ドラグニア・バーンは防御の姿勢を取らずにグレイブの直撃を受ける。一撃は重く、さすがのドラグニア・バーンとて、攻撃が入った頭部に亀裂が入る。

 アレクシートは一瞬勝ったと思った。いつもならば、一撃が入った相手は必ず倒れるからだ。

 だが、その思い込みこそが最大の隙となる。

「肉はいくらでもやる。だが、骨はもらう!!」
 ドラグニア・バーンは、ダメージを受けながらも止まらない。

 獣の如き速度で懐に入り込むと、渾身の一撃をシルバーグランの胴、攻撃によって防御ががら空きとなった右腹部に、まるで龍が空に昇るかのような強烈な一撃を叩き込む!!

「ーーーーっ!」
 その瞬間のことは、アレクシートは覚えていない。一瞬であるが意識を失ってしまったのだ。

 ただし、意識を失ったのは衝撃によって生身に影響を及ぼしたからであり、直接的な損傷ダメージの影響ではない。

 問題はもっと深刻である。

 ドラグニア・バーンが攻撃したのは、人間でいえば肝臓。ボクシングでリバーブローをもらったようなもの。ここには何があるのか。

 パイロットから見てコックピットの右側には、ダイレクトフィードバックシステムの補助装置がある。ここはジュエルモーターから送られてくる情報を処理する場所でもある。

 ユニサンはここを叩いた。
 それが意味するものは。

「ぐううう…がはっ」
 意識を取り戻したアレクシートの視界が、白い斑点で埋め尽くされる。

 痛みよりも冷や汗が溢れて、激しい悪寒を感じる。その気持ち悪さは言葉では言い表せない。内臓を誰かに掴まれる気味の悪さと恐怖、といえば多少はわかるだろうか。

(なんだ…これは…。力が入らない…)
 このような攻撃をアレクシートは受けたことがなかった。初めての経験に思わず手足が止まって硬直してしまう。

「ドラグニア、暴虐の爪を!!」
 硬直したアレクシートを見逃すほどユニサンは甘くはない。

 ドラグニア・バーンの右手から爪が伸び、荒々しい凶器となる。それを今度はコックピットに叩き込む。

「この程度…で!!」
 シルバーグランはグレイブを引き戻し、ギリギリのところで防御に成功。だが、伸びた爪はコックピットの装甲を抉る。

 瞬間、アレクシートは腹に熱いものを感じた。ダメージ還元である。しかもいつもより反応が過敏であった。フィードバックシステムに異常が発生しているのかもしれない。

 感覚が過敏になることは、けっして良いことではない。それだけ痛みにも敏感になってしまうからだ。訓練すれば武人は痛みを消すこともできるが、MG搭乗中はこれが案外難しいのである。

(くっ、ダメージを回復しなければ!)
 アレクシートは咄嗟に下がる。これは信条など関係なしに、身体がそれを要求したからである。さすがの彼も、現状のダメージでは従わねばならなかった。

「逃がしはしない!」
 ドラグニア・バーンは追撃の手を緩めない。動きが鈍ったシルバーグランを容赦なく追い込む。

 まずは右の拳で敵の防御を誘い、その隙に再び腹部に左拳を叩き込む。それを防御しにきたグレイブを見ると、今度は相手の左腹部を狙う。

 だが、それも囮である。

 相手が反射的に左腹部を防御しようと身を屈めた瞬間、ユニサンが狙ったのは突き出したシルバーグランの右肘である。フェイントを交えて放った一撃は、重さこそ並であったが、確実にシルバーグランの右肘を捉える。

「ぐっ!」
 その痛みに思わずアレクシートも呻く。

 無理もない。突き出した肘は無防備である。自分の肘を叩いてみればわかることだが、ここを強く叩かれると、痺れて肘が伸びなくなる。

 そう、急所である。

 人体にはいくつもの急所があり、人を模したMGにも幾多の急所が存在する。それは設計者も知っているので、MGの中には肘あてを装備しているものも多い。

 だが、大型の得物を振り回すことを優先しているシルバーグランは、肘関節があまり強くない。サンタナキアのシルバーフォーシルとは別の意味で、機体の可動域を広げようとした結果である。

