第十章 第六節 誤解の先 絆の崩壊
ろ号作戦中止から数日後、翔輝は翔鶴と一緒に『大和』の甲板にいた。かなり珍しい組み合わせである。
「はぁ・・・」
「どうしたんだ? ため息なんてして」
「ため息もしたくなる。私達空母の艦載機がたった数日で一気に一二一機も減ってしまったんだぞ? 頭が痛くなる」
「ろ号作戦の被害はすさまじいね」
「愛宕達も修理の為に内地に向かったし、機動部隊もしばらくはトラックで訓練だそうだ。本当に頭が痛い」
頭を抱えて疲れ切ったようにする翔鶴。彼女は機動部隊の旗艦を勤めている。そんな彼女にとってその攻撃力である艦載機を失うのはあまりにも過酷過ぎる。
「大変だね」
翔輝もろ号作戦の大敗北の話は聞いていたので、同情するように翔鶴を励ます。
翔鶴は小さくため息を吐くと、小さく苦笑した。
「まぁな。だが、大変なのはお前の方なのではないか?」
「どういう事?」
翔鶴の全てを見透かしたかのような目に、翔輝は視線を逸らす。そんな彼に、翔鶴は話を切り出す。
「大和と最近うまくいってないそうじゃないか」
「え? あ、まぁ・・・」
やっぱりそれか。翔輝は予想通りの問いにため息する。
「大和はまだ幼い。お前のような奴が傍にいないと大変な事になるぞ」
「・・・僕がいなくても、大和には坂井さんがいますから」
翔輝の悲しい笑みに、翔鶴は驚く。その笑顔の奥にあるのは《諦め》。全てを諦め、流れに逆らわず、流れに身を任した、悲しい瞳。
「長谷川・・・」
「まぁ、僕はしばらく武蔵に付く事にするよ。あいつは僕を必要としてくれてるし」
そう言い残して、翔輝は翔鶴と別れた。翔鶴は彼の背中が消えるまでそれを見詰め続けた。
沈黙が流れる中、翔鶴は呆れた声を出す。
「さっさと出てきたらどうだ。大和。瑞鶴」
翔鶴は不機嫌そうに三連装二五mm機銃を見詰める。すると、機銃に隠れるようにして息を潜めていた二人が気まずそうに出て来た。
「いつからバレてたの?」
瑞鶴が落胆したような顔で訊いてくる。結構自信があったのだろう。そんな彼女に翔鶴はバッサリと。
「最初からだ。もっと修行しろ」
「ううぅ」
翔鶴に怒られて小さくなる瑞鶴。だが、翔鶴はすぐに大和を向いた。
「さて、大和。そろそろ話してくれんか?」
「え?」
「とぼけるな。最近のお前ら変だぞ。一体何があったか全て言うんだ」
「そ、それは・・・」
言いよどむ大和に、翔鶴は鋭い眼光を当てる。
「言えないのか?」
「・・・翔鶴さんには関係ないじゃないですか」
大和の言葉に、翔鶴は顔を不機嫌そうにゆがめる。瞳の奥に揺らぐ炎が怒りの炎へと変貌する。
「大和。思い上がるな」
「え?」
驚く大和に、翔鶴は冷たく言い放つ。
「私はお前の心配もしているが、私が本当に心配しているのは長谷川だ。私はあんな長谷川の悲しそうな顔は初めて見た。どれだけあいつが苦しんでいるか、お前はわかっていない」
翔鶴の言葉に、大和は沈黙する。
「大和。私にも教えてよ。一体何があったの?」
瑞鶴も心配そうに大和を見詰める。
二人の視線に負け、大和はその重い口をゆっくりと開いた。
大和の言葉に、翔鶴と瑞鶴は黙って聞いていた。
しばらくし、ようやく経緯を言い終えた大和に、翔鶴は、
「それは、お前が悪いな」
そうハッキリと言った。
「ど、どうしてですか?」
「お前が最近坂井とばかりいるのが一番の原因だ。あいつにとってお前は心の支えだ。だが、それが今は離れている状況。確かに長谷川も少しいき過ぎだと思うが、ほとんどの原因はお前にある」
