第八章 第二二節 滝川のある計画
光り輝く太陽の光が燦々と降り注ぐその日、翔輝は珍しく陸の上にいた。
呉市内にあるクラシック喫茶で、翔輝は久しぶりに会った悪友とお茶をしていた。
「それで、みんな元気にしてるのかよ」
滝川がコーヒーを飲みながら問うてきた。
珍しく休暇をもらった滝川が呉に停泊している『大和』に乗っていた翔輝をこうして誘い出したのだ。久しぶりの再会なので、翔輝も快く誘いに乗った。そして今はこうしてクラシック喫茶でお茶をしていた。
「うん。みんな元気だよ」
翔輝の言葉に、滝川は「そっかそっか」と嬉しそうにうなずくと、コーヒーを飲む。
「あ、もちろん金剛さんも元気だよ」
「何でそこで金髪が出てくんだよ」
「え? 何でって・・・あれ?」
翔輝は不思議そうに首を傾げる。そんな翔輝に滝川はため息した。
「お前は相変わらず変わんねぇよな」
「そんな事ないよ。ほら、僕も中尉になったんだよ。これでお前と同じだ」
自慢げに階級章を見せる翔輝に大使、滝川はつまらなさそうに唇を尖らせる。
「ちぇっ、せっかくお前を追い抜いたってのに、これでまた同じかよ」
「もしかしたらまた僕の方が階級上になったりして」
イタズラっぽく笑う翔輝に、滝川は「調子にのんなバカ」と言ってデコピンする。
それから二人は互いの事を話した。翔輝はもちろん大和達との思い出や瑠璃が『大和』に乗り込んだ時の事などを話した。
一方、滝川は軍楽隊の苦しい現状を言った。
軍隊だけの演奏では食っていけないので、最近は民間の仕事もやっているらしい。しかも戦争による人員不足で軍楽隊員達も戦地に飛ばされているらしい。
「俺もいつ軍艦勤務になるかわかんねぇな」
苦笑いする滝川に翔輝は満面の笑みを送る。
「そしたら、その時こそ『金剛』に乗んなよ」
「嫌だよ。あそこは海軍一訓練が厳しいんだから。《鬼の金剛》は伊達じゃねぇんだぞ」
「でもさ、そしたら金剛さんといつも一緒だよ」
「冗談! 何であんな凶暴な女と四六時中顔を合わせてなきゃいけねぇんだよ! どんな処刑だ!」
滝川は「絶対に嫌だね!」と叫ぶと、コーヒーのおかわりを頼んだ。そんな彼に小さく微笑むと、翔輝もカフェオレを飲む。
「にしても、こんな所にも戦争の影響が出てるなんてな」
「え?」
「ほら、さっきから流れてる曲だよ」
滝川の言葉に、翔輝は不思議そうに耳を澄ます。聞こえてくるのはクラシック音楽だ。しかしそれを聞いても素人の翔輝にはわからない。
「何かおかしいの?」
翔輝の問いに、滝川はため息する。
「まあ、お前に音楽をわかれって言っても無意味だよな。素人だし」
「むぅ、だから何なんだよ」
少し怒ったように言うと、滝川は悲しげに口を開く。
「全部ドイツやイタリアの曲なんだよ。敵性国家の曲を流したら特高(特別高等警察)に捕まるからな。どこもみんなアメリカやイギリスの曲をやめて、同盟国のドイツやイタリアの曲ばかり。ったく、音楽に戦争もクソもねぇってのによ」
「まったく、その通りですよ」
滝川のグチにうなずいたのは初老の男。この店のマスターだった。
「この方の言うとおり、音楽に戦争なんて関係ないんですけどね。悲しい事です」
マスターはそう言うと滝川にコーヒーを渡す。
「しかし今は国民が一丸となって戦争をしている時代。わがままは言ってられませんよね」
「だからって、いくら敵の国の音楽だからって禁止にしなくたってよぉ・・・」
滝川の言葉に、マスターは何度もうなずく。
