Q2:出会いに実感がない時ってどうすればいいんですか?
そんな毎日の繰り返しでも、週に二日の楽しみはある。
その日、小春は昼間っから飲んでいた。
理由は簡単。友人の結婚式だ。
まぁすでに2次会なんだけど。
「ちくしょーっこれがぬぉまずにいられるか!」
「あぁん先輩!飲みすぎじゃないっすか?」
その友人は、小春の勤めている会社の同期であり、もちろん由紀も呼ばれている。
「どぅおいつもくぉいつも結婚だぁ寿退社だぁって・・・」
「あら?そこで嫉妬ですか〜?」
「ちげぇ!別に誰が誰と結婚しようと関係ねぇ!私が結婚できないのがなんか嫌なんだ!」
・・・ごもっともパート2
「・・・結婚なんてあんまいいもんでもないっすよ?」
そう言うと由紀はつまみかけの枝豆で遊びながら、2杯目のチューハイ(すでに生ジョッキ3杯、焼酎1杯)をくっと飲み干した。
「それでもだよぉ!」
今まで恋愛沙汰にはそこまで興味がなかったが、25にもなってみれば、少しは意識をしてしまう。
「ん〜その前に恋人作んないと!ですねぇ〜」
「そりゃ私だって付き合ったことぐらいあるさ」
昔・・・といっても高校時代、小春はたくさん告白されたうちの一人と試しに付き合ったことがあった。
初めてのデートにドキドキしてみれば・・・そのあまりのつまらなさに、小春は驚愕したものだった。
前に友人たちとみた時は、あんなに面白かった映画の続編も、(その・・・まぁ一応)彼氏とみたらとんでもなく面白くなかった。あえて言うならつまらなかった。
そのあとビデオで借りて見たら、すごく面白かった。
それから、なんとなく恋愛にたいして抵抗・・・というか、まぁそれに近いものができてしまった。
以来ずっと恋をしてこなかった。
それでも焦るものは焦る。もう25だ。いくら世間が晩婚化でも自分にとっては大問題だ。加えて親も最近うるさく言ってくるし・・・
「あぁぁどうすりゃいいんだよぉ・・・」
そう言いながら芋焼酎をぐっと煽る。
それを見ながら由紀は、遊んだ枝豆を食べながらにやりと笑ってこう言った。
「まずは初体験からですなぁ〜はい」
たっぷり5秒間をおいて、小春は芋焼酎を噴き出した。
★
いくら土地からお金が入るようになったと言っても、二人分・・・しかも高校生の二人で食べていくには少しばかりたりない。
だから今日一はまだバイトを続けていた。
今やっているバイトは喫茶店と、その時に合わせて少しのバイトを入れている。
「ウィンナー・コーヒーとピザトースト・・・と牛丼特盛り」
「ん〜カフェ・ラテと季節のパスタ!大盛りでね」
「かしこまりました・・・少し待ってね」
「わかった〜まってる〜」
「つーかおまえらそんなに食うの?」
「おいおい・・・育ち盛りとは言わねぇけど、それでもおれら高3だぞ?坊主が食わなさすぎるだけだよ」
「そうかな?」
そうだよと言い残し、今日一が淹れたウィンナー・コーヒーを一口。
「こいつのなまえは〜竜胆 祭18さ〜い」
「誰に説明してんだ?雛菊 瑠璃5歳」
「僕は18歳だよ〜!!」
・・・ウィンナー・コーヒーを片手にピザトースト齧っている長めの茶髪のイケメンの名前は竜胆 祭。
こう見えて陸上界では昇り龍と呼ばれ、ハイジャンの高校記録を持っているほどの男だ。
しかも喧嘩も強く面倒見もいい、今日一達にとっては兄貴的な存在。まぁ外見がアレなのと喧嘩で学校じゃ浮いてしまっているが、本人にしてみれば本当に心を許せる親しい友人が何人かいればほかはどうでもいいらしい。
色んなバイトを紹介してもらったり、少し家を空けるときに綾乃に料理を教えてもらったりと、本当に今日一にとっては頭の上がらないやつだ。
その隣でカフェ・ラテのカップを両手で抱えてちびちびやってる小柄で金色の長い髪を後ろで結った・・・言いたくはないが女の子のように見えなくもない、というよりそれにしか見えないようなお・と・この名は雛菊 瑠璃(これまた女の子の名前)。
小さなころから絵が好きで、本格的に始めたのは高校の美術部に入ってから。
芸術の才能の塊のような奴で、漫画から油絵、水彩画など様々なジャンルに手を出している、いま世界で注目されている画家さんだ。
まぁ性格においては前衛芸術のようなもんだが。
「説明終わった〜?」
もちょい
「さっさとすませろ?飯がはじまんねぇ」
おK!
