31話 イルリヤの使い方
王都『ドラゲイル』の空。
そこには黒くまるで二足で立つ虫のような姿をした神がいる。
それは魔神。
その魔神は王都の外で行われている戦争を見て楽しそうに笑っていた。
すると、ビクンと肩を揺らし下の王都を見た。
・・・ 俺を、私を、僕を、我を、召喚した五人の内、三人が死に、一人が気絶した ・・・
・・・ ククク、そろそろ俺も、私も、僕も、我も、このゲームを楽しもうとしよう ・・・
魔神は大口を開けて笑い始めると同時に凄いスピードで移動し始める。
最初に狙うのは外で戦う大勢の生き物達。
─ ─
その魔神を見た二人の存在がいた。
「・・・動きましたね」
「うむ、じゃあ……そろそろ我らも動いていいでおじゃるな?」
「ええ、では行きましょうか」
そんな会話をすると、同時にその場には他の竜より巨大な黄金の竜と同じ大きさの灰色の竜が現れる。
その竜二頭は翼を広げ音も無く浮き上がる。
次の瞬間には、猛スピードで一直線に飛び。
魔神の真正面に移動していた。
「edfijpdrsa?」
魔神のよくわからない声が聞こえるが、それにかまってる二頭ではなく。
黄金の竜が渾身の力で尻尾を振るい、魔神を王都に向かって吹き飛ばした。
『あの一撃でダメージが入ってないようなので困りますね』
『神とはやはり恐ろしいものでおじゃる』
軽口を言いながら、移動し王都の上空を飛びまわる。
その大きな目は魔神の突っ込んだ所だけを見据えている。
だが、次の瞬間には飛んでいる二頭の間に魔神が居た。
二頭の竜に向けて魔神は手をかざす、それと同時にイリルとイルリヤが吹き飛ばされた。
『・・・なッ!?』
イリルは驚きの声をあげ。
『いたっ・・・でおじゃる』
イルリヤは雰囲気を壊しながらも悲鳴のような声をあげる
二頭は吹き飛ばされ王都の建物を壊しならも倒れこんだ。
イリルはそのまま勢いが死ぬまで吹き飛ばされ、イルリヤはある場所で急速に勢いが無くなり止った。
─ ─
「…ったく、いきなり吹っ飛ばされてこっちに飛んでくんなよ…」
イルリヤのほうでは徹夜・・・つまり俺だ。
俺に向かってイルリヤが背中から吹っ飛んできたのでどうにか受け止めた。
まぁ、50㍍ぐらい押されたが問題はない。
『うぅ・・・マジで痛いでおじゃる。ホント悪いでおじゃる』
「・・・まぁ、あんたには期待してないさ」
『ひどいでおじゃるなっ!!』
イルリヤは一回人間の姿になって立ち上がり、自分の服についてる埃を叩き落としている。
「そういえば、勇者はどこいったでおじゃるか?」
「美月はお前が迫ってきたから違う所に行かしたよ。たぶん魔神の攻撃に向けて空中に足場を作ってるんじゃないか?
というか、そろそろ俺も攻撃し始めたいんだよ。お前も付き合え」
「ふむ、勇者は準備しておるのでおじゃるか。あんなのと戦うのか・・・痛いのはいやでおじゃるな」
黙って働けコノヤロー。
「じゃあ、俺が先に攻撃するから反対側から攻撃しろ」
「人の話し聞いて・・・いたっ、でおじゃる」
何かを言おうとしてるところに結構力を入れてチョップする。
いいからやれや、俺だって面倒だから嫌なんだよ。
まぁ、とりあえずは注意をこっちに向けるためにも派手な攻撃がしたいわけだ。
だから、ちょっとだけ大きな道具を使おうかな。
イルリヤが何か言ってるのも聞かずに城の塔。
円柱状の塔で屋根は城のイメージにある円すいで尖っている。
その下の場所に俺がたどり着く。
「これでいいよな・・・よっと・・・」
剣を振るとそれにあわせて闇が動き、塔の根元をざっくりと切断する。
建物だし、城の塔だから結構太いんだけども、闇を使えばうまく切断できた。
地面と平行に斬ったおかげか、うまく倒れないで立ってくれている。
「・・・あとは、空中の足場だな。『空気物体』」
俺自身、魔法を使うのは久しぶりな気がする。
だいたいは主に闇と自慢(なのか?)の馬鹿(頭が馬鹿ですが何か?)力を使っているからな。
それを跳び移って移動する。
