36話 マジで戦い始めます
今回、最後のほうが短い文章で場面が変わることが多発します。
読みにくいことをして、ごめんなさい。
「……なんで、こんなに面倒な状況になってんだよ」
俺達、八人はサラサラに乾いた真っ白な砂と地面が続く、よく言う砂漠という地形に立っていた。
それなりに遠い場所にポツンと何かが見えるが、それが今回問題の秘密兵器とやらを抱えている国だろう。
そして、俺たち八人の目の前には……向かい合っている集団が居る。
まぁ、誰でもわかるかもしれないが……あれである、今俺の悩みでもある面倒な事の中心の堕勇どもである。
「これはこれは…新人含めて勇者様たちと会えるとは…面白いのぅ」
その堕勇の中でも、若者の中に居る事で若干ギャップがあり目立っている老人が、そんな事を呟いた
ちなみに、約2分前である
8人が、順番ずつに扉に入っていく。
俺達が来たときの扉で、その扉は指定した世界に向かって移動することが出来るらしい。
「うあ~、めんどくせぇ~~!!」
俺は、そんな事を呟きながら歩いていき…そんな状況である。
堕勇との遭遇は召喚された直後なので、特に何か目立ったアクシデントは無かった。
チッ…つまらねぇ。
「ん~、『冥土』は居ないか~……」
和馬が、そんな事を呟いている。
そちらの事については今回のことが終わったら聞くとして…なんだ、この状況は。
「ふぅん…こりゃあ、無駄に大勢だね~」
奈菜は、若干苦笑い気味にそんな事を言っているが…武器を取り出していないので、少しは余裕があるらしい。
「今回の勝つために、しなくちゃいけないことは…とりあえず堕勇を全滅させれば良い?」
一人、首を傾げながら呟く里稲。
「あ~、気をつけなよ…徹夜くんと美月ちゃん。
里稲ちゃんは、勝つためだったら何でもやるからね~……ボクも何回巻き添えを食らいそうになったか分からないよ」
奈菜が、そんな事を忠告してくれた。
え……里稲って、怖い人ですか?
「え~…何それ超怖いんだけど」
「……うぅん、一応気をつけておくよ」
俺と美月のコメント。
奈菜の顔が、マジなので本当に油断できない……この子、できるっ。
……変なおふざけは。やめておこう。
敵が目の前に居るのに、俺たちはそれぞれで話している…何この緊張感の無さ、とも思うわけだが……別に良いんじゃね?
それは堕勇側も、それぞれ話してる系なので…問題ない。
何故か、仮面をかぶった誰かが…俺をジッと見ているような期がするので怖い……何、何で俺は仮面越しにメンチきられてるのッ!?
「……はぁ、本当にこやつらは緊張感が無いのぅ」
一人の老人が溜息をついていたりする。
「それで、今回…わしらが、この世界に来た理由をわかって居るのか?」
「いや…詳細は知らないけど。
とりあえず美咲のこともあるから、とりあえずあなたをボコろうかな、と思ってね……」
「……なんでこう、お年寄りを気遣う奴はいないのだろうか」
堕勇側では老いぼれと呼ばれ、勇者側ではボコりに来ている人がいたりする。
まぁ、自分がやろうとしていることを考えれば無理は無いが……まぁ、別にどうでも良いだろう。
「正直、この世界でやることはお遊びでの……特に、意味は無いんじゃよ。
だから…少しばかり教えてやろう」
なんか、この爺さんイラつくな。
「ここから見える、あの都市。
あの地下には、ある一匹の強大の力を持った魔物が封印されておるんじゃよ……それは、その国にとっての保険的なものなんじゃろうが……それを、解き放てばどうなると思う?」
「ふむ…それはそれは、なんとも危ない保険を抱えているな~……」
俺の呟き。
「さて、これはお遊び……どちらが勝つかのぅ」
楽しそうに笑うお爺ちゃん。
なんか近所の、優しいお爺ちゃんを思い出すな~~~、こっちは駄目な人だけど。
「うむ、『武器庫』……お前に良い事を教えてやろう」
「……?」
「お前の召喚された、あの世界の死んだモノがゾンビとして復活するアンデット化の現象じゃが…。
あの原因となっていたコアは魔神の一部なんじゃよ……まぁ、不完全でアンデット化止まりじゃったが」
あの俺が最初に居たときの世界のとき…あの魔神が活動すると同時に、過去に死んだ物が一時的にだが生き返った……つまり、奈菜の世界では俺達が居た世界より不完全な魔神の力のせいで、アンデット化というわけなのだろう。
「……なんで、お前がそれを知っている?」
そこで横から鋭い声が聞こえてきた。
…それは美咲の声だ。
「それは、あの現象を起こすきっかけを作ったのはワシじゃからだよ。
……まぁ、生贄の人数が少なすぎて生き返る、という現象も起きずアンデット化までじゃったがのぅ…」
「……コロス」
その次の瞬間には、俺の近くでドバァッ…という音が聞こえ、結構多い量の砂が空中を舞い、奈菜が老人に向かって飛び出していた。
「……美咲」
老人が、その名前を呟く。
それと同時に、奈菜の手の中に剣が現れ……奈菜が老人に向かって鋭い突きが放たれた。
……その突きは、老人の命令に逆らえない状態である美咲が老人と奈菜の間に割り込み、剣を止めていた。
「同じ世界で同じ苦しみを味わった者の二人が敵同士で…しかも、苦しみの原因となった者を片方が守り、片方が殺そうとする、か……。
なかなか面白いのぅ」
老人は、いやらしい笑いを浮かべる。
