第九章 第五節 伊勢の辛き想い 航空戦艦への道
朝の激戦の後、瑠璃達は翔輝の仕事の邪魔をしては悪いと言って帰り、大和達も久しぶりの極上幹部会の会議を開く事になって今は第三会議室にいる。
そして、翔輝は――
「おはようございます」
翔輝は笑顔で艦橋に入った。久しぶりの翔輝の登場に松田や航海長達も驚く。
「長谷川中尉。もういいのか?」
松田が心配そうに訊いてきたので、翔輝は笑顔でうなずく。
「はい。完全復活とはいきませんが、仕事に支障は出ないほどには復活しましたので」
「そうか、それは良かった。でも無理はするなよ」
「はい」
翔輝が仕事に入ると、ドンと大量の書類の束が航海長から渡された。何かとてつもなく嫌な予感がしたが、それは見事に命中した。
「さっそくですまないが、これはお前がいない間に溜まったお前担当の書類だ。これを全て処理しとけ」
「これ全部ですか!?」
パッと見ただけでも積み重ねられた書類の高さは三〇センチ以上はある。
「そうだ」
「多くありません!? 異常な量ですよ!?」
「まぁ、がんばれ」
「ちょっとぉッ!?」
翔輝のすさまじい慌てぶりを見て、航海長は大笑いする。見ると他の航海士達も腹を抱えて笑っている。これはつまり、陰謀・・・
「僕に仕事を押し付けてません!?」
「まぁ、遠からずそんな感じかな?」
「コラッ! 職務放棄をしないでください! お前達もだぁッ!」
「航海長。ふざけるのはよしなさい」
松田の言葉に、航海長は笑いながらうなずき、本来の書類量を翔輝に渡した。その高さは一センチもなく、明らかに激減である。一体どんだけやらせようとしたんだろうか?
「まぁ、しっかりやりなよ」
笑いながら言う航海長に、翔輝は苦笑いしながら「はい」と答える。
航海長は「がんばれ」と笑いながら言って肩を叩き、翔輝は「よし」と気合を入れて仕事を始めた。
その頃、極上幹部会の会議ではちょっとした問題が起きていた。
「・・・一名不在」
武蔵が出席簿を確認しながらそうつぶやいた。
「誰がいないの?」
大和は不思議そうに見回す。その時、いつもはいるはずのメンバーが一人いない事に気づいた。
「もしかして――」
「・・・伊勢が欠席」
武蔵の言葉に、全員が空いている席を見詰める。日向と扶桑に挟まれた空席は、間違いなく伊勢の席だった。
「伊勢はどうしたの?」
長門はわかっているが一応確認の為に問う。
「長門はずっと欠席してたから知らないかもしれないけど、伊勢ちゃんはあなたや大和と同じで今もずっと部屋に引きこもってるのよ」
扶桑の言葉に、長門は「そう・・・」と小さくつぶやいた。そんな彼女の横にいる金剛は深くため息を吐く。
「伊勢は陸奥の親友だったから、受けた衝撃もかなり大きかったのだろう」
「でも姉貴。実の姉の長門が復活したんだぞ? 何で伊勢はまだなんだ?」
「常人である伊勢と得体の知れない長門を一緒にするな」
「ちょっとそこ。何好き勝手言ってんのかな?」
金剛と榛名の会話に終止符を入れ、長門は扶桑と日向を見る。
「で、伊勢の調子はどう?」
長門の問いに、日向は力なく首を横に振る。
「ダメぇ。お姉ちゃんずっと部屋にこもったままなんだ」
「たまに出て来ても元気ないわね」
日向と扶桑の返答に、長門は一度小さくため息を吐くと、「わかったわ」と小さくうなずく。
「それなら後で私が直々に行ってみるわ。それで何とかしてみるわ」
「無駄だと思うぜ」
長門の言葉に横槍を入れたのは榛名。彼女は頬杖をして唇を《へ》の字に曲げている。彼女自身も伊勢を元気付けようと何度か訪れたが、会う事すらできなかったのだ。
「でも榛名。何もしないよりはマシよ。やらないで後悔するよりやった後に後悔した方がいいじゃない」
「まぁ、そうかも知んねぇけどよ・・・」
榛名は納得いかないような顔で頭をボリボリと掻く。すると、何か名案を思いついたように「そうだ」とつぶやく。
「何? どうかした?」
「長谷川を向けてみないか? あいつなら何とかなるかもしれねぇ」
「長谷川君を?」
長門は首を傾げる。そんな長門に榛名はうむとうなずくと力説する。
「あぁ。伊勢は結構長谷川に信頼を置いてるからな。実際俺や長門よりは心を開いているじゃねぇか。それにあいつ今日復活してたし」
「長谷川の奴、立ち直ったのか?」
金剛が驚いたように問い返すと、榛名は小さくうなずく。
