第二章 第四節 新連合艦隊旗艦 戦艦『大和』
一九四二年二月十二日、連合艦隊の旗艦交代が行われた。
長年連合艦隊旗艦を務めていた戦艦『長門』のマストから山本五十六連合艦隊司令長官の大将旗が下ろされる。
山本長官、同参謀長を務める宇垣纏中将以下や司令部要員が敬礼し、『長門』を後にする。
そして、軍楽隊の演奏響き渡る中、新連合艦隊旗艦――戦艦『大和』のマストに大将旗が上がった。
この瞬間、連合艦隊旗艦は、『長門』から『大和』に移った。
山本長官や宇垣参謀長他幹部が『大和』に乗り込む。
そんな『大和』の前甲板で、もうひとつの連合艦隊旗艦交代式が行われていた。
前連合艦隊旗艦である長門は数々の艦魂達から多くの花束を受け取っていた。そりゃあもう手に収まらないほど。
「長門さん。今までお世話になりました」
駆逐艦の艦魂が泣きながら花束を渡す。そんな彼女達を見て長門は優しく微笑む。
「やだもう。別に引退する訳じゃないのよぉ?」
こんな時でも長門はお姉さんキャラだ。さすが長年旗艦を務めた女だ。
次に、連戦連勝が続く第一航空艦隊こと機動部隊旗艦の赤城が前の駆逐艦より大泣きで、一際豪華な花束を長門に渡す。
「私はどこまでも、長門司令について行きます!」
「赤城ー。これからは大和についてってよぉ。私は一般戦艦になるんだからさぁ」
「司令は一般戦艦ではありません! 日本連合艦隊をここまで率いてくれました! 私はそんな司令にどこまでもついて行きます! 真珠湾攻撃の時に司令から送られた『ニイタカヤマノボレ』は今で忘れません!」
涙を必死に堪えてそう言う赤城に長門は優しく微笑む。
「赤城ー。私には陸奥がいるんだよ? あなたは機動部隊の空母達を指揮して。立派な機動部隊旗艦になってよ」
長門の言葉に、赤城は歓喜して敬礼した。
「はいッ! 機動部隊旗艦赤城。粉骨砕身の覚悟で努力します!」
赤城との会話を終えると、長門は新連合艦隊旗艦となった大和を見る。大和も敬礼して長門を見詰める。
「これからは、大和。あなたがこの連合艦隊を率いていくのです。頼みましたよ新旗艦」
そう言って、長門は自分の腰の軍刀を大和に渡す。
「私からの餞別よ。受け取って」
「はい」
大和は軍刀を受け取り、自分の腰に差す。
「新旗艦に敬礼!」
長門の命令の後、全艦魂達が一糸乱れぬ動きで敬礼した。
大和も、ゆっくりとそれに答礼する。
戦艦『大和』のマストに掲げられている大将旗が春の朗らかで優しい風でゆっくりと揺れる。
新たな連合艦隊旗艦・戦艦『大和』は、その巨大な勇姿を威風堂々と輝かせていた。
「少尉!」
大和は人間側の旗艦任命式に出て帰って来た翔輝に飛びついた。
「少尉! 旗艦ですよ。旗艦! 責任重大だけど、私、一生懸命がんばります!」
大和は嬉しそうに言うが、翔輝の表情は複雑だった。その意外な反応に大和は心配そうに訊く。
「少尉? 嬉しくないんですか?」
翔輝は黙っていたが、ふと大和を見る。
「旗艦か。という事は人間で言う連合艦隊司令長官だろ?」
「そうですね」
「階級は大将」
「おそらくは」
再び気難しそうな顔をする。
「うーん。それじゃ今までみたいな友達関係はもう無理だな」
「へ?」
大和は面を喰らったような顔をする。そんな大和に翔鶴は肩をすくませて言う。
「これからは上下関係でいきますか」
「ちょッ! ちょっと待ってくださいッ!」
大和が驚愕の顔をしてより強く抱きつく。
「そ、そんなの絶対に嫌ですッ!」
「いやー、だって」
渋る翔輝に大和は泣きそうな顔で叫ぶ。
「旗艦になっても私達の関係は変わりません!」
必死で大和は哀願する。
「んー、でもなぁ」
