28話 NGワードゥ
あと、三話か二話ぐらいで…奈菜の世界も終了ですかね……。
サブタイトルが真面目なの思いつかなくて、ふざけた。
コードが手を地面に叩きつける。
それと同時に少ない魔力を使い魔法を発動させて何にもないフィールドに、いくつもの土の柱が勢いよく突き上げる…コードにとって戦い辛いフィールドから戦いやすいものへと変えた。
そのコードに向けて百足のような虫型の魔物が襲いかかるのだが、その虫とコードの間にミサイドが割り込み…百足を真っ二つに切り裂き、ミサイドは蟲さんへと斬りかかる。
「…フッ!!」
ミサイドが剣を横に振るい、切り裂いた。
……だが、切り裂いたのは蟲さんではなく、蟲さんの体の形に集まった小さな虫の集合体……それらは切り裂かれたことで一気に解散し、ミサイドへと襲い掛かる。
「……ッ!?」
ミサイドの視界を埋め尽くすほどの虫の群れ。
それらがミサイドに向かって突撃をするが、ミサイドに虫達が到達する前にコードがそこに割り込みワイヤーで繋がった立体的なひし形のモノを高速で円形に振り回す。
そして、振り回されているためワイヤーが突撃してきた虫たちを片っ端から切断する。
「……弱いのが集まって、いつまでもつかしら?」
いつの間にか現れた蟲さんが放った虫は、今までは掌サイズなどの大きさだったのだが…次の瞬間に放たれたのは、今までとは違い人を丸呑みしても可笑しくないほどの蛇だった。
蛇はいくつも生えている土の柱の間を蛇行するようにして進んでくる。
次の瞬間には蛇は全身をバネのようにして、勢いよくミサイドとコードに襲い掛かり…コードとミサイドは別方向に別れるようにして、蛇から逃れる。
「…虫を相手にしていたら、キリが無いなッ!!」
コードがそんな事をいいながら、左右に三つずつワイヤーの取り付けられた投擲物を投げる。
それは土の柱を貫き、ワイヤーがひっかかり…それぞれが違う方向へと突き進む。
その投擲物は蟲さんへと多方向から貫くために突き進むが、蟲さんは土の柱にスッとスムーズな動きで隠れ、それら全てを避ける。
コードにとっての戦いやすいフィールドは、相手にとっても攻撃を避けやすいでもあるわけだ。
2対1の戦いが続いている。
そして…俺は
「ォロロ《ピーーーーーーーッ!!》……うわぁ」
ちょっとNGワードゥを、口からピーッしている感じである。
まぁ、ピーッしちゃうのも無理はないと思うんだ……あまりにも気持ち悪すぎた……なんで魔力が美月よりも少ないはずなのに、俺だけがこんなにも気持ち悪くなるのはわからないんだが…。
たぶん、あれだ…俺だけ苦しめ、という誰かの策略なんだ。
「徹夜…やめてよ、臭いがやばいよ…」
「ごめんなさい……」
美月に文句言われるのも仕方がない。
頑張って闇を出して全て回収し、後で捨てようと思う。
正直、闇の中にあること自体…嫌だ。
闇を使うことは魔力を使うことであり、それは余計体調を悪くする元だろうと思うが…大丈夫、もう胃の中にはなんにもないわけでして……。
うん、まぁ…お腹減ったな……。
「魔法具の場所を探さないと、ね……」
奈菜は、いつの間にか眼鏡を持っており、それを目にかけて辺りを見回す。
「何だ、それ…?」
「画面に映ったものを解析して、目的の場所がどこにあるか…それが何なのか、とかを調べる魔法具なんだけど…私の調子が悪くてうまく発動しないんだよね……」
眼鏡のフチをコンコンと指で細かく叩く。
フチの色が黒でレンズが大きかったら某見た目が子供で脳ミソだけが大人(?)の名探偵(笑)の眼鏡なのだが…あいにく黒ではなく黄色……まったく残念だ。
そこは黒だろ。
「徹夜、そんなどうでもいい事を考えるのはやめようよ……」
「だから、なんで俺の邪念が一から十までわかるんだよ……」
「ふっふっふ…」
無駄な悪の笑いをやめぃ。
「やっぱり、あの女は持ってない……」
