31話 『狼王』
急いで展開を持っていった結果、こうなった。
そこは洞窟のある部屋。
徹夜達が戦っている部屋などではなく…その部屋を覗けるようになっている小さな小部屋だ。
見た目は、徹夜達が戦っている大部屋同様の洞窟なのだが…そこは、どこか人の手が加わったような跡が残っており…その怪しい部屋には老人と二人の少女が居た。
「ふむ…毒効果だと思っていた鎌に、斬ったものを灰にして分解する効果に変わっている、か……」
そのご老人……つまり、美咲の言うグレモアという老人である。
とりあえず、その老人が…そんな事を呟いた。
「……なんで変わったんですか?」
そのご老人に向けて、蟲女が尋ねた。
「…わしにわからん事はない、と言われる老人になりたい……というわけで、一応知っているので説明してやろうかのぅ」
なにやらドヤ顔っぽい感じで、ご老人は顎に生えているひげを撫でる。
…あまり長くないので、ただ顎をこすってるようにしか見えないが……そこは、言ってはいけない所である。
「あの骸骨の人間型の魔物は、どこから生まれたと思う?」
「……?」
「あの魔物は…あのコアから、生まれたのじゃよ。
ということは…常に力を発し続けるコアの近くに居続けるだけで……進化し、強くなり続ける…その強化は、あの魔物が操る鎌として現れたのだろうな…じゃ」
語尾は忘れろ………よくある事だ。
「強くなり続けるとは……」
「毒という効果は元々、体を内部から害し続けることで表面上に現れることなく…即死するという事が原因なのじゃ。
……つまり、力を溜め込んだせいで表面上まで表すことが出来なかった力を…表面上まで表すことが出来、その結果…鋼までも灰へと返る力に見えるわけだ…じゃ」
語尾は…(省略)
そんな感じでご老人が、説明終える。
厚着&顔が見えないようにしてあるせいで表情は見えないが、蟲女は特に反応なく…ただ、大部屋を覗いている。
「そういえば…今この間に狙えば、確実に行けると思いますが、良いのですか?」
そういえば…と今気づいているのは、可笑しいと思った。
「……あんなの相手にしている所に割り込んでいくと痛い目を食らうじゃろ。
巻き添えを食らって、灰になるのも嫌じゃろうから……ここは、ほっておくといい。
それが一番、賢い選択じゃよ……なんせ相手は、もう存在はしていないが…あの面倒なモノの欠片じゃ……相手にするだけ無駄じゃよ」
「面倒なもの…?」
「勇者三人が相手にして、引かぬ強さを見てみるといいじゃろう……元のヤツほどじゃないが、それなりに強い…」
ご老人は、そんな事をいいながら楽しそうに笑う。
この老人は、何をどこまで知っているのか……蟲女、である女性でさえも不審に思う。
「……?」
不審に老人を見ていたが、それよりも先に何かを気づき…ある方向へと目を向ける。
「進入してきた獣が居ますが……」
彼女は虫を操る。
しかし、その操っている虫の見ている物や、感じるものなどを共有することができ……それを利用して虫を広範囲にバラける事で情報収集を行うことが出来るわけだ。
「……ふむ、どうするのか気になるところじゃな」
老人は再び楽しそうに笑い、短い髭を撫でた。
─ ─
「オラァァァ…ッ!!」
俺の拳が透明な壁にぶつかった。
だが、その壁にはヒビ1つ入らない……俺の手には闇が手袋のように包んでいたので、手が潰れる…という自業自得なケガを負う事はない。
「…無駄に硬いなぁ~……こぉんチクショウめ…」
思わず、そんなことをぼやきながらも後ろに跳ぶようにして下がるわけでして……それを追って追撃してくる死神様でござんソ。
「…ッ!!」
俺が、頭を後ろにもって行き…上を見上げる形になるが、その目の前を斬ったものを灰にして分解する能力を持つ鎌の刃が、風を斬りながら通過していった。
何度も言うが、超怖い。
