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俺は闇、幼馴染みは光の勇者様  作者: 焼き芋(ちーず味)
第三章 セカンドワールド 堕勇と勇者の戦争
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18話 眠タゲナ目ノ少年

特になしっ!!!

今は食堂。

俺は、さっき会ったときから常に眠たげにしている目の少年と話をしていた。


「あなた、眠いんですか? いろんな所を旅してからここに来たんだろうから、疲れてるだろうし、ねむいんだったら寝といたほうがいいと思いますけど…」

敬語とタメ口交じりの変な言葉。


「あ~、これは元からでね…別に疲れてるから眠いんじゃなくて、いつもこんな感じなんだよ」

俺が若干失礼な感じのことを言っても、少年は目の事を言われるのに慣れているのか、笑いながら答えてくれた。

ふむふむ…元からじゃあ、仕方がないわな。


「ふぅむ…今まで何回も言われてきたんじゃないですか?」

俺は料理を自分の口に運びながら、そんな事を言うわけである。


「まぁね…道歩いてたら知らないおばあさんに心配されたりしてるから……」

少年は、今言ったばかりの過去を思い出したのか、若干苦笑い気味にそんな事を答える。

眠そうな少年も、やっと自分の所に運ばれてきた料理に手を出し始め、モグモグと口を動かしている。

食べながら会話ってのも行儀が悪いかもしれんが、特に気にすることなく会話をしていく。

さっきの話題は終わり、違う話題で喋りあっている俺たち。


「ん~…まぁ、そんな感じで羞恥心はどこにいったんだ、というわけなんですよ」

ちょっと例の幼馴染には悪いが、見ず知らずの人に相談してみる事にした。


「それは…長い時間、君が離れていたから、寂しかったのでは?」

そんな感じのことを言ってくる眠い少年。


「うむぅ…そんなもんですかね?」

初めて会ったばかりの人には、自然と礼儀正しいとまでは言えなくても、それなりに敬語になってしまう俺である。


「ホントに好きな人と離れてて…それに加えて、すぐに打ち解けることができたと言っても、知らない人が沢山の場所に、ずっと一人で居れば…甘えたくなるのも当然だと思いますよ?」


「ふぅむ…」

意外と俺、最低な事をしたわけか……?

うぅぅ~む……(汗)


