第十章 第五節 敵機来襲 反撃空しくラバウル炎上
十一月一日、米軍はソロモン諸島ブーゲンビル島西岸タロキナに上陸した。このブーゲンビル島は山本元帥が戦死した島であると同時に、ガダルカナル島攻防戦で駆逐艦隊が幾度も出撃した前線基地であるショートランド泊地がある。ついに、米軍は日本軍の重要拠点の一つに上陸を開始したのだ。
日本軍は索敵中だった哨戒機がこの攻略部隊を発見。哨戒機約五〇機が敵輸送船団を攻撃したが、目立った戦果は与えられなかった。
連合艦隊司令部は直ちに敵上陸部隊撃滅の為に襲撃部隊(重巡洋艦二隻、軽巡洋艦二隻、駆逐艦十一隻)を急遽編成。さらに逆上陸の為の輸送船団も編成。その日の午後三時に両部隊はラバウル基地から出撃した。
だが、米軍は偵察機でこの艦隊を発見。直ちに迎撃部隊(軽巡洋艦四隻、駆逐艦八隻)を派遣。両艦隊は急激に接近した。
翌二日午前〇時頃、霧雨が降る視界不良の中両艦隊は遭遇。米艦隊は直ちにレーダー管制射撃で砲撃を開始。日本艦隊も照明弾を発射。照らされた敵艦に砲雷撃を開始した。
だが、すでに敵の発砲による閃光を頼りに目視で照準を付ける日本艦隊と、レーダーにより闇夜でも敵に照準を合わせる事が出来る米艦隊との差は歴然。さらに霧雨の影響でさらに日本艦隊は不利に傾き、激しい砲雷撃戦は三時間近く続き、結局、日本艦隊は軽巡洋艦一隻、駆逐艦一隻沈没。同二隻中破。それに対し米艦隊は軽巡洋艦一隻小破、駆逐艦一隻大破、一隻中破という沈没艦なしの極めて軽微な被害だった。
日本艦隊優勢な戦力を保持しながらも日本海軍十八番の夜戦で米軍に完敗した。さらに輸送船団も上陸に失敗し、日本軍は戦術と戦略の両方で惨敗した。
これがブーゲンビル島沖海戦である。
だが、そこで諦めるほど日本海軍は腰抜けではない。
三日、ろ号作戦支援艦隊として編成した艦隊を急遽敵艦隊撃滅の為にトラックから派遣した。
多くの艦魂や兵達に見送られ、栗田健男中将率いる巡洋艦部隊(重巡洋艦『高雄』『愛宕』『摩耶』『鳥海』『最上』『鈴谷』『筑摩』、軽巡洋艦一隻、駆逐艦四隻)は南国の日差し注ぐトラックを出撃した。
どこまでも澄んだ蒼い海を翔ける巡洋艦部隊。その中の一隻、旗艦・重巡『愛宕』の会議室には艦隊全十二人の艦魂が集まっていた。
「今作戦はブーゲンビル島沖の敵艦隊撃滅。及びろ号作戦支援です」
旗艦愛宕の説明に艦魂達はうなずく。その中の一人、この中で唯一極上幹部会の重役の一人である最上は浮かない顔をしていた。彼女の頭には同じく二つの作戦を実行しようとして大敗北したあの悪夢が蘇っていた。
「同時に二つの作戦を進行させるなんて、ミッドウェー作戦の時のようにならないといいけど・・・」
不安そうに作戦資料を読む最上。そんな最上の肩を笑顔で叩いたのは最上に良く似た顔立ちに桜色のリボンを頭の両側で結んでちょこんと触覚のような小さなツインテールをした少女。最上の妹――最上型重巡洋艦三番艦『鈴谷』だ。
「大丈夫よ姉さん。今回はラバウルにいる航空隊が主力だから、支援と言っても私達は敵艦隊の陽動が主任務だし」
「鈴谷の言うとおりだよ。まぁ、特に私と最上は偵察機の運用が重要視されるだろうけどね」
そう言ったのは長い髪をポニーテールで結んだ少女。利根型重巡洋艦二番艦・重巡『筑摩』の艦魂。