「あなたの気持ちはわかります。しかし今は英語全般が禁止の世の中ですからね。近所の子供達の野球だって、ストライクが《良し》、ボールが《ダメ》、アウトが《それまで》と言い換えられてますからね。徹底してますよ」
「そ、そうなの?」
驚く翔輝に、滝川もうなずく。
「あぁ。お前は軍艦勤務が長いから知らないだろうが、今じゃ小学校の運動会にも軍歌が使われてるらしいぜ」
「そ、そんなぁ・・・」
翔輝が少し見ないうちに、日本という国はずいぶん変わってしまったらしい。
「まぁ、そんなに落ち込むな。アメリカと戦争するって決まった時にはわかってた事だろ。今さら驚く事じゃないだろ」
「そ、そりゃそうだけど・・・」
「そもそもアメリカと戦争しようなんて言う方がおかしいんだよ」
「ちょッ! バカぁッ!」
翔輝は顔を真っ青にして慌てて滝川の口を塞ぐ。もごもごと何か言っている滝川を無理やり伏せ、翔輝は呆然としているマスターに「カフェオレおかわり!」と叫ぶ。
「い、いきなり何すんだよ!」
マスターが奥に消えた所で滝川が翔輝の手を振り払ってキレた。だが、翔輝もこの時かなり怒っていた。
「バカかお前は! こんな公共の場所で何口走ってんだよッ!」
翔輝が怒るのは無理もない。当時日本では治安維持法という法律によって特別高等警察という組織が国民を監視していた。戦争批判や軍部批判などの国にとっての危険因子を捕まえ、拷問をするという恐ろしい時代。そんな場所で思いっきり戦争批判をした滝川は度胸があるとかではなく単なるバカだ。
「今度またふざけた事を言ったら、今度こそぶっ飛ばすからな!」
「わかったわかった!」
翔輝のあまりの剣幕に押され、滝川も渋々了承した。誰でも命は惜しいものだ。
「そういえば、あなたは軍人ですか?」
カフェオレをテーブルに置いたマスターは翔輝に問う。
「は、はい。どうですけど」
翔輝は何をバカな事を言いたげな目をする。今の翔輝はいつもと同じ黒い第一種軍装を着ている。どこからどう見たって帝国海軍軍人にしか――
「まぁ、長谷川が着ると学生服にしか見えないもんな」
「何だよそれ! 僕はれっきとした海軍軍人だ! しかも士官だよ士官!」
「わかってるって。でもお前を知らない奴はマスターみたいに学生に見えんだよ。年齢もピッタシだしな」
滝川の言葉に、翔輝は泣きそうになる。
「す、すみませんね」
マスターが慌てて謝る。
「別にいいですよ。どう見たって僕は学生なんですから」
完全に落ち込む翔輝に、滝川はゲラゲラと笑う。
一方、マスターはしみじみと翔輝を見詰めた。
「私にも息子がいたんですがね。こうして海軍の軍服を着ていましたよ」
「へぇ、息子さん、海軍軍人なんですか」
翔輝は嬉しそうに微笑んだ。しかしマスターは悲しげに微笑む。
「正確には、海軍軍人だった、ですね」
「だった?」
「せがれは、もう半年も前に戦死しましたよ」
マスターの言葉に、二人は口を閉じる。
「まぁ、あの子もお国の為に戦って死んだんです。私は誇りに思いますよ」
その言葉に、翔輝は一瞬金剛の顔を思い浮かべた。
マスターは踵を返すと、店の奥に消える。その途中、「せがれの好きだったイギリスの音楽を流せるのは、いつになるんでしょうね」と、悲しげにつぶやいた。
翔輝と滝川はしばし黙っていたが、気を利かせた滝川が口を開いたのですぐに会話は戻った。
その後、二人は喫茶店を出ると別れた。
明日、『大和』に所用があって来るらしいので、翔輝は「待ってるからね」と笑顔で彼を見送った。
そして、滝川の背中が見えなくなると、翔輝もオレンジ色に染まった空を見上げながら呉軍港に戻っていった。
翌日、滝川は『大和』に乗り込んで来た。
