24話 真っ赤なゲームの始まりだ
「・・・ああ、何でこうなったんだかなァ~」
そんな俺の発言、目の前には王都『ミラゲイル』。
その王都の中心では紫色のような柱ができている、その柱からもれているらしい膨大な量の魔力には恐れ入る。ヒドラの話によるとあの量の魔力を放出している魔神とやらはまだ完全な存在という訳じゃないのだから驚きだ。
こちらの状況を言うと、魔族も竜も他の国に配置していた戦力を完全にこの場に集めている。
王都付近の地形は、王都を中心に何キロメートルという平地が円状に続き、そしてそれを綺麗に山が囲んでいる感じだ。この地形で言うと敵の発見のしやすさを重視したらしい。王都ミラゲイルは難攻不落の都であり、ミラゲイルは他の大国や小国と比べても突飛した軍事力を有している。
他の大国は特別な存在(この場合で言う時の巫女)、または魔法(これは勇者召喚の魔法陣)が居る事、又はある事によりそれについていけている感じだ。
イリルさんの話によると、この魔神の魔力で考えてみるに中位の神であるらしい、本来の完璧な状態なら上位の神だろうと言っていた。上位の神の場合だとこの世界全部の戦力で挑んだ場合、勝てるか負けるかはわからないのだと言う。
不完全な魔神の場合は俺達の四人とイリルとイルリヤで挑んだ場合が五分五分程度に近いらしいのだが、どちらかというと負ける可能性のほうが高いらしい。神なのだからそう簡単には勝てるわけがないのだ。
なにやら不完全と完全のパワーバランスが可笑しくないか?と思うわけだがそれほどまでに不完全と完全の壁と言うものはでかいらしい。
「あ~・・・この場合ってどうするわけ・・・?」
俺の疑問、
「・・・とりあえずは堕勇を倒す事じゃないかな?」
それに美月が返答した。まぁ、それが今は第一というわけかな。あんな魔力の柱のとこに行ったって何もできそうにないしね。闇で魔力を吸収してみる、ってのも考えたけどあの量はさすがに吸収しきれないだろう。吸収しきれなかったエネルギーが俺にどんな影響を与えるかわからないから絶対にやるつもりはない。
「…それは当然の事として、どうやってあそこに行くんだ?」
それに対して瑞穂も言った。んんん・・・なんか皆、疑問符ばかりだな。
「ん~・・・どうするべきか・・・」
そんな事を呟いているのは和馬だった。その手には実弾の入ってるほうの拳銃をクルクルと回していた、正直どうすればいいのかわからないから暇だ。
ん~、まぁ王都に入ることが大切だよな~・・・と、俺が思っているときに王都の方角を向いていた俺の視界に変化が起きる。
それは大きな変化、とても大きすぎる変化だ。
「どうなってんだ、これ・・・」
そんな俺の呟き。
─ ─
そこは異様なオーラを放つ紫色の天まで届く柱。その柱の中に黒い一つの球状のものがあった。
黒い球状の物は柱と同様に異様なオーラのようなものがある。いや…あえて言うなら柱以上に異様なものだった。黒い球体は動かない、ただ・・・何か声ではないような声のような曖昧なものが聞こえてきた。
…ゼ…、…ツ…ボ、ウ…
それは途切れ途切れでちゃんと聞かないとわからない程度でのカタコトの一つの単語だった。そしてそれが段々と長くなっていき聞き取れるようなものに変わっていく。
…ソ、レハ、 死?…
ハッキリとその言葉が聞こえた。
…ゼ、ツボ ウ…ト、死 トハ、?…
… 生命ノ死、人ノ死、仲間ノ死、同種族ノ死 …
… シ ヌ リユ、ウハ ? …
…撲殺、病死、餓死、刺殺、溺死、窒息死、戦死…
他にも死ぬ原因が聞こえてくる。言葉は段々と声が大きくなっていく。
…ゼツボ、ウの ノ、カオ? カン、ジ ョウ?…
…ソ、レハ 俺ノ、 私ノ、 僕ノ、 我ノ……
そこでピシリ…球体にひびが入った。そのひびが大きくなっていき、大きな穴ができる。そしてそこから動物をいくつも合成したような異質な形の生き物、あえて言うならどこか虫を思わせる二足歩行で、背中には蝿のような羽の生えた黒い生物が這い出てきた。
…トッ、テモ…大ス、キ ナモ、ノ…
その生物の顔らしき所があきらかに笑っているように歪む。
…ヒ、トノ イキモ、ノ ノゼツボウ、は・・・俺が、私が、僕が、我が・・・全部食らい尽くそう…
