Q1:出会う前の準備って何がありますか?
彼女・・・翌檜 小春(25)の朝はいつもどうりの気だるい目覚めから始まった。
「あぁ・・・気持ちわりぃ・・・頭いてぇ・・・」
昨日しこたま飲んだ酒にクリーンヒット。人生何度目かもわからない二日酔いに苦しむ。
それでも無理やり体を起こす。今日は月曜日・・・英語で言うならマンデー。週明けのお仕事が始まる日だ。
≪ヴーーーヴーーー≫
タイミングばっちりのところで携帯が鳴る。現在7:30。小春は毎朝目覚ましとの仁義なき戦いに競り勝ってきた。
いわく、何かに起こされるのが途方もなく嫌いなのだとか。まぁ知ったこっちゃない。
体を引きづりながら顔を洗い歯を磨き食パンを生で食べながら新聞に目を通す。いつもの光景、なんだかおっさん。
食事が終わったら薄く化粧・・・ほとんど口紅(淡いピンク・一本のみ)だけをし、適当に選んだ服に腕を通す。
8:20。鍵を閉め、バス停へ。二日酔い現在進行中。ドアを閉める音に切れる。
8:36。バスが到着し、乗り込む。窓際確保!というよりこの席はほとんど彼女の指定席化。暗黙のルールだ。
9:00。会社に到着。
「おはようございまーす先輩!!」
「あぁぁ!さけぶんじゃねぇ!頭に響く!」
元気に彼女にあいさつするのは柏 由紀(23)。昔はお水の花道を驀進していたが、何を思ったのかOLに転向。そのままマイウェイを驀進する小春の後輩だ。
「えぇ〜?もしかして二日酔いですかい?」
もちろん元・お水だけあってお酒に強い・・・というより二日酔いがない。
「もしかしなくてもそうだよ!」
首をかしげたままケラケラと笑う彼女が憎たらしくてしょうがない。ちきしょう!昨日一緒に飲んだってのによ!・・・そう顔に書いたまままた歩き出す。
よく晴れた冬の空の真向からけんかを売るかのようなどす黒い雰囲気をバンバン出しながら。
由紀はそれを肌に感じながら・・・
「ぷっ・・・ぷぷぷっ・・・せんぱーい!すっごい不景気な中年サラリーマンみたいなオーラがにじみ出てますよ?ぷぷっ」
まわりのすっごい不景気な中年サラリーマン達がぬぅ・・という顔をしているのにもまったく知らん振り。
そのまま小春をおって走り出す。
それはいつもどうりの日常。あと五回繰り返す毎日。味気のない、ただくるくると回る繰り返し。少なくとも、小春にとっては・・・だが。
★
彼・・・菖蒲 今日一(18)の朝は遅い。
昔は4:00には起きて新聞配達のバイトと朝食に弁当の準備。それが終われば学校。学校が終わるとそのまま喫茶店でバイトをし、夜はこれまたさまざまなバイトをシフトと相談しながら掛け持ちしていた。
人は今日一のことを苦労人と呼ぶ。
それには理由があった。
今日一には両親がいない。彼が6歳の時に交通事故で死んでしまったからだ。
まぁ両親ともギャンブルやら酒やらに浸りこみ、子供の面倒をほとんど見ないようなような最低の人間だったのだが。
まぁ借金がなかったのは、奇跡とも言えよう。
そんな両親の人となりのせいか、まだ幼い今日一とその妹菖蒲 綾乃(16)を引き取ってくれる親戚もなく、そのまま施設に預けられることになる。
だがその預けられらた施設というのが運の悪いことに経営不振に加えて虐待が問題になっており、結局今日一と綾乃は10歳の時に逃げ出てしまった。
それ以来、かつての両親の友人であるという人から部屋を借り、少しの援助を借りながらバイトと内職(兄がバイト、妹が内職)で生きてきた。
高校には私立高校に奨学で通り、授業料免除で通った。もちろん妹もだ。
このまま大学にもいかず、さぁ就職でもするかな・・・というある冬の日に、苦労して苦労して苦労してきた今日一に奇跡がやってくる。
なんと今日一の両親がたくさんの土地を持っていることが発覚したのだ。まぁだからあの両親に借金がなかったわけだが。
親戚たちも今日一たちを引き取らなかった手前、今更所有権やらを持ち出せずにほぼすべてを引き継ぐことができたのだ!オォイェイ!!
まぁ昔と変わって物価の上がったため、それだけで食べていけるわけではないのだが、以前に比べ今日一と綾乃の暮らしはずいぶんと人並みに近づいた。
おかげで今日一は進学することができ、推薦入試で1月のうちに近くの某有名大学への進学を決定。そのまま高校生でもないが大学生でもない暮らしを送っていた。
≪コンコン≫
「おい綾乃ー学校に送れるぞー」
「ご、ごめんお兄ちゃんっ!」
ドアを勢いよく開けて今にも転びそうなくらいの足の運びで飛び出してきたその少女は、天使のような顔を申し訳なさそうに歪めながらお兄ちゃんと呼んだ男に誤った。
真黒の髪をかわいくミディアムボブで切りそろえたかわいらしい彼女の名前は菖蒲 綾乃。
そして勢いよく開いたドアと衝突しそうになって慌ててよけようとしたものの、すんでのところで鼻にかすってしまったあと一歩が足りない感のある彼の名前は菖蒲 今日一。
二人は最初に暮らしだしたアパート(1Kトイレ・風呂共同)を15歳の時に出て、いまは某県某所にあるマンション(2LKトイレ・風呂別)に暮らしている。これで家賃が2万5千円というのは、今日一の働いている喫茶店のマスターのおかげだった。
っとそれより!
「・・・大変!遅刻!!」
「もぉ!なんですぐに準備しないの?」
「なんか説明的なものをしていたから・・・」
「誰が?僕は聞こえなかったけど・・・」
「ん?そう言えば誰?」
あ、私です
「ってそれより早く準備しないと!ほら、朝ごはんサンドイッチだからバスの中で食べな」
そういって今日一は弁当とは別に袋を渡した。
「ありがと!ちゃんと食べるよ!」
そういってニコッと笑う綾乃の笑顔は、まるで・・・ってなんかたとえるものがないくらい眩しかった。
「お兄ちゃん・・・行ってきますのちゅうは?」
「しません」
「・・・いつもしてくれるのにぃ」
「そういう誤解を招くようなことを言わないよ。ほらいっといで!ほんとに遅れちゃうよ!」
「わ!・・・やばい!っと!そういえばお兄ちゃん今日学校来る?」
「あぁ・・・昼前ごろに顔は出しに行くよ」
「わかった!じゃいっしょにご飯食べよ?」
「はいはい・・・それより早くいっといで!」
「は〜いいってきまーす」
「いってらっしゃい。気をつけるんだぞー」
こんな毎日。たくさんの苦労の上に成り立つ平穏で慌ただしいけどゆっくりとした今日。
こんな日がずっと続く。事件もなく、ゆっくりと歩く日々。それでいいと思っていた。
それが今日だとおもっていた。
続く
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