calm down
浩二「フゥン。やっと開放されるのか・・・疲れたぜ。」
事ここに至って、まだそんな言葉が吐ける事を幸市は信じられなく思う。
幸市(この緊迫した空気が分からないのか?いや、そんな事はどうでも良いことだ・・・それよりも・・・・・)
浩二は奇跡的なまでに空気の読めない男だった。
この空気に触れればどんな愚鈍な生き物も気を引き締めるであろう、と言うほどにピリピリとした空気を感じ取れないのは相当である。
葵「幸市先輩・・・」
葵が幸市を呼ぶ声は弱々しく、まるで幸市に助けを求めるかの様だった。
幸市「・・・・・」
それに幸市は応えない。
真帆「クスクス・・・乙女の声はちゃんと聞く物よ?」
幸市「・・・・・」
その真帆の言葉にも幸市は反応を示さない。
幸市の頭の中は別のことで一杯だった。
幸市(冷静に考えよう・・・)
今の状況を、である。
幸市(爆発するまで、たぶんもう十秒くらいだ・・・)
実際は十二秒である。
幸市(俺が生き残るには浩二が持って死ぬ事が前提となる。)
もう、爆発とは考えない。
具体的な死を意識すれば、最早その程度の言い回しは意味を成さない。
幸市(でも、俺が浩二に投げる訳には行かないから、真帆さんか葵ちゃんに投げてもらう必要がある。)
幸市は左右の二人をチラリと見る。
爆弾を持っているのは真帆だ。
幸市(浩二に死んで貰うために残り一秒で浩二に投げてもらう必要があるわけだが、どうだろう・・・)
真帆が幸市に爆弾を投げる。
回転数の少ないその爆弾の液晶画面にある数字は『00:00:09』と読める。
幸市の下に届く時には残り八秒であろう。
幸市(真帆さんと葵ちゃん、どっちなら生き残れるんだ?)
その選択に幸市の命が掛っている。
選ばなくてはならない。
どちらを選んでも不確定な未来にしかならない不条理な選択肢を。
残り時間『00:00:08』 |