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俺は闇、幼馴染みは光の勇者様  作者: 焼き芋(ちーず味)
第二章  堕勇と堕天の面倒事
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番外編 ある六人の過去

第一章に乗せようと書いたけど、没にして消したものを再び書いた。

まぁ、今回のは没にしない程度に満足に書けたと思う。


今回は徹夜は出てこない。

そこは魔界。

そして……時はさかのぼり、十数年前へと移動する。

ある場所、そこには一つの都市。

その都市は、ある一枚の大きな壁により外の住民と中の住民がいる。


壁の内側には、魔界でも有名な兵士を育て上げる学園があり、人間で言う貴族などの裕福な者達が住む場所。

警備もちゃんとしており治安がよく、その中に住んでいるだけで不満になるはずはない幸せに住んでいけるであろう場所。


そして、壁の外側。

そこでは治安が良い、なんという言葉なんて絶対に呼べるわけがない場所。

服とも思えないような物を着ている者がいるし…人目のある場所、人目の無い場所、そんな物は一切関係が無く魔族が自分の生きるために同じ魔族を殺す事なんて普通の事。





そんな都市。

そこには、六歳程度のある一人の少女が走っていた。

別に壁の内側に居たわけではない、外側に居たのだ。


「こぉんのっ、クソガキッ!!」

その少女の後ろからは男性の野太い怒鳴り声が聞こえてくるが、少女はその小さな身体にはありえないと思うほどの運動神経でボロボロの建物の壁を登り、屋根に上ることで男性を撒く。