「あぁ。今日から仕事を再開するって言ってたし」
「ほう、それは良かった」
「何だよ姉貴。長谷川の事心配してたのか?」
ニヤニヤと訊く榛名に、金剛は不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「ふん。あれでも艦魂達の士気の大きく関わっているいるからな。いないと困る」
「言い訳くせぇな」
「――殺るぞ」
「すみません。ほんとすみません」
「金剛、やめなさい。でも榛名の意見は賛成よ。私が後でお願いするわ」
「いいですよ。私の方から中尉に言いますから」
大和が志願するが、長門は小さく首を横に振る。
「いいの。私が直々に言いたいの――伊勢をお願いって」
長門の言葉に、艦魂達は沈黙する。悲しみの混ざったその空気の中、武蔵は手元の書類を見詰める。
「・・・これより、会議を開会する」
沈黙した空間に、その声は良く響いた。
その夜、航海長の計らいで少し早く仕事を終えた翔輝は自室に戻って来た。部屋に入ると、大和と武蔵、榛名、金剛、日向、扶桑、そして長門が待っていた。
「あれ? 金剛さんに長門さん。どうしたんですか?」
大人数でいる大和達に翔輝が驚くと、長門がそっと前へ出た。
「長谷川君に用があってね。待ってたの」
「僕にですか?」
「えぇ。ちょっと伊勢の事で」
重々しく開いた口から出た少女の名に、翔輝は心配そうに訊く。
「伊勢、ですか? そういえば最近会ってませんね。どうしてるんですか?」
「この前までのあなたと同じよ。部屋に引きこもってるの」
長門の言葉に、翔輝は「そうですか、伊勢が」と心配そうにつぶやく。そんな翔輝を見て、長門は本題を切り出す。
「だからね、そんな伊勢をあなたに助けてほしいの」
「僕が、ですか?」
「そう。彼女はあなたにかなりの信頼を置いてるわ。おそらく陸奥がいなくなった今現在では一番よ」
「それはおかしいですよ。日向や義姉の扶桑さんや山城の方が上だと思いますが――」
「それはちょっとね。日向はちょっと頼りないし、扶桑は《あれ》だし、山城とはあまり会話はしないしで。ね? 壊滅でしょ?」
長門は苦笑いしながら言う。翔輝も彼女の言葉に苦笑いしてしまう。
「揃いも揃って異色を放つ姉妹ですね」
「あら、金剛四姉妹も負けず劣らずのものよ」
「そこでなぜ私達の話が出てくるのだ」
金剛が不機嫌そうに間に入ってくる。そんな金剛に長門は屈託のない笑みを浮かべる。
「いやぁ、いい比較対照になるかと思って」
「ならん」
そんな二人の会話に小さく微笑んでいると、いきなり翔輝は手を握られた。視線を向けると、握って来たのは大きな瞳で必死に何かを訴えようとしている日向だった。
「長谷川君お願い! お姉ちゃんを助けてッ! 私、お姉ちゃんは元気でいてほしいのぉッ! でもそれができるのは中尉だけ――だからお願いッ! 中尉、お姉ちゃんをどうか・・・どうかお願いしますぅッ!」
いつの間にか、日向は泣いていた。それほど姉の事を心配しているのだろう。そんな彼女の必死な姿を見て、翔輝は胸を打たれた。
姉の為に一生懸命になる日向に、何か自分に近いものを感じたから。
「僕に・・・できるかな・・・?」
「できる! だから――」
日向の声はそれ以上続かなかった。日向の頭を翔輝がそっと撫でたからだ。驚く日向に、翔輝は優しく微笑む。
「――わかった。やってみる」
「ほ、本当・・・ッ!?」
「うん。僕もこのまま見捨てるつもりもないし、善処するよ」
「あ、ありがとう・・・ッ!」
日向は嬉しさのあまり翔輝に抱き付いた。慌てる翔輝を無視し、日向は何度も「ありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうッ!」と言い続けた。そんな日向をうらやましそうな瞳で見詰める大和。
「まあ、これで目星はついたな。頼むぞ、長谷川」
榛名はニヤリと笑みを浮かべる。そんな頼もしい笑みに、翔輝も自然と笑顔になる。
「うん。がんばってみる」
「じゃあ、お願いね」
長門はそう笑顔で言うと、金剛と榛名、扶桑を連れて出て行った。その後に日向も出て行った。残されたのは翔輝と大和、武蔵の三人。
翔輝は苦笑いしながらため息ついた。
「――ってまぁ、引き受ける形になったけど・・・どうすればいいのかな?」
