initial
−ガララララ−
扉を開けて教室の中に入る動作は、意識する必要のない日常的で緩慢な動作である。
幸市「おはよう!!」
正史「おはよっす!!」
クラス一同「おはよう」
故に、挨拶をしながら教室に入ってきた二人にクラスの人間がいつも通りに挨拶するのもいつも通りのことで、当たり前な日常をいちいち観察する暇人もこのクラスにはいない様なので、頭からバケツで水を被せられた様な状態の正史にクラスの人間が気付いたのは暫くしてからだった。
教室の中はいつも通りかそれ以上の喧騒の中にあり、幸市は、
幸市(また神隠しの話題なんだろうな・・・)
と、今更知る必要のない情報を聞く気にもなれず、夏休みを前にしてテンションがアップアップなクラスの人間を眺めていた。
女子A「また一人消えたらしいよ。」
そして、訊いてもいないのにわざわざこっちに聞こえる様な大声で言葉を発すお節介な女子がいれば、待ってましたとばかりに女子グループに入り込んで会話を始める幸市の親友が一人。
ちなみに、ずぶ濡れなのに気付かれて、女子数人から正史が袋叩きにされるのはこの数秒後。
幸市「やれやれ・・・」
そんな日常風景に溜息を吐きながら、幸市は導かれるように自分の席に座った。
幸市「ん?机の中に何か入ってるな・・・」
本当に無意識的に机の中に手を入れた幸市は、中に手紙らしき物が入っているのを確認する。
机の中に入っていたその便箋は、以前葵から貰った物と全く同じだった。
『二人きりで話したいことがあります。
放課後、校舎裏の雑木林にに来てください。
byA・T』
幸市(自分の名前を書くんじゃなくて、イニシャルを書く辺り葵ちゃんらしいと言えばそうなんだろうな・・・)
幸市は特に悩んだりせず、その手紙をポケットに入れると、一つ大きな欠伸をした。
ふと目を逸らすと、正史が女子数人からまるでリンチの様にゲシゲシと蹴られていた。
正史「ちょ!痛い!!痛いって!!!あ!幸市!!助けてくれぇぇええええぇえええええ!!!!!」
幸市「無理だな。死んで生まれ変わってこいよ。」
正史「ぎゃぁぁああああぁぁあぁぁああ!!!!!」
正史の絶叫は虚空の空に浮かんで行った。 |