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おねえさん大家の人情派日記 ~こんなアパート、いかがでしょう?~ 作者:みづき
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第6章 B棟102号室 仁科進さん・美代子さん(7)

「じゃあ、心当たりのところは探されたんですね?」
 階段を降りながら尋ねると、高田はうなずいた。
「ええ。大樹のお友達のお宅にも確認したんですけど、どこにも行ってなくて」
「大樹君が家を飛び出したのは、7時過ぎでしたね?」
 既に1時間近く経っている。
「角田さんの所は確認されました? この間、一緒にメンコをやっているのを見ましたけど。もしかしたら、訪ねているかも」
 私の言葉に、高田は首を横に振った。
「いえ、まだ確認してません。角田さんが大樹と遊んでくださってたなんて、知らなかったもんですから」
「じゃあ、行ってみましょう。こっちです」
 階段を降り切って傘をさすと、私たち3人はA棟103号室に向かった。ドアの前に着き、インターホンを鳴らす。少しして、ドアが開いた。
「おや、皆さんおそろいで、どうなさいました?」
 パジャマ姿の角田が、微笑みながら尋ねる。
「大樹君、来てませんか?」
 私が尋ねると、角田の顔が引き締まった。
「来てないけど…。何かあったのかい?」
「ええ。1時間ほど前に家を飛び出して……。戻ってこなくて……」
 高田が消え入りそうな声で答える。
「何だって?」
 角田が驚きの声を上げる。
「まあ、男の子だし、そういうことはあるさ。俺も一緒に探すから…。ああ、着替えなくちゃいけないな」
 角田はそう言うと、私の方を見た。
「探偵さんの所は確認したのかい?」
「山下さんの所ですか?」
「ああ。この間、探偵さんの所に行ったらさ、大樹君、オセロやってたんだよ。雨も降ってるし、近場で隠れてるのかもしれないよ」
 角田の言葉に、高田がうなずく。
「ありがとうございます。行ってみます」
「俺も、着替えたら行くからさ。そんなに心配しないで。大樹君はしっかりしてるから、きっと大丈夫だよ」

 私たち3人は角田の家を出ると、探偵事務所に向かった。表は既にシャッターが下りている。裏口に回って、ドアを叩く。
「すみません、岩内ですけど」
 ドア越しに声をかけると、「はいはーい」というのんきな声と共に、ドアが開いた。
「大樹君、来てませんか?」
「え? 大樹君? 来てないけど」
 山下が驚いたような顔をした。普段はパリッとした格好をしている彼も、既に上下スウェットという普段着になっている。
「来てませんか……。もう、どうしよう」
 高田が両手で顔を覆ってしゃがみ込む。私は彼女に代わって、これまでの状況を説明した。
「なるほど、そういうわけですか。ねえ、お母さん、大樹君はお金を持ってますか?」
 山下が高田に向かって尋ねる。
「え? お金ですか? いえ、お財布は置いて行って……。あ、ポケットに入れさせているお守り袋の中に、念のため千円札は入れてますけど」
「そうですか。もしかしたら、前に住まれていた家に行っているかもしれないと思いましてね。西砂橋駅からなら、千円あれば最寄りの駅まで行けますよね」
「ええ。でも、父親のことは嫌ってますし、戻るかどうか」
 高田が目元をぬぐいながら、立ち上がる。
「でも、お友達はいるでしょう? 以前、そういうケースを扱ったことがあるんですよ。僕、車で前の家まで行ってみます。電車より早く着けるでしょうし。家のある場所はわかってますから」
 以前、張り込みをしてくれたのだ。そこのところは間違いないだろう。
「お父さんが住んでいる家の中に入ることはないでしょうから、近所を探してみますよ」
「お願いします」
 高田が頭を下げる。
「見つかったら、電話します。大家さんの携帯でいいですか? もし、こちらで見つかったら、僕の携帯に連絡してくださいね」
「わかりました」
 ジーンズの尻ポケットに入れているスマホを確認する。すると、志穂未が私たちの顔を見回しながら言った。
「じゃあ、私たちはもう一度、ご近所を探しましょうか」
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