表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/703

前話 <アルター王国三巨頭>

( ̄(エ) ̄)<分割スタイルで四章開幕クマ!


(=ↀωↀ=)<分割とは四章丸々連続でなく、四章内での大きな区切りごとに連日投稿とお休みを繰り返す方式です


( ̄(エ) ̄)<「四章連日投稿①→お休み→四章連日投稿②→お休み→四章連日投稿③」と


( ̄(エ) ̄)<元々「全部書きあがるまでお休み→四章連続投稿」ってなる予定だったのを分割する感じクマ


(=ↀωↀ=)<再構成した四章を実際書いてみたら妙に長かったので


(=ↀωↀ=)<「これ四章全部書き終わってからだと投稿開始が延びるな」と予想されたのも理由の一つです


( ̄(エ) ̄)<だから出来上がってる部分を区切りごとに連日投稿して、連日投稿+お休み期間で残りも書くって感じクマ


(=ↀωↀ=)<そんなわけで若干変則ですけど四章スタートです

 □■???


 <Infinite Dendrogram>の時間で一年と少し前……王国で一体の怪物が暴威を振るった。

 その名は【三極竜 グローリア】。

 史上三体目に確認された<SUBM>。

 三つ首を持つ大魔竜であり、

 神話級金属(ヒヒイロカネ)さえも融解させる光のブレスを放ち、レベル499以下の人間とレベル99以下のモンスターを絶死させる結界を有し、何より破格のステータスを誇っていた。


 【グローリア】は王国の山岳地帯に出現し、天災の如く荒れ狂いながら王都に向けて移動していた。

 そのままならば、遠からず王都は【グローリア】によって滅ぼされる。

 ゆえに何としてもグローリアを討たねばならなかったが……【グローリア】に対して王国の軍勢は無力だった。

 力量の次元が違うこともあったが、そもそも《絶死結界》のために戦えるものすらほとんどいない。

 王国のティアンでもレベル500を越える者は【大賢者】と【天騎士】ラングレイ・グランドリアという二人の超級職、それと近衛騎士団副団長など少数の上級職しかいなかったのだ。