「……ッ!!」
再び振るわれる鎌を避け続ける俺は、この鎌をどうするかを考える。
「誰か、コレ壊せる奴いるか~ッ!?」
鏃のついた鎖状の闇を後ろに向かって放ち、それが壁に突き刺さるのを確認すると思い切り引っ張った結果、俺は引っ張られる形となり、死神から急速に離れる。
「ボクはちょっと無理かも……武器破壊用の魔法具は、ちょっと大きすぎて置いてきちゃったんだよね~」
そんな軽い言葉と同時に、奈菜が手に持ったボウガンで矢を放つ。
だが、それはバリアで弾くとかそんな問題ではなく……死神の体に当たっても傷を作ることはできない。
「私、ちょっと試したい物があるから…立候補しようと思います!!」
そして、美月は走りながらそんな事を言ってくる。
立候補、て何だ…立候補て……。
「ただ…ちょっと、相手の動きを封じて欲しいかも!!」
「俺も、それには同意だな」
「じゃあ、そこはボクが頑張って足止めするよ……」
三人とも、できるだけ死神に補足されないように動きながら会議していく。
「よし、じゃあ…美月が武器破壊したら、俺があのバリアを破るように頑張るから…奈菜が決めてくれ」
「あのバリアを破る方法があるのかどうかが気になるけど、ここは了解しておくっ…」
そして、会議を終え…行動に移る。
まず奈菜が…この世界に移ってきたときの魔法陣の周りに張った結界を発動させる魔法具を地面に向かって投げ…それが地面に突き刺さる。
その位置は死神の目の前を陣取る形となり、死神は奈菜に向かって鎌を振るうが、その前に結界が張られる。
「さすがに、この結界は崩せないでしょ……」
そんな事をいいながら奈菜は後ろに下がって微妙に逃げている……自信なさげだろ、お前。
だが、それは正しい反応だっただろう。
やはり死神の鎌は容易く結界を打ち破る。
「…おぅああああああああああ!!?」
そして、何にも準備していなかったらしく奈菜は慌てながら。テキトーに武器を取り出す。
奈菜が持っているのはほとんどは魔法具…それを考え相当の量の魔力を流しながら、死神の鎌を防御するように武器を構えた。
そしてその武器は、ケイアさんに渡されたモノ…つまり『象徴の剣』
その剣は、他の物と同様に容易く切り裂かれる……と、誰もが思ったが魔力が流されることで何かが発動し、死神の鎌を受け止めていた。
その剣からは、白い霧のような物が発生し……それが、死神の鎌を受け止めていたわけだ。
「え? あ…何?」
目をキョロキョロとさせている奈菜だが、それに構わず美月が動いていた。
受け止められている鎌より、少し高めの位置まで跳び…光の剣を上段で構えている。
「…『粉砕』の魔法を、『光の剣』に融合」
美月がポツリと呟いた言葉と共に、美月の持っていた光の剣の周りに魔法陣が浮かび上がり……それが光の剣に溶ける様にして混ざりこんでいく。
見た目の変わらない光の剣…だが、その威力は格段に違った。
その剣が振り下ろされ……轟音と共に、鎌をへし折った。
「奈菜、相当の威力の攻撃を死神にぶち当てろッ!!」
「……ッ!!」
少しばかりついていけてなかった奈菜だが…俺の言葉に即座に反応する。
光と共に『象徴の剣』が魔法具内にしまわれ…かわりに1つの武器が出現する。
それは一本の槍だった。
「……『聖槍ロザリオ』」
その槍の先端は、三つの方向に別れ…どこか十字架のようなイメージがあるものだ。
「さっきの美月ちゃんの光属性の魔法があるから威力は十分なはず、だよね……」
そんな奈菜の呟きと同時に、周りの光が奈菜の持つ槍の3方向に分かれた刃に集まっていく。
……その槍は、すぐさま相当な量の光が集まった。
「…『天国の十字架』!!」
その奈菜の叫び声と共に、光の槍が放たれた。
それは、当然死神を守るバリアのようにぶつかるが、弾かれることはなく光がバリアを破ろうと、放たれ続ける。
