灯4:きっかけはアナグラム!?
突然、村竹先生は言った。
「抜き打ちテストをする!」
教室中から
「え〜」とか
「うそ。」といった声が聞こえる。
それも当たり前だった。
私達が通っている市立香村中学校で知らないものはいない程、村竹先生は授業で説明していないこともテストに出すことで有名だったのである。
そんな生徒達の気も知らないで村竹先生はテスト用紙を配る。
「俺の授業を聞いていれば分かる筈の問題ばかりだ。点数が芳しくない者には俺が個別授業をしてやるので安心しろよ!」
『並村さん今日もよろしくお願いします。』
『少しは自分で考えてよ……もぅ。中学出たらどうするのよ。』
『なんとかなるでしょ。多分。』
『多分って……はぁ。先が思いやられるわ……。とりあえず今日は教えてあげるけど、後で自分で出来るようにしなさいよ!』
『うん!並村さん大好き!』
村竹先生の担当は数学のはずなのに何故か、テストに暗号問題が含まれていた。
『ふぇーん解読できないよ〜並村さん分かるぅ?』
『ごめんあたしもわかんないわ。』
その時アラーム音が教室に響いた。
村竹先生にすぐに止められたそれは、制限時間が来た事を知らせてくれた。
テスト用紙を集めると、授業が始まった。
休憩時間になると、暗号解読が出来たか聞いて回る女子がいた。
「村崎さんは解読できた?」
「ごめん山代さん、私も無理だったわ」
「そっか。ありがとー」
そう言って彼女は矢村進司の所に行った。
「矢村君は解読出来た?」
「え?出来たよ。」
「そっか。ありがとーってホント!?」
目を丸くする山代佳代。
クラスの皆も、私も目を丸くした。
「『アナグラム』になってたんだよ。あの意味不明な文字はね。元に戻すと『ロミオとジュリエットの作者はシェイクスピアである。これは間違っているか、間違っていないか、どちらか答えよ。』だから『間違っていない』が正解なんだ。」
得意げに言う矢村君に、思わず私はこう言ってしまった。
「矢村君凄ーい!何で分かったの?もしかして悲劇って好きなの?」
ガタッっと音を立てて矢村君は立ち上がった。
「僕は悲劇は好きじゃない!たまたま昨日名前が出てきた本見ただけだよ!」
そう声を抑えて怒鳴ると、矢村君はそれっきり黙ってしまった。
クラスの皆から私に非難に近い視線が集中する。
それに気付いたのか、
「ごめん、言い過ぎた。皆も忘れてくれないかな?」
本人がそういってるしってことでその話題は禁句になった。
そして、授業開始のチャイムが鳴った。
『並村さん、矢村君なんで怒ったんだろう?』
『あたしに聞かれてもねぇ〜。今度聞いてみたら?』
『やっぱそれしかないかぁ』
次の休憩時間、なるべく早く矢村君と話したかった私は、どう話しかけようか迷っていた。
そこに、矢村君が来た。
禁句になったとはいえ、先ほどの事を忘れているわけではない。
皆の視線の中、彼はこう言った。
「今日の放課後ちょっと時間くれない?」
私に拒否する理由があるわけもなかった。
クラスの皆や、まだ教室にいた先生が、興味津々の笑みを浮かべていたが、私は気付かなかった。
―そして、放課後になった―
|