「や、やっぱり・・・」
大和は自覚はしていたようだ。だからこそ落胆も大きい。落ち込む大和に、翔鶴はさらに追撃する。
「それに、お前の話や長門から聞いた情報によると、支えを失った翔輝は、どうやら新たに武蔵を支えにしようとしているようだな」
「ううっ」
「それも自覚ありか」
「う、薄々気づいていましたけど、やっぱり」
「まぁな――だが、その方があいつにはいいかもしれん」
「そ、そんなッ!」
「お前と違い、武蔵は翔輝に絶対の信頼を置いている。言い方は悪いが、武蔵はお前と違って長谷川を決して裏切らない。裏切られたりいなくなられたりするのを一番嫌う長谷川にとって、武蔵はその理想像かもしれんからな」
翔鶴の言葉に、大和はうつむく。そんな大和を一瞥し、瑞鶴は怒ったような口調で姉を責める。
「姉さん! 言い過ぎだよ! 大和がかわいそう!」
「かわいそうなのは、長谷川も同じだ」
「どうして姉さんは大尉にばっかり加担するの!?」
「長谷川は私の友だ。それを助けるのに理由などあるまい」
「なら、大和は私の友達だよ!」
「瑞鶴・・・」
「大和も言いなよ!」
自分の為に必死になってくれる親友の姿に大和は状況が状況なのに嬉しくなってしまう。
「わ、私は大尉をむざむざ武蔵に渡す気はありません! もちろん、他の誰にも絶対に渡しません!」
大和は翔鶴に向かって宣言する。顔を真っ赤にしながら必死に言う大和を翔鶴は不機嫌そうな表情を変えずに見詰める。すると、
「その言葉が聞きたかった」
「え?」
突如優しい笑顔になった翔鶴は、そのまま大和の頬を撫でる。その様子はまるで姉と妹のようである。
「坂井とかいう者の出現で、お前が長谷川に興味がなくなったのかと思ったが、どうやら違ったようだ。安心した」
「翔鶴さん・・・」
「まぁ、がんばれ」
「はいッ!」
笑い合う姉妹のような二人。そんな二人を本物の妹である瑞鶴が微笑ましく見詰めている。
どこかうらやましいと、思ってしまう。
翔鶴のおかげですっかり元気を取り戻した大和は、翔鶴と瑞鶴にお礼を言って嬉しそうな笑顔を浮かべながら艦内に走り去った。きっと翔輝の所に行ったのだろう。
残された翔鶴と瑞鶴の二人は、大和が去った方を見詰める。ふと、瑞鶴は翔鶴を見詰める。その表情は彼女にはめったに見られないほど優しいものだった。
それにしても、どうして翔鶴はそこまで翔輝にこだわったのだろうか。彼女の言うとおりただの友人というなら、大和も彼女にとっては十分な友人である。なのに、翔鶴は翔輝に付いた。
瑞鶴は不思議そうに翔鶴を見詰める。すると、その視線に気づいた翔鶴は不機嫌そうに自分を見詰めている瑞鶴を見詰める。
「何だ? 人の顔をジロジロを見て」
「――姉さんって、長谷川大尉の事が好きなの?」
「なあッ!?」
顔を真っ赤にして驚く翔鶴に、瑞鶴は「ふうん、そうなんだ・・・」と、なにやら怪しい笑みを浮かべる。
「な、何をバカな事を! 私はあんな平和主義者などにそのような感情は持っていない!」
いつもの翔鶴らしからぬ慌てぶりに、瑞鶴の予想は確信に変わる。
「そっか、姉さんも女の子だったんだね。大丈夫。私は応援するよ!」
「勝手に話を進めるな!」
「あぁッ!」
「ど、どうしたッ!?」
「どうしよう! 私姉さんと大和、どっちかしか応援できないよ!」
「死ねえええええぇぇぇぇぇッ!」