奈菜が眼鏡の魔法が付加された特別なレンズ越しに戦っている蟲さんを見て、そんな事を言う。
「じゃあ……どこにあるのかな?」
奈菜は、辺りを見回しある一点を見つめた。
「この眼鏡を発動させるだけでも、相当気持ち悪くなったし……。
魔法具がダメなら…魔法具じゃないただの武器で狙撃すれば良いだけだね……」
そして、奈菜は手首についたブレスレットの形の魔法具を発動させて、武器を取り出した。
……そして、とりあえずは再び場所を元に戻そう。
「んぐ…ッ!?」
コードの左の横腹を小さく鋭い虫が貫いた。
体の中で暴れようとする虫をコードは、傷が広がることを気にせずに手を思い切り突っ込んで虫を引っ張り出し、コードに握られて大暴れする虫を握りつぶした。
虫に貫かれたせいで動きが鈍った所を他の虫が襲い掛かる。
「…くそッ」
一気にいくつもの投擲物を投げ、それが当たった虫はバラバラになって死んでいく。
だが、それだけでは全てを殺すことはできずに何匹も虫が生き残り、コードへと襲い掛かる。
「……大丈夫か、コードッ!?」
その生き残った虫たちを、ミサイドが全て剣で切り裂き……殺す。
「問題ないッ!!」
コードはミサイドに向かって大声で返答すると、さらにワイヤー付きの投擲物をばら撒いていく。
それらは土の柱を貫き軌道を変え、他の土の柱に突き刺さり…この戦っている辺りは柱と柱の間を繋ぐワイヤーでキラキラと光っており、その中で三人は戦っている。
「ふふふ…いろいろと用意してるみたいだけど……所詮は無駄な足掻きよ」
「無駄かどうかは、こちらが決めるッ!!」
ミサイドは剣を横に振るい、それを蟲さんは後ろに跳んで避ける。
蟲さんの服の中から百足が飛び出してきて、ミサイドの足へと絡みつく…そして、それを蟲さんが思い切り引っ張った。
「むぅッ!?」
蟲さんの腕力だけではなく百足自身も動き、ミサイドの予想以上の力で引っ張りミサイドを転ばせる。
ミサイドが倒された関係で上を見上げる状態になったのだが、次の瞬間には目の前に針を構えた空を飛んでいる虫がいる。
「…ッ!!」
身を捻って最初の一匹目の突撃を避け、足の力だけで引っ張り百足が体液を撒き散らしながら引きちぎれる。
足を上で思い切り振り回して体重の支点を移動させ、その勢いで立ち上がる。
その瞬間に虫が襲い掛かってくるのを、剣で上手く弾き…時間差で襲ってきた虫を真っ二つに切り裂いて、とりあえずは体勢を立て直す。
その瞬間に襲ってきた虫が居たが、それはコードが投げたと思われるモノが貫きバラバラになっていった。
「コード、仕込みは終わったのか?」
「まぁ…大体は終わったから使ってよし、だ」
「よし…じゃあ、半ば遊戯紛いの戦闘方法行くぞ……」
そんな言葉と共にミサイドは一回跳ぶことによって蟲さんに近づき剣を振るうのだが、蟲さんはそれを避ける…そして、ミサイドは…そのままの勢いで通過して行き、空中でクルリと一回転して蟲さんの方を向く。
……ミサイドはまだ地面に足をつけておらず、すぐには攻撃には移ることはできない…そこを蟲さんが狙うように虫を放つのだが……
ミサイドは何もないように見える所で、方向を変え…迫ってきた虫を切り刻み、さっき以上の速さで蟲さんへと迫る。
「…ッ!?」
「ふッ!!」
驚く蟲さんと、剣を振るうミサイド。
その剣を本当にスレスレで蟲さんは避ける……驚いた蟲さんだが、攻撃を避けた蟲さんはミサイドへと攻撃に移るのだが…風を切る音が聞こえ、何かが近づいてると理解すると同時に後ろに下がる。
すると、目の前を鋭い何かが通過していく……それはコードが投げたであろう投擲物。
その投擲物は1つだったのだが、蟲さんが行動に移ろうとした瞬間に…さっきとは逆方向から投擲物が迫ってきたので慌ててよける。
「…?」
疑問の顔になる(顔は見えないが…)蟲さん。