 ユニサンはそこを狙ったのだ。

 彼はただ受けていたのではない。相手の攻撃を観察していたのだ。初動はどこで、どうやって力が伝わって、どれくらいの攻撃になるのか。防ぎながら突破口を探していたのだ。

「くらえ!!」
 ドラグニア・バーンが炎龍掌を放つ。膨大な爆炎が噴き出し、シルバーグランを襲った。

(ふん、この程度の炎など効かぬ)
 シルバーグランは炎に対して絶対的な耐性を持っている。バイパーネッドの自爆にも無傷だったほどである。いくら炎龍掌でも炎気を使っている以上、シルバーグランに対しては無効である。

 そんなことはユニサンも知っている。

 ここで再び国際連盟側のハンデが浮き彫りになる。ラーバーン側は、事前に相手の情報の大半を取得している。どの艦隊が来るかも知っており、有名な騎士や魔人機のデータをすでに持っているからだ。

 すべて対策済みなのだ。

 状況によって多少変化するだけで、それらもほぼ想定の範囲内である。唯一の誤算であるハブシェンメッツによって一時的に停滞したが、そもそも万全の態勢で奇襲を仕掛けたラーバーン側が有利なのである。

「シルバーグランが炎に強いことは知っている。だからこそ油断となる」
 ドラグニア・バーンは、自己が作り出した炎の中に飛び込む。何気ない行動であるが、実はこうしたことをやる武人は少ない。

 武人は、自分が放った技で傷つく。

 この当たり前の原則があるからだ。自分が作ったとはいえ、生み出した物理現象は自分すら焼くことになる。ユニサン自身も、アズマとの戦いで自らの炎でダメージを負ったことが何よりの証である。

 それでも飛び込むのは勝算があるからである。

 この時、アレクシートはまったく想定していなかった。ユニサンが飛び込んだこともそうであるし、ドラグニア・バーンもまた、炎に耐性があることを。

 ドラグニア・バーンの属性は炎。シルバーグランと同じ属性である。同じ属性が戦う場合は、当然ながら【格】の差によって力関係が決まるが、今回の場合は両者ともに互角であろう。

 ならば、勝負を決めるのは武人の差。実力ではアレクシートのほうが上である。

 だが、若い。
 アレクシートは、まだ若かった。

 いかなる素養を持っていても、彼はまだすべての潜在能力を発揮してはいない未成熟な個体。一方、ユニサンはアレクシートには劣るが、そのすべてを出している成体である。

 爆炎に飛び込んだドラグニア・バーンは、一気に間合いを詰めてシルバーグランに肉薄する。

「なっ!」
 アレクシートは、これにまったく対応できない。相手の情報を知らないことは恐ろしいことである。それ以上に、こちらの情報をすべて知られているのは、もっともっと恐ろしいことである。

 ドラグニア・バーンは、左腕をガードの中にこじ入れ、ぐっと【間】を作った。

「俺のすべてを持っていけ!!」
「しまっ…」
 アレクシートが何をやろうとしても間に合わない。さきほどのリバーブローが効いていて、踏ん張りが利かないのだ。

 そこに全力の虎破。

 ドラグニア・バーンによって高められた、ユニサン最大の攻撃手段を叩き込む!!!

 ドグシャッ

 妙な陥没音が響いた瞬間、シルバーグランは吹き飛ばされる。その勢いは野球のホームランボールのごとく、高々と空に舞うほど。

 そして落下。

 満足な受身を取ることもなく、シルバーグランは大地に叩きつけられた。何かの施設の金網を破壊しながら、ようやく止まる。

「はぁはぁはぁ!!」
 ユニサンは、その光景に歓喜していた。わけではなかった。

(身体が…重い。もはや呼吸はできぬか)
 すでに肺が動きを止めつつある。練気ができずに戦気の放出が不安定だ。さらに志郎たちとの戦いによって、心臓も一度潰されている。血液の循環も止まりつつあった。

 生きていることが不思議なくらいの状態であるが、ザックル・ガーネット〈不変の憎しみ〉の力によって、かろうじて生き延びているのが現状である。ガガーランドの援助がなければ、すでに死に絶えているだろう。

