39話 ふぅむ…
とりあえず、頑張りました。週に1~3話は投稿したいな、と思っています。
コタツで眠るのはやめましょう…俺は風邪っぽくなりましたので(汗
長い間、地面の中を通過し…炎が自分で作った溶岩を撒き散らしながら下に向かって飛び出した。
天井から竜に乗って飛び出した炎は、特に表情を変えることなく周りを見回す。
周りは何か魔法でもかけられているのか、それなりにちゃんと回りを確認できるほど明るいが光源のようなものは無く…それなりに広い空間の真ん中には、定番のように封印で封じられた大きい丸い何かが置いてある。
「あれかな…」
炎が静かに呟いた。
「まてぃ!! 何回呼んでも無視しよって…小生意気な小僧めッ!!」
そんな炎の後を追って、ご老人が飛び出してきた。
「本当にしつこいな…」
そんもご老人に向かって、炎は冷たい一言を吐いた。
「……」
それに老人は何も言わない…その老人の影から出てきた人形が炎に向かって襲い掛かる。
二人とも空中で、それなりに距離が開いていたのだが…人形の腕が翼のように幅が広くなり、相当の距離を一気に詰めて迫ってくる。
「サラ…頼んだ」
その言葉と共に火竜がUターンし…炎は飛び降りる。
火竜は人形に向けて数発の火の玉を放つ…それを受けて爆発したので、人形の前半分が飛び散ったが、人形はソレを気にせずに飛びかかる。
スタッ…という軽い音をたてて着地した炎は、ゆっくりと封じられているであろうモノへと近づく。
その後ろでブワサァ…という音と風が後ろから感じ…老人が着地していた。
「ワシの遊びを邪魔するのか?」
「別に、その封印を解いても良いよ…正直、この世界の人間がどうなろうが俺にとっては関係ないんだけど……俺的には、目の前で女性が死ぬのは嫌なだけだから」
「ふぅむ…」
そんな事を呟いた老人は片方の眉毛がピクリと動いた。
それと同時にソレを封じているであろう封印が、まるでガラスが割れた時のように甲高い音を響かせながら、粉々に砕け散った。
─ ─
「……紗枝」
ポツリと要が呟いた。
目の前には、その名前を呼ばれた少女。
だが、違う……背中からサソリの尾っぽのようなモノが飛び出し、上と下の体が割れてまるで百足の様な胴体が上と下の体をつなげている。
その百足の胴体からはいくつもの長い足がワラワラと生えている…それ以外にも、いろいろな虫の体の一部をくっつけたような体になっている。
それがアイドルをやっていたような人間とは思えない。
「私は…ここまで醜くなったぞ、要ェ!!」
ノイズの入ったような声が、その場に響く。
ソレと同時に紗枝の虫と人間の混ざった体の隙間から、何匹もの小さな虫が飛び出し、要を狙って猛スピードで襲い掛かってくる。
「…ッ!!」
虫と虫も隙間を避けるように移動し、虫が通り過ぎた所を鞭をうまく使って、虫を殺した。
だが、その要の足に絡みつくような感触があり……それは、紗枝の掌の皮膚を内側から裂いて、そこから飛び出している。
「…むあ!?」
それを思いっきり引っ張られてしまい、転倒した要。
そこに影がさし、慌てて横に転がるようにして避けると紗枝の体から飛び出したサソリの尾っぽについた鋭いトゲが地面に突き刺さった。
「…絶対に殺す」
その紗枝の言葉が聞こえ、再び足に絡み付いている百足が引っ張られ思い切り振り回される。
人の姿ならば、そこまでの腕力は無いはずの紗枝だが……今の姿だと、徹夜には及ばないが腕力は相当増幅されていた。
「むぐぅッ!?」
そんな悲鳴を上げる要。
それは地面に思い切り叩きつけられたので……相当痛いわ、砂が口に入るわ…などの結果である。
そこを虎光が絡みついていた百足を食いちぎる事で、それ以上の攻撃をやめさせ、空中に浮いていた要をサンが体の上に乗せてキャッチする。
「げほッ…ごほッ…」
砂が口の中に入った砂を咳と一緒に出そうとする要。
その体は地面が砂といえど、思い切り振り回されたせいで皮膚が裂け、血が出ている。
「いった~…」
そんな事を呟きながら、要は紗枝のほうを見る。
「……今ので、終わったと思うなよ」
そんな声。
それはノイズ交じりの紗枝の声だった。
それと同時にサンが甲高い鳴き声をあげながら、何かを避けるように飛ぶと…さっきまで飛んでいたところを真っ黒な蛾が猛スピードで通過していった。
その蛾はUターンをすると再び要を乗せたサンを狙って動いていく。
そして地上では地下から飛び出した大量の虫が虎光を襲った。
虎光が魔力の塊を放ち大量の虫を消し飛ばすが、それでも殺しきる事はできず…大量の虫が虎光を飲み込んだ。
虫の大群に覆われた虎光だが、再び魔力の球を放ち虫たちを吹き飛ばし、後ろに思い切り跳ぶようにして虫の大群から距離をとる。
その体は少なくない量の傷ができている。
そしてサンのほうでは黒い鱗粉を撒き散らしながら突っ込んでくる蛾へと向けて構い鳴りを放つが、それを避けた蛾は段々と近づいてくる。
雷を連発で放ち、サンと要の相当近くで蛾に当たったのだが…その瞬間に周りの黒い鱗粉がパチ…ッという音と共に火花が散るのが見えた瞬間に爆発した。
サンと要が、爆発に巻き込まれ空中で放り出される。
あまり高い場所から落ちたわけではないが、要はサラサラに乾いた地面に落下し激突した。