「まぁ、これからは拒否しまくるのは、やめた方が良いと思うよ?」

眠たい少年はそんな事を言いながら、自分の目の前にある皿のわずかな量の料理を口へと運ぶ。

それを見て、気づいたのだが俺の皿も既に空になっていた。


「そう、ですか…」


「敬語っぽい喋り方はやめてくれて結構ですよ…正直、俺も面倒だと思うのでね」

そして、今更な感じがあるが眠い少年がそんなことを言った。


「ふむ…じゃあ、遠慮なく敬語っぽいのやめますわ…もう、自分で思ってたけど無理してる感があって内心疲れてたからな」

そんな感じで、いつも通りの言葉で話している俺達。

旅では、各地がどんな感じなのか、などを聞いたのだが……一年ぐらいここ辺りを旅してるらしいので、遠い場所は曖昧にしか話してくれなかった。


「ふぅ…料理も飲み物もなくなったな~……」

コップに注がれていた飲み物を飲み干した眠い少年は、そんなことを言う。


「俺、お菓子持ってるんで食べる?」

うん…おもいっきしタメ口だな…相手に敬語っぽいのをやめて欲しいと言われたこととはいえ…馴染むの速いな、俺。


「ほぉ…それは、ぜひとも食べたい!!」

そして…あんたも馴染むの速いな、おい。

そんな感じで、二人とも席を立ち歩き出す。

さすがに食堂で、他の店で買った(前の世界で買ったんだが…)モノを食べるほど度胸はないので、俺の部屋のベランダにあるテーブルで食べることにした。

俺の部屋に入り、先にベランダのほうに行かせ、眠たい少年には見えないように闇からお菓子を取り出す。


「まぁ、こんな感じだなぁ~…」

取り出したお菓子をテーブルの上に置く。

一応お菓子はいくつか買っていたので必ず一つは残しておく。美月の分までなくなってしまうので、そこは考慮しておかなくてはならない。


「おぉ、よくわからないお菓子がたくさんあるなっ!!」

眠たい少年は、歯が欠けるほど固いせんべぇを取り出し、口に運ぶ。


「あ……」


「ん、なに?」

その少年は、せんべぇを歯で砕いてボリボリと食べている。

ああ…あなたの歯様、頑丈なんですね。


「ん…いや、なんでもない」

言葉を濁す俺に、疑問の表情になっている少年は…あいかわらず、せんべえを食べている。


「それで…あんたは、この世界で何があり、どんな事を思った?」

これは俺の質問。

正直、いろいろと突っ込みすぎている質問だが…もう、面倒なので聞こうと思う。

え、何で聞いたかって? そりゃあ、眠たい少年とのお別れの時にでも言うと思うよ。


「……このお菓子のお礼にでも話してやるよ…まぁ、気づかれたみたいだし隠すのも面倒だ。

ここでは…いや、この世界では沢山の仲間を失った。

危機的状況をどうにか逃げる事で生き残り、自分達の場所に帰れば…たくさんの人の冷たい視線が向けられたよ。

それでもあの人は、俺達…俺とあの子を、そんな目で見ることは無く、ただ俺達を元の場所に帰してくれようとした」


「ふむ…どこかで聞いた話だな」


「まぁ、確かに聞いたことはあるかもしれないな…あの子がお前らに話したのなら…。

まぁ、とりあえず続きを言うが…お前が聞いた話と同じように俺達は元の場所ではない所に辿り着いてしまった訳だが…あの子は、精神的に相当まいっていて…ずっと話すことはなかったわけだ。

俺と同じ場所で同じ事を体験したわけだ…当然、俺はほっとく事もできずに、あの子を支えようと努力して、ずっと一緒に居たわけだな」


「漫画にありそうだな…」


「確かにお決まりのパターンだからあるだろうな、漫画を見るのと体験するのでは何倍もの違いはあるが・・・。

まぁ、とりあえず話を戻そう。

一ヵ月ぐらいのときが経ったときだろうか…あの子はある決心をしたんだよ『自分があの場所に戻り、全てを終らせる』って言ってね…。

あの子から、見たら…ずっとあの子を支えようとしていた俺は強い存在だったらしい…でも、俺にとったら、それは嘘の俺で…内心の俺は、あの子以上に荒れていて危ない状態だったんだよ。

まぁ、こんな感じの俺だ。…誰にも気づかれることのない悩みだったわけだ。

そんな時に、ある老人…堕勇をまとめる男、グレモアという老いぼれ爺にあったわけだ」


「だから、魔法をかけられて堕勇になったというわけか…?」

俺の言葉に、少年…堕勇は驚くと言う事は無く、ただ口が弧を描き微笑んでいる。


「あの子…奈菜はいつも通り、元気そうでなによりだ」

少年は、深くかぶっていた帽子を取る…黒い髪の毛がサワリと揺れて、いつも通りであろう髪型に戻る。


「なんで気づいた?」


「俺の部屋に行くときに、俺があんたの後ろを歩く時があったんだが…帽子の後ろから少しだけ黒い髪がはみ出ててな」

この世界でも、他の世界と同様に黒い髪は珍しい。


「なんとも、アホな理由でばれたもんだ…」

自分にうんざりしたようで、眉間を歪め、いくつものしわができている。


「それで…何をしに来たんだ? 俺と話をするために来たわけではないだろう、なッ!!」

最後のところで思い切り蹴り上げ、テーブルを真っ二つに砕きながら少年の顔を、俺の蹴りが狙ったわけだが…少年は、顔を後ろに引き、余裕の表情で俺の蹴りをギリギリのところで避け、後方の建物の屋根へと跳ぶことによって、俺との距離をとった。