翔輝は困った顔をしているが、実は大和をイジメてるのだ。
「お願いします! ダメでしたら今すぐ長門さんに旗艦の辞表を叩き付けてきます!」
さすがにそれはヤバイと思い、翔輝は笑いながら言う。
「冗談だよ。冗談」
突然空間から拳銃が落ちて来た。
「・・・ッ!」
見事拳銃は当たったら記憶が吹っ飛びそうな頭の大事な所に命中し、頭を押さえながらその場に座り込み、悶絶する。
「怒りますよ? さすがに私でも怒りますよ」
静かな怒りの声が聞こえた。
すさまじい痛みに耐えながらも翔輝はその声の方向を見る。そこにはこめかみに青筋をたてて、今にも崩壊しそうな笑顔を保っている大和がいた。ものすごく怖かった。
「わ、悪かった・・・ごめん」
「少尉なんか知らないですッ!」
大和は完全に機嫌を悪くし、謝る翔輝を無視して部屋を出て行ってしまった。残された翔輝は困ったように頬を掻くと、小さくため息した。
その夜、新連合艦隊旗艦となった大和の就任祝いが新連合艦隊旗艦・戦艦『大和』の一室で開かれた。
主賓である大和は部屋の中央で士官の艦魂達に祝ってもらっていた。だが、
「まったく、少尉って人は!」
そう言って大和はラムネをグイグイと飲む。
「ちょ、ちょっと飲みすぎじゃない?」
「いいの。私はもっと飲みたいの」
大和は瑞鶴の心配する声にも耳を貸さず本日八本目のラムネを飲む。そんな大和を見て、翔鶴は腕を組む。
「大和。あの航海士と何かあったのか?」
「そうなんですよッ! 少尉ったらひどいんですよッ!?」
大和は待ってましたと先程の翔輝の態度や愚痴をまるでマシンガンのように吐き出す。その話を翔鶴は何も答えずに聞くが、瑞鶴は途中から飽きてしまったのか飛龍と話をし始めてしまった。
ようやく大和が言いたい事を全部言い終えたのは、三〇分後の事だった。そして、翔鶴の答えは、
「ふむ。貴様達はかなり仲がいいようだな」
「そ、そうですか?」
「ああ、互いをそこまで言い合えるのは、それだけ互いを想っている証拠だ」
「そ、そうなんですか・・・」
大和は翔鶴の言葉に満更でもないといった具合に微笑んだ。どうやら鬱憤を全部吐いたおかげで機嫌も治った上に翔鶴に嬉しい事を言われてさらに上機嫌に。
「えへへ、そうですよ。私と少尉は一心同体なんです」
さっきとは打って変わっても笑顔全開でラムネを飲む大和を見て、瑞鶴は苦笑いする。
「もう、さっきまで散々悪口を言っていたのに」
「過去は振り返らない主義なの」
ルンルン気分でラムネを飲む大和。
一方、大和をここまで上機嫌にさせた翔鶴は無言でラムネを飲む。そんな翔鶴の頬を伊勢がつんつんと突付いた。
「何だ?」
「ほんま、翔鶴はんはええ子やなぁ」
伊勢の笑顔に翔鶴は「誤解するな。私はあんな状態で宴の席にいられるのが不快なだけだっただけだ」と憮然と言うが、伊勢は優しく微笑む。
「ほんま、翔鶴はんは素直じゃないわぁ」
そんな翔鶴と伊勢の横で、大和は嬉しそうに長門から受け取った軍刀を見詰める。
「えへへ、でも私が連合艦隊の旗艦なんかになっちゃっていいのかな?」
「いいに決まってるでしょ」
比叡が優しく笑いかけると、大和も嬉しそうにうなずく。
「長門さんからの贈り物、大事にしないとなぁ」
笑顔で言う大和に、長門が優しく微笑む。
「そうよ。大切にしてね。それは私達連合艦隊旗艦である証拠として、代々受け継がれてきた物なんだから」
うんうんとまわりの者はうなずく。が、
「え? 連合艦隊の旗艦って、長門さんだけじゃなかったんですか?」
『・・・』
大和の言った言葉に、部屋は一瞬にして呆れムードが漂った。そんな中、いまだ状況がわからない大和は「え? えぇッ!?」と右往左往する。