「何も考えてなかったんですか?」
大和は翔輝の言葉に呆れたような声を上げる。そんな大和に翔輝は苦笑いする。
「あぁ、なんか日向の根気に負けてさぁ」
「先を何も考えずに引き受けるなんて、楽観主義の中尉らしいですよ」
「・・・それ、ほめてるのか?」
「もちろんです」
「・・・本当か?」
疑いの視線を向けると、大和は口笛を吹きながら出て行ってしまった。
「逃げたな、あれは」
「・・・正解」
翔輝はくすくすと笑った。すると、今度は武蔵がじっと自分を見詰めているのに気づいた。
「・・・でも、どうするの?」
「まぁ、何とかなるさ」
「・・・やっぱり楽観主義」
「ん? 何か言ったか?」
「・・・別に」
翔輝は不思議そうに首を傾げるが、すぐに頭を抱えて悩み出した。そんないつもと変わらない翔輝を見て武蔵は安心したのか、小さな笑みを浮かべた。
「うん? 何で笑ってるんだ?」
「・・・な、何でもない」
なぜ彼女が頬を赤らめたのかわからない翔輝は再び首を傾げるしかなかった。
長門達に頼まれてから一時間後、翔輝は『伊勢』にいた。そんな彼の横には無表情をしている武蔵がいる。彼女のおかげで翔輝は『伊勢』に乗り込めた。
「ありがとう武蔵。ここに連れて来てくれて」
「・・・気にしないで。私にはこれくらいしかできないから」
武蔵はそう言うと、「・・・がんばって」と言って消えた。
武蔵が消えた後、日向に言われた伊勢の部屋に向かった。その部屋はやっぱり恒例の使われていない兵員室だった。
翔輝は軽く深呼吸すると、ドアをノックした。
「伊勢、いるか? 僕だ。長谷川だよ」
声を掛けるが、返事はなかった。もう一度ノックをするが、やはり返事はなかった。
「いない・・・のかな?」
となると、どこにいるかさっぱりわからない。ここは『伊勢』。どういう構造かわからない上、彼女のいそうな所もわからない。それに・・・正直迷う気がかなりする。
「捜す、しかないか・・・」
翔輝がため息して部屋を後にしようとした時、
「長谷川はん・・・」
「え?」
振り向くと、いつの間にかドアを少し開けて伊勢が顔を覗かせていた。
「伊勢・・・」
久しぶりに会った彼女は、自分の知っている彼女とはずいぶんと違っていた。髪は乱れ、やつれ、目は赤く充血し、目の下には隈があった。明らかに不眠だ。そんな彼女に、翔輝は優しく微笑む。
「久しぶり。大丈夫?」
「何しに・・・来はったんどすか・・・?」
「あぁ、どうしてるかと思って」
「別に、用はそれだけどすか?」
「え? あ、その――」
「用がないんなら、もう帰ってぇな・・・」
「あ・・・」
そこでドアはパタンと閉められてしまった。
翔輝は呆然とその場に立ち尽くした。彼女のあまりの冷たさに何も言えなかったのだ。
彼女は、かなり変わってしまった。自分の知っている彼女とは全然違っていた。
「それほど、ショックだったんだ・・・」
悲しそうに、翔輝はつぶやいた。
自分も、そんな時があった・・・
経験上、こういう時はそっとしておいてほしいと願うものだ。
誰とも会いたくないのだ。でも・・・
「今なら、瑠璃の気持ちがわかるよ」
悲しんでる人を励ましてあげたい。今はその気持ちでいっぱいだった。
人間とは身勝手なものだ。立場によって考えを変えるなんて、身勝手すぎる。でも、それでも自分に何かできる事を、やりたい。それが、本当の人をというものだから・・・
「なぁ、伊勢」
翔輝は閉じられたドアに優しく声掛けた。
「今、すごく悲しいんだろ? 陸奥の死が」
答えはなかった。構わず続ける。
「僕も、今日までずっとそうだった。自殺しようとも思ったよ。でも、そんな僕を大和と武蔵が救ってくれたんだ――考えてみれば、翔香の死の時も瑠璃が僕を励ましてくれた。友達っていいものだって、思ったよ。まぁ、その時の僕は放っといてほしくて邪魔だと思った。でも、今僕は励ます側にいる。こうなってみて、やっと瑠璃や大和達の気持ちがわかったよ。だから今は、伊勢に元気になってほしいと思ってる」
伊勢から返事はない。
「だから、君には迷惑だと思うけど、聞いてほしい――悲しかったら、僕を頼ってよ。僕も、君の悲しみをわかってあげられるから」
翔輝は精一杯心を込めてそう言った。
沈黙が舞い降りる。痛いほどの沈黙は、翔輝から笑顔を奪う。
伊勢からの返事はない。
翔輝はため息した。