 しかし彼らが出陣したとしても、強靭極まる【グローリア】との勝率は決して高くはない。

 王国が滅亡する日も近い……世界中のティアンがそう考えていた。


 だが、そんな【グローリア】に対して立ち上がった者達がいた。

 それは王国に所属する<マスター>……プレイヤー達だ。

 彼らはいずれも最上級の猛者――廃人達。

 <Infinite Dendrogram>発売から【グローリア】襲来までの間に己のレベルをカンストした、あるいは超級職を手に入れた者達だ。

 ティアンにとっては国家存亡であるが、彼らにしてみれば始まって以来の一大イベントである。

 我先に【グローリア】に挑み、討伐せんと戦った。


 そして結果はどうかと言えば……全滅した。


 【グローリア】が強かったことも大きいが、理由はそれ以前の問題だった。

 <マスター>達が協調できなかったのである。

 パーティ単位では連携を取れても、それ以上の規模での連携は不可能だった。

 旧来のMMOで言えば超大型多人数戦闘(レイド)ボスに相当する【グローリア】に対し、少数でバラバラに挑んでも勝てる訳がない。

 だが、<マスター>にしてみれば、【グローリア】討伐において多人数で連携することこそが下策だった。

 なぜなら、【グローリア】は<UBM>の頂点である<SUBM>。

 倒してMVPを獲得すれば……確実に最上位装備である超級武具を入手できるからだ。

 ゆえに、彼らは多人数で連携できない。

 人数が増えれば増えるほど、自身がMVPを獲得できる確率が減るからだ。

 彼らは既にレベルをカンストした廃人であったがゆえに、そこで妥協できなかった。

 そうして彼らは全滅した。


 ティアンには戦う力がなく、<マスター>は連携できず全滅した。

 やはり王国はお終いかという段になって、彼らが現れた。

 それは王国にいた三人の<超級>。

 【破壊王】シュウ・スターリング。

 【超闘士】フィガロ。

 【女教皇】扶桑月夜。

 当時まだ<超級エンブリオ>に進化していなかった“酒池肉林”のレイレイを除いた三人。

 各々がランキングのトップランカー。王国の<マスター>の中で最強である彼らならば……と考えるものは多かったが、同時にこうも考えた。

 彼らも<マスター>である以上、連携がとれずに敗北するのではないか、と。

 実際、その読みは正しい。

 戦いに挑む際に、彼らの内の一人が放った言葉が以下のようなものだったのだから。


「まずは僕が一人でやる」


 そう言って、ソロ専門の脳筋がパーティ単位どころかソロで【グローリア】に挑んだ。

 彼我の戦力差は、<超級>であるフィガロをしても絶望的なものだった。

 だが、フィガロは折れず、生き残り、戦い続けた。

 そうして、消え去る瞬間には三つ首の一つ――光のブレスを放つ首を道連れにした。


「ほな、次はうちらがやりますえー」


 そう言って扶桑月夜は――、


「あれにはうちの必殺スキルは効果あらへんやろうけど、なら数で挑むえー」


 ――信者を従えた<月世の会>の教祖は、【グローリア】に対して初めてレイド戦を挑んだ。

 当時の<月世の会>のトップクラスの<マスター>、三十四名による連携の取れた集団戦闘。

 その戦力を以ってしても結果は全滅だったが、三つ首の一つ――《絶死結界》を展開していた首を道連れにした。


 そうして、最後に残った一人と一首。


「……首一本になったらステータス上がりやがったな」


 【グローリア】は己の力の使い道である二つの首を失ったことで、自身のステータスそのものをさらに高いレベルに引き上げていた。

 もはや、シュウの<超級エンブリオ>であるバルドルの砲撃でも、その耐久力を突破できるかは不明瞭だ。

 ゆえに、彼はそれを選択しなかった。


「なら、殴り合い(・・・・)でケリをつけてやる」


 両者は誰も目撃者のいない山岳地帯で睨み合い、


「――《■■■■■(バルドル)》」


 ――雌雄を決するべく戦った。


 結果は一人の勝利。

 三つ首の最後の一本が潰え、【三極竜 グローリア】は消滅した。

 三人の<超級>の手によって、大魔竜の三本の首が断たれたのだ。


 そして人々は彼らをこう呼び始めた。

 【グローリア】の三つ首を断ったもの。

 三つ首龍を超える者達。

 アルター王国が誇る三人の絶対強者トップランカー


 彼らこそは<アルター王国三巨頭>、と。


 ◇◇◇


 【グローリア】討伐から<Infinite Dendrogram>の時間でおよそ半年後。

 【グローリア】との戦いで轟いた<三巨頭>の勇名も翳りが見えていた。

 理由は、彼らが各々の事情でドライフとの戦争に参加しなかったことだ。

 ゆえに一部からは、<三巨頭>はドライフの<超級>に戦う前から負けていたのではないか、と揶揄された。

 だが、その事情は変わった。

 <Infinite Dendrogram>の時間で一ヶ月前の、ギデオンでの出来事が切っ掛けだ。

 まず、<三巨頭>の【超闘士】フィガロは、ギデオンで開かれた<超級激突>にて黄河帝国の<超級>である【尸解仙】迅羽を撃破。その力が他国の<超級>に劣るものではないと見せつけた。

 同じく<三巨頭>の一人であり、“正体不明”と謳われた【破壊王】シュウ・スターリングも、その正体を明かした上でギデオンを襲ったドライフの<超級>……【大教授】Mr.フランクリンの数万体のモンスター軍団を殲滅し、その力と存在を強く誇示してみせた。

