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覇王
作:緒俐



第二十話:追いかけっこの勝敗


「スズナぁ!!」
「追い掛けてくるなぁ!!」

 かつてこの天界の城で、
 ここまで激しい追い掛けっこをした者がいただろうか。
 木に飛び移りながら、川を飛び越えながら、
 時空間まで飛んで追い掛けるものなどいなかっただろう。

「おてんばもほどほどにしろと言っただろうが!」
「それでもあんたと同じ部屋で寝るのだけは嫌!
 何されるかわからないわよ!」
「誰がやるか! 色気より食い気の癖に!」
「なんですって!!」

 とは言いながらも、戦えば捕まる。
 はじめは弱いと思っていたが、
 どうも瑞貴がとんでもなく強いということが、
 この数日間で痛いほど分かった。
 いや、認めたくないが覇王になるといったあの時、
 すでに気づいていたのかもしれない。

「仕方ない・・・・召喚!」
「なっ!!」

 突如スズナの目の前に大木が現れた!
 止まることができない!

「きゃあああ!!」

 ごおん!!という鈍い音がした。
 それは激突の音・・・・・

「ようやく止まったか・・・・」

 まったく悪びれた表情もなく、
 さも当然の報いというかのように瑞貴は言う。
 スズナにいたっては痛みで声も出ない。

「冷やしてやるから大人しくついて来い・・・・
 いや、歩ける状況でもないか」

 笑い声が耳に障る!
 禍々しい殺気が満ち溢れている!
 しかし、動けない。

「さて、一気に時空間を飛んでいくから目だけ閉じてろよ」

 軽々とスズナをお姫様抱っこすると、
 瑞貴はその場から自分の部屋に飛んだのだった。


 そして同時刻・・・・

「ご馳走様でした」
「はい、お粗末さまでした」

 お茶を飲み終えたヤンロンとセディは、
 ようやく落ち着いたであろうあの二人の騒動を感じ取っていた。
 どう考えても瑞貴の圧勝であろう。

「さて、とりあえず私は長のところへ行ってくるけど、
 ヤンロンはどうするの?」
「そうだな・・・・」

 そこに一陣の風が現れた。
 正体は天界の情報伝達人だ。
 仮面をつけ、その表情は分からない。
 だが、低い声で告げた

「団長、サラ様がお呼びです」

それはヤンロンのこと。
 ヤンロンは表情を引き締めると、

「分かった、すぐに行く」

 そう答えたのであった・・・・












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