そんなふたりは、祭は陸上で、瑠璃は芸術で今日一と同じ大学の推薦を通っている。
まぁ仲良し3人ってところだ。
「・・・ちょっとまった。私を忘れてる」
あと綾乃とも親交が深い。まぁ綾乃はブラコンなのだが。
「いらっしゃい綾乃」
「よぉ綾乃。なんだ?土曜課外か?」
「うん。・・・大変だよ」
「はっはっは〜普通科の僕とスポーツ科のマツリには分らない苦労ってやつだね〜」
四人はいつもいっしょにいる。それがデフォルトと化しているくらいだ。
「そうだね〜デフォルトだ〜」
「意味わかって言ってんのか?琉璃」
「っというよりみんな誰と話してんの?」
「「「さぁ(ね)?」」」
★
それから2時間、3人は今日一のバイト先である喫茶店【都忘れ】で牛丼食べたりハンバーグ食べたり騒いだりさんざんしたあと、嵐のように去って行った。綾乃は渋っていたが、いられちゃ迷惑になりかねないので帰ってもらった。
というよりあいつらがたのんだ牛丼特盛りやらジューシーハンバーグやらは今日一がいるときだけに限った幼馴染メニューではない。
列記としたこの喫茶店都忘れの裏メニューなのだ。
そもそもここの喫茶店の店長は様々な料理を本場で極めた鋼の料理人で、さまざまなレストランでのバイトで料理を会得していった今日一とはレベルが違うお人なのだ。
まぁその極めた先にまっていたのが喫茶店・・・というのもどうなのだろうか。
ちなみに今日は八戸まで究極の魚介類を探しに行っているのだが。
手音の時計ではもう5:38を指していた。
「今日は店長もいないし・・・客もこないし・・・たたむかなぁー」
っと、店のテーブルで古本を読み進める今日一の耳に入って来たのは店のドアの開くベルだった。
「うぅ〜気持ちが悪いずぇ〜」
「ちょっとぉ!先輩!」
振り返った先にいたのは、顔を真っ青にしてもう一人に寄り掛かる黒髪の長い気の強そうな美人と、その美人に寄り掛かられる茶髪にウェーブのかかった可愛い感のある、やっぱり美人さんだった。
「あのーもう終わったんですけど?」
「えぇ〜こまります!店長さんは!?」
「いま食探しの旅IN八戸だそうです。帰りは明日ですよ」
「そんなぁー」
「由紀・・・もぉ・・・だめかも」
「ちょ、ちょっと!店の中ではやめてくださいよ!いまバケツ持ってきますからね?」
そう言ってカウンター式の厨房に戻ろうとした今日一に、今気づきましたといった感じの気の強そうな美人・・・小春は、いきなり肩をつかんだ。
「うぉい!」
「ん?」
≪バシンッ≫
「!?」
「てんめぇ・・・しぃつこいんだよ!こっちがぁぅよぉっぱらいだからってぇなぁめんなよ?」
「先輩!この人はさっきのナンパやろうじゃないよ!!」
「あぁぁん?うぅぅぅだめ・・・もうだめ・・・」
小春が発射5秒前の姿勢に入る。
「あああああああああ!!ちょっとまって!!!」
すかさず今日一が光の速さでバケツを持って来る。
まさに間★一髪!!すんでのところで間に合ったご様子。
「うううううううぉ『ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』ぇぇ」
バケツに向かって発射している飲んだくれに一同人安心。
そのまま発車するだけ発射したら、口をゆすがせたあと速攻で眠ってしまった。
「どうもすいません・・・」
そのすいませんにはビンタと発射と勝手に居眠りの三つの意味が含まれていた。
「あぁ大丈夫ですよ。間に合いましたし。それに店長のお知り合いの方でしたらいつまでいらっしゃられてもかまいませんし」
「いや、ビンタも・・・」
今日一のほっぺには、真っ赤な手形が残っていた。
「あぁ・・慣れてますから」
「えっ?」
「いや、酔っ払いの相手をするのが。ですよ」
「ああ!そうですよね〜」
はっはっはと笑いあう二人。隣でうーうーうめきながら爆睡する一人。
結構シュールだ。
「バイトか何か?」
「はい。昼から夜までここでバイトしてます」
「へぇ〜!大学何年?」
「いえ、今年から。ですね」
「ふーん!がんばってね」
「はい・・・あ、なにかお飲みになりますか?」
「ん〜じゃキャラメルマキアートお願いできる?あとそこまでかしこまった敬語使われても困るから・・・普通でいいっすよ?」
「はぁ・・・わかりました。キャラメルマキアートと普通で。ですね」
にこっとして言う今日一に由紀は一瞬キョトンとしたが、すぐにけらけら笑いながらお願いします。と返した。
それから1時間、今日一と由紀は談笑していた。
「へぇ〜キョウくんはまだ18なんだ〜」
ちなみに今日くんとは、由紀が
「今日一っていうの?ならキョウ君でいいかな?」
と勝手にきめちゃったあだ名だった。
「ええ。でも由紀さんもとても若く見えますよ?」
「うまいねぇキョウ君は!」
「ん〜〜〜〜〜〜」
ガバッと顔をあげた小春は、妙におなかが減っていた。
「・・・マスター!から揚げ定食にラーメン・・・」
「あ!先輩起きたんですか?」
「うぅ〜少し酔いのこってるけどな〜」
「お作りしましょうか?」
ん?とぼぉっとした顔をあげた小春と、カウンターから尋ねる今日一の眼が合った。
それがファーストコンタクトだった。
まぁ一方的に最悪だけどね。
続く
|