27話 徹夜ぁ~頑張れ~
そこはある騎士達や兵士達の訓練する場所・・・つまり訓練場だ。
その場ではある者達が戦っていた。
「オォラァァッ!!」
瑞穂が大きなハンマーを振るい数人の影をなぎ払う。
その影はまるで霧のように消えていく。
「チィ…ッ!! ハズレかッ!!」
それに対して瑞穂はしかめっ面になり怒りを表す。
そして違う場所。そこは王の間と呼ばれていた場所。
何か鋭いものがいくつも飛び出す。
それはある一人の少年を狙って放たれたものである。
「ヒャッハーー!! 無駄無駄無駄無駄無駄無駄アァァァァァッ!!」
それを徹夜は両手に一本ずつ持った紫色の刃の剣で粉々に砕く。
鋭い何かは砕かれ空中を舞い、キラキラと輝いている。
そして…
「徹夜ぁ~、頑張れ~」
美月はティーカップに入った紅茶のようなもの一口飲みながら徹夜を応援していた。
そして、お菓子として(徹夜が)持ってきていたクッキーをお皿から一枚手に取って口に運びポリポリと音をたてながら食べる。
・・・一人だけ、まったりしていた。
─ ─
その十数分前。
徹夜・・・つまりは俺だが。
俺と美月と瑞穂は城の近くに下りた。当然城の中に入り、歩いていく。
ヒドラに知らされていたのだが、ザアクさんとかが城の召使などは避難されているので誰もいない。
そして、数分歩いていると、どこか見たときのある霧が立ち込めてきた。
「・・・これ、あれじゃね?」
俺の言葉。これは当然アレだ。
「じゃあ、離れないようにした方が良いよね。・・・ね、瑞穂」
美月が確認の質問を瑞穂に尋ねた。
だが、返答がない。
「んあ? 瑞穂は?」
俺の言葉。これにも返答がない。
どうやら、王道パターンだ。
つまり瑞穂が、霧で俺達と分断された・・・。
「んむ~?なぁ、ここはどこだ?」
瑞穂の言葉。
瑞穂は徹夜たちと別れた事に気づかず一人で歩いていた。
そして瑞穂の質問に当然誰も返答することはない。
「え? あれ? なんで俺一人なんだっ!?」
気づいたのは5分後だった。
瑞穂は少しの間、考えると・・・。
「うん、あいつらは迷子になったみたいだな。俺一人で進んでいくか」
なにやら勘違いした回答にたどりつき、再び歩き出す。
そして歩いていると、ある広い空間にたどりつく。
そこは訓練場だった。
「ん~・・・相性が悪いのと出会っちまったみたいだな」
瑞穂はそんな事を呟く。
それと同時に一部の霧が晴れハルバードを構えた黒髪の少年が現れる。
「こんにちわ。えっと・・・瑞穂さんでしたっけ?」
「ん、そうだな。・・・俺はお前の名前知らないけどな」
「いえいえ、私は名乗るほどの者じゃないですよ。ただの堕ちた勇者です」
「・・・じゃあ、倒さねぇとなッ!!」
それと同時に瑞穂はハンマーを横に構えダッシュする。
堕勇はハルバードを構えた姿のままで数人に分裂した。
それは相手を惑わすために幻術でできた者だ。
「オォラァァッ!!」
瑞穂が大きなハンマーを振るい数人の影をなぎ払う。
その影はまるで霧のように消えていく。
「チィ…ッ!! ハズレかッ!!」
それに対して瑞穂はしかめっ面になり怒りを表す。
「さぁて、どれが本物でしょうかね~」
そして堕勇の少年の笑いが響く。
…そして、また場所は戻る。
俺と美月は前に一度だけ来た時のある王の間にたどりついた。
その王の間はボロボロに破壊されていた。
床の魔法陣の円の中だけ綺麗だった。そこだけは破壊されないように堕勇達は戦ったのだろう。
・・・部屋の端と玉座の近く。そこには、一人ずつ人間の男性が倒れていた。
「・・・あ~」
俺は変な声を漏らしながら一人に近づいていく。
それはある大国で一番の騎士と呼ばれていた男性だった。
まだ息はある。
今にも止まりそうで、かすれた音をたてている呼吸。
「ん…? ああ・・・て、つやくんた…ちか…」
ザアクさんは目を開けてるか開けてないかわからない程度にまぶたを持ち上げ、口を開いた。
その声は小さい。それらは今にも死にそうだ、という事だけがわかる。
ザアクさんの体には大きな穴が開いていた。
軽装の鎧といえど、それなりに攻撃は防ぐことはできるだろう。
だが、鎧ごと体を貫かれているようだった。
そして美月は他の一人の方・・・つまりは国王、ガイト・ミラゲイルを確認していたが、俺がそちらを向くと何も言わずに首を横に振る。
その倒れてる人間は血で赤くなっているが豪華であったであろう服装をしていて、その近くには半ばから折れた大剣が落ちていた。
「ほ、んと・・・すま・・・な、いな・・・」
ザアクさんの途切れ途切れの声。
「いえ、別にかまわないですよ。美月がいる限り面倒事にまきこまれるのが俺なんで」
後ろで黙ってつねってくる美月がいるが気にしない。
美月と離れたのに面倒事に巻き込まれ続けた俺の過去があるが気にしない。
絶対に気にしてなるものかっ!!
