30話 怒らせると本当の意味で怖い
「徹夜ぁぁっ!!?」
美月は悲鳴のような声をあげる。
その目の前では徹夜が血溜まりに倒れていた。
「泰斗は俺達三人のォ中でも一番つえェからな。厄介な奴にゃァまず最初に沈んでもらはないけねェって事だ」
そこには少年がいた。
姿を透明にし、気配でさえも断つことのできる堕勇の少年だ。
その姿は半透明だった。
「おぉっと、いけねェ。だまんねェと完全には透明にはなれねェんだった」
そう言った堕勇の少年は黙りこくる。
すると、その姿がみるみる内に透明になっていく。
そして少年は次のターゲットである美月のほうを見た。
だが、そこに美月の姿は無かった。
少年がなにかを思う前に後ろから衝撃が襲った。
背中から吹っ飛ばされ、半ば頭から地面に突っ込みそうになるが、手を地面に引っ掛け体勢を変えることにより足から着地する。
そして、自分が吹っ飛ばされた所を見て相手の姿を見ようとする。
だが、そこには誰の姿もいない。
その瞬間に後ろから自分の髪の毛を掴まれた感覚があった。
それを確認する前に思い切り床に顔面からおもいきり叩きつけられた。
「がァ・・・っ!?」
それと同時になにか肉のようなものが潰れる生々しい音が聞こえ。
堕勇の少年は鼻からは鼻血が出て、鼻は横に曲がっている。
完全に鼻の骨を折られたみたいだ。
そして上から圧力がかけられ身動きが取れないうちに何回も顔を叩きつけられる。
「こォんのちくしょォがァァッ!!」
少年は上から押さえつけられながらも片手にもっているバスタードソードをでたらめに振り回す。
すると、拘束が緩み少年は慌てて立ち上がる。
振り向きざまに剣を振るうが誰も居ない空を切る。
「・・・ハハハッ♪」
そんな笑い声が後ろから聞こえた。
「・・・ッ!!? 『衝撃』!!」
振り向きざまに魔法を放つが手ごたえが一切無い。
「ハハハハハッ♪」
再びその声が後ろから聞こえ、少年は後ろの襟首を掴まれた感覚があり、大振りに振り回され投げられた。
少年は投げられたが、空中でどうにか体勢を整え、壁に着地する。
そして前を見た瞬間に美月が剣を構え、目の前に居た。
「なァ・・・ッ!?」
慌てて壁から跳び、美月の攻撃をよける。
それと同時にさっきまで少年が立っていた壁が横に切り裂かれた。
だが、そこで少年は動きを止めるわけには行かなかった。
ほぼ本能と言って良いだろう。
根拠も無ければ証拠も無い、ただ今すぐにしゃがまなければいけないと思い、地を這い蹲るような体勢になる。
だが、それは命を救うことになった。
さっきまで立っていたところでは美月が胴体を二つに分けるように剣を振るっていたのだ。
よけなければ、上下に分かれていたことは間違いない。
そして慌てて立ち上がり、美月の姿を視認する。
さっきの変な笑い声でだいたいさっしがついていたが、その姿は異常だった。
美月はなにかが切れたようで、まるで理性のある生物とは思えない目をしていた。
それに寒気を覚え、慌ててバックステップをして距離をとる少年だったが、次の瞬間には美月を見失った。
「なァ・・・っ!?」
堕勇と言えど、元は勇者。
それなりにチートと呼ばれるようなスペックはもっている。
持っているはずなのに美月を視界で捕らえることができないのだ。
それは少年にとって異常としか言えなかった。
「ここは、逃げねェと殺られる・・・っ!!」
少年は慌てて透明化の魔法を発動する。
それによって体がどんどん透明になっていく。
だが、完全に消える前に腹に衝撃が走り、体がくの字に折れ曲がる。
少年の腹に美月の膝蹴りが食い込んでいた。
「ぐゥお・・・!!」
透明になっていた体は、それにより魔法がキャンセルされ透明ではなくなる。
美月を相手にして少年は完全に透明になる隙ができない。
「私が、あなたを逃がすとおもってるのぉ~・・・?」
その言葉と共に美月がクルりと回り、回し蹴りが炸裂した。
顔の横っ面を蹴られた少年は吹っ飛び、背中から壁に激突する。
肺の空気が押し出され、声が漏れそうになるがその前に右肩、左肩、右腕と左腕の肘辺り、そして左の横腹辺りに激痛が走る。
そこには一本ずつ光の剣が刺さり、少年は壁に縫い付けられていた。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああッッ!!」
少年の悲鳴の叫びをあげる。
「・・・『光の剣』」
美月の周りには剣がいくつかあり、少年に向かって放った剣の余りだろう。
その剣は空気に溶けていく様になくなっていった。
そして、美月は少年に人差し指を向ける。
「『全ては光の通る道』」
人差し指から三つの光の光線が放たれる。
それは少年の体を貫き、少年の体に三つの穴を作る。
魔法は貫通性であり少年の体を貫いた後は城の壁を貫いていった。
そして、その魔法によって体に穴を開けられた堕勇の少年は口から血を吐き出すが、すぐに痛みによって気絶した。
「アハハハハハハハハ♪」
それでも、美月は止まらない。
剣を横に構えダッシュする。その剣は少年の首を狙っている。
「・・・終わりだ、美月」
それを徹夜が美月を後ろから羽交い絞めにする形で止められた。
「おぅっ!?」
徹夜は美月を後ろにほん投げようとしたが、自分の足が絡み、徹夜は美月もろとも転倒する。
そして、倒れてるときに美月を確認してみると、いつのまにか体の向いてる向きが変わり徹夜に抱きついていた。
「・・・よかった。徹夜が死んだかと思ったよぉ」
「あんな剣で俺が死ぬわけ無いだろ・・・美月」
そんな感じで、徹夜は美月を抱えて立ち上がる。
そして美月をちゃんと自分で立たせるのだが、美月は徹夜から離れない。
そして、美月の視線があるところで固まった。
「・・・徹夜」
「ん、なんだ?」
「なんで徹夜の足は生まれたばかりの小鹿のようにガクガクしてるの?」
美月が言ったとおり、徹夜の足は震え、立ってるのも辛そうな感じだった。
それに対して徹夜はケロッとした様子で・・・。
「まだ止血もしてないからな」
徹夜が横腹あたり服をまくると、そこからは血が流れ出ている。
「止血しなよぉ!!」
美月は半ば徹夜の足を払う形で転倒させ、床にねかせると魔法で横腹を治療し始める。
「なぁ、美月」
「なに?」
「お前人の形をした生き物は殺した時はあるか?」
「いや、気絶させるだけで殺しては無いよ」
「じゃあ、そのまま誰も殺すな」
「え・・・でも結局、あの人出血多量で死んじゃうよ?」
それに徹夜は返答せずに少年のほうに闇の刃を飛ばす。
その刃は気絶している少年の首を斬り飛ばした。
「お前は殺してない…あれは俺が殺した。お前は誰も殺してないからこれからも殺すな。美月は今までどおり気絶で済ませ」
「・・・でも」
「それでいいんだよ」
「うん、わかった」
「んじゃあ、治療も終ったみたいだし・・・違う所行くか」
二人は立ち上がって、歩き出す。
「それにしても・・・本当の意味で美月を怒らすと怖いな。まぁ、俺のことで怒ってくれたのは少し嬉しいが・・・」
徹夜がそんな事を呟くと、美月は恥ずかしそうで、もしくは拗ねたみたいにそっぽを向いた。
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