翔鶴は跳躍し、鋭利な刃物のような見事な跳び蹴りを瑞鶴に突貫させる。瑞鶴はほとんど反射的に動いてなんとかその一撃を紙一重で回避した。
「な、何するの!?」
「うるさいッ! 全部お前が悪いんだ!」
「何でよ!?」
「お前がくだらん事をぬかすからだ!」
翔鶴の鬼神のような気迫に、瑞鶴は生命の危機を感じた。これが眠っていた野性の本能というものだろう。瑞鶴はその本能に素直に従う事にした。
「ごめんなさあああああぁぁぁぁぁいッ!」
瑞鶴は泣きながら全力疾走で逃げ出した。
「待たんかゴラアアアアアァァァァァッ!」
心の底から鬼の咆哮と共に、翔鶴は瑞鶴の速度をはるかに上回る速度で追撃を開始した。
この後、瑞鶴が翔鶴に半殺しどころかほとんど殺されるような仕打ちを受けたのは言うまでもない。
だが結局、翔鶴の翔輝に対する気持ちは再び闇の中に消えてしまった・・・
その頃、瑞鶴達と別れた大和は翔輝の姿を探していた。
「大尉。どこにいるんだろ」
大和はキョロキョロとまわりを見るが、どこにも翔輝はいない。艦橋も航海室も翔輝の自室にもいなかった。残るは・・・
「防空指揮所」
大和はすぐに防空指揮所に向かった。すると、思ったとおり翔輝は防空指揮所にいた――武蔵と一緒に。
「な、何で武蔵と一緒に・・・」
驚く大和。しかし、予想はできる。さっき翔鶴が言っていたように大和という支えを失いかけている翔輝は、今は武蔵という支えを作ろうとしていると、だから、この二人が一緒にいても不思議はない。不思議はないのだが、なぜか心が締め付けられる。
そんな大和の視線の先にいる翔輝は、どこか寂しげな眼差しで空を見ていた。それはどこか翔香の事を思い出している時に似ている。
「なぁ、武蔵。僕、どうしたらいいのかな?」
翔輝は顔を向けずに武蔵に言う。対する武蔵は何も言わない。大和の位置的に彼女の表情は見えないが、たぶんいつもどおりの無表情でいるだろう。
「大和さ、たぶん今も坂井さんの所にいるよね」
(ここにいますよ!)
そう叫びたかったが、その衝動を必死に抑える。今ここで出る訳にはいかないと感じたのだ。
「僕さ、ちょっと大和に黙ってた事があるんだ」
(え?)
驚く大和に気づかず、翔輝は武蔵にそれを話す。
「出会った時、僕はすごくびっくりしたんだ――彼女が、翔香にそっくりだったから。だから僕は、彼女に近づいたと思う」
大和は声にならない悲鳴を上げた。それは、今まで自分の心の隅にずっとあった不安。それを彼は否定してくれたが、本当は違っていたのだ。
「この子なら、翔香の代わりになると思った――つまり、彼女は翔香の代わりでしかなかったんだ」
その言葉の後は聞こえなかった。
大和が――泣きながら逃げ出したから。
「そんな、そんな・・・ッ!」
信じていたものが、偽りでしかなかったのだ。
翔輝の自分に対する声も、表情も、感情も、行動も、全て偽りのものでしかなかった。
「そんなの、嫌ぁッ!」
大和は足がもつれて転んだ。顔面から床に突っ込むかなり危険なコケ方だったが、今の彼女にはそんなのどうでも良かった。
床に突っ伏したまま、大和は生気のない瞳で冷たい鉄の床を見詰める。
全てが、偽りだった。
翔輝は自分の事を《大和》としてでなく、《翔香の代わり》としか思っていてくれなかった。それなのに自分は勝手に舞い上がって、本当に――
「バカみたい・・・」
大和はそう悔しそうにつぶやくと、静かにその姿を光に包ませ、次の瞬間には、どこかに消えてしまった・・・
「――でも」
