第6話「侵入」
紅色の月が黒い夜空にぽっかりと浮かび上がっていた。砂漠から町へと吹き抜ける風が肌に冷たい。星はほとんど見えない。過去の戦争などでこの星の大気は汚れてしまったからだ。ぽつり、ぽつり、と昔は一番輝いていた星が、今うっすらと見える程度。
リンレイベルの中央にそびえ立つ神の住まう塔。その足元には砂漠の町には不似合いなほど緑の茂る公園がある。どの町でも塔の麓は大概そのように整備されている空間となっている。いわば権力の象徴。神の存在の大きさというものを物語っていた。
その茂みの一部があやしげにうごめいた。
がさごそがさごそ……
姿を現わしたのはエミネだ。服装は露出をなくすようにタイツのようなものを履いた以外、昼間と変わりはない。指先が出るタイプの小型のグローブをはめた手には、小型の自動拳銃が握られている。ただ最新式のものに比べれば骨董品とも言えるような古い型だ。使いこまれているようで、ところどころ傷が目立つ。
「さ、て……」
一しきり辺りを見回すと、エミネは暗視ゴーグルつきのヘッドセットをつけた。戦後の発電不足のため、公園といえども点灯している街灯はほとんどない。それゆえ視界はほぼ闇で閉ざされている。
ふと視界の隅にうごめく物体を見つけた。
――アイゼントルーパー……?
視界に入った物体――それは人型をした黒い影だった。この影は、大戦中に開発された人型兵器・アイゼントルーパー。別名・疲れを知らぬ兵士。その名の通り、機械の兵士だ。
下手に動けばこちらが発見されてしまうだろう。
――さて……どうしようかしら……
さすがのエミネでもここまで警備が厳重とは思わなかった。アイゼントルーパーが一体いるだけで、調査の困難さというものは格段に上がる。それにまさか一体だけとは限らないだろう。
どうにかして塔までたどり着かなければいけない。
と――――
バァン!
――破裂音?……いや、銃声?
音に反応したのか、アイゼントルーパーのゴーグル内の目が点滅をする。そしてすぐに音のした方向へと消えて行った。
「ら、ラッキー」
つぶやくと事前に調べてあった塔の裏口へとエミネは向かった。
裏口はその名の通り、正面と比べれば小ぢんまりとしたもので、草むらに隠れるようにして存在していた。ちなみに正面の門はもっと豪華なもので、その権威を顕している。
草むらをかきわけると、塔の壁面に行き当たる。そこには人一人が通れるだけのドアが作られていた。脇にはテンキーが設置されている。赤い小さなライトが点灯していた。
「腕の見せ所ですかね〜」
わきわきと手を動かすと、すさまじいスピードでテンキーにコードを打ち込む。最後にエンターキーを押し込むと、一瞬の間の後、ライトが緑に変わる。
「これで、よし、と」
ドアのすぐ前まで進むと、ドアは自動で開いた。
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