その少女は腕にいくつかのリンゴのような物を抱えており、それは今まで売られていたもの。

つまりは盗んだのだ。


「・・・」

少女は、安全であろう場所に到着すると黙ってリンゴを見つめた後、口を大きく開けてかぶりつく。

そのリンゴは丸く、大きく、真っ赤なリンゴ……というわけではなく、しおれていて水分は無く、少しばかり黒いリンゴだ。

その黒いリンゴを少女は、ゆっくりと食べ、食べ終わると辺りを見回し、他の魔族に見られないようにその場所から出る。

壁の外側で、一人で居る事は危険と言える。

自分のいる安全な寝る場所を知られれば、何があるかは分からない。

捕まれば奴隷商人に売られることは当たり前、自分のストレスの発散のために何時間も殴られ、蹴られ、最後には殺される事だってある。


少女は歩き出し、違う場所で再び何か食べるものを盗むために移動する。

さっきのリンゴは全部食べてしまった。

生きるためには再び食料を見つける必要がある。

壁の外と言っても、それなりに売っている店を経営してるところはある。

壁の内側と比べれば食べ物の質は格段に落ちている、でもそんな物は少女に関係は無い。


少女は壁の外側で生まれた。

そんな食べ物を食べるのは普通の事だ。

泥棒をする事なんて、何年か前に死んだ母親がまた生きていた時からやっている。

こんな環境に生まれたら、何が良くて何が悪いかなんてわかるわけがない。


「見つけたぞ、このクソガキっ!!」

そんな所に、少女の頬に横から衝撃が走り自分が歩いていた道の横にある壁に背中からぶつかる。


「・・・うっ」

一瞬頭がくらくらするが横に頭を振ってから、そちらを見るとさっき撒いたはずである魔族の男と数人の魔族の男達が居た。

どうやら、撒いた後もずっと捜していたらしく運悪くあってしまったらしい。


「てめぇのせいで俺はむかついてるんだよ、責任とってストレス発散に付き合ってくれや」

男がこちらに手を伸ばそうとして来る。

少女にとっては大きすぎる手。

その掌は次の瞬間には縦に浅く切り裂かれていた。


「ぐああぁっ・・・クソッ!! いてぇっ!!」

少女の手には、石を削って作った短いナイフが持たれていた。

それを見た魔族の男達はそれぞれが得物を持ち、凄い形相で睨んでくる。


「クソガキっ・・・・・・てめぇ、ズタボロにして近くの森の魔物の餌にしてやるよぉ・・・」

掌を切られた男が怒りの感情と共にそんな言葉を言う。

少女はそれを聞いても動じない。

こんな所で住んでいれば、こんなことは何十回と遭遇する事態である。

慣れてしまえば動じるわけがないし、何回も遭遇しているせいで自然と動きもよくなり、簡単には殺されなくなる、それに加えて逃げる瞬間も理解できている。


「・・・死ぬのは、あなた」

少女が相手に挑発の言葉を放つと、掌を切られた男が怒りで飛び出してくる。

丁度よく他の男達を置いてきぼりにする感じで突っ込んできた男は、得物を少女に向けて振るうが、少女はそれを軽く避けて首を一気に切り裂いた。


「あ・・・?」

首を切り裂かれた男は訳がわからないと言う声を漏らした後、次の瞬間には絶命し、地面に転がる。

それを見たほかの男達は一瞬怯んだように後ろに一歩下がるが、多対一の状況を思い出すと強気でこちらにジリジリと寄ってくる。


「・・・(そろそろ逃げ時かな)」

そんな様子を見た少女は、相手に気づかれないように周りを見て、逃げられる場所をいくつか見つけ出す。

そして、逃げ出そうとした所に後ろから衝撃が走り、前に大きく吹き飛ばされた。

地面を転がり、最後には仰向けに転がる。


「くぅ・・・・」

倒れた状態でそちらを見ると嫌な笑みを浮かべた知らない魔族の男。

つまり、一人だけ違う場所で見守っていたのだろう。

さっきの衝撃で石のナイフも落としてしまい、後ろからの衝撃がどうやら予想以上に体に来ているようで身動きが満足に取れない。

あと数秒すれば動けるだろうが、目の前男は金属のナイフを持って近づいてくる。

これでは間に合わない。


「子供相手だからって油断してるから死ぬんだよ、まったくアホなやt・・・・・・」

その男が近づいてくる・・・だが、言葉の途中でその男は後ろの壁と一緒に吹き飛ばされた。

その場所には真っ黒な大きい熊が居た。

熊の口には、さっきの男がくわえられていて、次の瞬間にいやな音共に噛み砕かれ体の上下が二つに分かれた。


最初に説明したとおり、ここは治安などのことは考えられていない。

だから、壁の外では魔物が出るのは当たり前。

何十年か前では、大量の魔物によって何百という数の死人が出た、という過去まである。

そして、その魔物は少女にとって幸運なのか、男達をなぎ払った。

仰向けに倒れていた状態なので、ちょうど少女の上を通過していく形だったので鋭い爪に切り裂かれることは無かったが、少女の周りにいた男たちは一瞬の内に絶命して行った。


「・・・やばい」

少女はまだ動けずにいる。

その少女を黒い熊は発見し、口をあけて鋭い牙を見せ、ドロドロとした涎をたらしている。

それを見た少女はどうにか熊のほうに手を向ける。

すると、その手には黒い何かが集まると同時に黒い熊の上半身を吹き飛ばした。


少女は今まで何回も危険な目にあっている。

そんな中で育ったのは、危険察知能力と運動神経、武器の扱い方、そして魔法だ。

その魔法は純粋な闇の魔法。

十分な才能を持っていたことにより、使えるようになったものだろう。


