学校で宿題が出た。作文だ。僕はそんなに文章書くことが嫌いじゃない。でも、今回の課題は「父と母」。このテーマはいつも僕を悩ませる。
だけど、やらなきゃ宿題は終わらない。とりあえず僕は鉛筆をとった。
「父と母
6年2組渡辺勇気
僕の家族はごく一般的な普通の家族です。だから、家族の事を作文にするのは難しいです。父はサラリーマン、母は専業主婦。父のプロポーズの言葉は『結婚してくれ』だったし、2人が出会ったのは大学のサークルでした。ハネムーンはハワイで、結婚してから二年が経ち、僕、勇気が生まれました。二人の間には僕のほかには子供は生まれず、僕は二人の愛を一身に受けて育ちました。
母は、優しく、学校から帰ってくる僕を笑顔で迎えてくれます。母が洗濯した洋服はふかふかで暖かくて、母の作ったオムライスは宇宙一のおいしさです。ただ、母はこれまた宇宙一怖いんです。大きな声で怒鳴り、ずっと文句言いっぱなしなので、口を挟むすきもありません。
お父さんは、いつもは無口で威厳があるのでとても声をかけられません。でも、お父さんがたまの休みに遊んでくれる時の笑顔が僕は大好きです。
普段は決して口にしないけど、二人が僕を生み育ててくれた事に心の中でありがとうって思っています。」
そこまでかいて僕は鉛筆を置いた。優等生、100点満点の作文だな。と思って目を閉じる。
いつの間にか眠気に襲われ椅子に座ったまま、僕は夢の中にいた。顔の見えない二人の男女が上から覗きこんで微笑んでいる。優しい笑顔はいつの間にか消え、僕は再び机の上に戻っていた。少しの間しか寝ていないはずなのに僕の目から涙が落ち、日は落ち始めていた。
「ゆうきーーもうご飯出来るから降りてらっしゃーーい」
僕は階段の下に向かって、宿題の途中だからちょっと待ってと叫びかえして、涙に滲んだ原稿用紙をもう一度見た。
そしてその紙きれをぐちゃぐちゃにまるめてゴミ箱に投げ入れた。あいにく、ゴミ箱には入らなかったが、僕は気にしなかった。違う原稿用紙を出してきて、もう一度鉛筆をとった。
「父と母
6年2組渡辺勇気
僕の家はちょっと変わっています。というのも、僕には両親が2人ずついます。片方は生んでくれた両親であり、もう片方は僕を育ててくれた両親です。育ててくれた両親とは、母の姉である叔母とその旦那さんです。生んでくれた両親に会えないことはたまに寂しくなるけど、12年間育ててくれた、2人の事を本当のお母さん・お父さんと思っています。
僕は生み、育ててくれた、4人の父・母に言ってもいっても足りないくらいありがとうと思っています。」
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