(憎しみはない。やはり湧き上がってはこないか)
 ザックル・ガーネットの力の源である憎しみは、アズマによって斬られた。すでに完全に断たれてしまったようで、周囲の憎しみを満足に吸収することができない。

 こうなれば、残った力は魂の力。
 人が持つ炎の力だけである。

 それは怒り。

「怒りを燃やせ!! 俺にはまだ怒りがある!!」
 自らの血を、肉を、魂を燃やし、戦気とする。

 ユニサンの黒い般若の身体全体にヒビが広がると、そこから赤い蒸気が噴き出し、コックピットが赤く染まっていく。これはもうオーバーロード以上の、存在そのものを燃やした最後の抵抗である。

(これは…何だ?)
 アレクシートは、虚ろな視線で空を見上げていた。

 そこに見えたのは、ドラグニア・バーンから発せられた赤い霧が、まるで生きているかのように蠢いている姿。目の錯覚か、般若のような、おどろおどろしい形相をした人間の顔が見えた。

 ごふっとアレクシートが口から吐血。自らの状態を探ってみると、目も当てられないような惨状が広がっていた。追い討ちをかけるようにAIが治療を提案。

〈出力約二十五パーセントダウン。これ以上の戦闘続行は人体に深刻な影響があります。止血剤とアルビオンの投与を提案〉

 モニターには、人体スキャンの結果が表示される。
 腹筋と小腸がずたずたに破壊され、常人ならば七転八倒の痛みを受けているか、とっくに気絶あるいは死亡しているレベルである。それ以外にも細かい損傷は多く、かなりの重傷である。

〈自動制御による撤退を提案します〉
 この状況は、AI側が戦闘を避けることを提案するくらいに酷い。

 通常、撤退の目安が三十パーセントの出力低下である。この段階にくれば、もう戦闘不能と考えてもよいだろう。ただ、これで済んでいるのはアレクシートの肉体が強いからである。

 同じ剣士であったアズマがくらえば腹がなくなったほどの一撃。その直撃を受けて、まだこの程度で済んでいることが驚異なのである。

(跳んでいなければ死んでいたかもしれんな…)
 直撃をもらう瞬間、最後の力を使って自ら跳んだ。それが最悪の事態が避けられた要因である。最後まで諦めなかった。その意思の強さこそが彼の強さでもある。

 それでも戦闘が難しい状態であるのは事実。

 それが通常の戦闘であれば。
 これが単なる模擬戦であれば。

「ふざけるな…。ふざけるな!!! アルビオンなどもいらん!! 私に恥をかかせるな!!」
 アレクシートには、痛みなどはもうなかった。それ以上に感じているのは、なんと皮肉なことに、ユニサンと同じ怒りである。

 自分自身に対する怒りがピークに達する!!
 身体中の血が燃え上がり、急速に身体をめぐっていく。

 燃えるように熱い、熱い、熱い!!!
 怒りが彼を突き動かす!!

 アレクシートの気質は炎。奇しくもユニサンと同じもの。
 だから立ち上がる!!
 戦うために! 勝つために!!

「私は理想のために戦うのだ!! ラナー卿とともにカーリスに新たなる秩序を打ち立てる!!」
 アレクシートが第二騎士団長の座に甘んじているのは、ラナーを崇敬しているからである。

 ラナーは現在のカーリス教の内部体制について不満を抱いている。エルファトファネス法王にではなく、その周囲に対してである。ラナーは改革派の急先鋒であり、アレクシートも同じ【改革女神派】に属する改革左派である。

 アレクシートは出自の低いラナーに変わって、貴族出身のカーリス騎士たちの支持を集める役を買って出ている。その甲斐もあってか、騎士団の六割はラナー側が掌握していた。

「お前たちは邪魔なのだ! このタイミングで出てくるなど、嫌味でしかない! 敗北は許されないのだ!」
 アレクシートの信仰心が燃え立ち、意思の力で機体を持ち上げる。

「許さん!!! 貴様ら全員、地獄に叩き落してくれる!!!」

 アレクシートの中で、何かが弾けた。
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