さっきも言ったように高い場所から落ちたわけでもなく、勇者という無駄なチート補正により、それほど大きな怪我はしなかった要だが…すぐには動き出す事はできない。
「さっきの蛾は、要の使っている鳥用に育てたの……うまくひっかかってくれて助かった」
ノイズ交じりの声を口から漏らす紗枝は要に近づいていく。
それを阻止しようと虎光が紗枝へと飛びかかるが、それは紗枝に到達する前に紗枝が振るった尻尾で吹き飛ばされた。
「……要を痛めつけるでも何でもして、楽しみたいけど…そろそろ終わらせないと、グレモアに怒られるかもしれないからね」
そんな事を言った紗枝の背中から飛び出したサソリの緒が動き、要の横腹にトゲが突き刺さった。
「んぐぅ…っ!!」
要の口から、思わず苦痛の呻き声が漏れる。
その後にサソリの尾を紗枝は振ると、要は遠心力で飛ばされた。
サラサラに乾いた地面に投げられた要は、その衝撃で再び苦痛の呻き声を漏らし…辛そうにしながらも、立ち上がる。
「……」
苦しそうに呼吸をしながら紗枝をじっと見る要。
怪我をした虎光が近づいてきて、至近距離で爆発を食らって結構ダメージがあるサンも要の近くに降りる。
「…さすがにここまでやられたら……手加減をする、なんて考えはやめにするわ」
辛そうにしている要が、そんな事を言った。
それに対しての紗枝の反応を要は確認せずに、虎光とサンの頭を撫でる。
「少し辛いだろうけど、我慢してね……サン、虎光」
そう呟いた要は刺された横腹から出ている血に右手で触る。
その手を虎光が舐め、サンは要自身が上から垂らすようにして血を与える。
すると二匹に変化があった。
白い体の虎光は体全体が黒く変わり、輝いているような黄色の体のサンには赤いラインが入る。
そして二匹の目は赤く光り、獣のようなうめき声を上げる。
「私の能力は獣と心を通わす事……皆、それだけだと思っているけど、本当は違うのよ。
私の血には一時的に身体能力を増幅させる効果があるのよ……もう、私は戦わない。
サンと虎光が決着をつけてくれる」
そんな要の言葉。
それと共にサンと虎光が動いた。
「…ッ!!」
それに反応して紗枝が大きめのモノも含め大量の虫を放つが、それは一瞬にしてサンが黒焦げにする。
今まで以上の電撃が広範囲で虫たちを焼いていく。
サンを追い越して近づいてくる虎光を吹き飛ばそうと紗枝がサソリの尾を振るうが……次の瞬間には、虎光に噛み砕かれた。
「なッ!?」
それに驚きの声をあげるが、虎光は止まらない。
虎光の口から赤い光が漏れる……それは今まで以上に高純度の魔力。
それは相当の破壊力だと思われる。
「…く、そォォォ!!」
紗枝が叫ぶが、その叫び声と共に紗枝を虎光が吹き飛ばした。
最大の一撃は、砂の地面…そして紗枝も含め、全てを吹き飛ばす。
吹き飛ばされた後の場所には、紗枝はいなかった。
その光景を要は、ただ何も言わずに見ていた。
─ ─
「ふぅむ…これが秘密兵器かぁ」
そんな事を呟く炎の目の前にソレが居た。
ドロドロと常に下へと落ちていく泥の体を持った魔物。
その魔物の目であろう場所には赤い光を放つ点が二つあり、口だと思う場所には長い牙が何本も生えている。
一歩進むごとに、周りの物を溶かしていく。
それは炎のように熱で溶かすのではなく、他の何かによるものだった。
「ふぅむ…思っていたものより不恰好じゃのう」
そんな事を呟いた老人だが……ある方向から凄まじい熱気が襲ってきて、慌ててそちらを見る。
「秘密兵器なんてモノに頼ろうとするから他の誰かに利用されるんだよな~……」
炎がそんな事を呟いているが…黒い髪の毛に入っている赤いラインが、さらに赤く明るく光り始める。
それと共に、炎から発生している熱気の温度が更に高まる。
「おおぅ…小僧にスイッチが入りおった。
ここは退いておいた方が身のためじゃな……」
そう呟くと、今まで火竜と空中で争っていたであろう人形が老人の元に戻ってきて、老人を乗せると猛スピードで入ってきたときに使った穴へと飛び込んでいく。
その間にも、更に熱気の温度が上がっていく。
炎の周りの地面は溶け始め……炎の足元にあった少し大きめの石は溶けるどころか蒸発した。
その熱気に触れた泥の魔物も小さな範囲だが体の一部が蒸発して無くなった。
「来い…サラ」
炎が呟くと、火竜が円の後ろに着地し…炎の放つ熱気に触れた瞬間に黒い場所が無くなり、熱を溜めていく。
火竜の温度も上がって行き光が強くなり、魔物を封じていた広い空間の全てを照らす程の光を発する。
「……サラ、殺れ」
その炎の言葉。
次の瞬間に火竜の口から炎が放たれる。
それは火の玉でもなく、ただ火を噴出しているわけでもない……体の中に溜まった熱を口の一点だけから放出させる事で、熱が一直線に放たれる。
その熱線が、泥の魔物の全てを焼き尽くした。
そして所が変わり…都市の空を飛んでいる老人がいた。
「むぅ…殺されてしまったかの。
この世界にいる意味も無くなったし…退却するかのぅ」
そう呟いた老人は空に光の玉を放つ。
それは、それなりの高さに到達すると真っ赤な光を放ちながら爆発した。
バレンタインなんて俺には関係ないです(・ω・`;)
まぁ…先生が生徒全員にチョコ配るまで忘れているぐらい、関係ないです。
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