覇王(12/39)PDFで表示縦書き表示RDF


覇王
作:緒俐



第十二話:馬鹿者!


 人生に困難はつきもの。
 だけどここまで不運が続くとはスズナは思わなかった。
 まさか、自分が景品になる日が来るなど…


「お嬢ちゃん、負けた分は体で払ってもらおうか?」
 
 店主の笑みが気持ち悪い。
 このまま目の前の奴らを抹殺することは可能。
 しかし、今回は明らかに自分が悪い。
 やけにならなければよかったと反省する。

「分かったわよ。どこのどいつを倒してほしいの? 
 負けた分くらいは働くわ」

 肉体労働ならまだいける。
 それにごまかしをきかせる自信もあった。
 しかし、店主はやはり引きはしない。 

「お嬢ちゃん、冗談はいいからさ…
 早速どこに売るか決めて…!!」

 次の瞬間、スズナは机一つを完全に粉砕した。
 これには辺りが騒々しくなる。

「私は強いわよ!用心棒にはもってこいじゃない?」

 勝気な笑みをスズナは浮かべた。
 しかし、少しだけ店主はあっけにとられたがすぐに話を戻した。

「…わかった。だが、君に求めてるのは色気の方だ。
 少し大人しくしていてくれ」
「嫌よ!」

 スッと首筋に刃が当たる。
 この店の雇い剣客だ。
 戦えば無事では済まされないほどの達人だということは、
 どんな戦いの素人でも感じられるほどの・・・・

『ちっ! 逃げられないか…!!』

 さすがに本気で戦うことを決意するしかなくなったが、

「はい、いらっしゃいませ〜!!」

 新たなカモがかかったといわんばかりに、
 店の従業員達はにこやかに接客を始めたが、

「俺達は客じゃない。ここにおてんば娘が来てないか?
 いかにも怪力そうな奴だが」
「瑞貴! ヤンロン!」

 そこに入ってきたのは、さっきまで一緒にいた二人だった。
 しかし、からかわれ放題だった二人の怒りは収まっていないが、
 逃げ出すチャンスが出てきたのである。

「なんだ、いたのか。さっさと旅に出るぞ。
 落ち合う予定の奴もいるんだからよ」

 悪びれた様子もないが、逃げ出すチャンスだ!
 とびっきりの笑顔で二人の元に走ろうとしたが・・・・

「ちょっと待てよ」

 剣客はスズナの前に立ちはだかる。
 ヤンロンはそれを見て二本の刀を抜こうとしたが、

「お連れさん、このお嬢さんは今景品になっている。
 金が払えないというのならお引取り願おう」

 剣客のまっすぐな目がヤンロンの刀を引かせたが、
 瑞貴の怒りを鎮めることは出来なかった。
 そしてそれは爆発する!

「スズナ…!! お前はどこまで馬鹿なんだ!!
 宇宙一か!? 史上空前の超絶馬鹿か!!」
「悪かったわよ!! だけどカッとなったのはあんたたちの性じゃない!」

 いつもならここで瑞貴は言い返すが、
 今回は少し止まった。
 そして微笑を浮かべ、

「…いや…そうだな、それは謝るよ。
 とにかく景品は貰いたいしな。
 いうことなんでも聞いてくれる可能性もあるし…」

「待ってろ。すぐに貰ってやるからよ」
「いや〜!!!」

 これまでにない悪戯な笑みは、スズナを最悪の状況に追い込むこと間違いなしだった。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう