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おねえさん大家の人情派日記 ~こんなアパート、いかがでしょう?~ 作者:みづき
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第3章 A棟203号室 平本浩太さん(2)

 15分後、私は憲二郎と共に、203号室の前にいた。再度チャイムを鳴らすが、反応は無い。
「鍵を開けますよ」
 憲二郎が、ドア越しに部屋の中に声をかけ、鍵を差し込んで回す。ドアを開けたが、チェーンが掛けられており、途中までしか開かなかった。平本は、部屋の中にいるようだ。
「平本さん、平本さーん」
 ドアの隙間から声をかけるが、返事がない。どうしよう、中で死んでいたりしたら。私は体が震えるのを感じた。
 憲二郎が、手にしていたバッグの中から、ペンチを大きくしたような道具を取り出した。後で知ったが、ボルトカッターというものらしい。
「チェーン、切りますよ」
 少し手間取ったが、チェーンは音を立てて二つに割れた。
「失礼します」
 憲二郎がそう言いながら部屋に入る。私も後について中に入った。玄関で靴を脱ぎ、恐る恐る部屋に足を踏み入れる。途端に生ごみのにおいが鼻をついた。
 キッチンには、空になったカップラーメンの容器やお弁当箱が、めちゃくちゃに積み重ねられていた。これが悪臭の原因のようだ。
「平本さん、しっかりしてください」
 先に奥の部屋に入った憲二郎が、叫び声を上げる。急いで奥を覗くと、ソファの上で横たわる平本の姿があった。胸が上下しているところを見ると、死んでいるわけではないらしい。
「おい、救急車呼んでくれ。早く」
「うん」
 尻ポケットからスマホを取り出した。震える手で何とか119を押し、しどろもどろで救急車を要請する。
 スマホを切った途端、平本の部屋にあった固定電話が鳴り始めた。すぐに留守番電話に切り替わる。すると、電話の向こうからドスの効いた男性の声がした。
「平本さーん、いるのわかってんだよ、電話に出ろよー。おーい、借りた金はきちんと返してくださいよー」
 それだけ言うと、電話が切れた。
「一応、警察にも連絡した方がいいかもしれないな」
 床に落ちていた小瓶を拾いながら、憲二郎がこちらを見る。
「警察?」
 私の問いに、憲二郎は手にした小瓶をこちらに見せながら答えた。
「これ、酔い止め薬だ。テーブルの上には、ビールの空き缶もある」
 言われてテーブルを見ると、潰されたビールの空き缶がいくつか無造作に転がっていた。その横には二つ折りの黒い財布が置かれている。
「自殺未遂かもしれない」
 驚いて憲二郎の顔を見返す。
「酔い止め薬で自殺?」
「ああ。たくさんの量をアルコールと一緒に摂取すれば死ねるとかいう説があるんだよな。本当かどうかわからないけど。睡眠薬より手に入れやすいし、この方法を選んだんじゃないかな」
 憲二郎が眉間にしわを寄せながら言う。
 私は、改めて平本の顔を見つめた。こんなに若いというのに、未来はまだまだあるというのに、何でこんなことになってしまったんだろうか。
 それ以上言葉が継げずにいる私の隣で、憲二郎はスマホを取り出してボタンを押した。警察に連絡しているようだ。落ち着いた話しぶりから察するに、何度かこういう現場を経験しているのだろう。
 そのうち、遠くから救急車のサイレンが聞こえてきた。憲二郎は電話を切ると、こちらを見た。
「お前、一緒に救急車に乗って行ってくれ。俺は警察に話をした後、保証人に連絡するから。平本さんのスマホと財布も、忘れずに持って行けよ」
 憲二郎はそう言いながら、ベッドの脇に落ちているスマホを拾い上げ、テーブルの上にあった黒い財布を手にした。中身を確認する。
「金は全然入ってないな。でも、保険証はあるみたいだ。病院で見せろ」
「わかった」
 そう答えて、平本のスマホと黒い財布を受け取った。しかし、頭がパニクって何が何だかよくわからない。サイレンの音が近づくにつれ、心臓がバクバク鳴りだした。
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