33話 『聖剣』 vs 『腐土』
「「オオォォォォォォォォォォォォォォォォーッ!!」」
二人の雄叫びが響き、剣と剣がぶつかり合う。
それは『聖剣』のラルドと『腐土』のクロイズル。
その二人がぶつかり合っていた。
何かに気づき、二人とも同時に後ろに下がる。
そして上を見上げた。
「これは・・・?」
「相当の量の魔力・・・これは腐らせきれませんね・・・」
その視線の先には紫色の玉と空に浮かぶ巨大な魔法陣。
魔神の攻撃魔法だ。
その感じられる魔力から即座に自分一人では玉を自分にダメージが食らわない程度に弱体化すら出来ないと認識した二人は行動に移す。
「ここは協力してやりましょう。その後にこの剣であなたの首をはねてあげます」
「私が貴方なんかに殺されることはありません。ただ、あれは相当やばいものですね。
あれであなたが死ななかったら私が腐り殺してあげましょう」
そんな事を言いながら、二人とも集中しラルドの場合は黄金の剣に、クロイズルの場合は自分の手に魔力を集め始めた。
そして次の瞬間には、自分達に降りかかるであろういくつかの玉に向かって攻撃を開始した。
「『約束された勝利の剣』!!」
ラルドは、今までで一番大きな光の斬撃が空に向かって放たれる。
それに合わせて間髪居れずにクロイズルも動いた。
「・・・『悲鳴を上げる腐土人形』」
クロイズルが地面に手をつくと、地面が腐り始め、その腐った土が動き、どこかのギリギリSランクを連想させるゴーレムが出来上がった。
ギリギリSランクの土人形の似ているが、そのゴーレムは体が腐り、大きさもギリSラン土人形よりも数倍の大きさだった。
そして、ゴーレムが大きな足を重たそうに上げて、一歩進む。それと同時にゴーレムが足をつけた地面が腐り始めた。
─ ギャアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァ……ッ!! ─
ゴーレムが悲鳴にも似た雄叫びを上げ、大きな体をそのまま広げ、玉を受け止めようとする。
その体は触っただけで物を腐らせる。
それはエクスカリバーから放たれる光の斬撃のような魔力の塊であっても例外ではなく、とうぜん紫色の玉もいくぶんかは腐らせるであろう。
光の斬撃で削った後に、さらに腐食の土人形で削る。
それでも、完全に紫色の玉を消すことはできず大きな爆発がおきるが、それはラルドとクロイズルの動きを邪魔するほどではなく、二人はお互いに急接近して剣を振りぶつかり合う。
「ハッ!!」
ラルドが黄金の剣を振るい。
「ふっ!!」
それをクロイズルは受け止め、返す刃でラルドの顔目掛けて腐らせるため手を突き出す。
当然ラルドはクロイズルからバックステップをして距離をとり、数発の光の斬撃を放つ。
「・・・ッ!!」
クロイズルは横に転がるようにして避けた後に、『腐針』を放つ。前に徹夜との戦闘でも使われた魔法だ。
「・・・ッ!! 無駄ッ!!」
それをラルドは全て剣で弾く。
針の横を叩くようにして、針は剣に刺さらないようにしていた。
クロイズルが自分の魔法でエクスカリバーを腐らせられるかはわからない、と同じ様に、ラルドはエクスカリバーがクロイズルの魔法で腐らせられるかもしれない、という心配がある。
なので、直接は攻撃を受けないようにしている。
この戦闘は徹夜のように闇や力でゴリ押しではなく、相手の隙をついて命を狙う戦いなのだ。
「・・・腐って死ね!!」
その言葉がラルドの上から聞こえ、とっさにラルドは横に転がると同時にラルドがさっきまで立っていたところにクロイズルの手が突き刺さり、地面を腐らせる。
腐食は周りにも広がっていくので、ラルドはすぐに起き上がり上に跳んで避ける。
そして着地すると剣を構える。
「いい加減に決着をつけさせていただきます」
「それは良いですね。私も良い加減に魔王様のところに行きたくなってきましたので・・・」
クロイズルも魔力を手に集めていく。
「・・・『約束された勝利の剣』!!」
ラルドは紫の玉に向けて放ったのと同等の威力の光の斬撃を放つ。
「『悲鳴を上げる腐土人形』」
クロイズルの前に腐ったゴーレムが現れ、光の斬撃を受け止めようと手を前に突き出す。
二人の最大の攻撃、クロイズルの場合は自分の命を代償にして出す奥の手があるが、それは自分が負けた時のみ、最初から命を捨てるようなことはしない。
まぁ、もう一回は死んだのだが・・・。
そして、光の斬撃と腐ったゴーレムはぶつかり合う。
腐ったゴーレムは光の斬撃を腐らし、光の斬撃は腐ったゴーレムを打ち砕く。
どちらの攻撃もお互いを打ち消しあった。
ただ…最大の攻撃を出す事だけが、戦闘ではない。
クロイズルは背後に気配を感じ、慌てて振り返りながら距離をとろうとするが、その前に胸から黄金の刃が飛び出した。
油断していたわけではない、ただ光の斬撃の後ろに隠れながら接近したラルドは、クロイズルの反応よりも速く黄金の剣を振るったのだ。
普通の状況では、避けられていただろうが、この状況になることでやっとの事で剣を突き刺せた。
「・・・・ぐうっ」
クロイズルは口から血を流しながら、後ろの人物を忌々しそうに睨みつける。
「私の勝ちですね。『魔界六柱』No,2『腐土』のクロイズル・リクトン」
黄金の剣を握っているラルドがクロイズルの背後で口を開く。
「・・・確かに、あなたは私に勝ったでしょう。ですが、この私が、それだけで終るとでも、お思いですか?」
「あぁ、君が徹夜くんと戦ってるのはキッチリ見させてもらったからね。十分わかっているよ。
だから、その前に手をうたせて貰おう。…さよならだ」
ラルドはクロイズルが奥の手の魔法を放つ前に、突き刺した剣を力を込めて動かす。
その速さは自分の出せる最速のスピード。
ラルドの周りで黄金の剣が反射し、キラキラと輝いている。
そして、それにあわせたかのようにラルドの目の前の魔族は、細切れに刻まれ、細かくなって地面に転がった。
「魔界で私に戦闘をさせなかった屈辱は、ちゃんとはらさせていただきましたので・・・」
ラルドはジャリィン…!!という甲高い金属音をたてながら、エクスカリバーを背中の鞘に収める。
「さて、魔王のほうは『魔界六柱』の五人が相手をしているでしょうし・・・・・・適当な相手と戦ってますかね」
ラルドの目線の先は、どこかで見たときのある20匹ぐらいのアクババの群れ。
とりあえずは、狩りをしながら休憩をとろうと思ったラルドである。
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