Q4:大事なことはいつも最初に言った方がいいですか?
あの後のことは、もう今日一の中では忘却の彼方(にしようと鋭意努力中)だ。
書いちゃうと一話分位になっちゃうので割愛。機会があれば、また。
まぁ大まかに言うと、嫉妬の鬼と化した某妹さんの瘴気に当てられて某江戸っ子OLさんが対抗。喫茶『都忘れ』は一時冷戦下のミサイル警報の出たアメリカ軍基地のような空気になってしまった。
あとは瑠璃の実は男の子です発言と妙に幼馴染"Sと仲良くなった由紀さんなどなど・・・である。
「あれは大変だった・・・って!また思い出しちゃったし!」
あ、ごめん
★
まだまだ寒さが胡坐をかきながらお茶を啜っているような、そんな冬の平日の午前10時。
喫茶『都忘れ』はいつにもまして静かだった。というより客足が途絶えていた。
そもそもが、ここ都忘れは商店街【阿頼耶坂】から一本脇に入った、いわゆる裏道という場所にあり、若干常連客中心の隠れた名店のような感じなのだ。
だから必然的に平日のランチタイムや休日の午前から昼過ぎ以外はお客が少なくなってしまう。
そんな、いつもの風景。
「・・・グスッいい話だねぇ」
じゃないんだなぁ〜
お店の中で一番日当たりのいい席を陣取って感動に浸っているのは小春だった。
「ティッシュの使いすぎは勘弁してくださいね。はい、カプチーノでよろしかったですか?」
「ズズッ・・・あぁ、ありがとう。この本、由紀の奴に勧められたんだけどさ。泣けるんだよなぁ・・・グスッ」
彼女が読んでいるのは、絵本の【百万回生きたねこ】だった。
いや、たしかに泣けるいい話だけどさ、二十過ぎた後輩が先輩に勧める本か?そこはかとなく子供扱いしてね?
「あぁ、その本僕も感動しました。妹に読んでるうちに、僕まではまっちゃって」
二人の間には、ほんのちょっぴりのセンチメンタルがあった。
「・・・というより、お仕事は?」
流れる空気を一気に切り捨て、尋ねる。多かれ少なかれ由紀の真意(子供扱い)に
今日一も感じていたのだ。
「あぁ、この一週間会社にこもってたんだよ。だからその分の休みをな。まぁ徹夜明けの朝からなんだけど。でもおまえだってなんでこんな時間にいるんだ?学校じゃねーのか?」
本をおいてミルクティーをすすりながら尋ねる。
「僕は今日は学校がありませんから。入試は終わりましたし」
「ふーん」
さして興味はなかったらしい。少しの沈黙が間を挟んだ。
「なんか腹減ったなー」
あらかさまな棒読みで宣言する小春。
彼女だって空気を読むのだ
「なんにします?」
まぁトムヤムクンを作れたんだからなーと、今日一は考えていた。そう、この時までは・・・
「じゃあナシゴレン」
「無理です」
「トム作れたなら作れんだろ?」
トムって・・・なんか人みたい★
「ナシゴレンって・・・」
「食いたーい」
「中華鍋があるんだよなー。あぁ・・・もう作りますよ」
少しのため息、冷蔵庫のなかを捜索開始。
見つけたシーフードミックス(海のパスタ用)を炒めながら卵を溶き入れる。
「ナシゴレンって、なんだ?」
「え?知らずに注文したんですか?」
「なんかアジアなのは聞いた気がするんだけど」
「・・・インドネシアの、まぁ焼き飯みたいなものです」
「あぁ、インドネシアなら行ったことあるぞ!出張で、だけど」
そういう話をしながらも、やっぱり手はせわしなく動く。
「そういえば、インドネシアといえばジャワティーありましたね。お出ししましょうか?」
「あぁ、お願いするずぇ!」
ちなみに、裏メニュー料理は時価である。この前のトムヤムクンは450円。ナンプラーは喫茶店には必要ないのだ。
手慣れた手つきで紅茶を入れる。
「ホットでいいですよね?」
「おk」
「どのようにお飲みになりますか?ミルクとストレートがおすすめですけど」
「もちろんミルク!」
なにがもちろんなのかは、このさい置いときました。
中華鍋にご飯を入れ、その隣でポットとカップを温める。
オタマでかき回しながら、やかんの熱湯を茶葉を入れたポットに注ぎ込む。
そのまま紅茶を蒸らしながらナシゴレンの仕上げに入る。
味を調えた後皿に盛り、半熟の目玉焼きを盛りつけ蒸らし終わった紅茶をカップに注ぎ・・・
フゥ。
そのまま冷たい(こだわり1)ミルクを少なめに(こだわり2)そそぐ。
ちなみに紅茶を濃い目に淹れるのがこだわり3だ。
「はい、ミルクティーのジャワとナシゴレンになります」
両方とも熱々の状態で。
「いっただっきまっす」
まずはナシゴレンをかきこみだす小春。
ん〜ワイルド
「んめぇ!おまえよくこんなマニアックなの作れんな?すごいぞ!」
「前にバイトで作ったことあるんでね」
ガツガツガツガツガツガツガツガツガツ
「んまかった!」
ほんとに・・・なんというか、キレイに食べきる小春。
少しさめた細部にまでこだわりぬいた紅茶をズィっと飲みほしおきまりのプハー。
「ごっそさん」
「どうもー」
「その、あのな」
「ん?なんですか?」
ムムムッという顔を作り、皿を洗う今日一を睨みつけるように見てくる小春。
「あ、明日定休日なんだろ!」
「あぁ、すいませんね。店長が今度は松坂牛の踊り食いとかでまた旅に出ちゃったので」
ここ都忘れは、あまりに定休日が不規則だ。
というか、もうもはや定休日じゃない。
「いや、そうじゃなくてだな・・・」
「?」
「ゆ、由紀の奴がな、その・・・おまえをで、でーとに・・・」
顔を真っ赤にしながらどもる小春。
さぁ、言うんだ!言っちまうんだ!
「あ、黄身ついてますよ」
グィッと紙ナプキンで口元をぬぐう今日一。
「あ、う、ダンケ」
今度はドイツ語だぃ!
「・・・また言えなかった・・・」
「?」
「つうか、なんで誘おうとしてんだ?あたし」
そこから?
つづく
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