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しょうがないじゃん!!

作者: 零灑



※この小説に出てくる咲来は、別にそっちの気はありませんのでご注意を。

ただ人の反応を面白がっているだけですので



困っている女の子がいたら、すぐさま手を貸し

ナンパされている女の子がいたら、ナンパ男を蹴散らす―………


困っていたら、色んな人に助けられ

街を歩けば、ナンパ男にナンパされる―………


そんな対照的な、あたし達。


そこらに居る男より、男らしい少女・・。  


そこらに居る女より、女らしい少年・・。  


そんな二人の口癖は―………『しょうがないじゃん!!』






「重いなぁ〜……きっつ。」


一人の少女と思われる(・・・・・・・)人物が長い茶髪を揺らしながら、階段を下りていた。

その手には、いかにも重そうなダンボールが三つ。

しかし、その重さは一瞬にして無くなった。


「だ〜いじょうぶ?君。」


黒髪でショートヘアの少年と思われる(・・・・・・・)人物がダンボールを取ったからだ。


「あ、ありがとう…って何だ、彩姫さきかよ……」

「どういたしまして…って何だ、咲来さくだ……」


二人は、お礼を言ったが―……

どうやら、知り合いのようだった。


彩姫と呼ばれた人物は、先ほどの少年と思われた人物だった。

名前は 緋陽ひよう彩姫。列記とした、“ 女 ”である。


そして、咲来と呼ばれた人物は、少女と思わしき人物だった。

名前は 蒼月そうげつ咲来。列記とした、“ 男 ”である。


「ちぇっ!咲来の為に無駄な力使っちゃったっつーの!」


彩姫が不満気に言う。

しかし咲来は動じずにこう答えた。


「ふ〜ん……。彩姫、俺にそんな態度取るんだ〜…お前も偉くなったよね〜?」

「ごめんなさい。」


1秒も掛からずに、彩姫は謝った。

咲来の変貌振りは何時もの事だが、今日はとても機嫌が悪い。

何故か。

それは、二人の家族が自分達を置いて勝手に旅行に行ったからである。

二人は家が隣同士の幼馴染。今日から、二人は同居状態になっているのだ。

それ故、咲来の機嫌は何時もの2.5倍悪くなっている。


「っ!それより、咲来!あたしの制服取り替えたでしょっ!?」

「だって、僕にはこっちが似合ってるし〜」


彩姫の言うとおり、普通は彩姫がスカート、咲来がズボンの筈である。

しかし今は、彩姫がズボンで咲来がスカート。

まったく逆になっているのだ。

しかし、逆の方が自然に見える。

つまり、彩姫は男装が、咲来には女装が、とても、いや、物凄く似合っていた。


「似合ってるんだしさ、別にいいじゃん〜?」

「良くなぁぁあぁあい!!」


本当に、咲来の言うとおり二人は逆の方が似合っている。

しかし、何故彩姫はそこまで拒むのか―…

そんなのは簡単だった。


「あのね〜!咲来がその格好だと、ナンパされるでしょっ!?

 それを片付けるのはあたしの役目なんだからね!?分かってるの!?

 それにまだ何にも知らない新入生の男子が勘違いするでしょうがぁあぁ!!」


すらすらと、噛まずにマシンガントークをする彩姫。――この間一度も息はしていない――

自分が苦労するからと、新入生の男子が混乱するからだった。

まぁぶっちゃけると前者の方が理由としては大きいのだが。


「あぁもう。今日一日だけならいいじゃん!」

「だ〜めっ!」


咲来が引かなければ彩姫も引かない。

そんなやりとりに嫌気が差し、咲来はついつい本性を出した。


「俺の言うことが聞けないの?」

「はい、分かりました。」


軽く凄むだけで彩姫は謝る。

まぁ面白いったらありゃしない。

しかし、咲来に負けてしまった彩姫は

今日一日男装で過ごさなければいけなくなったのだった。




「本当にさぁ、彩姫って男装が似合うよねー。何で女に生まれたの?」

「しょうがないじゃん!生まれちゃったんだから。」


「本当にさ、咲来って女装が似合うよなぁ。何で男に生まれたんだよ。」

「僕も思うんだけどさー。しょうがないんだよねー。」


友達からも言われてしまえば認めざるを得ない。

咲来も彩姫も言われ慣れていた。


彩姫の友達の名前は、鳳龍ほうりゅう 麗杏れいあ

彩姫の男装が大好きな少女である。


そして、咲来の友達の名前は、玖凰くおう 尋也ひろなり

咲来の女装を面白がってる少年である。


そんな二人は、付き合っていたりする。

成績優秀、容姿端麗の完璧パーフェクトカップルである。


麗杏と尋也と彩姫と咲来、合わせて4人は

『目の保養グループ』と、呼ばれていたりするとかしないとか……。



時は過ぎて放課後(in屋上)