翔輝の瞳はすこし嬉しそうなものに変わった。
「最初は、本当に最初の一ヶ月くらいはそうとしか思わなかったけど、一緒にいるうちに、代わりとしての彼女でなく、たった一人の彼女の傍にいたいと思うようになってきてたんだ。だから僕は、大和を大切な人と思えるようになった。でも――」
そこで再び翔輝の表情が曇る。
「今でも心の隅では、彼女を翔香の代わりとしか見ていない自分がいるんだ。だけど、それは本当に一部だけの僕の気持ちであって、そうじゃない。でも、そんな気持ちで大和に接するのは、嫌だった」
翔輝は空を見上げる。どこまでも澄み切った空は、一体何を伝えようとしているのか。
「だから、大和が僕から離れていくのは――いい事かもしれない。本当は嫌だけど、こんな微妙な気持ちで彼女の傍にいたくない。だから――」
「・・・だから、お姉ちゃんとはもう――」
「もう、終わりにしようと思ってる。今の彼女には坂井さんがいる。だから、もう僕は必要ない」
「・・・本当に?」
「あぁ、本当だ」
「・・・なら――何で泣いているの?」
武蔵に言われて初めて気が付いた。自分が情けなく顔をゆがめて、ポロポロを涙を流しているのが・・・
「ち、違う!」
翔輝は慌てて袖で拭くが、涙は後から後から湧き出てきて止まらない。
「な、何で・・・」
「・・・不思議な事じゃない。翔輝が言っていた事が本心ではないから、涙が出るだけの事」
「違う! 僕は本当に――」
「・・・本当に、翔輝はお姉ちゃんと終わりにしたいの? 何もかも全て」
武蔵の真剣な瞳を見て、翔輝の決意が揺らぐ。
「そ、それは――」
翔輝はうつむいた。だが、翔輝は肩を震わせながら、嗚咽交じりの声で静かに言った。
「確かに、本心じゃない――本心は、大和ともっと一緒にいたい」
「・・・ならッ!」
「でも、大和にこんな中途半端な気持ちで接したくないのも本当だよ。だから・・・」
翔輝は顔を上げ、泣きながら無理に笑い、
「大和が僕を必要としなくなったら、僕は――潔く引き下がるつもり」
翔輝の辛い決意に、武蔵はもう何も言わなかった。だけど――
武蔵は翔輝に背中を向けて、そのまま歩き出した。
ドアの前で武蔵は一度立ち止まり、翔輝の方を向いた。その瞳はとても冷たく、怒っているとも悲しんでいるともとれる瞳だった。
「・・・お姉ちゃんに中途半端な気持ちで接するのに罪悪感があるから、翔輝はお姉ちゃんから離れたいと言った――だったらどうして」
武蔵の瞳から、一筋の涙が流れた。
「・・・どうして、私にそんな中途半端な気持ちで接するの?」
武蔵の言葉に、翔輝はただただ呆然としていた。
そうだ。自分はどうして大和は嫌だったのに武蔵には接しているのだろう。おかしいじゃないか。これではまるで・・・《大和の代わり》ではないか。
「武蔵・・・それは――」
「・・・やっぱり、私とお姉ちゃんじゃ、違うんだ」
悔しそうに絞り出たその声は、とても小さく、ひ弱だった。
「武蔵・・・」
「・・・ごめん。言い過ぎた。今のは忘れて」
「あっ・・・」
翔輝の声を聞かず、武蔵は去ってしまった。
一人残された翔輝はただぼんやりと空を見詰めるしかなかった。
その頃、坂井は甲板で昼寝をしていた。南国の静かな風が心地良く、彼はよくそこで昼寝をしていた。常人なら暑くて昼寝どころではないが、彼はちょっと変わっている。そんな坂井の下に、誰かがやって来た。
「坂井さん・・・」
その小さな声は、眠っていた彼の脳に届き、彼を覚醒させた。