――自分の想いは、彼女には届かなかった――
「ごめん。勝手な事ばっかり言って。僕より君の方が陸奥とずっと一緒だったよね。新参者がでしゃばり過ぎた。ごめん・・・」
翔輝はそう言うと、身を翻してその場を立ち去る。その時、
「待ってぇな・・・」
突如現れた伊勢が、開いたドアから手を伸ばして翔輝の手を掴んだ。驚く翔輝を、伊勢は無理やりに部屋に連れ込んだ。あまりにも突然の事に翔輝は逆らう事もできなかった。
「い、伊勢・・・?」
「長谷川はん・・・」
伊勢は翔輝の手を握ったまま彼の瞳を見詰める。その瞳は一体何を訴えているのだろうか。翔輝はその答えを見つける為に彼女の瞳を見詰め返す。すると、伊勢は急に翔輝に抱き付いた。
「伊勢!? どうしたの!?」
「ううっ、ひぐっ・・・」
「伊勢・・・」
伊勢は――泣いていた。
翔輝は急な事に驚いたが、そんな伊勢をそっと抱き締めた。
泣きたい気持ちは、痛いほどわかる。だから、何も言う事はない。言ったところで何かが解決するという訳でもない。こういう時は、ただ黙って彼女の気持ちを聞いてあげるのが一番だ。
「陸奥が・・・死んで・・・ッ! うち、守れんかった・・・ッ! 守って、あげたかったのに・・・大切なもんを守りたいから・・・がんばって来たのに・・・何も・・・何も守れんかった・・・ッ!」
伊勢は泣き続けた。
辛いのだ。親友の死が辛くない者などいる訳がない。その苦しみは行き所を失い、彼女の中に冷たく渦巻いていた。翔輝はただそれを、そっと彼女自身から引き出しているにすぎない。
「うち・・・うち・・・ッ!」
泣き続ける彼女に、翔輝は何も言わなかった。
――何も言わず、ただ、抱き締めながら、彼女の頭を撫で続けた。
伊勢はそのままの状態で泣き続けた。
零れ落ちる涙が、風に揺れるカーテンから覗く月明かりに照らされて静かに煌く。白い頬を流れ、あごに至り、そして落ちる。
しばらくして、伊勢は落ち着きを取り戻すと、自分のしている行為に顔を真っ赤にして急いで翔輝から離れた。
「ご、ごめんな! う、うちったら・・・ッ!」
「え? あ、別にいいよ」
ここに来て、ようやく翔輝の知っている伊勢が戻って来てくれた。
「あ、長谷川はん――おおきにな。あんたのおかげで少し落ち着けたで」
「そう、良かった」
微笑む翔輝の胸に、伊勢は再びゆっくりと抱き付いた。再び驚く翔輝をよそに、伊勢は嬉しそうに微笑む。
「陸奥には悪いけど、こうやって長谷川はんに触れられて、うちほんまに嬉しいどす」
「そっかな? そんなに僕君に対して冷たかったかな?」
「いえ、そうやあらへん。ただ、大和はんや武蔵はん、陸奥に比べてうちはいっつも長谷川はんから遠い位置にいたから、嬉しいんや」
「そっか。ごめん。これからはもっと君の傍にいられるようにがんばるよ」
「そんなッ! もったいない言葉おおきにぃな・・・ッ!」
「あははは」
笑う翔輝の腕の中で、伊勢は嬉しそうな顔から悲しみに満ちた表情に変わった。その瞳は再び先程のように詰めたい色に染まる。
「陸奥が、死んでもうた」
「あぁ、そうだね・・・」
「もう、帰って来ないんよね?」
「うん。もう、帰って来れないんだ」
翔輝の悲しい言葉に伊勢は一瞬泣きそうになったが、必死にそれを耐える――もう、泣くという逃げる行為はしたくなかった。
「嫌やなぁ。もう、陸奥と会えないなんて・・・ッ」
「伊勢・・・」
「わかっとるよ。もう陸奥に会えんのは。せやけど、やっぱりうちは信じたくないんどす。陸奥が・・・死んだやなんて」
「でも、受け入れないといけない。それが現実なんだ」
悲しげに言う翔輝に、伊勢はそっと問う。
「長谷川はんは、翔香はんが亡くなった時はどうやったんや?」
「うん? まぁ、正直今のお前の何百倍もひどい有様だったな。一ヶ月くらい寝込んでたから、こんなに早く回復は始まらなかったよ」
「そ、そうどすか・・・」
それを最後に、二人は沈黙した。
深い静けさは二人の会話に終止符を打つかと思われた。しかし――
「ちょっと、ついて来て」
そう翔輝が言い、伊勢の手を繋ぐまでは――
船渠内にいる『大和』と違って、広島湾に浮いている『伊勢』からは星空が一望できた。
翔輝が伊勢を連れて来たのは防空指揮所。彼が一番好きな場所だ――ただし、今回は『大和』ではなく『伊勢』だが。
「きれいやねぇ」