甲板に上がった彼を迎えたのは、大和以下の大勢の艦魂だった。
「よぉ、久しぶり」
笑顔であいさつした滝川に、大和も会釈する。
「お久しぶりです、滝川中尉」
「おう。元気そうで何よりだ」
「滝川さんもお元気そうで」
「ははは、俺は元気だけが取り得だからな。ピンピンしてるぜ」
滝川は大和の言葉に笑顔で答えると、取り巻く艦魂達の中から目的に人物を捜す。
「おう! 金髪!」
滝川は艦魂達の群れから離れた所で一人で立っている金髪碧眼の女性に近づく。
「金髪。なぁに突っ立ってんだよ」
「フン、私の勝手だ。貴様には関係ない」
「相変わらずキツイねぇ」
ヘラヘラとしている滝川に呆れたようにため息するのは、滝川に懐かれて心底困っている苦労人――金剛であった。
「貴様、相変わらず楽観的な生き方をしているようだな」
「ははは、軍楽隊はさながら軍の中に生きる旅人。自由が一番なのさ」
「はぁ、貴様という奴はまったく」
「お前も相変わらずきれいな金髪してるよな。シャンプー何使ってんだ?」
「さ、触るな無礼者! 髪が汚れるではないか!」
美しい金色の髪を守るように金剛は滝川から遠ざかる。それに対し滝川は不満げに、
「いいじゃねぇか、別に減るもんでもないし」
「そ、そういう問題ではない!」
「つーか、髪を気にするなんて、金髪らしからぬ乙女さだな」
ニヤニヤとしながら言う滝川に、金剛の白い頬はみるみるうちに真っ赤に染まる。
「き、貴様という奴は・・・ッ!」
「うーん、怒った顔もチャーミング!」
ビシッ! と親指を立てて滝川はエールを送る。と、それが引き金となったのか、金剛からブチンッ! と何かが断裂する音が聞こえた刹那、金剛は竹刀を抜いて跳躍した。
「死ねえええええぇぇぇぇぇッ!」
すさまじい速度で飛来する竹刀を、滝川は「ぬおッ!」と声を漏らすと同時に身体を半回転させてギリギリで回避した。が、着地した金剛はすぐさま反転してよろける滝川に追撃を行う。
「避けるな!」
「無理に決まってんだろ!」
すさまじい金剛の剣撃の嵐を、滝川は全て紙一重で回避する。二人の動きは見事にシンクロしていた。
まわりからはその光景に拍手喝采が起きた。
「だ、黙れ!」
金剛は竹刀を止めて歓声に激怒する。一方滝川は「待ってろ! もう少ししたら金髪のパンツ見せてやるからな!」と爆弾宣言をし、金剛は「死ねッ!」と攻撃再開し、一部からは「キャー! 金剛姉様の下着見たいですぅッ!」と、金剛のファン(意外にも結構いるらしい)の子達が滝川を応援する。
甲板の上、特に《大和坂》と呼ばれる第一主砲と第二主砲の間の坂のようになっている場所で、金剛と滝川は夫婦ゲンカを繰り広げるのだった。
一方、そんな光景にどうしたらいいか右往左往する大和に、長門が声を掛ける。
「ねぇ大和。長谷川君と武蔵の姿が見えないんだけど」
「へ? あ、中尉ならまだ仕事をしてます。武蔵は戦略部と会議中です」
「へぇ、そういえば山城の姿も見えないわね」
戦略部部長を務めている山城と、極上幹部会会長兼執行部部長の武蔵の話し合い。一体どんな事が話し合われているのか。
「まあ、後で会いに行きましょう――それより今はこっちですぅッ!」
大和は自分の甲板の上で暴れ回っている二人を見詰めて大きくため息を吐いた。
一方、『大和』の第三会議室では極上幹部会会長兼執行部部長を務める武蔵と、戦略部部長を務める山城との首脳作戦会議が行われていた。
「・・・」
「・・・」
一枚の海図を見詰め、沈黙し合う無表情少女二名。この沈黙はもう五分が続いている。