「うん? 誰だ?」
眠そうに目を擦りながら起き上がると、そこには涙で顔をグチャグチャにした――大和がいた。
「大和。どうしたんだ・・・?」
「坂井さん。私、どうしたらいいか、全然わかりません・・・ッ!」
そう言って、大和は坂井の胸に飛び込んだ。
「大和!? 一体どうし――」
坂井の言葉は続かなかった。
嗚咽をしながら小さく泣く大和に、掛ける言葉がなかったのだ。
だから、自分にできるのは泣いている大和を抱き締める事ぐらいだった。
何も言わない坂井に、大和は感謝しながら、泣き続けた。
あれから一週間後、武蔵は以前となんら変わらずに翔輝に接していた。嬉しい事だが、どこか不気味だった。それと、大和は翔輝を避けるようになっていた。それに対し翔輝は「もう、ダメかも」と悲しそうにつぶやいただけだった。
日に日に離れていく二人の絆。だが、まだ修正できる可能性があった。
――今日、この瞬間までは・・・――
それは全て偶然が重なっただけの誤解だった。
原因は、大和と坂井が二人きりだった事。
「最近疲れてないか?」
「えぇ、ちょっと最近ちゃんと寝れなくて」
眠そうにに目を擦る大和。
原因は、大和が寝不足だった事。
「ふわッ!?」
立ちくらみした大和は自然と坂井に寄り掛かった。
「大丈夫か?」
「あ、はい」
原因は、大和が立ちくらみして坂井に寄りかかった事。
原因は、そんな何気ない行為を遠くで愕然として見ている者がいた事。
原因は、それが本当に偶然通りかかった翔輝と武蔵だった事。
原因は、二人の位置からだと、大和達が――キスしているように見えた事。
ただ、それだけだった・・・
「・・・翔輝・・・ッ!」
武蔵にはわかっていた。確かに姉は最低な女だが、そこまでひどい女でないと思っていたから。だから、すぐにあれは誤解だとわかった。
だが、翔輝は・・・
「あ、ああ、うあ・・・ぅ・・・」
よろよろと後退した。その表情はもはや表現できないほどの驚きと悲しみの二色だけだった。そして、
「う、うわあああああぁぁぁぁぁッ!」
「・・・翔輝!」
突然脱兎の如く走り出した翔輝を、武蔵は追った。その謎の声は、大和達にも届いていたが、二人は何の声かわからず、困惑するだけだった。
全力疾走する翔輝はあっという間に武蔵を引き離した。引き離された武蔵は手当たり次第翔輝を探すしかなかった。
走り続けた翔輝はいつの間にか甲板に出ていた。
「嫌だ! 嫌だあああああぁぁぁぁぁッ!」
暗い夜の中を、翔輝は叫びながら走った。
覚悟していたとはいえ、あれは限界だった。
もう、大和は自分には帰ってこない。そう思うと、涙が止まらない。
翔輝の心は、崩壊を始めていた。
「うわあああああぁぁぁぁぁッ!」
叫びながら走る翔輝の足に限界が来た。足がもつれ、そのまま転倒した。運悪く、そこはラッタルだった。翔輝はラッタルを転がった。体中に痛みが走る。だが、翔輝の身体は階段を転げ落ちる。その先は――海だった。
バシャンッ!
翔輝はそのまま海に投げ出された。
体中が海の心地良さに吸い込まれた。心が冷たくなっていくのを、翔輝は怖いともなんとも思わなかった。
大和はもう戻ってこない。
心の支えが大破した翔輝は、もう何も考えられなかった。
上を見ると、きれいな星空があった。翔輝はそれを見て、泣いた。
「翔香・・・」
そう自分の亡き妹の名を呼ぶと、翔輝の意識は途絶えた。
翔輝が海で浮かんでいるのを発見されたのは、それから六時間後の朝の事だった。 |