最初に星空を見た伊勢はそうつぶやいた。
「そうだな――へぇ、双眼鏡の位置が『大和』とはやっぱり違うんだな」
「・・・そ、そないににジロジロ見んといてぇな。恥ずかしいでぇ」
「何で?」
キョトンとする翔輝に、伊勢は恥ずかしそうに視線を逸らしながら口を開く。
「そ、それは・・・一応この『伊勢』はうちの分身みたいなもんやから」
「そうだったね。すっかり忘れてた」
彼女は艦魂。艦に宿る魂の化身。人間とは違う、また別の存在。
「・・・かなり重要な事なんですけど」
「悪い悪い。それにしても、『大和』以外の艦に乗るのはこれが六艦目か」
「そうなん?」
「うん。まぁ、今までに乗ったのは『長門』『陸奥』『金剛』『山城』。それに陸奥が死ぬ直前に送った『扶桑』。そして今回は『伊勢』。これで六艦目だ」
「そうなんどすか。嬉しい事やで」
そこで、翔輝は再び星空を見上げた。それに続いて伊勢も星空を見詰める。
「きれいやねぇ」
「あぁ」
「長谷川はんはよく星空を見とるんか?」
「うん。ほとんど毎晩」
「毎晩も? 何でや?」
「翔香の星を、探してるからさ」
「翔香はんの星、どすか?」
「うん」翔輝は力なく答えた。
「こうして星空を見ていれば、いつか翔香の星を見つけられるんじゃないかって思って。死んだ人は星になるって言うだろ? だからさ」
翔輝の言葉に、伊勢は終始黙っていたが、突然、
「そうどすか。ほんなら、うちも陸奥の星を探してみるで」
「伊勢・・・」
「絶対に見つけるんや! それに、いつまでもくよくよしとったら陸奥に面目ないんや!」
「そうだね」
「せやでッ!」
伊勢は満面の笑顔で答えた。元気を取り戻した彼女には、翔輝の優しい瞳にも気づかず、嬉しそうにはしゃいだ。だから、
「良かった・・・元気になって」
翔輝の小さな声も、彼女には聞こえなかった。
その後、翔輝は伊勢の転送で無事に『大和』に戻った。そこで二人は別れ、翔輝は自室に入り、そのまま眠った。
翌朝、定例の艦魂会議が開かれた。そこには、
「伊勢。もう大丈夫なの?」
「大丈夫どす。長門はんやみなはんにも心配かけて堪忍なぁ。せやけど、もう大丈夫やで」
長門に話しかけられ、笑顔で伊勢は答えた。その笑顔にはもう暗いものはなかった。
みんな伊勢の登場で嬉しそうな笑顔を向けていた。
「にしてもよぉ伊勢。何でまた急に元気になったんだ?」
「へ?」
榛名はニヤニヤと笑いながら伊勢に詰め寄る。詰め寄られた伊勢は驚きの表情を浮かべている。
「昨日、長谷川がお前の所に行ったはずだが、それが関係あるのか?」
「なあッ!?」
榛名の意味ありげな笑顔に、伊勢は顔を真っ赤にする。その反応を見て、榛名は笑う。
「なぁんだ。やっぱりそうか」
「な、何どすか?」
「いや、長谷川に何かされたから元気になったんだなぁって」
「う、うちは別に!」
「いいっていいって。もうバレバレだから」
「はうぅッ!」
耳まで真っ赤に染めた伊勢が右往左往していると、やっぱり、
「伊勢ちゃん! どういう事!? お姉さんに全てを話しなさい!」
やっぱり扶桑が伊勢に飛びかかる。
「扶桑姉はん!?」
「さぁ話なさい! 何があったの!?」
「べ、別に何も――ひあッ!?」
「話なさい! 話さないと・・・」
「い、嫌やぁッ! だ、誰か助けて――ああぁッ!」
扶桑に襲われて変な声を出している伊勢を見て、みんな微笑んだ。
いつもどおりのみんなだなぁ、と。満面の笑みで。
「・・・これより、会議を始める」
武蔵の小さな声は、誰の耳にも届かなかった。
ある日、衝撃的な情報が入った。
扶桑型及び伊勢型戦艦が、空母に改造される計画が進行中との情報だった。
「せや。元々大和型以外の全戦艦が対象になったんやけど、長門型は大和型に次ぐ主力艦やし、金剛型はその速力を生かした空母直衛の為に除外されたんや。そこで最も戦力的に活用されてへんうちら伊勢型、それと扶桑型が空母へ改造されるんが決定されたんや。まずは扶桑型からの予定やったんやけど、『日向』が去年の五月に爆発事故を起こして第五砲塔を撤去して砲撃力が不足しとるから、『日向』とその同型艦である『伊勢』から先に改造される事になったんや」
伊勢は驚く一同にそう説明すると、小さなため息をした。
「どうしたんですか?」
大和が訊くと、伊勢は複雑そうな顔で今の自分の心境を語った。
