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俺は闇、幼馴染みは光の勇者様  作者: 焼き芋(ちーず味)
第三章 セカンドワールド 堕勇と勇者の戦争
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14話 ナナのモノガタリ

ほぼシリアス。


あるキャラの一人称が変わっているのは仕様です。

俺達は奈菜と合流した後に、建物から出て魔法陣があった場所へと戻っている。

その周囲には奈菜が自分で作った魔法具であろう物で結界を張り、ゾンビどもが寄ってこないようにとしている。

結界の向こうはゾンビに埋め尽くされており、それを時々魔法具で菜奈がおっぱらっている。


「…で、ここは何だ?」


「ここはボクが召喚された世界だよ」


「どんな世界だ……?」

珍しく真面目な顔の俺は、ただ奈菜に問いかける。

その隣では、美月も静かにしており、奈菜の返答をただ待っている。


「ここはボクが召喚された世界…。

人、魔物、竜、獣人、魔族いろいろなアンデット系のモンスターに埋め尽くされ…命を持っているモノが殺され、そして再びアンデットとして復活する」

奈菜は、結界をはるために使用しているであろう魔法具を手の上で右へ左へしきりに動かしている。


「世界ではアンデット達が侵略し始めた。

抵抗だってした・・・。人間も、獣人も、魔族も、竜も……アンデット達に抵抗した。…その結果敗北し、アンデット達の侵略は止まらなかった世界。

私達は、今から一年と数ヶ月前に…この世界に召喚されたんだよね…」


「私〝達"……?」

奈菜の言葉の中に気になったモノがあった。

それに対して美月が質問をした。


「そう、私達……召喚された勇者は五人。

友達でもなければ、知り合いでもない。召喚ので始めて顔を合わせた私たち五人は、私達を召喚した国の王女様に頼まれて……いろいろとあったけど、最終的には力を貸すことになったんだ。

一年の間、私達は国に手配された実力者に訓練を受け…腕を上げていった。

この世界の勇者召喚では、特別な能力を預かることはあっても、身体能力の場合は潜在能力が上がるだけで、その時点で変わってるわけじゃなかったからね…だから、それぞれが訓練をして、自分を高めたわけ…」

地面に棒をサクサクと突き刺しながら喋る奈菜は、ただの少女のようにしか見えないが……表情からは重く、辛い過去しか思い浮かばない。


「私が教わったのは全ての武器の使い方。教えてくれた人……つまり先生は、私と同い年の少年だったけど、世界に数人しかいないSSランクの冒険者だった。

私は微妙だけど、彼は漫画に出てくるような暗器使い…さすがに表で働くような冒険者だからすることは無かっただろうけど…暗殺までお手の物の優秀な人」

私はたくさんの事をその人から教わった…と、奈菜は言った。

その手は動いておらず、手も…そして頭も、ただ力を入れずに俯いている。


「私達は半年の間、訓練をし…その中でも、実戦を経験しながら着々と力をつけていったんだ……さすがは勇者、と言われてしまうほど…実力をつけていき。

SSランクの人や、騎士団長と呼ばれるトップレベルの人たちとも渡り合えるようになっていったんだ……。

当然、訓練だけをただしていたわけじゃなく、王女様たちと楽しく話したりした…この世界の人たちは私達の心身の両方を気にしてくれてた…。

王女様はとても優しい方でいろんな話をしたんだ…」

そこで奈菜は一度言葉を切った……そして、再び話し出す。


「もともと王女様は召喚には反対派だったらしいけど…国の貴族などに押し切られて渋々召喚したらしかったんだよね…だから、その分、私達に優しくしてくれたんだ。

そんな感じで、生を失っても動くモノ達とまだ生きてる者達が戦ってる中でも、まだ心休まるときを過ごしながら、力をつけていたんだ…だけど………。

そんな中、アンデット達は防衛線を突破し、私達が居た都市を襲った…私達はとりあえず戦いながら後退し、違う都市に移動する事にした……アンデット達の数は、生きてるものが殺されれば増えていく。

だから、倒していっても仲間達が倒された分だけ再び増える。だから、引くしかなかったんだ……」

奈菜は、そこで再び言葉をやめる。

視線の先には結界の周囲でゾロゾロと動いているゾンビ達。手に持った魔法具に魔力を流しながら、ボタンを押すと…結界から周りに電撃が放たれ、ゾンビ達を一掃した。


「それなりに犠牲を出したけど、私達は無事に他の都市に移動した。

そんな時に、この止まらないアンデット化の原因がわかったんだ…それは変なエネルギーを出す球体…つまり、コアのようなものだったんだ……」


「形を知ってると言う事は…自分で見たの?」

美月が質問をした。


「うん…私達はコアを壊す作戦をたて…実行した。

でも、その球体がある場所には一体の魔物が居た…そいつは人型で大鎌を持っていた…そして、バリアのようなものが体を覆い攻撃は届かず、その大鎌には、かすっただけでも死ぬハメになる強力な毒のような能力が付いていた。