利根型は連合艦隊で一番新しい重巡洋艦の艦種であり、連装主砲塔四基八門全てが前部に集中している特異な艦容をした艦である。その代わり、後部には偵察機運用甲板があり、『最上』ほどではないが六機の水上機を搭載できる。利根型は『最上』の先輩に当たる航空巡洋艦なのだ。
最上を中心に他にも駆逐艦四人も彼女を励ます。そんな水雷戦隊の艦魂達から少し離れた所では第四戦隊こと愛宕四姉妹が久しぶりの姉妹全員揃っての出撃を喜んでいた。
「う〜み〜は〜広い〜な〜大きいなぁ〜♪」
そう笑顔で楽しげに歌うのは愛宕姉妹三女にして一番子供っぽい摩耶。そんな摩耶をうるさそうに見詰めるのは書類上は一番艦だが戸籍上は次女に当たる高雄。
「摩耶。今は作戦発動中よ。もう少し落ち着きなさい」
高雄のめんどくさそうな物言いに対し、摩耶は気にした様子もなくニコニコと微笑む。
「だって高姉ぇ。久しぶりの姉妹全員での出撃なんですぅ。もう心はウハウハですぅ」
「ウハウハって・・・」
呆れてものも言えないといった具合にため息する高雄はめんどくさそうに髪を掻き乱す。そんな二人の姉を見詰めおろおろとするのはボブカットにクリッとした瞳が特徴のかわいげな女の子――四女鳥海である。
「摩耶お姉ちゃん。落ち着いてよ」
おろおろとしながら言う鳥海に、摩耶は屈託のない笑みを浮かべる。
「鳥海。戦場で生き残る為にはある事が必要あるんですぅ」
「え? 何?」
根が真面目な鳥海は内ポケットから手帳を取り出して姉の名言を書き取る用意をする。そんな我が妹を見詰め、摩耶はにっこりと口を開く。
「それは――どんな逆境でも挫けずに、その場に適応し、何事も楽しむ事ですぅ。楽しいと実力以上の力が発揮しやがるですぅ」
「そ、そっか! すごいよ摩耶お姉ちゃん!」
「違うから! それは確実に違うからッ! コォラ摩耶ッ! 純粋な鳥海に何いい加減な事を吹き込んでるのよ!」
キレる高雄に対し、摩耶は気にした様子もなくニャハハと屈託のない笑みを浮かべる。
「国民の戦意を下げない為には、例えないに等しい戦果も誇張して報告しなければならないんですぅ」
「なに大本営みたいな事言ってるのよ!」
キャハハハと大笑いする摩耶に高雄が激昂する声が会議室に響き、鳥海は今度こそ泣きそうな顔をする。そんな中、長女愛宕はそんな妹達のバカらしい声を聞きながら頭を抱えてため息する。
「自分の妹達ながら、頭が痛くなるわ」
「大変そうですね愛宕さん」
心配する最上の言葉に、愛宕はため息する。
「最上姉妹はみんなおとなしい子ばかりだから、うらやましいよ」
愛宕は疲れたように言う。それに対し、最上は悲しげに微笑む。
「私は愛宕さん達がうらやましい。姉妹全員で出撃できるんだから」
最上の悲しい顔に、愛宕は焦る。
「ご、ごめんなさい。不用意な事を言ってしまって」
「謝らないでください。愛宕さんが謝る事はないですよ」
「でも・・・」
「それに、私にはまだ鈴谷と熊野がいますから」
そう言って明るく微笑む最上。愛宕が一番最近知っているのは三隈の死に落ち込んでいた頃の彼女。それがいつの間にかこんなにも優しげな笑みを浮かべられるようになっていた。一体何があったのかはわからないが、嬉しい事だ。
「そうね。まだまだ、守るべきものはあるのよね」
「はい」
優しげに微笑む最上に、愛宕も自然と笑顔になる。
そんな春風のような二人から少し離れると、
「あんたいい加減にしなさい! さっきかが訳のわからない事を言わないでッ!」
「何なんですぅ! 高姉ぇ! 私のする事全部否定しやがってですぅ! さすがの私だって怒るですぅ! プンプンですぅ!」