「正直、うちは空母になるんは嫌なんや」
「どうしてですか?」
「うちらは戦艦として今まで生きてきたんや。それを急に空母になってぇって言われても受け入れへんし、正直不安なんや」
「戦艦として生まれたなら、戦艦として戦場を翔けたかったのになぁ」
伊勢と日向は二人してため息する。いきなり自分が戦艦から空母になると言われたら、困惑するのは当たり前だ。
二人の言葉に、長門は何度もうなずく。
「そうよねぇ。ねぇ金剛。あなたはどう思う? あなたは元々巡洋戦艦から高速戦艦に改造されたんでしょ?」
「それはそうだが、私達は装甲巡洋艦の発展型の巡洋戦艦から戦艦になったのだ。当初はこれほどの栄誉はないと思った。しかし今回は状況がかなり違う。同じ大砲を主力とする系統で昇格した私達とは違い、今回は全く別の分野である空母への改装だ。いくら戦況が空母中心に変わったとしても、戦艦と空母は大きく違う。一概に良いとは思えん。それに私は航空主義が嫌いだ」
「最後はともかく、金剛の意見はもっともよね。戦艦と空母は根本的に戦い方とその存在意義が違うもの」
長門も伊勢達の空母への転換には結構消極的だ。そんな中、
「俺はいいと思うぞ」
榛名が賛成意見を出した。これには全員が驚く。大艦巨砲主義の第一人者の金剛の腹心である彼女が空母への改装に賛成するとは誰も思わなかったからだ。
「伊勢の言うとおり、この四隻はあんまり活躍の場がない。このまま何もしないでいるよりは空母になって翔鶴達と一緒に敵艦隊を撃滅してもらう方がいいだろ?」
「まぁ、その通りだが。しかし戦艦と空母では――」
「姉貴。認めたくないのはわかるけど、もう時代は航空機の時代だぜ。日本海軍の象徴の大和型。その大和型に次ぐ主力艦の長門型。空母直衛に向く唯一の戦艦の俺達金剛型。この三種はそれなりに存在価値が確立されているけど、扶桑型と伊勢型は今は何もないだろ? 四隻が空母になれば、『翔鶴』『瑞鶴』、それに計画中の空母と合わせて再び最強の日本機動部隊が編成されるんだ。今はこれが最もいい方法だと俺は思う」
榛名の言葉はもっともな意見だった。今や戦艦だ空母だとこだわっている時ではない。今は戦時中。しかも日本の圧倒的不利な状況だ。これを打破する具体的な案。それが扶桑型と伊勢型四隻の空母への転換だ。
榛名の意見に、長門と金剛は沈黙する。
「扶桑さんと山城さんどうなんですか?」
大和の言葉に、扶桑は満面の笑みで、
「私は構わないわ。元々戦艦にこだわるつもりもないし、これが日本の為なら喜んで空母になるわ」
いつもふざけている扶桑のマジメな返答に、彼女の意気込みを感じる。大和はそんな彼女の隣にいる山城に向く。彼女は金剛に以前「戦艦の時代は終わった」と言った人物である。空母への転換に賛成意見を言うかと思ったが、
「私は反対だ」
意外にも反対側だった。大和は驚いて聞き返す。
「どうしてですか? 山城さんは戦艦の時代は終わったと前に言ったじゃないですか」
「それはそれだ。時代は航空機が主力になったが、私は戦艦として生まれ、戦艦として生きてきた。なのにそれをいきなり空母に変更するなど、私を愚弄しているとしか思えん。性能が悪いのは私のせいではない。その設計者が悪いのだ。それを造った後に欠陥だらけが判明。欠陥戦艦と不名誉な称号も得て、そして今度は空母に変更? いくら常に冷静な私でぶちギレるぞ」
こめかみに血管を浮かべながら言う山城に、全員が恐怖する。山城がそこまで感情的になるとは誰も思っていなかったからだ。
「山城姉はんにうちは賛成どす。戦艦を空母にするなんて、いくらなんでもおかしいで」
「・・・『加賀』は戦艦として建造中に空母になった」
「あれは建造途中で変更になったんやで? うちは二六年以上も戦艦として生きてきたんよ? 状況が違うんや。それに――」
「・・・それに?」
伊勢は悲しそうな表情で、小さくつぶやく。
「空母になってしもたら、うちは長谷川はんの好きな戦艦やなくなってまうんやぁ」
伊勢の言葉に、翔輝連合の者はうなずいた。いくら彼が航空機の有用性を理解しているとはいえ、元々は大艦巨砲主義者。それに戦艦が好きな人物だ。空母になる事で今までとは違う関係になるのは、正直不安だった。だが、
「確かに、中尉は空母よりは戦艦の方が好きです。でも、だからと言って今までの関係が崩れるなんて事はありませんよ?」