「あ、あの、私何か変な事言いましたか?」
「お前、仮にも連合艦隊の旗艦でしょ? もう少し勉強しようよ」
そう呆れながら言ったのは、ドアの前にいつの間にか立っていた翔輝だった。
「しょ、少尉ッ!? 何でここにッ!?」
「あ、私が招待したのよぉ」
そう言って長門が無邪気な笑みを浮かべる。本当に二〇歳を超えているか不思議なくらいの幼げな笑みだ。
一方、翔輝はそんな大和に近づくと、軽くその額をトンと指先で突付く。
「な、何ですか?」
「大日本帝国海軍は日清戦争のずっと前から編成されてたんだぞ。それなのに大正生まれの『長門』一隻がずっと旗艦なんておかしいだろ」
「うぅ・・・」
大和は言葉に詰まる。そんな大和を見て翔輝は呆れる。
「連合艦隊の旗艦はその時代によって変わるんだよ」
「じゃ、じゃあ少尉は全部の連合艦隊旗艦を知ってるんですか?」
「バカにするな。僕は海軍軍人だぞ。そんなの海軍学校で覚える初歩の初歩だ。初代は防護巡洋艦『松島』。それ以降は戦艦『三笠』を始め『敷島』『朝日』『金剛』『山城』『長門』『陸奥』。そして今回からは『大和』、お前だ」
そう言うと、大和はキラキラした目で翔輝を見詰める。その瞳には尊敬の想いが込められていた。
「す、すごいじゃないですかッ! そんな事を覚えてるなんてッ!」
「驚かないでよッ! それくらい海軍軍人なら当然よッ!?」
陸奥が呆れきった声で叫ぶ。すると大和は、
「あ、陸奥さんも旗艦だったんですね」
「ま、まあお姉様と交代しながらだけど」
「姉妹揃ってリーダーには見えませんね」
「「おい」」
長門姉妹二人に突っ込まれ、大和は罪のない笑みを浮かべる。すると、今度は今日も比叡の淹れた紅茶を飲んでいる金剛を見る。
「金剛さんも旗艦だったんですね。金剛さんにピッタリの役職ですね」
「うん? まあ、あの頃は私も若かったな」
そう言って金剛は苦笑する。見ると、比叡、榛名、霧島の三人が苦笑いしていた。
「ど、どうしたんですか?」
「ああ、確かにあの頃は地獄だったな」
「そうね。姉さんが権力を握ってからは恐怖政治が続いたものね」
「私、今でも雪降る真冬の空の下で上半身さらし一枚で甲板掃除をした思い出が忘れられないんだけど」
「ああ、あれか。でも俺は参加可能の全艦魂で竹刀一本の壮絶バトルロワイヤルが一番辛かったなぁ」
「本当に、山城さんが旗艦を変わってくれて助かったよぉ」
霧島の言葉に、比叡と榛名、古参の巡洋艦と駆逐艦がうなずいた。中には涙を流す者までいる。
一方、大和と瑞鶴は互いを抱き合ってガクガクと震えていた。
「そ、そんな恐ろしい事が?」
「ああ、お前も真冬の海水を注いだドラム缶に準備運動なしで素っ裸で飛び込んでみな。人間なら心臓マヒで即死だ」
「一体何がどうなればそんな毎日が死闘になるんですかッ!?」
「姉貴が権力を握るとだ」
「ひえええぇぇぇ・・・」
怯える大和と瑞鶴の横では長門や陸奥、伊勢と扶桑が苦笑いしていた。
「確かに、そんな事もあったわねぇ」
扶桑が遠い昔を思い出すようにつぶやいた。
「扶桑さんも経験者なんですか?」
「そいつは常にのらりくらりと逃げ回っていたからな。何もしてないぞ」
陸奥の問いに金剛が苦笑しながら返答した。その言葉に陸奥の顔からさーっと血の気が引いた。
「こ、金剛さんから逃げられるんですかッ!?」
驚く一同に、扶桑は屈託のない笑みを浮かべる。
「簡単よぉ。いつも伊勢ちゃんにしてるあの技を炸裂させれば、金剛だって牙をもがれた虎も同然よ」
納得する一同の中、金剛は不機嫌そうに紅茶を飲む。心なしかその頬はほんのりと赤く染まっていた。
