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覇王
作:緒俐



第八話:スズナ・メイリン


「瑞貴!」
 
 ついにバリアを目前としたが、瑞貴の意識はすでになかった。
 間違いなく、魔力を全て使い切ったのだろう。

「待ってなさいよ。こんな奴なんて即効で砕いてやるんだから!」
 
 パリーン言う音とともに、二人はようやく幻想の国から抜け出した。
 だが、それでも悪夢は終わらなかった。

「冗談でしょう・・・・?」

 ホッとしたのも束の間だった。
 バリアを砕いたといっても、追っ手が止まる訳がなかったのだ。

「くそっ! こっちはもうボロボロだって言うのに・・・・!」
 
 瑞貴を地面に寝かせ、少しだけでも攻撃から守るために、
 自分の魔力を全て使って結界を張った。

「瑞貴、せめてあんただけでも守ってあげないとね」

 その思いだけが彼女を突き動かす。

「やああああ!」

 持てる根性を全て使って、スズナは立ち向かっていく。
 しかし、攻撃をよけることも出来ない体は、
 あっさりと崩された。

「あっ・・・・・!」

 後頭部のダメージが意識を薄れさせていく。
 そして脳裏に言葉を流した。

「今日で私は終わるの・・・・?」

 自分の死を本気で覚悟した。
 しかし、目の前に救世主が現れたのである。

「剣技・・・・渦潮!」

 人の声が掻き消されるほどの風の轟音。
 一瞬にして吹き飛ばされた追っ手たち。
 その風の中から、人の気配が感じられた。

「えっ・・・・・?」
 
 スズナの目の前に二刀流の一人の青年が現れた。
 背が高く、黒に青が混ざったような髪色、
 そして黒の拳法着がぼんやりとした意識に流れ込んでくる。

「まったく、戻ってくればこの様とは・・・・
 修行し直したほうがいいみたいだな、瑞貴」

 「かっこいい声」なんてものがこの世にあるなら、
 きっとこの男のことを言うんだろう。
 とても心地よい声は、少しずつ遠ざかっていく。 

「ほう、この国の状態で死んでないとはたいしたもんだが・・・・・」

 青年はスズナを見て一瞬止まる。
 彼女はまさか・・・・

「瑞貴を・・・・・」
「ん?」
「覇王を助けなさい・・・・・!」

 エメラルドの目が青年を射抜いた。
 そしてスズナは気を失ったのである・・・・

「たいした根性を持っているようだな・・・・
 畏まりました、スズナ・メイリン殿」

 そして青年はスズナたちを抱え、
 一瞬のうちにその場から消えたのである。












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