私達5人と、この世界のトップレベルの15人。それらが戦ったのに、勝てずに負けた」


「負けたと言う事は…死人が出たのか?」


「…うん、最初に死んだのは一人の勇者だった。

何事にも強気な少年…その勇者は相手の攻撃に逃げずに立ち向かった結果、体が上下に別れるような斬撃を食らって即死…それを始まりに、たくさんの人が死んでいく。

諦めて撤退をし始めるのに時間はかからなかったんだけど……撤退しようとしてもすぐには撤退させてくれなかった。

何人も死んでいく…最初の一人を除いた他の勇者二人が死に、私の先生ではないSSランクの冒険者の多くの人も死に、私と剣で競い合っていた騎士団長も死んでいった」

奈菜の言葉をただ静かに聞く。


「そして……本当は、次は私の番だったんだ。

私は相手に背中を向けて逃げるために走っていた…その背中から貫くような軌道を描いて大鎌が振るわれたんだけど……その死の大鎌から私の先生が助けてくれた……自分の命をかけて…。

先生が防御に使った何十本もの武器は砕かれ、先生の体を貫いた。

私は先生にかけよろうとしたけど、生き残った勇者…つまり、生き残った二人の勇者の私ではないもう一人に、無理矢理引きずられてかけよることができなくて、ただ名前を呼んでいるだけだった。

そして、先生がこっちを一瞬見たかと思ったけど……もう、その目に生はうつっていなかったんだ……」

奈菜の表情はここからじゃ…見えない。


「私を含めた生き残りの少数は、アンデット達に追われながらも、どうにか帰ることができた。

出発時と比べて大分人数減って帰ってきた私達を見て、ほとんどの人が絶望した。それを王女様は父である王と、その国の貴族達の言葉を無視して、強引に私達二人を召喚のに移動された。

最初は、何をするつもりなのか分からなかったけど、王女様が魔法陣をいじっている姿を見てハッとした……それは私達を元の世界に帰そうとしたんだよ。

私達は王女様を止めようとする兵士達を見て……召喚された時とは逆に他の世界に送り出されたんだ」


「その結果が、俺達がさっきまでいた世界か?」


「うん…あの世界は他の世界と比べると世界と世界を隔てる壁が薄いんだ…だから、時々ああやって世界を越える魔法陣が自然に発生するんだよ。

だから、一年間の間ずっと待ち続けていたんだ……」


「お前はこの世界にきてどうするつもりなんだ…?」


「私は、王女様を救いたいだけ……本当は、このアンデット化が終ってて欲しかったんだけど、まだ続いている…だから、次こそは終らせるんだ…。

魔法陣は、そのままにしてても24時間は消えないし……君達には、関係ないことだから帰ってくれてかまわないから…」

表情は見えないが、手は強く、ただ強く握り締められているのが見えた。


「お前一人じゃ、無理だろ?」


「…でも、私は一人でやるよ」

その、奈菜の返答に俺は、つい美月のほうを見てしまった。

おおぅ……その、美月の表情にはなんとも言えないませんねぇ~・・・。


「徹夜、〝コレ"に付き合ってくれるよね?」


「……わかりましたよ。

奈菜の手伝いをすればいいんだろ……」


「へっ…?」

俺の言葉に驚きの声をあげる奈菜。


「はぁ…奈菜もいつものテンションに戻りなさいな・・・正直、やり難いからさ・・・。

美月が奈菜の事を助けたいんだってよ~・・・そして、俺も巻き込まれるんだってさ~…溜息が止まらねぇよ……」


俺はただ溜息を15連で吐き…美月は俺のことをニコニコと輝く笑顔で見てくる。

そして奈菜は、驚いた表情から笑顔に変わった。


「ボクから見ると…徹夜君は、尻に敷かれる派だね?」

……もぉ、やだっ!!



「じょ、冗談だよっ!? 泣かなくたっていいんじゃない!? げ、元気出しなよっ…ぼ、ボクは応援してるよ!!」

別に泣いてないです……泣いてないって言ってるじゃんっ…そんな慰めてくれなくて良いよっ!! その優しさは嬉しいけどさっ!!


…というか、お前のせいじゃね?


「ボクのせいじゃないです」

心読むなし。

菜奈の物語はこう言うものでした。

ちなみに、本来の主人公像は菜奈の先生だったSSランクの少年です。

 この物語は、第一章40話辺りのときに考え、一回書いたのですが…先が思い付かず、没にして消去しました。


『ボク』が『私』に変わってるのに徹夜が反応しないのは、あまりにも自然だから気づかないというわけです。

昔は、菜奈も『私』だったのでしょう。





誤字・脱字があればご報告お願いします。

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