 そう、フィガロとシュウの二人はアルター王国の国内に、そして国外の数多の国に「アルター王国に<三巨頭>あり」と再び知らしめたのだ。


 さて、ギデオンでの事件を切っ掛けに、再び<アルター王国三巨頭>の勇名は復活した。

 自然、周囲の注目は残る<三巨頭>にも向けられる。

 そして<三巨頭>の最後の一人、【女教皇】扶桑月夜はと言えば……。



「ひーまーやー。なーんもすることないわー」



 自身のクラン<月世の会>本拠地の奥座敷でゴロゴロと転がっていた。


 二十歳前後の見た目だが、幼い子供のように畳の上を転がり……それでいてその仕草がどこか似合っている。

 なお、転がったせいで身に纏った高価な――神話級の特典武具なので値がつけられない――十二単じゅうにひとえが畳と彼女に挟まれて皺になっているが、お構いなしだ。


「なーなー影やーん。また王都周辺にPKとかでてへーんー? こう、因縁つけて千人がかりでボッコボコーにできそうな案件ないんー?」


 <Infinite Dendrogram>の時間で先月、クラン<月世の会>はメンバーをデスペナルティされた報復――という建前――でPKクラン<K&R>を殲滅した。

 それと似たような事案はないかと、月夜は<Infinite Dendrogram>でもリアルでも己の秘書を務める【暗殺王キング・オブ・アサッシン】月影永仕郎に尋ねた。

 月影は彼女と同様に二十歳前後の容姿だが、それでいてどこか熟練の執事めいている。

 月影は恭しく頭を下げながら、彼女に返答する。


「王都近郊ではPKに類する事件は起きていません。事案としては未だ<流行病>が蔓延しておりますが、ご存知のように死ぬ類の病ではありません。悪性変異もないことから、症状が軽い代わりに長引くタイプではないかと分析が上がっています」

「ふーん。うちはさっさと治したけどなー。病気は罹り始めが肝心やもん」

「それと、少数ですが信者にも新たに罹患した者が出ていますので、後ほど対価を払った者には治療をお願いします。また、第一王女や来訪中の黄河第三皇子は自然に快復しましたが、新たに王国の重臣で罹患するケースもあるようです」

「そうなん? けどうちは今回もなーんもお城から呼ばれてへんけどー」


 「今回も」と彼女が言ったように、<流行病>が流行し、王族が罹患しても……彼女は王城には一度も呼ばれなかった。

 回復魔法スキルに秀でた司祭系統の超級職である彼女が、だ。


「恐らく、第一王女は月夜様の手を借りたくないのでしょう」

「うちの【女教皇】のスキルなら<流行病>でも何でも治せるのになんでやろねー」

「死ぬほどの病でもないため、月夜様に借りを作るくらいならば自然快復を待つ、と考えたのでしょう」


 月影の言葉に、月夜はコロコロと鈴の音のように笑う。


「いややわぁ、このくらいでそんなおーきいこと要求せーへんよー」


 「王女様は心配性やなぁ」とまた笑って、


「王都周辺の国教教会を十軒くらい<月世の会(うち)>の宗教施設に変えさせてもらえればそれでええのにー」


 考えようによっては、非常に重い対価を述べた。


 「病気を治す代わりに、王国内での<月世の会>由来の宗教施設の割合を増やす」とは彼女が普段から王国に対して掲げている条件だ。

 これが彼女のやり口だ。

 仮に、今回の<流行病>が致死性のものであるならば、上記の条件であっても国は呑まざるを得なかっただろう。

 常に大きな対価を提示し、相手がそれを呑まざるを得ない状況を待つのである。

 加えて、彼女が司祭系統超級職【女教皇】の地位についている以上、彼女以上の回復魔法スキルの使い手がこの国に出てこないことを見越した手でもある。

 現在王国内のティアンには<月世の会>の信者が増加傾向にある。

 それは従来の国教教会の施設と同じように病や怪我を<月世の会>の施設で治療してくれること。

 そして、国教教会では対応できない重篤な病や怪我でも、対価によっては月夜自らが瞬く間に治してみせる。

 ただし、その処置を受けられるのは信者だけである。

 そのため、治療活動を通して信者が増えている

 

