暗い牢屋でオレたちは出会った。
「おい。お前、何してぶちこまれたんだよ」
「ははは。恥ずかしい話、食い逃げっス」
オレはもう食いしん坊なくせに働くのが嫌いなので何回も食い逃げして何回も牢屋にぶちこまれてる。悲しいが、牢屋に入るとタダで飯が食えるのでどうしようもない。
「お前、それでそんなに太ってるのか」
「そう言う山本さんは何でぶちこまれたんスか?」
「オレか?」
「きっと山本さんのことだからすげえことをやらかしたんでしょ?」
「いやな」
山本さんは臭い飯をスプーンで食いながら悲しい目をして答えた。
「オレはな、言いたくないな」
「なんでっスか。武勇伝を聞かせてくださいよ」
山本さんは飯をのどにつまらせてゴホゴホむせた。
「だ、大丈夫っスか。山本さん!」
「だ、大丈夫だ。わかった。言うよ。オレはな・・・・食べ残しだよ」
「は?」
何だそれは。
「オレ病弱だからね。どの店行っても食べ残しちゃうんだ。そのうち店主たちが怒ってね、警察に訴えたら、それはけしからんということでぶちこまれてしまったんだ」
オレはビックリして、スプーンを落としてしまった。そんなバカな話が世の中にはあるのか。
「そ、そりゃ食べ残しはいいことではないかもしれないけど、でも牢屋にぶちこまれるようなことじゃ」
オレが、「残り食べましょか?」と言ったら、山本さんは、「ああ。ありがとう」と言って皿をオレに渡した。
「世間なんてそんなもんさ。気に入らんヤツは監獄に送る。ただそんだけなのさ」
「悲しいっスねえ。ムシャムシャ。それは悲しい」
オレたちの後ろで低いドスの効いた声がした。
「おめえら甘え。甘っちょろいぜ。ショートケーキより甘っちょろいぜ」
振り返れば、牢屋主のたけしさん。体重が二百キロもある。
「じゃ、じゃあ、たけしさんはどんなことしてぶちこまれたんスか?」
「オレか?」
たけしさんはスプーンをガガガとすばやく動かし一気に臭い飯を平らげると、皿を放り投げた。床に叩きつけられガシャーンと割れた。
「オレはな、驚くなよ」
オレたちはゴクリとつばを飲んだ。
「連続幼女強姦殺人さ」
たけしさんは、どうだと言わんばかりに腕を組んでふんぞり返った。
「ふーん」
「なんだそれ」
たけしさんの小さい目がさらに点になった。
「え? あれ? なんで?」
「だって」
「ねえ」
たけしさんはあわてふためいた。
「だってお前ら、幼女強姦殺人だぞ。しかも連続だぞ」
オレたちはため息をついた。
「だって今までの流れから言ったら食い物で落とさなきゃならんでしょう普通」
「これじゃ読者は納得しないよねえ」
「ねえ」
たけしさんは二百キロの巨体を揺らせながらわめいた。
「なんだよ。読者って。何わけわかんねーこと言ってんだ。わけわかんないよ!」
牢屋が揺れる。やかましいことこの上ない。
看守は腹が立ってきた。
「オチがないから黙って寝とけ。このうすらデブ!」
たけしさんに向かって発砲した。
「うーん。うーん。うーん」
脂肪に弾がめり込んでなかなか死なない。
オレたちは眠れなくて困った。(了)
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