「私の神の手は体中のツボを的確に、強烈に刺激するからねぇ。ちょっとくすぐったくて体中に言いようのない快感が電撃のように走る。終わった後しばらくは行動不能になるけど、しばらくすれば疲労やコリなんかは全部解決するの。欠点があるとすれば私は実感できないって事ね。でも気持ちいでしょ? 金剛、伊勢ちゃん」
「「・・・」」
二人は頬を赤くしたまま沈黙している。そんな二人を見て陸奥が「気持ちいんですね。うtらやましいです」とつぶやいた。が、それが引き金となった。
「そう? じゃあ陸奥にも味あわせてあげるわ」
「え? いや結構で――はひいいいぃぃぃッ!」
慌てて逃げようとした陸奥を扶桑は見事に捕獲。すぐさま攻撃――ではなくマッサージを開始する。いつもは伊勢なので陸奥がやられていると新鮮味がある。
「ねえ? 気持ちいでしょ?」
「あはははははッ! ちょ、ちょっと待ってくだはははははッ! はふぅんッ!」
涙とよだれを流しながら大笑いして快感に悶絶している陸奥を見て、皆苦笑いしていた。
そして、ようやく解放された陸奥は、ぐったりと床に突っ伏したままピクピクと痙攣している。何かを言おうと口を少し動かすたびに、だらしなくよだれが流れ出る。
「む、陸奥さん、大丈夫ですか?」
霧島が心配して近寄る。と、
「あ、霧島もしてあげるぅ」
「へ? いや、私は遠慮して――はふぅんッ!」
ミイラ取りがミイラになった。
数分間霧島の笑い声とあえぎ声が響いた後、陸奥の横に同じような状態の霧島がぐったりと倒れていた。
二人連続で極楽へいざなった扶桑はふぅと一度息を整えると、今度は大和を見る。
「あ、大和もする?」
「け、結構ですッ!」
慌てて拒否の言葉を出すが、扶桑は「まあまあそう言わずに」と、少し血走った目で大和を見る。明らかにもう大和の為とかじゃなくて自分が楽しみたいだけである。
「け、結構ですッ! わ、私は少尉にしてもらいますからッ!」
『ヘ?』
とっさに言った発言に皆は不思議そうに大和を翔輝を見る。皆驚いているは、一番驚いているのは翔輝だ。
「え? ぼ、僕は何も――」
大和は変な事を言わないうちに翔輝の口を塞ぎ、そっと耳打ちする。
「話を合わせてくださいッ! でないと私まであそこにいる浜に打ち上げられたようなクラゲのようになっちゃいますからッ!」
「わ、わかった」
あまりにも必死な大和に、翔輝は迫力に押されてうなずく。
「へえ、長谷川君ってマッサージできるんだ」
長門が笑顔で感心する。この人は人を疑う事を知らないのだろうか。
「ふぅん、じゃあお手並み拝見といきましょうか」
そう言ったのは扶桑。どうやらライバルの出現に対抗心を燃やしているらしい。
「え? でも僕は――」
「わかりましたッ!」
大和が慌てて許可した。驚く翔輝に「お願いしますッ! 私の貞操の危機がなんですッ!」と泣きつく大和。
「て、貞操って・・・」
「は、早くお願いしますッ!」
大和は上着を脱ぐと空間から敷布団を出し、その上に寝転んで背中を向ける。珍しいワイシャツ姿の大和に翔輝は少し困る。
「え? でも・・・」
「少尉ッ!」
「さあ、あなたの実力を見せて」
まわりのみんなも注目している。もはや逃げ道なんてなかった。
「わ、わかったよ」
翔輝は諦めたように大和の上にまたがる。体重をかけないようにして大和の小さな背中に指をのせる。
「じゃあ、いくよ」
「はい、お願いします・・・」
今さらながら自分のされようとしている行為に恥ずかしさを感じる大和。
(あ、でも、少尉なら身体を触られても・・・構いません)
ひとり乙女心全開の大和はうっとりと翔輝の体温を感じ、ほんのりと上気する。
