第1章〜悲しみの笛〜(泊まる家・上)
自宅の火事をしばらく見た後、俺と高木刑事は葬儀場に戻った。
やたら冷たい親戚達がいる場所で、しかし俺と親しい者も、1名だけだが葬儀場を訪れていた。
倉科命刻、18歳。
本名、サラ・リッテルザール。
俺の遠縁であり、俺の兄の婚約者でもある高校3年生。
もちろん、俺と同じく、ドラキュラと人間の混血だ。
(by 浜口 至)
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2月26日(金曜日)午後6時40分・シエルこと浜口至の場合。
「るーくんも大変だったね、こんなことになるなんて」
「うん」
この人が俺を『るーくん』と呼ぶのは、簡単な理由による。
イタルとシエル、俺の偽名と本名の両方に、『る』の字が入っているからだ。
「……でも、命刻 義姉さんも大変じゃないの?
今、大学受験の時期で、……勉強は?」
「ん、……大丈夫。
外国語短大の推薦入試に受かったから。
受験からはもう解放されているのよ、私はね」
「じゃあ義姉さん、4月から短大生なんだ」
「うん、そゆこと」
命刻義姉さんは頷いた。
俺や、俺の兄とは正反対の性格のこの人、微笑んだ顔は結構能天気だ。
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「そういえばさ、るーくん。
今夜、ウチに泊まる?」
「……えっ?」
急な話題転換。
「泊まるってったって、……俺が泊まって大丈夫なの?」
確かこの人、俺と同様に親戚の家で生活しているはずだ。
「大丈夫。
ウチは中学生1人なら泊める余裕はあるし、私の養母さんも、るーくんの事情を知ってるから」
義姉さんの顔から笑みが消えた。
手のひらを頭の後ろに組み、茶髪のおさげ髪が揺れ、周囲の親戚を見渡す。
そして鋭く、ただ一言。
「亡くなった2人のお葬式、取り仕切るのは誰?」
「俺の祖父。
つまり、乃梨子叔母さんと母さん姉妹の父親」
「亡くなった養父さんの親戚は、関わらないの?」
「関わるんだろうけど、今はまだ来てない。
親戚の人は愛知に住んでて、あと……30分ぐらいしたら東京に着くらしいね」
確か高木刑事が来る1時間くらい前、そう連絡があった。
「お通夜はいつ?」
「明日、夜。
お葬式は明後日だそうで」
「喪主はるーくんだよね?」
「うん」
そりゃそうだ。
一応養子とはいえ、俺は亡くなった夫婦の、ただひとりの息子。
「お通夜やお葬式がまだなのに、何で親戚がこんなに来てるんだろうね?」
「通夜や葬式の前に、色々打ち合わせをしたいからじゃないの?」
「……打ち合わせだけかなあ?
親戚の人がここに来た目的って……」
「いや、たぶん違う」
俺は言った。
「この機に乗じて、色々俺と話したい人もいるみたいだね。
例えば……遺産の話とか」
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