それは当たり前のことで、コードが居たのは最初に投げたであろう方向…つまり逆側から来るのはおかしいのだ……それを考え蟲さんは辺りを見る。
すると、気づいていたが…今まで気にしていなかったモノを発見した。
「……ワイヤーか」
ミサイドもコードが投げた投擲物も同様だ。
張り巡らされたワイヤーで弾かれ、勢いを落とすどころか逆に勢いを増して迫ってくる。
ワイヤー自身は今までは投げた投擲物を障害物などにひっかけたりなどをして軌道をずらす為だけの物だった…だが、それだけでは終わらず、そのワイヤーに当たったものをきっちり逆方向へと送り返す。
そして…ミサイドがたくさんの投擲物を思い切りばら撒いた。
「……ッッッ!!?」
周りからいくつもの投擲物が、蟲さんを襲い傷をつける。
一秒も間を空けずに、多方向から貫いてくる投擲物に、さすがに蟲さんも動けない。
投擲物はワイヤーで逆方向に発射され、止まることなく動き続ける。
「く、そっ……調子に乗りやがってェェェェ…ッ!!」
蟲さんの足元に魔法陣が現れ…その魔法陣から、今まで以上の量の虫が群れを成して飛び出した。
虫の群れはコードが作った土の柱を崩し、張り巡らされたワイヤーを断ち切り…今まで優位にしていたフィールドを食い尽くす。
そして、その虫の群れがフィールドを食いつくし…次に襲うターゲットはコードとミサイドだった。
「「……ッ!!」」
たくさんの虫が群れを成して、二人を骨にしようと襲いかかる。
二人の視界は、今までのがぬるいと思わせるほど濃い黒の虫の群れで埋め尽くされ……『死』の群れが二人を飲み込もうと迫る。
……だが、その虫たちは横からの炎で飲み込まれ焼き殺されていった。
炎の波が虫たち全てを焼き流す。
「ふぅ…どうにか間に合った」
そんな言葉。
……そちらには眼鏡をブレスレットの能力でしまい、片手に赤い刃の剣を持っている奈菜がいた。
「……なんで?」
「……まぁ、少しばかりは体調が悪くなるのはしょうがないからさ…眼鏡とブレスレットの魔法具をさらに使ってあんたの使った魔法具を見つけて、ブレスレットで取り出した武器で破壊しただけ…まぁ、さすがにそこまで使ったら相当体調が悪くて、吐きそうになったんだけど…。
でも、そんな事はしないよ? 徹夜くんみたいに惨めになりたくないし…」
「お前……」
後ろでグダ~としている徹夜が、奈菜に向かってそんな事を言うが…奈菜は気にせずに蟲さんの方を見る。
「まぁ、ボクは魔法具を壊すのは体調が悪くなりすぎちゃったから無理だったんだけど……そこは美月ちゃんにただのボウガンでやってもらったからね」
奈菜の後方に居る美月は、奈菜が取り出したであろう魔法具ではないボウガンを持ち…ぐだ~っとしている徹夜のお腹を『当たったよ徹夜!! 初めてボウガン使ったけど1発目であたったよッ!!』と嬉々として騒ぎながら、叩いている。
徹夜の顔が若干青いのは気のせいか…うん、気のせいだ。
……というか、気にしてもしょうがない…気にしてやる価値はない。
「……チッ」
蟲さんの舌打ちが響くと同時に、空に影がさし…全員が空を見上げると、今までで最大サイズの虫…蛾のような魔物がゆっくりと下りてきて、それに蟲さんが飛び乗ると…すぐさま飛び上がる。
勇者が復活した事で、勝つことが不可能だと考えての行動だろう。
「あ…これでやれば…」
ちょうど手に持ったままだったボウガンで美月が狙うが、矢は蛾の発生させた風で吹き飛ばされていった。
「…逃げられちゃったか」
奈菜が、それを見上げながら呟く。
そして、その後ろではドサリと倒れた音が聞こえた。
その音を聞いた全員がそちらを向くと、倒れているコードがいた。
この奈菜の世界が終わったら、一周年になると思うので…ほぼネタだけの話でも入れましょうかね~。
…まぁ、本当は一周年とか関係なく、ただ単に入れようと思っていた話なんですけどね。
誤字・脱字があれば御報告宜しくお願いします。