「…よし、任せろ」
俺は、そんなことを呟いた。
それと共に、死神との戦いでバリアに弾かれ…そこら辺に散らばった小さな闇が動き…バリアを侵食していく。
「俺の闇は全てに干渉する……それは、どんなに硬い防御であるバリアだろうと…関係ない」
その言葉を言うと同時に、バリアは砕け……死神を奈菜の槍が貫いた。
笑い声のようにも聞こえる上と下の顎がぶつかり合う音が、今だと悲鳴のような音に聞こえる。
次の瞬間には、死神は吹き飛んだ。
「っは~…終わった」
俺はぺたりと後ろに座りながら、やっとのことで緊張を解く。
「はふぅ~」
美月はさっきの魔法で相当魔力を使ったのか、脱力してぐだ~っとしている。
「……うぬ?」
奈菜は、固まっていたりする。
あ~…うん、まぁ……ほっておくとしようかな。
とりあえずはアレを壊すとしよう……邪念で時間を無駄にするのも嫌なので、すぐに行動に移るよ。
「奈菜、これ壊すぞ~?」
「……」
「奈菜ッ!!」
「えッ!? あ、うん…やっちゃってッ!!」
やっと正気に戻った奈菜の言葉を聞くと同時に、俺は闇を纏わせた拳でコアを打ち砕いた。
それは簡単に割れた……人が大勢死ぬ元になった物は…ベチンという軽い音共にあっさりと砕け散ったのだ。
なんか…虚しい。
「よぉし、帰るか」
「本当に徹夜アッサリしてるね……」
そんな事を軽くいいあっている俺と美月だが、すぐさま変化が起こった。
……なにがって?
そりゃあ、定番で急展開と言えるんだが……この洞窟、崩れ始めたんだよ。
「あああ、どうするよ…これ?」
「そこは徹夜くんが頑張ってくれると信じている…この崩れるのから安全に逃げられるほどの速度がある移動用の魔道具持ってきてない…というより、造ってない」
奈菜って万能そうで、万能じゃないよな。
「私…今疲れてるし、二人を引っ張って移動したらそれなりに遅くなるから間に合わないと思うよ……」
美月サマ、お願い…ここでチートを発揮してください。
そんな感じでオロオロとする三人。
そこに風を斬る音共に、俺の体がふわりと浮き、普通より高い所に目線がある気がした……。
「……ッ!?」
俺はそれに驚き、慌てて周りを見るが俺と同じ程度の高さに美月と奈菜がいた。
そして俺の下には銀色の毛並みのモフモフとした何かが居る…それはスレンダーな見た目だが、がっしりとしていて野生感あふれる刃の生えた口を持っており…車よりも大きなサイズの銀色の狼だった。
……その狼の額辺りには、意味のわからない魔法陣が張り付いている。
「美咲…ッ!?」
奈菜の驚いた声が響く。
それに俺が反応する前に狼が走り出し…ここに来る時に通った細い道を凄い速さで走っていく。
つまりこれを見て、考えてみるに…こいつは銀島 美咲……大きなサイズの狼の姿を持つ堕勇『狼王』である。
そして、その狼は洞窟の出口が見え、そこから一気に飛び出す…そして、飛び出して3秒ぐらいすると一気に洞窟が崩れた。
狼は止まり体勢を低くする。
奈菜が下り…俺と美月もそれに続いて下りる。
「美咲……」
奈菜が、その狼…つまり美咲の名前を呟きながら、狼の目の前に近づいていった。
……すると、額についた魔法陣に触る。
「この無駄に邪魔なモノ……今度絶対に、消してあげるからね」
それを聞いた美咲は、ただ黙って鋭い目を細めたように見えたが……次の瞬間には踵を返して、四足歩行で走り出した。
「まぁ…とりあえずはこれで終わりだな」
ミサイドとコードがこちらに走ってくるのを、眺めながらそんな事を言って俺が居る。
俺、よく頑張った。
やっと美咲さんの能力がわかりましたね…強さはわかりませんけど。
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