――次の瞬間、大和は天国を見た。
翔輝の指は見事大和のツボを神業的に押し始めた。
「はひッ!? ちょ、少尉ッ!? どうしてそんなにお上手で――はっふぅんッ!」
扶桑のマッサージとはまた違ったうまさだった。むしろくすぐったさがないので快感が直に伝わる。
「ひょ、ひょうい(しょ、少尉)。ひょうひいひぇひゅ(もういいです)。ひゃへへふははい(やめてください)」
「え? 何か言った? っと、結構お前こってるなぁ。そんなに仕事があるのか?」
「ひ、ひひょひょははしを――はひぃんッ!」
もう大和は生きながら天国へ行ってしまった。
涙とよだれが止まらず、変な声が意思と関係なく口から発せられ、舌はだらしなくまったく機能していない。
数分後、見事陸奥と霧島の横にもう一体の快楽死をした死体が並んだ。
皆は呆然と翔輝を、特に翔輝の手を見詰める。
「は、長谷川君? 何でそんな殺人的なマッサージができるの?」
長門の問いに、少し疲れた様子の翔輝は苦笑いする。
「知り合いの超わがままな子の修行の結果ですね」
「長谷川君」
扶桑はじっと翔輝を見詰めると、スッと手を差し伸べた。
「君と私は、いいライバルになれそうね。これからは、己が技を磨き、より多くの者達を極楽の世界を味あわせてあげましょう」
「は、はあ」
何か危険な事を言っている気がするが、とりあえず握手する。ガッチリと握られた手は、どちらも神の手であった。
「なんか、危険な同盟が結ばれちゃったわね」
苦笑いする長門はひとり紅茶を飲む金剛に近寄る。
「・・・ふと思ったのだが」
「何よ」
扶桑と手を結ぶ翔輝を見てひと言。
「あいつは誰だ?」
「ああ、そっか、知らないわね。彼が前に言っていた戦艦『大和』に乗ってる航空機主義の航海士の士官よ」
「あいつが」
ギロリと睨むようにして見詰める金剛。その視線に気づいた翔輝が振り向くと、そこには見た事のない金髪碧眼の女性がこちらを辻斬りのような目で睨んでいる。
「あ、あの、扶桑さん? あの方は?」
「うん? ああ、あの人は金剛。日本海軍最古参の戦艦である戦艦『金剛』の艦魂よ」
「あ、だから外人なんですね」
納得する翔輝。『金剛』がイギリス産というのも勉強済みだ。
翔輝は自分を睨む金剛にぺこりと頭を下げる。
「は、長谷川翔輝航海少尉です。大和の保護者みたいなものですけど、よろしくお願いします」
翔輝の礼儀正しいあいさつに、金剛は、
「ああ」
と仏頂面に答えた。そんな金剛に「もう素直じゃないんだからぁ」と長門が絡むが、すぐさま竹刀が炸裂し、顔面を押さえて長門は悶絶する。
「で、こっちの子が金剛の妹で榛名よ」
今度は榛名を見て扶桑が紹介してくれた。
「よろしく」
翔輝は笑顔であいさつする。が、
「テメェとなんか仲良くなる気はさらさらねぇ」
榛名は冷たくあしらった。
「え? ぼ、僕って嫌われてる?」
ひとり戸惑う翔輝を置いて、扶桑は榛名に抱きつく。
「な、何しやがるッ!?」
「もう、榛名は素直じゃないんだから。これはおしおきが必要ね」
「はあッ!?」
「比叡手伝って」
「はいはい」
「ちょっと待て扶桑ッ! 姉さんもッ!? ま、マジでやめてッ! ゴラッそこのクソ人間ッ! テメェも見てないで助け――いひッ!?」
比叡に押さえつけられ、扶桑のマッサージを抵抗できずに受ける榛名。だんだんとそのやかましい声は小さくなり、ついに聞こえなくなった。
天に向かって真っ直ぐと伸びた榛名の足は、扶桑が身体を動かすたびにピクピクと震えていたが、ついにぐったりと床に落ち、止まってしまった。
結局、実に四人もの尊い命を犠牲にした宴会は、主賓脱落という結果でお開きとなった。 |