「何がプンプンだぁッ!」
「高雄お姉ちゃん! 摩耶お姉ちゃん! もうやめてよぉ!」
うるさく騒ぐ己が妹達。まわりでは駆逐艦がくすくすと笑っている。
愛宕は妹達の失態に再び頭を抱えるのであった。
一方、アメリカ軍は愛宕達巡洋艦部隊を察知していた。しかし、南太平洋方面艦隊指揮官であるハルゼー大将の手元にはこの重巡7隻を基幹とした強力な水上打撃部隊と対抗できる水上打撃部隊はなかった。その為、ハルゼーは日本艦隊の目的地であるラバウルに艦隊が入ったところで機動部隊でこれ及び敵航空基地を破壊する作戦を立てた。
機動部隊と言ってもエンタープライズやエセックス級空母は他の海域に出動している為、ハルゼーは手元にある第38任務部隊を出撃させた。
正式空母『サラトガ』とインディペンデンス級航空母艦2番艦・軽空母『プリンストン』を基幹とした小規模な航空艦隊だ。
海を翔ける空母『サラトガ』の防空指揮所には二人の艦魂がいた。一方はサラトガ。もう一人の薄ピンク色の髪をツインテールでまとめたかわいげな少女はプリンストンだ。
サラトガは燦々と輝く太陽を嬉しそうに見上げる。
「空は快晴。絶好の爆撃日和ね」
「ピクニック日和みたいな言い方しないでください。そもそも爆撃日和なんてものはありません」
サラトガの明るい言葉をピシャリと叩くプリンストンに、サラトガはつまらなそうに唇を尖らせる。
「もう、プリンは堅物ね」
「その名で呼ばないでと何度も――」
「いいじゃない。かわいいし」
「そのような判断をされては困ります」
「もっと肩の力を抜きなさいよ」
青く輝く髪を撫でながらサラトガが言う。それに対し、薄ピンク色の髪を風に流したプリンストンは疲れたようにため息する。
「新米の私が肩の力を抜く事はできません」
「もう、そんな事は言わないの」
サラトガは苦笑いし、天空に浮かぶ太陽を見詰める。燦々と輝くその光は一体誰の勝利を見詰めているのだろうか。
サラトガは自分の甲板に並ぶ星を掲げたアメリカ軍機を見詰める。今作戦には新型戦闘機F6F(ヘルキャット)、新型爆撃機SB2C(ヘルダイバー)が参加し、兵達の士気も上々である。
そんな熱気に包まれた甲板を見詰め、サラトガは小さく笑みを浮かべる。
「そろそろ攻撃隊が出撃するわね」
「はい。すでに攻撃隊は発艦準備を完了しています」
「そう――じゃあ、行くわよ」
「はいッ!」
サラトガの顔が軍人のものになると、プリンストンは見事な敬礼でそれに応えた。
直後、甲板に並んでいたラバウル空襲部隊が次々に天空へと舞い上がって行った。そんな攻撃隊を、アメリカ艦隊全艦魂が見詰める。
サラトガとプリンストンは帽を振って攻撃隊を見送る。
上空で編隊を組み終えた攻撃隊は一路ラバウルに向かって、空の蒼に溶けていった・・・
その頃、巡洋艦部隊はラバウルの湾内に入っていた。
今現在艦隊は錨を下ろして停泊している。艦魂達もそれぞれ自艦に待機している。
最上は防空指揮所にいた。
空には雲一つなく、蒼一色だった。だが、視線をふと陸に向けると、すさまじい数の航空機がその大地を機体の色の緑一色に染め上げている。きれいに並んだ機体に描かれている日の丸が輝かしい。
その大航空隊がろ号作戦の参加航空機だ。
数日後にはその大航空隊が天空を埋め尽くしながら舞い、敵を撃滅すると思うと興奮してくる。自分はたぶん偵察機の運用だけで終わるだろうけど、味方が勝つのは喜ばしい限りだ。