「いや、ただ話を聞きに来ただけだよ……まぁ、主に奈菜が心配だったわけだが」

少年が着地したときに、髪の毛が揺れて見えたのだが、おでこ辺りに泰斗と同様のよくわからない魔法陣が張り付いていた。

泰斗の場合は、首の後ろに張り付いていたのだが、こいつの場合はおでこだ。

張り付いてる場所は人それぞれなのだろう。


「ふぅん…そりゃあ、奈菜思いだなっ!!」

二つに割れたテーブルの片方を、おもいきり投げ込む。

そのテーブルは堕勇にぶつかる前に、堕勇がかざした手に触れるか触れないかの位置で、粉々に吹き飛んだ。

近所迷惑な大きい音が響いているわけだが、今の俺と堕勇にとって関係はない。

奈菜と同じ世界から来たのと…元こちら側の勇者と言う事もあり、相当面倒な力を持っているであろう堕勇は動かない。


「正直、今の時点ではあまり奈菜とは会いたくないからな…もう少ししたら、退場させていただく」


「…面倒な事にならなくて俺的には結構な事だが、俺達を殺すために来てるんじゃないのか?」


「俺の他に連れが一人居るんだが…俺達はただ見守りに来ただけさ・・・この世界のアンデット化の終わりをな。

ただ…俺達の他に堕勇は来ている。気をつけたほうは良いだろうな、俺的にはあんたには奈菜の邪魔をするであろう堕勇をどうにか排除してもらいたいわけだが…」


「そりゃあ、面倒な頼み事だな…。

そう言えば、俺と話してていいのか? 魔法で洗脳されてるんだったら話もできないし、話しちゃいけないんじゃないか?」


「詳しく言えば、自分の命令を聞かせる魔法だな……ほぼ洗脳に近いが…。

…いくらあの老いぼれとは言えど、異様に魔力などが多い勇者を何人も操る事なんてできないさ。命令があればそれを聞くしかないが、命令がない場合は自由。

まぁ、こちらに不利になることをしてしまえば罰はあるんだけどな」


「ふむ…」

それは、めんどくさそうなこった。


「それにしても…奈菜の一人称は『ボク』か。

昔、奈菜は『私』だったんだが……」

そりゃあ、不自然な感じがしなかったもの…そうだろうな。

俺は特に何も言わないので、堕勇…眠たげ少年が口を開く。


「ん~…それで、あんたには……ッ!?」

何を言おうとしたのかわからないが、焦った声を漏らす。

それと同時に後ろの扉が開き、大声が聞こえてくる。


「どうしたの、徹夜くんっ!?」

俺がそちらを振り向くと奈菜が慌てたように飛び出して来ていた。

多分、俺がさっきから出していた大きな音に気づいて来たのだろう。ちなみに、その背には美月が担がれており、美月はあたまがぁ~…と唸っている。

敵がいるかもしれないので、一応美月を連れて来たのだろう。


「ん…ちょっと、な…」

俺は再び堕勇の少年がいた場所に目を向けてみるが、そこには誰も居なかった。


「おでこによくわからない魔法陣がついている、眠たい目の少年と話していただけだよ」


銀島ぎんじま 美咲みさきか……」

このキーワードだけで気づくのか…。


「お前、アレと知り合いなんだってな」

奈菜の顔を見ずに、美月を抱えて俺が壊さなかったイスに座らせる。

とりあえず壊れたテーブルは、闇で回収した後に今まで溜め込んできたモノと一緒に闇の中で合成し、元の形に復元する。

前のテーブルとは違い、黒いテーブルができたけど…とりあえずは、良しとしよう。


「ああ…この世界で私と一緒に生き残った、もう一人の勇者だね」

まぁ、さっきの美崎とやらの話からして、わかってたけどな…。


「ふぅん…」

そんな感じで返答しながら、座らせた美月の頭を撫でる。

美月はそれに疑問の顔になりながらも、俺の手を拒否せずに見上げてくる。

さっきの少年の美月に関する話に影響されてしまっている俺だが……まぁ、美月は嬉しそうな顔をしているので、問題ないだろう。


「それで…」


…なでなで…


「ボクの過去の何を話したのかな…」

後ろからの真っ黒オーラ。


「……(汗」


…なで、なでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなで…







 ─  ─



「で…奈菜ちゃんに会わなくてよかったんかぁ? ミサキぃ~」

ある建物の屋根の上。

美月達とは、それなりの距離が開き、すぐには見つかる事のない場所。

そこに一人の少年が座り、その後ろに少女が立っていた。


「良かったんだよ…というより、今の時点で俺が奈菜に会えるほどの度胸がないだけだよ」


「男の子なのに、そないでどうすんねんっ!!」


「うっさいぞっ!! エセ関西弁女!!」

大声を出すエセ関西弁少女に対して、大声で返す眠たげ少年…まぁ、もう美咲でいいだろう。


「ったく…いつもいつも大声で面倒だな、楓はっ!!」


「はは~ん!! ウチの男らしさを見習えっ!! そして、敬え!!」


「お前女だろ? 亜月あつき かえでという、女っぽい名前があるだろうに……まぁ、性格はアレだがな……ふんっ。

…というか、お前なんて敬えるほどの人間じゃないだろ」


「鼻で笑うなボケナスっ! そして、最後に最低の罵倒を吐くなっ」

エセ関西弁少女…楓は、美咲に対して思い切り拳を振り下ろすが、美咲はそれを跳んでかわし、楓の後方に軽い音をたてて着地する。


「…それで、俺が勇者の一人と話をしている間に調べていた結果はどうだった?」


「奈菜ちゃんの他に来ている二人の勇者…少年のほうが景山 徹夜で、少女のほうが内藤 美月やな」

どこから調べたのか、そんなことを言う楓。


「景山 徹夜ねぇ…」

さっきまで話していた少年の顔を思い出す。


「ウチ的にはあの綺麗なお顔の、美月ちゃんとやらが気になるわぁ…ジュルリっ。

まぁ、他に堕勇の方を調べたんやけども、ちゃんと確認できんかったから不確かなんやけどもな……。

来ていて堕勇は1~2人。

他に老いぼれも来ておったから、ウチらは完全に手出しはできんなぁ……」



「ふむ…あのクソジジィが来ているのか……」

少年は、とても楽しくなさそうに眉間にしわを寄せた。

そういえば、テストが月曜から始まるんですよ。内容は相当薄いですが、1話分書き溜めしてあるので問題ないです。


美咲くんの過去は菜奈と同じ世界のからの帰還者です。

ちなみに、菜奈とは違う没作品の主人公を菜奈の物語と合併しました。

菜奈と美咲は、同じ時期に考えた物語ですね。




誤字・脱字のご報告があればご報告お願いします。

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