「・・・はぁ」
不気味な沈黙をようやく解いたのは、武蔵の力ないため息だった。
「・・・また負けた」
「どうしても、勝ってしまうな」
山城も海図を見てため息した。
今二人の目の前には大きな海図が長テーブルの上に敷かれている。そこにはわずかな青い駒と、日本を太平洋側で包囲する無数の赤い駒が置いてある。さらに、中国、満州国、朝鮮北部、台湾、沖縄、小笠原諸島は赤い旗が翻っている。
武蔵はまたため息をした。
二人は日本(武蔵)とアメリカ(山城)に別れて兵棋演習で対戦をしたのだ。結果は見ての通り日本軍の大敗北である。
「・・・全然ダメ。搭乗員の練度を甘く見積もっても、物量、資源、工業力など全ての面に置いて完敗。これじゃ勝てる訳がない」
「情報によると敵は新鋭空母、エセックス級航空母艦を次々に投入しているらしい。能力は不明だが、ヨークタウン級航空母艦の発展改良型と考えて差し付けないだろう」
「・・・甘く見積もって搭載機数は九〇機ないし一〇〇機。きっとアメリカの事だから、最低でも十隻くらい建造する。そしたら搭載機は一〇〇〇機」
「軽空母とほぼ同程度の能力の護衛空母なら、搭載機数約三〇機で艦数は二〇隻くらい、アメリカなら簡単に造れるだろう」
「・・・最悪の場合、アメリカが本気で空母戦力の充実を図ったら、エセックス級空母は約二〇隻。護衛空母は一〇〇隻くらい用意してもおかしくない」
「総搭載機は五〇〇〇機といったところか。沖縄諸島、小笠原諸島、マリアナ諸島、フィリピンの陥落を考えて、日本の脅威となる敵基地航空隊の規模は一万ないし二万機ってところか」
山城は苦笑いしながら言った。その言葉に武蔵は机に突っ伏した。
「・・・勝てないにしても、もう少しまともな作戦は立てられないの?」
「なら、本土上陸して来た敵上陸部隊を国民総出で攻撃するか? 上陸部隊を一〇〇万ないし二〇〇万としても、こっちの総戦力は一億。勝ち目くらいあるのではないか?」
「・・・非戦闘員である国民を巻き込む戦法は断じて認めない」
「なら、残存全航空機を敵艦に体当たりさせる手もあるにはある。空母戦じゃ敵艦に突っ込んだ飛行機がかなりの戦果を挙げてるみたいだしな」
「・・・私達が戦うのは生き残る為の《決死》。必ず死ぬ《必死》じゃない。そんな外道な作戦、絶対に認めない」
強い語調で言う武蔵に、山城はうなずく。
「私だってそんな事はしない。だけど、追い詰められた日本軍首脳部が考えそうな最後の作戦が体当たり戦法になる可能性も、捨てきれないのは事実」
「・・・わかってる」
武蔵と山城は再び沈黙した。
どうやっても、この戦争の結末は日本の敗北しかない。
ならば、どこで負けるべきか。
どのようにして負けるのかを見極めるのが、日本に残された最後の手段である。
ここで舵を取り間違えば、日本の分割統治も考えられる。そんな事になったら、日本は国としての機能を完全に失うばかりか、新たな戦争の火種となるかもしれない。
そう、社会主義対資本主義――ソ連とアメリカの戦いに。
そんな事になったら、日本という国は完全に滅びるだろう。
北と南に別れて、日本人同士が殺しあうというシナリオも考えられる。
想像したくなくても、それが結末になる可能性はある。
自分達の手に、日本人一億人の命と未来が掛かっている。そう思うと、手が震える。
「・・・山城」
「何?」
「・・・勝てないとわかっている戦ほど、辛く、悲しいものはない」
「・・・そうだな」
そう返すと、山城はコーヒーを飲む。会議直前に淹れたそれは、すっかり冷えていた。コーヒーの苦味が、口の中に広がる。