「ところでさぁ〜、今日咲来の家に来てもいい?」


麗杏は彩姫に抱きつきながら聞く。――因みに未だ二人は男装・女装をしている――

離して、と彩姫は言うが、麗杏は離れなかった。


「んあ?来てもいいけど、僕の家じゃなくて彩姫の家だよ。」

「あぁ!彩姫と今、同居状態なんだっけ?」


尋也が言う。

それを聞いた麗杏は目をキラキラに輝かせた。


「まじで!?行きたいっ!彩姫の家行きたぁぁい!」

「はいはい。来ても良いから耳もとで叫ぶの止めよーねー」


耳を塞ぎながら、彩姫は棒読みで答えた。

正直、麗杏の叫び声は鼓膜を破れるほど強力らしい。

尋也どうにかして、と彩姫が言う。


「はいはい。麗杏、俺の所へおいで。」


尋也が両腕を広げる。飛び込んで来い、と言っている様だ。

うん、と言いながら麗杏は尋也の胸へ飛び込んで行く。


「あーあー、お熱いねーお二人さーん。」

「ふふ、只でさえ暑いのになぁー」


彩姫は棒読みで、咲来はにこやかな笑顔――しかし、目は笑っていない――で言った。


「何よー、二人だってすればいいじゃ〜ん。」

「だよなー、麗杏。俺も思うぜ。」


二人はにっこにこと笑いながら言う。

しかし―………


「ふふふふ…殺されたいのかな?俺はこの男女と抱き合いたくは無いよ。」


真顔で言った咲来。言葉では笑っているが、顔は笑っていない。


「いや、えっと、ごめんなさい。」


尋也と麗杏は揃って謝った。

裏咲来って最強だなー、と彩姫は改めて実感した。

と同時に、こんな奴と同居しなくちゃいけないのか、と思った。


「彩姫、何か酷いこと思ってるでしょ?」

「滅相も御座いません、咲来様。」





「はぁ〜。やっぱり落ち着くねー彩姫の家!」


ソファーにダイブする麗杏。

その横に座るのは、やっぱり尋也。

麗杏の隣は尋也。これ常識である。


「あんまり長居しないでよねー?」


彩姫がそう言いながら着替えを終え、階段を降りて来た。

今、彩姫が来ている服は、上は黒のシンプルなTシャツ。

下はカーキ色の七分丈のズボン。

女の子とはかけ離れた、服装である。


「分かってるー。てか、本当に男物似合うよねー彩姫は。」


麗杏は、多少呆れながら言った。

麗杏の手には、いつの間にかアイスが握られている。


「僕も買って来ようかなー、アイス。ね、彩姫。」


軽く、麗杏のセリフをスルーして、咲来は言った。

同意を求めるような咲来の視線を彩姫は受け取った。

しかし、その視線には買って来い、という命令が含まれていた。


「イッテクルネー。」


片言で彩姫は言うと、家から出ていった。

彩姫が出て行った後、三人は話していた。


※ここからは会話文だけでお楽しみを。※


「ねぇ〜咲来。ちょっと厳し過ぎなんじゃない?」

「そんなことないよ。愛情の裏返し。」

「俺も思うってー、麗杏の意見に賛成だぜー。」

「尋也、煩い。人の恋路に口出しすんなよな。」

「はぁ、お前はさぁ頑固だから………」

「あの鈍感彩姫には絶対に伝わんないよ!友達のうちが言うんだから、絶対だよ!」

「………分かってるよ。」




からんからんと玄関のベルの音がして、

彩姫が帰ってきた。


「ただいまー。アイス買ってきたよー。」


しかし、次の瞬間びたんっという音が聞こえてきた。

次に続くのは、彩姫の悲鳴。


「いったぁぁぁぁいい!!」


どうやら、転んでしまったらしい。

大丈夫!!?と、麗杏が誰よりも速く駆けつけた。


「うぅぅ……痛ぁぁい、れ、いあぁ。」

「彩姫ーー!アンタのその綺麗な男顔に傷は無い!?」


そっちなの!?と内心彩姫は思いながらも、麗杏に抱きついた。

多少、彩姫は涙目になっていて抱きつかれた麗杏は、

彩姫の無意識上目遣いをもろに食らった。


「うぐっ!彩姫……うちを殺す気かっ!」


そう言いつつも、更に彩姫を抱きしめる麗杏。

傍から見たらお似合いカップルが抱きついているようにしか見えない。

それを見て、大人しくしていない人物が一人。


「麗杏ーー。ほら、彩姫無事だったから。離れろー」

「麗杏、殺されたくなかったら離れようか?」


否、二人いた。

尋也とー……以外や以外、咲来だった。


「何でーー!女同士の美しい友情じゃん!」


二人に反論しだす麗杏。

しかし、二人の無言の圧力により、その先は言えなかった。


「うぅ……それより、麗杏、尋也〜もう2時間も家にいるんだけど……

 そろそろ帰って。」


真顔で言い放った彩姫。

二人は、咲来が移ってる……とこっそり思っていた。


「じゃぁ、また明日ねーー!!それと彩姫、明日は男装で!」

「またな!あと、咲来、明日は女装して来いよ!大笑いしてやるからー!」


「また明日ね、麗杏ー!それと男装はしたくないからー!」

「また明日、学校でね。それと、女装しては来るけど大笑いは嫌だよ」



二人が帰った後、よほど疲れたのか彩姫はソファーで眠っていた。


「はぁ……寝てるし。バカ彩姫のやつ」


そうは言いながらも、彩姫へと近づく咲来。

そして――……


「さっさと、俺の気持ちに気付けよな……本当に、バカ彩姫なんだから」


彩姫の耳元で呟いた。






“ 好きだよ、ずっと前から、彩姫のこと ”




咲来の気持ちが伝わる日も、近い。




………はず。







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