言葉の途中で、あきらかに何かがに変わった。
そして、その黒い生物の口のようなものがパックリ…と開く。その口には鋭く小さな歯がズラリと並んでいた。
「hiihuhfsんヴぉwowwswf死w3ほ3k者pbv@あdのhowッッッ!!!」
その口から意味のわからない雄叫びがあげられる。
そして変化が起きる、それは黒い生物にではない。青白い何かがこの王都を中心とした平地に集まってきている。
それは大陸…というよりもこの世界全土から集まってきているのかもしれない。
それらが全て集まっていく、そしてその青白い何かは形を変えた。それはこの世界の生物だった。人間、魔族、魔物、竜人、いろいろな生物。その数は徹夜たちが集めた戦う者達の数よりも多かった。
そしてそれは、20匹のアクババの群れ、一匹のキマイラ、どこかの騎士だったと思われる十数名の人物達、魔族の300人程度の精鋭部隊に入ってたと思われる奴ら。
そんなどこかで見たときのあるような面子。
…俺の、私の、僕の、我の、軍隊を作ろう…
そこでまた笑う。完全になにかで遊んでいる感じだ。その視線の先には人間、魔族、竜人などのさまざまな国、または種族の大軍があった。
…過去数百年の間に死んだ者を蘇らそう、縁がある者同士ならば再び会う事が、戦うことが、殺しあうことができる。…
…戦友、身内、友、愛人、部下、上司、ライバル、仲間、祖先・・・因縁のある者達が、強い絆のある者達が…
…過去の友を殺し、過去の友に殺され。現在の仲間が殺され、過去の仲間を殺す。昔の・・・愛人が、友が、仲間が、同僚が、親しい知り合いが、自我を持ちながらも俺の、私の、僕の、我の、力によって無理に体を動かされ、襲い掛かっていく…
…自分の心を殺し、相手を殺すか。それとも…
…何もできずに、殺させるか…
黒い生物が口を大きく開け、声を出しながら不気味に笑う。よくわからない言葉で、他の生き物は恐怖してしまうような笑い声が響く。
…楽しみだ。あぁ、生き物の顔の歪むさまが、生き物の悲鳴を上げる様子が、ゼツボウによって心が折れる様子が…
…とっても楽しい…
黒い生き物は笑う。ただ不気味に暗く、楽しんでいるように・・・。
…私を楽しませてくれ。俺が、私が、僕が、我が、動く前に・・・このとっても大きな遊びに飽きる前に、たくさん楽しませてくれ。…
…真っ赤なゲームの始まりだ…
そんな声のようなものが響いた。
─ ─
「うん、さっきよりも何をどうしたらいいのかわからなくなった・・・」
俺のそんな呟き。目の前にはウジャウジャとした大群。その中にはちょっとした知ってる奴や生き物もいた。あえていうなら俺と別の魂であるあるお姉さんがキレて殺しまくった『魔隊』のやつらなどがいるのも偶然発見した。凄い確立の見つけ辛さなのによく見つけた、と俺を褒めてやりたい。
「ん~、この場合は空を飛んで行く?」
美月の言葉、まぁこれだったらやっぱり空しかないか・・・
「でも、どうやるんだ?」
瑞穂の言葉。まぁ、確かにそれは疑問に思うわな。
すると和馬が口を開いた。
「…こう、気合で」
馬鹿かお前。
まぁ、うん、あれだな・・・。どうやって空を飛ぶのかってのは問題じゃないんだよ。これで問題なのがなんで俺が疲れることをしなきゃいけないのかって言う話だ。
「はぁ…」
俺はそんな溜息をつくと、闇を展開させる。イメージはドラゴン…大きなドラゴンで三人を乗せてもびくともしない物。そして俺は一人用がいいので、そのまま背中に翼を生やすイメージ。
え?だってそっちのほうが気楽でいいじゃないですか。
「おぉ、お前の黒いのってやっぱり便利だな」
それが瑞穂の感想だった。
「俺もこんなのがやってみたかったな」
そんな事を言ってるのは和馬。お前の増殖だって結構いいと思うけどな俺は。
「さすが徹夜♪」
それを見た美月が黒いドラゴンに乗るのではなく俺の背中にしがみついてきた。
…なんぞ?
「いや…私的にはこっちのほうがいいなぁ~、って」
…怒っていいですか?
とりあえずは王都に向けて飛び立つ俺と美月と瑞穂と和馬である。
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