今更か・・・、とか思われるかもしれないけど俺は平凡な高校生なんだ!!
「ふ・・ふっ・・・そ、うか。じゃあ・・・わるい、が…私た、ちのやったこ、との・・・あと、しま・・・つをしとい・・・てくれな、いか・・・」
ザアクさんが少し笑いながらしゃべる。
その一言一言をしゃべるごとに血が口の中から湧き出る。
「…めんどくさいので本当は嫌ですが、今回だけは頼まれてあげましょう」
俺がそう答えると、ザアクさんは苦笑いのような表情をしながらゆっくりと目を閉じた。
かすれた音をたてていた呼吸・・・それも聞こえなくなった。
そして・・・
「・・・その男達二人にはてこずった。おかげで不完全の召喚をするはめになったし、召喚に予定以上の時間がかかった」
俺達の入ってきたとは違う扉からそんな言葉が聞こえた。
そちらを見ると、鞘に収まった日本刀を腰にぶら下げている黒髪の少年がいる。
「・・・都堂 泰斗だったな。・・・折角だから俺一人で相手してやるよ」
「え、でも徹夜。二人でやったほうが・・・」
「いやぁ~、楽しまなきゃ人生損だからな。面白そうな感じだし、俺一人でやらせていただこう」
俺の言葉に当然美月は意味のわからない、という顔になる。
「他の二人は姿を隠す魔法と幻術の魔法ってのは効果は大きいが、平凡な魔法だったからな。楽しめそうにないかと思ってたんだよ。
ただ、このザアクさんの傷を見る限り、少しこいつは違うみたいだ。
だから俺がやろうと思うわけだよ」
俺は不適に笑っている。
それを見た美月はやれやれ、という感じの顔になり後ろに下がる。
美月にはテキトーに闇に入っていた紅茶セットとクッキーを渡しておこう。
俺に譲ってくれたお礼だ。
「・・・別に俺は二人相手でも良かったんだが」
泰斗が口を開く。
「いやいや、俺が相手で感謝しろって。美月相手だと面倒な事になるぞ。
あえて言えば俺達二人が相手だったらお前に勝ち目があるわけがない」
「・・・じゃあ、感謝しよう」
素直だな、おい。
「じゃあ、さっさとはじめようか」
俺は剣を鞘から抜きながら口を開く。面倒だけど楽しまなきゃいけないもんな。
ハッハッハ・・・ぜってぇに負かす。
「・・・ッ!!」
ダッという音と共におもいっきりダッシュする。
それに反応して泰斗は刀を横なぎに振るう。
俺はしゃがんでよけて泰斗の懐に潜り、剣を下から上に振り上げる。
「くっ・・・!!」
泰斗はバックステップして避ける。
俺はそれを追撃するためにさらに前へと足を踏み込む。
すると、前方でパキパキ…という音が聞こえた。
泰斗は少しだけ口の端がつりあがり笑っていた。
それと同時に前方から透明な水晶の鋭い先端が俺の体を突き刺すために生えてきた。
「むわ・・・ッ!?」
それを俺は体を大きくそらして避ける。
その後、2~3回バックステップして泰斗から距離をとる。
「なんだ、それ・・・」
さっきも説明したとおりそれは水晶だった。
先端は鋭く金属をも貫くような勢いがある。多分、ザアクさんを鎧ごと貫いていたのはこれだったのだろう。
そして、その水晶は何もないところから生えてきている。
「・・・これが俺の力だ。面白いだろう?」
泰斗が手をかざす。その手の上ではパキパキ…という音をたてながら水晶が出来上がった。
透明だが、すこしばかり青みがあり光を反射していて綺麗な感じだ。
「・・・結構硬くて防御もできるが、前にあんたと会ったときに見せてくれた怪力だったらすぐに壊されてしまうかもな」
そんな言葉と共に例の音が俺の周りで響く。
そして、次の瞬間には俺目掛けて鋭い水晶が生えてきた。
「ヒャッハーー!! 無駄無駄無駄無駄無駄無駄アァァァァァッ!!」
それを徹夜は両手に一本ずつ持った紫色の刃の剣で粉々に砕く。
鋭い何かは砕かれ空中を舞い、キラキラと輝いている。
俺、結構ハイな気分になってます。
「・・・ふむ、予想通りか」
それを見た泰斗は冷静にそんな事を言う。
「いや~、なかなか面白い力が見れて良いね。
他の二人と何が違ってこう能力の方向が変わってるのかよくわからんが、楽しめそうで何よりだ」
そんな俺の言葉。
その瞬間には俺も泰斗もそれぞれ獲物を構えてダッシュしている。
そして、二本の剣と一本の刀がぶつかり合い。
甲高い金属音がその場に響いた。
少し早めに投稿させていただきました。
八月には二章を終らせるつもりです。
がんばります。
誤字・脱字があればマジで御報告ください。