第2話「街」
一台のホバーバイクが日差しの強い砂漠を疾走していた。バイクに跨る人は砂漠に紛れるような色をした布を頭からかぶり、さらにフードをし、顔に対してやや大きめのゴーグルをつけている。
白い砂塵を巻き上げるバイクの先には一つの街があった。
ぽつんと砂漠に孤立するように存在するその街はこの戦後に生まれた広大な砂漠地帯のオアシスを中心に栄える街の一つだ。
街=都市としての機能があるため、入るためには審査が必要となっている。
バイクのライダー……エミネ・クラックス。年は十七ほど。ボブカットにされた髪が乾いた風になびいた。
審査受付ゲートの前まで来るとバイクを停め、砂塵避けの布を脱ぐ。
すらっとした四肢に機能性を追及したようなやたらとポケットのあるジャケットを羽織っていた。デニム生地のタイトスカートから伸びる脚にはポシェットのような小物入れが巻きつけられるようにしてセットしてある。さらにバックパックと、少女が一人で旅をするにはいささか重装備な気がしなくもない。
「次の方?」
「あ、はい」
呼ばれたことに気づくとエミネはバイクを押しながら受付へと近づいた。係員の前にやたらとごちゃごちゃしたバックパックを置く。
「入街目的は?」
「観光です」
「おや、珍しいものをお持ちですね」
そう言い係員が取り出したのは映像記録用デバイスだ。
大戦前の遺産としてこれらの遺産(過去は電子機器類と呼ばれていた物)を持つ者は稀だ。それもそのはずで、それらの大半は過去の大戦で失われてしまっているからだ。
ただし、発見された物は現在の技術で解析され、新たに開発されている。そのため電子機器類が普及していないというわけではないのだ。稀である、と前述したのはエミネが持っているデバイスがマスターピース(一点物)であったためだ。つまり発掘されたそのままの物であるということである。
「はい。実は職業で……」
「職業?」
「ジャーナリストをやっていまして」
「ははぁ……その若さで」
係員は感心したような目つきで微笑した。エミネも微笑み返す。
「はい」
「そうだね。不審な物もないようだし。パスポートはあるかい?」
促されるとエミネは太もものポシェットから赤いパスポートを取り出した。係員がそこにスタンプを押す。この習慣だけは旧世紀から変わる事がない。
「ようこそ、『リンレイベル』へ」
係員の声を背にエミネはバイクへ戻り、バックパックを担ぎ直した。
|