だが、一発で終わり。

それ専門の魔族に教わったわけではなく、実戦で学んだつけやきば。

そんな物を何発も撃つ事など不可能。

訓練をしていなければ魔力を正確に制御する事など不可能なのだ。


少女は肩を揺らして呼吸をしており、顔はベットリと大粒の汗をかいている。

それほどまでに、今の少女にはきつい事なのだ。


「・・・ッ!!?」

だが、そこまでで終らなかった。

魔物が死んだ所・・・つまり、壊れた壁から4匹ぐらいの同じ種類の魔物たちが現れる。

魔物たちは周りの魔族の男の死体、そしてさっき殺した魔物の死骸をむさぼり始めるのだが、大きな体に似合ってる速さで食べているのですぐにそれも無くなる。

熊の目線は少女に集まる。

そして……一匹の熊の魔物が少女に向かって噛み付こうとした。



「ほらな、カインズ。数匹の魔物を壁の外に放っておけば、一人は才能のある者が見つかるだろ?」

そんな声と共に四匹の魔物の体がはじけ飛び、まわりに魔物の血が飛び散った。


「・・・?」

その声のほうを向くと二人の魔族の男と自分より一つか二つ年下の少女が居た。

そして、二人の魔族の男で後ろに居るほうが口を開く。


「確かにそうですね、魔王様。純粋な闇の魔法を使っておりましたので、これは大きな収穫だったと思います」


「・・・ッ!!?」

魔族の言葉を聞いて少女は驚いた。

〝魔王"という言葉は魔族にとって重い存在である。

そしてカインズという名前にも聞き覚えがある、それは現在の『魔界六柱』No,1のカインズ・トルゥマアである。


「少しばかり入学する時期は遅いが学園で育てれば、将来有望な兵士になることは間違いなしだ」


「ですが、あいにく学園では都市の壁の内側に住むう者達が通ってるため、寮は無いですが・・・」


「じゃあ、誰かが養子にでも取ればよいだろう。

う~む・・・おい、カインズ・・・」


「・・・はい、なんでしょうか?」


「お前、妻は居たが子はいなかったはずだな?」


「・・・ハッキリとお申し付けください」


「こいつを養子にとれ・・・」


「正直溜息をつきたい所ですがどうにか押し殺しましょう・・・魔王様の命とあれば・・・はぁ」

結局溜息をついていた






倒れている少女を無視して話を進めていく二人、そして魔王とNo1の後ろにいる少女はその様子を見て何か別のことを考えていた。


「・・・(お父様は・・・力があれば、目を向けてくれるのですね)」

誰かも知らない少女を魔王は自分の兵士に育てるために、カインズに養子にさせて育てさせようとしている。

それは、少女にとって一瞬であれど、目を向けてもらえているという事実だと受け取っていた。


「・・・(学園に入れるのは6歳・・・まだ、入れない・・・でも、すぐに入れるようになったら・・・学ばないと、力の使い方を・・・)」

その少女・・・つまりミルリアは変な方向に考え方が歪んでいく。


「・・・(学んで、力をつけて、殺して、功績をあげて、私の力で地位を得れば、きっと・・・いや、絶対にお父様は私を見てくれるはず)」

少女は決意を固める。

いくらそれを実行にしたって意味も無い事を知らずに・・・



そして、そんな歪んだ考え方と共に時は進んでいく。

学園に入学し、訓練し、ロシアンという少年と出会い、軍に入り、昇進していく。

そして最後に600年前の姉にあった。

そんな少女の物語。







そして、再びミルリアではない少女に戻る。

魔王とカインズの話は勝手に進み、勝手に終る。

カインズは少女がまだ動けずに居るので、軽く片手で持ち上げて軽い治療魔法をかけることにより立たせることにする。


「お前の名前は?」

カインずが少女に向かって問うと、少女は戸惑いながらも答える。


「・・・私は、リーシ」


「そうか、リーシか。ふむ・・・では、これからリーシ・トルゥマアと名乗るが良い。

お前はこれから今までのような辛い生活は、絶対に無い生き方ができるだろう」





少女の生き方が変わった瞬間である。

それからの生活は、リーシにとって今までと違い、幸せなものだったといえる。

学園の訓練は相当辛いものだったが、壁の外に住んでいたリーシにとってそんな物は関係が無く。

子供がどうしてもできなかったカインズと、その妻である女性は壁の外に住んでいた自分の子ではないリーシでも、まるで自分の子供のように愛情を注いでいた。






そして場所は変わるが、同じ都市にある学園。

そこは兵士を育てるための学園で、裕福な家しか入学する事ができない学園だ。


「あうっ・・・!!」

ある少女が突き飛ばされて、派手に転んだ。


「落ちこぼれのお前が、ずっとこの学園に居る事、事態が間違ってんだよ」


「ソーダ、ソーダ」


ある一人の少女を、10人単位の少年が囲んでいじめていた。

二人目のコメントがなんかある飲み物の名前に見えたかもしれないが「そうだ、そうだ」である。

この光景はもう何日も続いている。

魔法の授業で少女が失敗したことで、ある少年の一団がずっと苛めており、それを周りの子供達は笑ってるものも居れば、見ないフリをするものも居るし、いじめの集団を見て不愉快そうな顔をしているものもいる。

この苛める少年たちの集団では、周りに自慢するために腰に剣を下げているまとめ役的な位置に居る少年が、それなりに成績もよく、学園の同い年の中では実力がトップの方にいるので止めようとする奴はいなかった。