 既存の宗教を侵食するように、王国における<月世の会>の規模は拡大しているのだ。

 過去の地球の歴史で言えば、国の主導で宗教弾圧が起きても不思議ではないほどの状況。

 が、それは不可能だ。

 なぜなら、扶桑月夜をはじめとして<月世の会>の上層部は<マスター>で占められている。

 不死身の<マスター>を、どう弾圧すればいいと言うのか。

 加えて、<月世の会>にはあの【グローリア】に挑めるだけの廃人を多数抱え、あれからさらに人数と戦力を増やしている。

 廃人ゆえに当然のように他国にもセーブポイントを登録しており、もしも王国で指名手配されても問題がないようには準備している。

 そのため、王国は徐々に勢力を増す<月世の会>を厄介に思っていても、敵対は出来ないでいる。

 それをすれば……後に起こるのは<超級>に率いられ、戦闘力に特化した<マスター>を抱えた宗教組織との宗教戦争だ。

 最悪、一クラン相手に王国を潰されかねない。


「ほかにはないんー?」

「そうですね。一つ、面白い話があります」

「聞かせてー」

「先のギデオンの一件ですが」

「あー、あれずるいなー。あの二人大活躍やーん。うちも暴れたかったわー」

「月夜様が暴れたら死屍累々ですので、可能な限り避けてください」


 月影は月夜が懐に差している短杖を――《絶死結界》を展開する超級武具【グローリアβ】に視線を向けながら注意した。

 あの大魔竜が使った《絶死結界》より効果は弱まっているが、それでもレベル100までの人間なら即死する。

 都市防衛戦でそんなものを使えばどうなるかは言うまでもない。


「ぶーぶー。だってひまなんやもーん」

「存じています。ですので、これを」


 月影はアイテムボックスから写真を一枚取り出して月夜に手渡した。

 それはギデオンでの事件でのワンシーンを切り取ったもの……写真にはボロボロになりながら右手を掲げる金髪の青年の姿があった。

 それはあの事件の折、レイがフランクリンの改造モンスター【RSK】を倒した瞬間の写真だった。


「あ、この子なー。うちもフーちゃんの中継見てたわー。ええ子やったわー」

「彼がメイデンの<マスター>であることはご存知ですか?」

「あ、そうなん?」

「加えて、あの戦闘で左腕を失い……デスペナルティで治さないまま(・・・・・・)今まで過ごしているとか」

「…………へー」


 それを聞くと、月夜は笑みを深めた。

 見る者によってはとても楽しそうな笑顔だった。

 見る者によっては――獲物を狙う肉食動物の表情だった。


「それは面白そうやねぇ」

「消閑の目処が立ち、何よりです」


 自らの仕える相手の楽しそうな顔を見て、月影は心からそう思った。


「影やん、その子をここまで呼んできてーな」

「御意に」


 直後、月影は自らの影の中に沈んだ(・・・)

 足先から頭頂部まで全身が影の中に呑まれ、そのまま文字通り影も形も(・・・・)なくなってしまった。


「さーて、勧誘の準備せなー。話したらどんな子なんやろなーたのしみやわー」


 月夜は寝転がっていた体勢から立ち上がり、うーんと伸びをする。

 それから、奥座敷の一点へと視線を向ける。


「その子の<エンブリオ>はメイデンらしいから、ちょっと楽しみやろ――カグヤ」

「ええ。あなたが楽しみにしているのと同じくらい楽しみよ、月夜」


 そこには不思議な装いの女性が正座していた。

 まるで天女を思わせる羽衣を纏い、月光にも似た色合いの長い髪を揺らしている。

 幻想的な……しかし月夜とは違う空気を感じさせる。

 “カグヤ”の名の通りに、まるでこの世界から離れているかのような雰囲気だ。


「うふふ、楽しみ。そう、楽しみ。どうやら■■■も一度使っているようだし、うふふふふふふ」


 カグヤは――<超級エンブリオ>TYPE:メイデンwithインベイジョンワールドは笑う。

 結んだように目を閉じながら、笑う。

 これからここに訪れる、一人の<マスター>と一体の<エンブリオ>との邂逅を楽しみにして。


「おいでなさいな新米女神ネメシスさん。これが可愛がってあげるから……うふふふふふふふふ」


 カグヤは、笑う。

 それは、<マスター>である扶桑月夜も同様だった。


 その笑みこそが、<三巨頭>最後の一人にして最凶と謳われる<超級>が、レイとネメシスに対して虎口を開いた瞬間だった。


 Open Episode 【第三の力】


(=`ω´=)<出番やー

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