心地良い風が頬をくすぐる。最上は気持ち良くなってあくびをする。
「ふわぁ、眠い・・・出撃は数日後だから、お昼寝でもしよう」
前線と言っても、今まで呉で戦場のように書類整理をしていて休む暇がなかった最上にとって、今この時間は貴重なお休み時間なのだ。
最上は眠そうに目をこすり、艦内に入る。が、突然けたたましい警報が鳴った。その警報音でわかる。この警報は敵機来襲だ。
『敵機来襲! 敵機来襲! 東南方向より敵機約一〇〇機接近!』
悲鳴に近いスピーカーを通した男の悲鳴が島中に響く。
最上は急いで防空指揮所に舞い戻る。すると、さっきまで雲一つなかった空の向こうに無数の黒点が見えた。
「敵機!?」
「錨上げぇッ! 機関室! 緊急発進! エンジン全開!」
指揮所に上がって来た防空ヘルメットを乱暴に被った艦長が伝声管に向かって怒鳴る。
『迎撃戦闘機隊急速発進! 繰り返す! 迎撃戦闘機隊急速発進!』
スピーカーが千切れんばかりの悲鳴が木霊する。同時に、錨を巻き終え、『最上』は白波を立てて走る。ふとまわりを見ると、他の艦も同じように動いている。だが、所詮は湾内。動くのに制限がある。全速力で走るには湾外に出なければならない。だが、敵機はそれを許さない。
「味方戦闘機隊我が艦の上空を通過!」
その声に上を見ると、十数機の零戦が敵機に突進するのが見えた。だが、数が違いすぎる。敵機は零戦に構わず一斉にそれぞれの爆撃目標に向かって急降下を開始する。
「敵機急降下!」
敵急降下爆撃機数機が『最上』の上空に現れる。依然速度はまだ十ノットも出ていない。回避不能。
「面舵いっぱぁぁぁいッ! 機銃隊は撃ち落せ!」
艦長は叫ぶが、こんな速度で回避などできる訳がなかった。
最上は次の瞬間を覚悟して目をつむる。そして、
ドガアアアァァァンッ!
「あぐッ!」
右肩が裂けた。艦体を確認すると、第三砲塔付近から黒煙が上がっていた。紅蓮の炎が甲板の上で暴れる。
痛い。最上は裂けた肩を押さえる。
だがおかしい、敵は複数いたはず。なのに爆発は一回。一体どういう事かと上を見上げると、二機の零戦が低空飛行で艦の上を滑空していった。一瞬見えた搭乗員の瞳は、なぜか自分を見ているような気がした。
最上は気づいた――彼らが敵機を撃ち落してくれたのだと。
最上は見えるはずもないが左手で大きく手を振った。二機の零戦は急上昇して敵機群に突入した。直後、いたる所で爆発音が響いた。味方艦や基地、滑走路や航空機に爆弾が次々に命中しているのだ。
『最上』は対空戦闘をしながら必死に敵機を回避し続けた。そして・・・
敵機は去った。米海軍攻撃隊の後に続いて陸軍攻撃隊まで襲い掛かってきたが『最上』の被害は最小限で済んだ。だが、基地や滑走路、航空機はもちろん、ラバウルに来たばかりの艦隊にかなりの被害が出た。
『鳥海』『鈴谷』『筑摩』以外の艦は命中弾や至近弾を受けた。特に『愛宕』は艦橋付近に命中し、艦長が戦死してしまった。
甚大な被害を受けた艦隊を見て栗田中将は撤退を決定した。
結局、艦隊は到着したその日にラバウルから撤退する事になってしまった。
このラバウル空襲こそ、日本がソロモン海での継戦能力を失ってしまった敵の攻撃のひとつであった。
これ以降、南太平洋で激戦を繰り広げ、米軍からも恐れられた世界最強の陸海軍合同航空隊であるラバウル航空隊はこれ以降大規模な反撃は不可能となり、事実上壊滅した。