それに対して少女は涙目になり、「やめて」というだけで反抗もできずにいる。

そんな所に、ある声が割り込んできた。


「見苦しいからやめろよ、近くに居るこっちがイライラするだろう」


「まったくだ・・・。落ちこぼれだなんだかんだと言っているが、今の時点では得意な属性の魔法を見つけられてないだけだろうに・・・」


そんな二人の少年が、少女と少年の一団の間に割り込んできた。

それを見たまとめ役の少年は、その二人を忌々しそうに睨み、舌打ちをしている。


「なんだ? そんなブスが好きなのかァ?」

そんなことを言うと回りの男子が笑い始め、少女はさらに涙をボロボロと流し始める。

まとめ役の少年の鼻に思い切り拳がめり込み、2㍍ぐらい吹っ飛ばされた。


「あああああああぁぁぁぁぁっ!!」

吹っ飛んだ少年は、鼻血をだしながら床をのた打ち回っている。


「・・・お前、馬鹿だろ? 何、低レベルな事言ってんの?」

最初に発言したほうの少年が、まとめ役の少年を見下ろしながらそんな事を言う。

吹っ飛ばされた少年は怒ったのだろう。


「てめぇ・・・!!」

周りに自慢するために腰に下げていた剣を抜く。

そして、自分を殴った少年のほうに刃を向けるのだが、次の瞬間にその刃が炎で包まれ溶けて使えなくなる。


「お前の自慢の剣を使えなくしちまったな、木で作った剣でもやるから許してくれよ。

お前には金属の剣はもったいないと思うぞ」

使えなくなった剣を持っている少年はポカンとした後、すぐに自分と一緒に居る少年たちのほうを助けを求めるために向く。

だが、またもポカンとした顔になる少年。


「よいしょっと・・・うあ~、めんどくせぇ~・・・」

そんな事を呟きながら、もう一人の少年が、自分の仲間だった少年たちを縄でグルグル巻きにしていたのだ。


「なにやってんだ・・・ッ!!」

まとめ役の少年は使えなくなった剣を、投げつけるが途中で変な方向に曲がってUターンした後に自分の足元に転がってきた。

その少年の周りには風が渦巻いていた。


「そろそろ、終わりにしようぜ。お前がほかの奴の事を「落ちこぼれ」なんて言えないよな・・・?」

まとめ役の少年の肩に手がポンッ…と置かれ、それにビクッと反応する。


「は、はいっ!!」

そんな大声で返事をすると共に慌てて逃げ始めるまとめ役の少年。


「あ~・・・自分の仲間を置いていきやがった」


「お前が無駄に脅すからだろ、もっと優しくやってやれよ」

そんな軽口を叩きながら、少女のほうに近づいていく。


「俺はジールク・ライっていうんだ、ちなみに一応説明すると後ろに居るのはトールゥ・マイラスだ。君は?」


「一応ってなんだ、一応って・・・」


「・・・ルクライル・リーン」


「じゃあ、ルクライル。ちょっとここを離れようぜ、無駄に視線集めちまってる・・・」


「え、あ、うん・・・」

少女がまわりを見ると、少年の集団の無様なやられ方を笑ってるのも居れば、違う少女達ではキャーキャーうるさいのもいる。

それらがすべてこっちに視線を集めているのだ。


「おい、ジールク。お前、ナンパしてんじゃねぇよ。俺だって頑張ったんだぞ」


「この歳でナンパなんかしねぇよっ!!」


「じゃあ、もう少し歳をとったらするんだな?」


「おい、コラ、トールゥ。ちょっと面貸せや」


少女はクスッと笑う、それを知らないで大騒ぎしている二人はまたも少女の笑いを誘ったのだった。

それが三人の話。




「あの人たち、面白いなぁ~。あの人たちと居たら退屈しなさそうだ」

それを見たある少年は、そんな事を呟く。

その少年は、メイトという名前の少年であった。





「魔王様、マジ最高。命かけられるわ~」


まぁ、今までの六人で出てきていない内の一人はこんな感じだった。

ちなみに名前はクロイズル・リクトンである。

あの丁寧な話し方には、これから変わっていくのであった。





・・・めんどくさいから書かなかったとか言わないで、純粋に思いつかなかっただけだから。

番外編が思いつかなかったら無理矢理終了にするかも・・・。

クロイズル・リクトンでは、マジで思いつかなかった。

本当にすまないと思っている。

まぁ、思いつかなくてもクロイズルだから良いと思ったのは嘘ではない。



誤字・脱字があればマジで御報告ください

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