武蔵は日本の未来予想図を見て、力なくため息した。その時、
コンコン・・・
部屋のドアがノックされた。
「・・・誰?」
「あ、私だよ。入っていい?」
その声は大和のものだった。沈みきった心に、姉の無邪気な声が優しく広がる。
「・・・許可する」
武蔵の返事が聞こえたのか、大和はドアを開けて入って来た。
「・・・何の用?」
武蔵が首を傾げながら問うと、大和は困ったように頬を掻く。
「あ、あのさ。滝川さんが今来てるんだけど、みんなを集めて何かするらしいんだ。それで、武蔵にも来てほしいんだけど――」
「・・・断る」
言い終わらないうちにバッサリと断られた。ある程度は予想していた大和もこれには苦笑いするしかない。
「ちょ、ちょっとくらいなら――」
「・・・断る」
再度断固とした態度で拒否する武蔵。恐ろしく冷たい瞳で姉を見詰める。
「・・・あんな地味男に関わっていたら、変な病気がうつる」
「残念ながら、俺はここ五年間風邪すらひいた事はねぇ生粋の健康人間だ」
そう言って現れたのは、今現在もめている原因――滝川であった。
「た、滝川さん! 勝手に入って来られたら困ります!」
大和があたふたとするが、滝川は気にせずズカズカと入って来る。そんな彼の無礼極まりない態度に、武蔵はその柳のように凛とした眉をゆがめる。
「・・・神聖な極上幹部会の会議室に入って来るな」
「へぇ、新組織を立ち上げたってたのは本当だったんだ」
「・・・人の話は最後まで聞け」
武蔵は睨むように滝川を見詰める。滝川を嫌っている武蔵としては当然の態度だ。
「お? 何だこれ。日本ボコボコじゃねぇか」
滝川はテーブルの上に海図を見て軽く言った。その言葉に武蔵は不機嫌そうに眉をゆがめる。
「え? な、何ですかこれ?」
大和も不思議そうに覗き込むが、武蔵はさっさとそれを片付けてしまう。
「あ、ちょっと――」
「・・・これは、姉さんには受け入れがたい事。まだ見るのは早い」
「何よそれ」
大和は不満そうに海図片付ける武蔵を見詰める。武蔵は無言で海図を丸めて脇に置く。そんな彼女を滝川はニヤニヤと、
「へぇ、優しいところあんじゃん」
「・・・うるさい」
武蔵はそう言って彼を睨むと、スッと立ち上がる。
「・・・じゃあ、また後で」
武蔵は山城に静かに会釈すると部屋を出ようとする。
「おい、ちょっと待てよ」
人を無視して消えようとする武蔵を滝川が呼び止めると、武蔵は足を止めて振り返る。その瞳は道端のゴミを見るかのような目だった。
「・・・貴様と話す時間が惜しいし、貸す耳もない」
「手厳しいな」
「・・・黙れ。貴様の声を聞くだけで吐き気がする」
武蔵は徹底的に滝川と関係を持ちたくないらしい。散々吐き散らすとさっさと出て行こうとする。すると、
「仕方ないな。これを聞いたら絶対お前は食いつくと思ったんだが、まあいいや」
滝川の意味ありげな言葉に、武蔵の足が止まった。その瞬間、滝川はニヤリと笑った。
「・・・それ、どういう事?」
武蔵は振り返ってそう尋ねた。
「あん? お前にはもう関係ないだろ」
「・・・話だけは聞く」
武蔵の言葉に、滝川は再びニヤリと笑う。
「なぁに、ちょっくら長谷川を喜ばしてやろうと思ってな」
「・・・詳しく教えて」
武蔵は一瞬にして滝川の目の前に接近すると、キラキラした瞳で彼を見上げる。そりゃあもう空腹のところを助けてもらった子猫のように。
滝川は「まあ待てって。話はみんなを集めた後だ」と言うと、皆を会議室に集め、その計画を提出、実行に移す事となった。 |