そして、この奈菜の行動で…俺達も、そして相手側も本格的に身構える。
……まぁ、本当は最初から身構えておけ、という話になるが…そこは置いておこう。
「そこをどきなよ…美咲」
俯きながら、奈菜がそんな事を言った。
「悪いが、俺も逆らえない身なんでね……本当は、俺が老いぼれを殺したい所なんだが……」
「…ホントに、どかないの?」
「………本当に、すまないと思ってる」
何故か確認するように奈菜は呟き、それに対して美咲が返答する。
奈菜が顔を上げると、若干恐怖の顔で美咲の体が強張るのが見て取れた……俺のほうからでは、奈菜の顔が見れないので、少し残念。
「…その魔法陣が問題なんだね?」
「え、あ…まぁ、そうだが」
恐怖気味な美咲。
「……そのデコについてる魔法陣を皮膚ごととってあげれば、問題ないよね?」
恐怖。
「………………………助けて、徹夜くぅん」
「いや、俺とお前まだ少し話した程度だからさ……」
何故、俺に振ったよ。
「ボクが美咲の悩みをすぐに解決してあげるからさ……ジッとしてなよ!!」
奈菜が、怒り気味でそんな事を叫ぶと同時に…俺達も、相手側も一斉に動く。
「……ッ!?」
俺の足元がいきなり爆発し、それを避けるように後ろに跳んだ。
足元が砂なので、砂を撒き散らしながらズザザザザ…と着地し、前を見る。
その視線の先には、仮面を付けている少女と思われる堕勇。
「…誰だよ、お前」
「一応『魔道書』と呼ばれている……お前が闇を使うのは知っている、私が操るのは千を越える魔法だ…せいぜい死なないように気をつけるといい」
そんな声が聞こえると同時に、俺の周りにいくつもの魔法陣が現れる。
「気をつけたところで…無意味だがな」
その言葉と共に、俺の周りにあるたくさんの魔法陣が爆発した。
─ ─
その戦場では幾人もの、堕勇と勇者が別々に移動していた。
堕勇が動く先には、その問題の国の都市……そして、それを遮るようにこちら側も行動する。
だが、数で劣っている勇者は完全には、抑えることは出来ない。
一人と一人が戦うのでは……。
砂漠のフィールドに、いくつもの木が生え……それが、人形のような形となり、動き……堕勇たちを足止めした。
「…『木人形』」
里稲が、そんな事を呟いた。
里稲の能力……里稲は植物を生やし、操る。
その結果がこの木の人形である。
その里稲を狙うように、魔力の球が飛んできた。
「……ッ」
それは里稲の前に、木が生えて防御する。
魔力の球がぶつかった結果……木は粉々に吹き飛ぶが、里稲には傷ひとつ無い。
その魔力の球を放ったのは、空を飛んでいる真っ白に輝いている竜……それは今までの大きなトカゲに翼が生えたものではなく、蛇のように細い体に翼が生えたモノである。
『…里稲ちゃんの相手は、ウチがしたるで~』
その竜から、そんな言葉が聞こえる。
この口調で大体はわかると思うが……元の姿は、エセ関西弁少女…つまり楓である。
「…また面倒なヤツが来た」
それに対して里稲は、そんな事を呟くだけで…里稲の周りから、いくつもの木のツルが放たれ、それが楓を狙うが…楓は体をくねらせ、巧みに避ける。
『里稲ちゃんはウチの好みじゃないからな~…今回は本気で行くで』
そんな楓の言葉。
植物を操る里稲と竜の姿をした楓が、正面からぶつかり合う。
─ ─
「…ラァァァ!!」
風を切る音が聞こえ、ハンマーが少女を狙うが…それを容易く少女は避ける。
「お前の相手は俺だな……」
瑞穂が、少女に向かってそんな事を呟く。
「……邪魔だな、『蛇姫』」
「うるせぇな…『妖刀』」
少女の手に、どこから現れたのか紫色の霧のような物が集まり…それが日本刀の形に変わった。
「「…ッ!!」」
二人がダッシュし、ハンマーと刀がぶつかった。
「…俺の狙ってるヤツが居ないからな~」
和馬は、そんな事を呟きながら堕勇たちを狙っていく。
和馬の足元には風が渦巻き、それが数馬を浮かばせて空から堕勇たちを狙って、銃弾をばら撒いていく。
「うぅむ…あとの堕勇はあっちで召喚されたヤツばかりだから、それほど手ごわい奴もいないし……今回、ハズレを引いたかな…」
思わずそんな事を呟いた。
「はぁ…」
一人だけ溜息をつくわけだ。
─ ─
そして、美月は…都市に向かうように動く…しかも、誰にも追えない様な全速力のスピードで。
「徹夜のほうも気になるけど…とりあえずは、先回りしとこうかな」
美月は、そんな事を呟くがいきなり目の前に影が現れる。
「…ッ!?」
「ホッ!!」
ビックリして慌てて腕で防御した所を、鋭い蹴りが放たれ…美月の動きを邪魔した。
「視えてるぞ、内藤 美月」
それは一人の少年。
その両目には変なマークが浮かび上がっており…右のほうの目には、魔法陣のような物がかぶっている。
「…その目、『魔眼』かな。なんか面倒そうな人と当たっちゃったかも……」
そして、今回6回目の場面が変わり……。
「本当に、何でそっちに行ったの?」
「……」
要と蟲女が向き合っていた。
蟲女の服の中から虫が爆発するように噴出し、服が煽られ、顔を隠していた布が剥がれた。
「…お前が憎いからだよ、要」
その女性は、徹夜の母が見ていた雑誌に……要と一緒に載っていた少女だった。
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