大和ははっきりと断言した。翔輝はそんな細かい事で人を判断しないと知っているからだ。きっと空母になっても、彼なら明るく笑顔で迎えてくれるだろう。
しかし、伊勢はまだ不安なのか考えを渋る。
「でも・・・」
「それに、中尉は別に陸軍大嫌いの金剛さんと違って、別に空母が嫌いではありません。嫌いなら隼鷹とあんなに仲が良くなるはずがありません」
「私お兄ちゃん大好き!」
「姉さんは黙っててよぉッ!」
飛鷹と隼鷹の声を聞き、伊勢にも笑みが出る。
「そうやね。長谷川はんが空母になったからって、うちを嫌いになるなんてありえまへん」
「それはどうだろ?」
「え?」
榛名の言葉に、伊勢の顔から笑顔が消える。
「長谷川は結構こだわるところはこだわる奴だからな。戦艦から空母になったお前に愛想を尽かし、関係が破綻。こうして伊勢は脱落。チャンチャン」
「そ、そんなぁッ!」
「さらば伊勢。君の死は忘れない」
「い、嫌やあああああぁぁぁぁぁッ!」
「アホかあああああぁぁぁぁぁッ!」
突然の怒号に振り向いた榛名に跳び蹴りを食らわせ、翔輝はきれいに着地した。一方榛名はそのまま無様に壁に叩き付けられた。
「な、何すんだ長谷川!」
「何すんだじゃねぇッ! 伊勢を不安にさせるような事を言うなボケぇッ!」
翔輝はそう怒鳴ると小さくため息し、伊勢に向く。伊勢は不安げな瞳で彼を見詰める。そんな彼女を、翔輝はそっと見詰める。
「長谷川はん・・・」
「空母になるんだって?」
「そ、そうなんや・・・」
「良かったじゃん。今の時代ならこれは昇格だよ」
翔輝は屈託のない笑みを浮かべて伊勢の昇級(?)を喜ぶ。そんな翔輝の態度に伊勢はぽかーんとする。
「え? 嫌がらないんか?」
「何で?」
「え、だって、長谷川はんは戦艦が好きなんじゃ――」
「戦艦は好きだけど、空母が嫌いとは一回も言ってないけど」
「そ、それはそうどすが」
「あのなぁ、僕が戦艦だ空母だとこだわる訳ないだろ? 陸軍嫌いの金剛さんじゃあるまいし」
「おい。何でさっきから私の名が出てくるのだ」
「いい比較対照なんでしょ?」
「比較するな!」
金剛が長門に怒鳴っている声いつもの雑音を無視し、翔輝は続ける。
「でも残念だなぁ」
「え?」
伊勢は青ざめる。やはり空母になるのは嫌なのだろうか? 震える伊勢に、翔輝は寂しそうに微笑む。
「改造している間は、伊勢には会えないんだ」
「え? あ、まぁ、そうやけど・・・」
「それが残念だなぁって。伊勢の笑顔が見れないなんてさ」
微笑む翔輝に、伊勢はぱあっと嬉しそうに笑う。
「そ、そんなぁ、うちなんかの為に」
「自分を《なんか》なんて言うなよ」
「わかったでぇッ!」
嬉しそうな話す二人を見て、微笑む者、悔しそうに見詰める者など大勢いる中、約一名。
「空母になるのも、悪くはない、か」
山城が小さくつぶやいたのは誰も気づかなかった。
扶桑型、伊勢型の空母変更計画の実行が決定されてからしばらくし、状況が一転した。
「・・・新情報。当初は全通飛行甲板を持つ通常型航空母艦に改造する予定だったが、作業工数の短縮と資材節約の為に艦橋から後ろ、三番から六番砲塔までを撤去して格納庫や飛行甲板を設置するという半分戦艦半分空母の航空戦艦に変更された」
「こーくーせんかんー?」
忘れがちだが重鎮である榛名が新しい用語に首を傾げる。
「それはつまり、戦艦なのか? 空母なのか?」
「・・・不明。でも艦体の四分の三が飛行甲板になる訳だから、たぶん空母」
「何だそれは。また新しい枠組みができるのか?」
新しい事に弱い金剛も不思議そうに首を傾げる。そんな中、伊勢は少し嬉しそうだった。
「完全な空母やのうて半分でも戦艦なら、うちは嬉しいなぁ」
「『赤城』や『加賀』に二〇cm砲六門が搭載されていたのと同じようなものか?」
空母『赤城』は後部に二〇cm砲を六門、『加賀』は十門を搭載していた。理由は両艦建造当初はまだ完全な大艦巨砲主義の時代だったので、一応艦隊決戦もできるようにという構想の為である。ちなみに以後の空母には搭載されていない。
「似たようなものだけど、こっちの方が重装備よね」
長門も複雑そうな顔だ。やるなら完璧にしてほしいのに、何だかよくわからない艦種になるのは、あまり嬉しい事じゃない。だが、当の本人は、
