第7話「警報」
塔の内部に一般市民が入るのは容易だ。
なぜなら週に一回、集会が開かれるからだ。ステンドグラスの美しい広い講堂となっており、巨大なパイプオルガンが入り口の反対側に据えられている。大戦前の文献に残る教会という場所を模して作られたとのことだ。
裏口から入った場合、そこを通ることはない。あくまでそちら側はこの塔の表向きでしかないということだ。裏口から入った場合には直接、この塔の裏の部分に触れることとなる。
神の住まう領域。
表でも裏でもそれは変わらない。ただ変わるのは一点のみ。
信仰の対象か、支配の手段か。それだけだ。
エミネが調べようとしているのは、その裏の部分。
神の存在意義だ。
そして、神官と呼ばれる地位の人間がこの世界には存在する。それは実質、政治などの権限を握っているに等しい。神に最も近い人間たちなのだから。
いわば彼らが神を支配の手段としている、というのがエミネの考えだ。その裏づけのための調査である。
少しの光だけでその空間全体が明るくなるほど、塔の中は白い。純白で、無垢なイメージをそこから受ける。もちろんそう思わせることだけが目的ではないのだろう。
白ければ汚れは目立つ。少しの異変でもすぐにわかるということだ。
「ま、こうすれば問題はないわけだけど」
真っ白な空間の一部からそんな声がした。エミネだ。その姿は白の空間に溶け込み、肉眼ではどこにいるか確かめることができない。
電子迷彩。過去の大戦がもたらした技術革新。その成果の一つである。エミネが露出を減らしていた理由がこれである。彼女の着ているボディスーツには電子迷彩の機能がつけられており、ヘッドセットに機能中枢がある。
この技術のおかげで、戦闘中の隠密行動の難度は格段に下がった。ただし、その反面、センサー類の技術発展というものも著しかった。電子迷彩を施したところで、体重が消えるわけではないし、熱量の放出も隠し切ることはできない。
そのため、電子迷彩中でもエミネは慎重に行動せざるを得なかった。
まさかこのような場所に超高感度センサーがないわけがないだろう。普通のカメラの類はやたら目に入った。その一つにでも熱探知用のものがあれば気づかれてしまう。
幸運にもいままでそのセンサーはなかったようだった。
入り口から続く通路を抜けた先には、巨大な円柱の底のような空間が広がっていた。エミネが来た通路の反対側にも入り口が……いや、この空間を中心に放射状に通路が続いているようだった。円柱の側面には通路の入り口がいくつもある。そして中央にそびえる螺旋階段。
「この上ね……」
エミネは油断なく辺りを見回すと、螺旋階段へ脚をかける。
その瞬間だった。
―――・ヴィ――――――・ヴィ―――――――――・ヴィ―――――――
破裂するようにして警報音が響き渡った。 |