劣勢挽回の為、大反攻作戦である《ろ号作戦》はついに発動された。総戦力三〇〇機の大規模な航空部隊による航空攻撃作戦だ。
ろ号作戦は四日行われた。十一月二日にセント・ジョージ岬の敵輸送船団、五日にラバウル南方海域に出現した敵機動部隊(本当は戦車揚陸艦と魚雷艇三隻の上陸部隊)、八日にタロキナ沖で敵輸送船団、十一日にラバウル空襲を行った敵機動部隊をそれぞれ攻撃しただが、結果はい号作戦よりも戦果はなく、被害は甚大だった。
戦果は魚雷艇一隻沈没、軽巡洋艦一隻大破、損失航空機三〇機と皆無に等しいのに対し、被害はすさまじいものだった。特に艦載機は消耗が七〇パーセントに達し、一七三機の艦載機は五二機まで激減した。
こうして、決戦兵力を割いて投入した艦載機部隊は壊滅し、ろ号作戦は惨敗という結果に終わった。
巡洋艦部隊はボロボロになってトラックに帰って来た。
その夜、すぐに緊急の艦魂会議が開かれた。そんな中、頭に包帯を巻きながら土下座して必死に妹や仲間をかばって金剛に自分の責任だと泣き叫ぶ愛宕に、金剛は何も言わなかった。愛宕の必死な姿と即日撤退で呆れている二つの理由からだった。
長門は泣き崩れる愛宕を必死に励ましている。そんな中、最上は翔輝の前にいた。ケガだけなら愛宕以上に重傷だ。
松葉杖を付き、頭や腕に包帯を巻いた最上は重苦しそうに沈黙している。そんな最上に、翔輝は努めて明るく声を掛ける。
「到着早々敵機に空襲されるなんて、散々だったね」
「申し訳ございません・・・」
「僕に謝る必要はないだろ?」
翔輝の言葉に、最上は泣きそうな顔で首を横に振る。
「いえ、謝らなければなりません。私は大尉に「がんばって来い」と言われ、それに対し私は「はい」と答えました。しかし、結果は何もせずに逃げ帰って来てしまいました。もう謝罪しかありません」
必死に頭を下げる最上。根が真面目な最上の強い責任感は、彼女を苦しませている。後頭部で結ばれたきれいな白いリボンも、空襲のせいか所々黒く焦げている。そんな彼女に翔輝は優しく微笑む。
「何言ってんの。みんな無事だったんだからいいじゃない。誰も死ななくて本当に良かったよ」
「大尉・・・」
最上は涙目で翔輝に頭を下げる。今の彼女にとって、彼の優しさはこの上なく嬉しいのだ。
すると、今まで翔輝の横で黙っていた武蔵が初めて口を開く。
「・・・今夜はゆっくり休め。今日を反省し、明日に活かせ」
「はい・・・」
武蔵の言葉に最上は敬礼し、離れた。
そんないつになく優しげな武蔵に、翔輝は優しく微笑む。
「優しいとこあるじゃん」
「・・・私にも落ち度があったし」
「え?」
翔輝は武蔵を見詰める。武蔵は無表情を貫いているが、その瞳は悔しそうだ。
「・・・最前線であるラバウルに艦隊を送ればどうなるかなんて簡単に予想できた。でも、まさかここまでとは、私の計算が不甲斐ないから」
「そんな事ないよ。世の中全て計算で動くほど、甘いもんじゃないだろ?」
「・・・それはそうだけど」
「そうやって、何でも自分のせいと思うなよな」
「・・・その言葉、そっくりそのまま翔輝に返す」
「うっ・・・」
言葉に詰まる翔輝に、武蔵は小さく笑う。そんな武蔵を見て、翔輝も笑顔になる。
「ったく、からかうなよ」
「・・・翔輝が好きだから。これも愛情表現」
「斬新だな」
「・・・それってほめてるの?」
楽しげに笑い合う二人を、遠くから大和は見詰めることしかできなかった。その瞳はとても悲しく、不安げに揺れていた。 |