「うちは嬉しいわぁ。まだうちは戦艦って名乗れるんやもん」
伊勢は胸の前で手を重ねて満面の笑みで嬉しそうに喜ぶ。
「私もまだ大砲が撃てるのが嬉しいよ」
日向も嬉しそうに笑顔で言う。いくら子供っぽくても、彼女も立派な日本海軍の戦艦の一人なのだ。
「・・・私個人の意見は、純粋な空母の方が強いと思う」
「私もそう思うな。二兎を追うものは一兎も得ずだ」
武蔵と金剛は航空戦艦という微妙な改造より純粋空母の方がいいという意見で一致した。どうやらこの案には本人以外は結構は否定的らしい。
そんな中、翔輝は珍しく最上と話をしていた。
「中尉? どうしたんですか?」
最上と話をしている翔輝に大和が不思議そうに尋ねる。
「うん? いや、航空戦艦じゃないけど。同じ構想で改造された最上』の意見も聞きたいと思ってさ」
重巡洋艦『最上』は以前説明したが、ミッドウェー海戦での損傷を修理すると同時に後部主砲等を撤去して、水上機作業甲板と射出機を装備した『航空巡洋艦』となった。新伊勢型は『最上』をモデルに改造されいる。
そんな伊勢達の新たな先輩になる最上は腕を組んで真剣に考える。
「まぁ、確かに砲撃力は弱まりましたが、おかげで空母や水上機母艦にも引けを取らない偵察能力を持ち、連合艦隊でも重宝される存在になりました。私としては改造されて大正解でした」
と、新伊勢型の先輩になるであろう最上の言葉に、全員も一応納得する。確かに、『最上』は戦略上かなり重要な艦である。
「長谷川はん! うちは今ほんまに嬉しいわぁ!」
満面の笑みで喜ぶ伊勢を見詰め、翔輝は優しく微笑む。
「良かったな。何か半分戦艦半分空母って、見てみたいな」
「そ、そんな、うち恥ずかしいわぁ!」
そんな笑い合う二人を見て、微笑む者、悔しそうに見詰める者など大勢いる中、約一名。
「半分戦艦半分空母の航空戦艦か。おもしろそうだな・・・」
山城がそうつぶやき、小さな笑みを浮かべた事には誰も気づかなかった。
状況というのは一転二転は当たり前だが、今回は三転した。変更された計画で進行中だった伊勢型にさらなる状況変化が起きた。
「・・・新情報その二。当初は全通飛行甲板を持つ通常型航空母艦に改造する予定だったが、作業工数の短縮と資材節約の為に艦橋から後ろ、三番から六番砲塔までを撤去して格納庫や飛行甲板を設置することになった。しかし、緊急性からさらに短縮が求められ、最終計画では後部甲板の五番と六番主砲塔を撤去し、その上に格納庫と航空機作業甲板を設置する方式に変更。それにともない対空兵装の強化、副砲の全廃に変更。さらに時間、資材的に扶桑型の空母変更はなし」
「扶桑型は戦艦のままか。良かったじゃねぇか」
「えぇ、何だかんだ言っても戦艦の方がいいわ」
榛名と扶桑が話す横で、大和は不思議そうに武蔵に問う。
「つまり、艦体後部の三分の一が空母って事?」
「・・・(コクリ)」
「それって戦艦になるの? それとも空母?」
「・・・情報によると、戦艦らしい」
「やったわぁーッ!」
手を上げて跳ね喜ぶ伊勢をよそに、翔鶴は不思議そうな顔をする。
「しかし、そんなに短いのでは軽空母の甲板よりも短いではないか。それでは発艦――ましてや着艦などできないんじゃないか?」
「・・・心配ない。伊勢型は射出機を装備し、これで飛行機を飛ばす事ができるようになっている」
「なるほど。だが、着艦はどうする」
「・・・航空戦で飛行機が消耗されるのは当たり前。伊勢型を飛び立った飛行機は機数の減った空母に着艦または陸上基地に着陸する」
「なるほど・・・なんか微妙だな」
「・・・同感」
そんな二人をよそに、伊勢は翔輝にキラキラした瞳を向ける。
「うち、戦艦のままやぁッ! これからも戦艦のままやぁッ!」
「良かったな。でも三分の一が飛行甲板だなんて、ますます見てみたいな」
「は、恥ずかしいわぁッ!」
伊勢は照れまくって思いっきり翔輝の背中を叩いた。忘れているかもしれないが、艦魂は人より力が強い。翔輝は簡単に吹き飛ばされて壁に激突して沈黙した。
「あぁッ! やってもうたッ! 長谷川はん! しっかりしてぇなッ!」
伊勢は慌てて翔輝に駆け寄る。そんな二人を見て、微笑む者、悔しそうに見詰める者など大勢いる中、約一名。
「戦艦のままか。安心したような、がっかりしたような・・・」
そう山城が小さくつぶやいたのは誰も気づかなかった。 |