結構上に移動して魔神のいる高さの少し下に居る。
「ぐふっふっふっふ~・・・巨大な矢に貫かれて死ねば良いんだ!!」
俺の手から片手に5本ずつの合計10本の鏃のついた鎖がさっき俺が根元を切断しといた城の塔に突き刺さる。
そして、その鎖をしっかりと掴み。
「わぁっしょぉぉいっっ!!」
変な奇声をあげながら、おもいっきり引っ張る。
すると、徹夜の言葉通りに城の塔は巨大な矢と化し魔神を貫くために飛ぶ。
それと同時に魔神の反対側から人から竜の姿になったらしく、突然灰色の竜が口を大きく開けながら魔神に向かって突進していく。
その口には鋭い歯が何本も見えた。
巨大な矢と竜が挟み撃ちをする形で迫るが、魔神は楽しそうに笑っていた。
またも、イリルとイルリヤを吹っ飛ばした衝撃が放たれ、俺の放った矢は木っ端微塵に砕けていく。
「うぉわぁっ!!?」
塔の先端からこっちに向けて徐々に砕けていくので、確実に俺に向かって衝撃が移動してきてる事がわかった。
・・・なので、背中に闇の翼を生やし慌てて横に飛んで避けた。
『痛いのは嫌じゃっ!!』
イルリヤは衝撃に向けて純粋な魔力だけのブレスを吐き、衝撃を相殺する。
そして、そのまま突っ切って魔神に向かう。
「うぉらァ!!」
それに合わせて闇の翼で魔神の後ろに移動して、こちらも闇で大きな剣を造り上から下へと振り下ろす。
「・・・ojihih?」、
魔神の声らしき物が聞こえたが全然理解できないのでそのまま攻撃は続行する。
だが、俺の振るった剣を魔神は片手で受け止め、そのまま振り回し投げられた。
「うおぉぉぉっ!?」
地面にそのまま突っ込んだ俺。いたい・・・。
そしてイルリヤのほうでは魔神をかみ殺そうと牙を振るうが、空振りし、いつのまに移動した魔神が背中に突撃した。
「くそっ・・・でおじゃる」
吹き飛ばされながらも人間の姿に戻っていた。
そして空中で体勢を立て直すと竜の姿で着地する。
「ちくしょう、あの矢じゃ硬度がたりねぇな・・・もっと硬いもの・・・」
俺の目の前には悪竜・・・のしっぽ。ちょうど俺の手に届く場所に・・・。
「ィヤッホォォォォォォォォォォォォ!!」
『ひぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・でおじゃるぅ~』
俺はイルリヤの尻尾を持ち、そのまま振り回し巨大なモーニングスターの如く魔神へ振り下ろす。
『・・・ぐぺっ・・・で・・・ぉじゃる』
それは、当然のごとく魔神の衝撃によって跳ね返された。
「チッ・・・やっぱりダメだったか。予想はしていたけどな」
「だったら、やらないでほしいでおじゃる」
人間の姿に戻ったイルリヤが何かを言っているが無視、無視♪
そんな感じのときでイルリヤのことを無視していたときに、ある場所から数百は越すであろう光の剣が魔神に放たれる。
そしてある場所では、天にいくつかの黄色の点が登っていったと思ったら、雷が魔神に落ちたりなどみるからに誰かの攻撃が放たれた。
それは今までどおり魔神の衝撃波によって全て防がれる。
『徹夜くん、そのまま攻撃をし続けてください』
そこに、イリルさんの声が頭に響いてくる。
あれか、前にドラゲイルに魔族の戦艦が迫ってきたときと同じ方法か。
『あれは、不完全な存在ですからあれが私達に攻撃をしたり、私達の攻撃を防御したりする分だけエネルギーは減っていきます。
なので、攻撃し続ける事が一番の道です』
ふむ、オーケーです。
『なので、さっきのような方法でイルリヤを使ってくれてもかまいません』
「ひどいでおじゃるっ!!」
「よぉし、いっぱい攻撃するか~!!」
「なんでこっちに歩いてくるでおじゃるか? 痛めつける・・・じゃなくてダメージを与えるのは我じゃなくて、魔神でおじゃるよ?」
頑張って殺りに行こうと思う・・・イルリヤを使って。
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